もしもカカロットが幻想郷に落ちていたら   作:ねっぷう

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第491話 「Swarm」

無事にモロをナメック星へ移動させたことを確認したメルスは、銀河パトロールの宇宙船へ戻っていた。

そして自分も戦いを見届けるべくナメック星へ向けて航行している最中の事だった…

 

ビーッビーッ

 

「これは…」

 

船を操縦していたイリコが非常事態警報が鳴り渡ったのに驚く。

 

「一体何があったのですか!?」

 

メルスがモニターを覗き込むと、そこには驚愕の文字列が記されていた。

 

「そ、そんな…」

 

「おい、一体何があったんだ!?」

 

「何かまずいことが?」

 

ただ事ではなさそうな様子を見ていたジャコとスカッシュも思わずそう尋ねる。

 

「銀河刑務所の囚人が…全員脱獄したそうです…」

 

「え!?」

 

 

 

 

 

「銀河刑務所にいるすべての囚人の解放!それがオレの願いだ」

 

いよいよモロはポルンガに願った最後の願いを暴露する。

 

「囚人の解放…?そんなことをしてどうする気だ?」

 

「来たぞ」

 

モロがそう言いながら空を見上げると、そこにはまだ小さな点である大きな物体が浮かんでいた。

 

「宇宙船…!?」

 

「中に無数の気を感じるぞ…!」

 

それは光を発すると一瞬で地上へと近づき、武装として取り付けられた主砲を展開すると巨大な光線の砲撃を撃ち出した。

 

「まずい!」

 

降り注ぐ光の柱が地上を焼き、凄まじい暴風が吹き荒ぶ。シロナは衝撃から身を守りつつ、これはかつてパオズ山を消し飛ばした人工衛星群によるレーザー兵器と同じような攻撃で、しかし規模は比べ物にならない程だと思った。

 

すっかり蒸発し、クレーターとなった地面を見下ろす宇宙船の甲板上には既にモロがそこへ移動していた。

 

「お待たせしました。モロ様」

 

「ずいぶんたくさん連れてきたな、でかしたぞサガンボ」

 

モロに向かって跪く男はサガンボと呼ばれ、彼は銀河刑務所に服役していた囚人の筆頭である。モロの次に力を持っていた囚人で、モロに忠誠を誓うと同時に脱獄を企てていたのだ。

 

「約束通り、お前ら全員にオレの力を分けてやろう」

 

 

「なんなんだよ…いきなり撃ちやがったぞ!」

 

何とか砲撃から逃れたサザンカがそう言った。

 

ブウ…ン

 

その時、あの宇宙船の中にいた者たちの気が一斉に大きく膨れ上がったのを全員が感じ取った。

 

「なんだ…また何か魔力を使ったのか…?」

 

そして宇宙船の出入り口の扉が開き、その奥からオレンジ色の囚人服を纏った集団が何人も現れ、飛び降りて着地する。見たことのない異星人が大半で、その外見や体格はそれぞれ異なる荒くれたちのようだ。

 

「アイツが余裕ぶっていたのはこういうことだったか…」

 

「まさか仲間がいたとはな」

 

 

「かかれ、囚人ども」

 

そのモロの号令ひとつで、舞い降りた囚人たちは一斉にブロリーたちへ襲い掛かる。

超サイヤ人ブルー、超サイヤ人4、ファントムシロナ、そして超ハーツへとそれぞれが変身し、囚人たちの集団を迎え撃つ。

しかしいくらモロに力を与えられて強くなったとはいえ、まだまだ彼らの敵ではない。襲い掛かる囚人を纏めて殴り飛ばし、衝撃波で吹っ飛ばしてどんどん撃破してゆく。

 

「お、おい…コイツらふつうの銀河パトロールと違うぞ…!」

 

「つ…強すぎねえか!?」

 

ブロリーたちの強さを目の当たりにした獣人たちは恐れ戦き、じりじりと後退する。だがそんな不甲斐ない様子を目の当たりにしたサガンボは怒声を挙げる。

 

「おい!何を怯んでやがる!どんどんかかれ!また捕まりたくなければモロ様に従うしかないんだぞ!全員でかかれば絶対に倒せる」

 

それを聞いた囚人たちは再び波のように押し寄せる。そしてそれを迎え撃つハーツだったが…

 

ドクンッ

 

「ううっ…!」

 

超ハーツの変身が解け、元の姿に戻ってしまうと同時に足の力が抜けてその場で転んでしまう。そこへ襲い掛かる囚人たちの猛攻撃を受けた。

 

「ハーツさん!?…まさか、アイツ」

 

モロはエネルギー吸収を妨害しているのがハーツの能力であると見抜き、まずは吸収能力をハーツ個人へと一極化し、強引に妨害を破ってエネルギーを吸い取った。

そしてハーツの力が無くなりキューブによる妨害を維持できなくなれば…

 

「あ!?」

 

当然、ブロリーとサザンカの力もモロに再び奪われてしまう。

 

「モロがまたエネルギーを吸収したのね!」

 

「くそったれ…!」

 

ブロリーはゴッドへ戻ってしまいながら悪態をつき、これ以上エネルギーを奪われる前にケリを付けようと空へ飛びあがり、一直線にモロ本人を狙って迫る。

 

「私が行きましょう」

 

だが、隣に控えていたサガンボが手すりを蹴って飛び降り、ブロリーへ向かう。

両者が激突する瞬間、ブロリーの気がさらに減ってしまいただの超サイヤ人へと戻る。その瞬間、サガンボのパンチがブロリーの顔面へ直撃した。

 

「お前は覚えがあるぞ…あの時はどうも」

 

「ぐ…そうか、お前は…」

 

そこでブロリーも思い出した。サガンボは以前ブロリーが銀河パトロールに協力していた際に倒して捕まえたことのある強盗団のボスであった。あの時はブロリーが何の苦も無く相手取ったのであるが、今はあちらはモロによって強化され、こちらは弱体化…力関係は完全に逆転されてしまった。

ブロリーは地面に叩き落され、超サイヤ人にさえ成れなくなってしまう。

 

「おい、何やってんだよブロリー!」

 

そういうサザンカだったが、彼女もまたモロに力を奪われ、通常の姿に戻る。その瞬間、今まで組み合っていた囚人に力負けし、殴り飛ばされる。

ハーツも同様に変身していられなくなり、無数に囚人に囲まれて身動きが取れない状態になっていた。

 

「モロ!」

 

シロナはエネルギーを奪われることなく囚人をまとめて薙ぎ払っているが、上空の宇宙船の甲板上で既にエネルギーを巨大な球にして集めているモロに向かって声を飛ばす。

 

「アンタの目的は何!?なんでこんなことをする…!?」

 

「愚問だな。喰いたい時に好きなだけ喰う…そんな理想の銀河を作りたいだけ、とでも言っておこうか?仲間を集めたのもそのための手段のひとつだ」

 

「アンタは銀河パトロールを恨んでいるのか?」

 

「…どうだろうな、オレはオレの身の丈に従って生きているに過ぎない。面白ければ遊んでやるし、つまらなければ消す…お前らの望む平和な世界ってヤツは後者になるだろうな」

 

傲岸不遜、己の快・不快のみが生きる指針。モロはそうやって生きられるだけの実力がある。

圧倒的な邪悪、他を鑑みることのない災い…シロナの脳裏には、かつて相対し撃破した人造人間たちが浮かんだ。彼らも思うままに地球上を練り歩き、己らの目的のためなら破壊や殺戮をものとも思わなかった。

そして、シロナはそういった存在と対峙した時に怒りに身を任せ、問答無用で襲い掛かることが出来る。───のだが、現在のシロナには一切の精神攻撃が効かない。つまりどのような事が起ころうとも精神的揺らぎを受けることは無い。

 

「オレから言わせれば、お前らこそ何故そこまで弱い。つつけばたちまち崩れる存在が、どうして平和に生きたいだなどと口にできる。お前らは生涯不幸を噛み締め、最期にはオレに喰われればいいのだ」

 

もしも一気に爆発するような強い怒りを赤い炎と表現するとしたら、今のシロナが抱えたのは静かにじわじわと燃え上がる青い炎。

以前までのシロナであったら、前者だっただろう。

 

「みんな、逃げよう!!」

 

そして、シロナのその一言で全員が我に返る。今のままでは、決してモロには勝てない!

そう決断してからの行動は早かった。各々が周囲の囚人から一瞬で距離を取り、ひとつの方向へ飛び去っていく。

 

「逃げた…?追え!ひとりも逃がすな!!」

 

逃走の一手を選んだブロリーたちを見たサガンボはそう指示し、囚人たちは彼らを追いかけ始める。が、その頭上から大きな影が舞い降りた。

 

「援護します!」

 

真上にやってきた銀河パトロールの宇宙船から、メルス、ジャコ、スカッシュが光線銃を発射して囚人たちを撃ち落としてゆく。さらに、メルスは銃をこちらへ向けるサガンボを目ざとく発見するとその手首を正確に撃ち抜いて無力化して見せる。

 

「なんだアイツ…!」

 

銃を取り落としたサガンボは不可解なほど早く正確だったメルスの狙撃能力を目の当たりにし怯む。メルスを筆頭に銀河パトロールの介入の甲斐もあって、ブロリーたちは囚人を振り切り逃げ果せることが出来た。

 

「おいお前ら、何やってやがる!」

 

サガンボは囚人たちを叱責するが、モロは少し何かを考え、それを諫めた。

 

「まあいい。あれだけのエネルギーを固体で持つ生物も珍しい…この宇宙に家畜として放牧しておくのも悪くない。それよりも今は…」

 

モロは逃げ去ったブロリー達などもう興味もない様子でそう言うと、さらにナメック星のエネルギーを絞り上げ、集めて巨大な球にしていたエネルギー塊を一段と巨大化させる。そしてそれを圧縮して小さくし、それを一口で飲み込んだ。

 

ブゥン…

 

その瞬間、モロの全身の気がさらに漲り、体の筋肉も膨らみより大柄な体格へと変化する。顔の皺と髭も完全に無くなり、これがモロ本来の姿であるのだろう。

 

「やはり特殊な種族の星であるのと、奴らのエネルギーは素晴らしいな。これで肉体の回復はほぼ完璧だ。だが…」

 

…まだまだオレの腹は満たないな…

 

「オレはここからエネルギーの蓄えに入る。お前らは良質なエネルギーを持っていそうな星を教えろ」

 

「お任せください。オレ達は捕まるまで銀河中でさんざん暴れまわりましたから…強い生命体のいる星はいくつかアテがあります」

 

「そうか、では連れて行け」

 

「その他に、仲間を偵察に向かわせましょう。銀河中の星をくまなく探させます」

 

サガンボとモロはそう言いながら宇宙船の中へ降りていく。

そして、そのまま宇宙船は内包した小型偵察艇をいくつも発進させつつ上昇し、ナメック星を発つ。緑に覆われ美しかったナメック星は既に全体が灰色に変色し、赤黒い瘴気が漂う死の星となり果てていた。

文字通り“死”を迎えた星を後にし、蘇ったモロの膨大な飢えと悪意は宇宙へと解き放たれるのだった…。

 

 

 

 

無事に宇宙へ飛び立ち逃げることに成功した一行は、ハーツの宇宙船とメルスらの銀河パトロールの宇宙船をドッキングさせ、全員で集まっていた。

 

「…」

 

だが、ブロリーたちの表情は暗く沈み、誰も何も口に出そうとしなかった。メルスたちでさえも、その様子を緊張しながら見守るだけだ。

 

「…強かったな、モロってヤツ」

 

と、そこでサザンカが口を開いた。

 

「ああ…よくある能力だと思ったが、あれほどの規模と強力さでそれを運用できるヤツは初めて見た」

 

長い間宇宙を旅していたというハーツでさえ、モロほど強力な能力を持つ者は見たことが無かった。

 

「能力だけじゃない。俺たちとナメック星の気を全て取り込んだモロの気を逃げる寸前に少しだけ感じ取ったが…あれは間違いかと思いたいくらいだ。紛う事なき怪物だった」

 

ブロリーでさえもモロの気を感じてそう振り返るほどだった。

 

「ああクソッ…ジレンってヤツには単純な力で負けて、モロには能力で負けたってのかよ!ムカつくぜ!」

 

サザンカはそう言いながら立ち上がり、壁を殴ろうとして腕を上げたところで止まった。

 

「サザンカ?」

 

シロナがそう心配そうに名前を呼ぶと、サザンカはゆっくりと振り返った。

 

「アタシも…何かあの野郎に対抗できる能力が欲しい。誰か教えてくれ、何か知らないか?」

 

そう言ったサザンカの顔には何か決意のようなものがあった。

 

「サザンカくん、オレに心当たりがある」

 

それを聞いたハーツがそう言った。

 

「ヤードラットという星だ。そこには戦闘力こそ低いが不思議な術を多く使う種族が住んでいる。彼らなら、モロに対抗できる術をひとつくらい知っているはずだ」

 

「…わかった。じゃあアタシをそのヤードラットって所へ連れて行ってくれ…頼む」

 

「俺も少し試したいことがある。一緒に行こうか」

 

そう言いながらサザンカとハーツが立ち上がるが、ブロリーがそれを止めようとする。

 

「おい…ブルマが心配するぞ」

 

「分かってる。だがよ、せっかく集めた究極ドラゴンボールも使われちまったんだ…まだ合わせる顔もねぇだろうよ」

 

「その通りだ。それにブロリー、君はどうするんだ?」

 

「俺は…」

 

ブロリーは言い淀み、少し考えてからメルスの顔を見上げて言った。

 

「モロは今までの戦い方じゃ倒せない…そうだろ?」

 

「はい」

 

メルスがそう返した瞬間、ブロリーは立ち上がりながら素早いアッパーを繰り出した。それはメルスに対しての本気の攻撃であり、ブロリーは完全に当てるつもりで放った。にもかかわらず…

 

スッ…

 

メルスは容易くそれを避け、ブロリーの拳は空を切って終わった。

 

「俺は今本気で拳を打った…メルス、お前…本当は相当強いだろ?俺よりもずっと」

 

「…それはどうでしょうか」

 

「そうだろうな。それに、お前はモロのエネルギー吸収を受けていないだろ?何故だ?その理屈が俺にも分かれば、俺もモロに対抗できるようになるはずだ。だからメルス、俺に修業を付けてくれないか」

 

「なるほど…分かりました。いいでしょう」

 

「感謝する。なら俺たちは地球へ戻ろう。神殿の『精神と時の部屋』を使わせてもらう」

 

「そうか。俺とサザンカ君はさっそくヤードラット星へ向かうよ。シロナ君はどうするんだ?」

 

ハーツとサザンカはヤードラット星へ、ブロリーとメルスは地球の精神と時の部屋で修業をする。そしてシロナは…

 

「私も私で考えてることがあるんだよね…とりあえず地球に行くよ」

 

「決まったな」

 

 

 

こうして、モロへの再戦を挑むべく各々がそれぞれのやり方で強さを求めた。

特にシロナは、頭の中でモロに言われた言葉を反芻していた。

 

『キサマは全てをかなぐり捨てて喰らうべきなのだ』

 

だが、それは決してシロナが揺らいでいるという事ではない。その言葉についてシロナなりに考えたうえで、既に彼女の中でなりたい自分の構想は決まっていた。

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