もしもカカロットが幻想郷に落ちていたら   作:ねっぷう

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第492話 「Beginning」

ハーツとサザンカはドッキングさせていた宇宙船へ乗り込むと、別の方向へと飛び立っていった。

残されたのは銀河パトロール隊員たちと、ブロリー、シロナ。そして唯一生き残ったナメック星人であるエスカと、元囚人のレモ。

その中で、ブロリーとメルスは向かい合いながらひりついた雰囲気を出し合っていた。

 

「おいおい、まさかこの船の中でやり合うつもりか?ケンカはよくないぞ?」

 

状況が読めていないジャコだけはそうとぼけた事を口走る。

 

「確かにメルス隊員はリーダー気取りなところが鼻につくが悪い奴じゃない。顔だってよく見れば愛嬌があると思えないか?前髪とかいくら何でも短すぎるだろ」

 

「アンタ、黙れ」

 

呆れたスカッシュにそう言われるまでジャコの口は止まらなかった。

地球へ戻るまではまだ数日はかかる。万全の状態で修行を行うため、ブロリーたちはモロとの戦闘で疲弊した体を十分に休めるのだった。

 

 

 

 

 

 

───そして、モロ達が宇宙へ飛び立ってから数日の時が流れていた。

 

「さぁやっちまえ、お前ら」

 

ここは惑星ズンと呼ばれる星。常に暗い漆黒の夜空が頭上に広がり、地球の10倍もの重力を持ち、頑丈な肉体を持つズン星人たちが原住民として暮らしている。

そんな惑星ズンへ降り立ったサガンボ強盗団は、ボスであるサガンボの号令によって一斉に原住民へ襲い掛かる。脱獄の際に銀河パトロールから強奪したエネルギー銃を乱射し、原住民を一網打尽にしてゆく。

ズンの原住民は確かに強力な重力にも耐えうる頑強さが売りであったが、モロの魔力によって各々が強化されている脱獄囚と最新鋭の銃火器の前には手も足も出なかった。

 

「なんとしても王家の秘宝だけは守るんだ!」

 

追い込まれた原住民は残された宝だけは死守しようとその周囲を取り囲う。

が、脱獄囚の一人であるシモレッカは、自信満々な様子で飛び出し、一番先頭にいた原住民の胴体を腕の一振りで切り裂いて分断した。

そのまま次の標的の肩に飛び乗り、首をへし折る。

 

「ひいっ!」

 

怯えるズン星人を見定め狙いをつけると、さらに次々と彼らを殺害してゆく。そして秘宝の隠された宝箱を守っていた最後のズン星人を片付けると、その箱を開いて中身を確認する。

 

「おお、こりゃ当たりだぜサガンボ!」

 

そこには黄金に煌めく様々な財宝がこれでもかと押し込められていた。

 

「でかしたぞシモレッカ」

 

「この星で金になりそうなもんはこれくらいですかね」

 

「よし、じゃあ撤収だ!」

 

奪った財宝を運びながら宇宙船へ戻っていく脱獄囚たちを、ズン星人の生き残りが銃で狙いを定めていた。

 

「ちくしょう…喰らいやがれ…!」

 

が、素早くそれに気付いた囚人のひとりが目を光らせ、強力な光線を発射しそのズン星人を爆殺して見せた。さらに光線で周囲を薙ぎ払い、他にも生き残っていたと思われるズン星人を瞬く間に殲滅してゆく。

 

「やめろセブンスリー、死人を増やすとモロ様が喰うエネルギーが減っちまう」

 

セブンスリーも手を止め、彼らは宇宙船へ乗り込んでいく。

 

「お待たせしましたモロ様。この星の金品は頂きました」

 

「ごくろう。では喰わせてもらおう」

 

モロは飛び上がる宇宙船の甲板上から星のエネルギーを吸い上げて球を作る。惑星ズンの大地は灰色に変わり亀裂が走り、瞬く間に死の星へと変わり果てた。

 

「ひえぇ…惑星が死ぬところは何度見ても恐ろしいな」

 

部下が怯える前で、モロは球を圧縮しそれを口へ運ぶ。

 

「んん…なかなかの星だったぞ」

 

モロはそう言いながら甲板から宇宙船の中へと降りてくる。

 

「ありがとうございます」

 

「オレ達が金目の物を奪ってモロ様がその星を喰う…完璧なチームっすね」

 

「…そうだな、確かにオレの理想の世界には金も必要だ」

 

「そこはオレたちの得意分野なんで任せてください」

 

「…おい、お前らの中に飯を作れるヤツはいるか?」

 

「飯…ですか?」

 

「そうだ。星のエネルギーを喰うのも悪くないが、直接食物を食って腹を満たしたい気分だ」

 

「わかりました、経験のある奴を募って存分に作らせます」

 

サガンボは囚人の中で料理の経験がある者を集め、モロのために様々な料理を作らせた。モロは訝しげな顔でテーブルに並べられた料理を見渡し、次々とそれを食していく。

 

「いかがでしょうか、モロ様」

 

「…ナメック星で、レモというジジイを見たか?」

 

「レモ?…ああ、モロ様が脱獄するのに利用すると言っていた模範囚ですか?いいえ、私は見ておりませんが…ソイツが何か」

 

「いや…何でもない。お前らはもうどこかへ行け、オレが喰い終わったら片付けておけよ」

 

モロがそう言うと、サガンボたちはその場から退散した。静かになった部屋にはモロだけが残され、モロは乱暴にテーブルの上を料理を全てかきこんで平らげると立ち上がる。

 

「まあ…この程度か」

 

 

モロが部屋を出てサガンボらのいる操縦室へ戻ると、ちょうどサガンボが通信機で誰かと話しているところだった。

 

「誰だ?」

 

「モロ様。偵察に出した奴らから連絡です」

 

 

 

 

「サガンボ!生命力の高そうな星を発見したぜ」

 

緑豊かなジャングルに覆われた星で、女囚であるミザ、イワザ、キカザが襲い来る原生生物を制圧していた。

 

「威勢のいい生物がわんさか生息してるぞ」

 

『では次にこちらへ向かおう』

 

「おう、待ってるぜ」

 

ミザは電話でサガンボと会話しながら、剣のように固めた気で原生の怪獣を刺し殺した。イワザ、キカザも怪獣を蹴り飛ばし、エネルギー波で一気に焼き殺している。

 

「そんじゃ、それまでこの星のお宝を探して暴れとくか!」

 

サガンボらが上質な星を探し当て、モロがそれを喰う。それを繰り返すことで、モロは様々な星を犠牲にしながらナメック星の時よりもぐんぐんと力をつけていった。

 

 

 


 

 

 

その頃、ハーツとサザンカは目的地であるヤードラット星へと到着していた。どこかにある発着場を探して街の上を飛んでいるが、星の住人が警戒してくる様子はない。

 

「ずいぶん暢気だな」

 

「ヤードラット人たちはもう俺たちに気付き、その素性を察知しているぞ」

 

ハーツは大きな発着場に宇宙船を着陸させ、外に出た。すると、頭と目の大きな異星人たちがぞろぞろと集まり、物珍しそうに二人の事をじろじろと見てくる。

 

「コイツらがヤードラット人?」

 

「ああ。何タイプかいるらしいがな」

 

すると、今度は丸っこくてシンプルな顔をした別タイプのヤードラット人が数人やってくる。

 

「やあ!いらっしゃい!ハーツくん、久しぶりだね」

 

丸いタイプのヤードラット人のひとりが手を差し出し、ハーツはそれを取って握手を交わす。

 

「ああ、元気そうで何よりだ」

 

「こっちへどうぞ、ついてきて」

 

ハーツとサザンカは案内されるまま、街中の橋の上を歩いていく。

 

「ところで、ここのボスは君か?」

 

ハーツがそう言うと、ヤードラット人はキョトンと首をかしげる。

 

「あ、ごめんごめん、ここには僕ひとりしかいないよ」

 

大勢いたヤードラット人が瞬きする間に目の前のひとりだけになっていた。ハーツとサザンカも同時に驚き、渡りを見渡す。

 

「どういうこったよ…」

 

「僕らは力が弱いからね。普段はナメられないように増えとくんだ。さぁ入って、長老を紹介するよ」

 

道場のようにも見える建物の中に案内されると、そこにはナマズのような髭を伸ばした巨大なヤードラット人が静かに立っていた。

 

「この星の長老、ピバラ様だよ」

 

「やあ、君がハーツくんか。今回はどうしたのかな」

 

「ああ、実は…」

 

………

 

「なるほど、事情は分かった。そのモロとやらに勝ちたいというんだな」

 

「そうなんだ。そういう術があれば教えてくれねえか?」

 

事情を話し、サザンカがそう頼んだ。しかし…

 

「何か勘違いしているようだが…我々はたくさんの術を知っているわけではない」

 

「え?」

 

「すべてはひとつのことを学んでいるに過ぎない。術が生まれるのはその過程だ」

 

「ひとつのこと?」

 

「スピリットのコントロールだ」

 

そう言われたサザンカが目線だけでハーツにヘルプを送るが、当のハーツも肩を竦めながら「俺も初耳だ」と言った。

 

「見ててね」

 

ここまで案内して来てくれたヤードラット人がそう言うと、その姿がワープし別の場所へ移動した。

 

「瞬間移動も」

 

さらに無数の姿へ分裂し。

 

「増殖も」

 

「そして巨大化も」

 

ピバラの巨大だった体が普通のヤードラット人サイズへと縮んでいった。

 

「すべてはスピリットを移動させたり分けたり大きく見せたりしているだけだ」

 

「この辺はヤードラット星人なら誰でもできるよ」

 

「スピリットの仕組みを学べばやがて道は開かれるだろう」

 

「…なるほど、じゃあ教えてくれ…スピリットのコントロールを」

 

「いいよ。まずは肉体とスピリットの調整だ。これを一致させなければコントロールは出来るはずもない。いいね?」

 

 

 


 

 

 

そして、ブロリーたちもやがて地球へとたどり着いた。メルスとブロリーは早速神殿の精神と時の部屋に入り、シロナは戦いへ向けてやるべきことを進めるためひとりでどこかへ旅立った。

 

精神と時の部屋。

 

「さて…ここは外と時間の流れが違う。滅多なことでは壊れないし、環境も常に変動し様々な負荷がかかる」

 

「はい。同じような異空間を他の星でも見たことがあります」

 

「そうか。早速手合わせしたいんだが…いいか?」

 

「いつでもどうぞ」

 

メルスが真剣な顔で構えると、ブロリーは床を蹴って一気に迫り、拳を振り下ろす。メルスはそれを容易く躱し、続けて繰り出される連撃をも全て避ける。

そして、ブロリーの蹴りの予備動作を見切るとその股下をスライディングで潜り抜けて距離を取る。

蹴りを空ぶってしまったブロリーだが、その目はずっとメルスを追っており、追撃するべく超サイヤ人へと変身し、再度距離を詰めてパンチを繰り出した。

 

ギュルンッ

 

が、メルスは両手をブロリーの剛腕に添えるように置くと掌から発する気の力で軌道を逸らすと同時に強烈な回転をかけ、ブロリーの巨体を投げ飛ばした。

空中で体勢を直し、もう一度メルスへと向かうブロリー。高速でタックルを仕掛けるが、メルスはそれを直接触れる事無く、手から放つ気だけで押さえ込んだ。

 

「…不思議な技だ、まるで力の流れが感じられない」

 

「はい、見えない力でクッションを作っています。貴方が触れているのはそれです」

 

「なるほど…やはり、お前は俺が知らない世界を知っているな」

 

「はい…?」

 

直後、ブロリーの体から気が爆発するかのように溢れ、メルスは思わず吹き飛ばされた。

 

「やはり、お前と一緒にここで修行すればモロに通用するほど強くなれるかもしれない」

 

「…ここなら、私が全力を出しても外にバレませんね。いいでしょう、私の全てをブロリーさんに託します、少々厳しくしますが大丈夫ですね?」

 

「臨むところだ!」

 

 

 


 

 

 

一方、自分のすべきことを明確に定めたシロナはとある場所へと向かっていた。そこはかつて幻想郷が存在していた跡地。今では寂れた博麗神社があるだけの山。

 

「…おーい、いるんでしょ?八雲紫!」

 

シロナは誰もいない虚空へ向けてそう話しかけると、目の前の空間がぱっくりと裂け、そこからあの八雲紫が姿を現した。

 

「久しぶりね、シロナ…一体どうしたの…って、なんか小さくないかしら?なんか懐かしいわよ」

 

「これは…まあ色々あったんだ。っていうかそれよりも教えて欲しいことがあるの。お願い、協力して!」

 

「…訳ありな様ね」

 

 

 

 

各々がモロに勝つための特訓と修行を開始した。サザンカはヤードラット星へ、ブロリーはメルスと共に精神と時の部屋へ、シロナは自分の考えの元に紫を訪ねていた。

果たして、彼らの望んだ結果はついてくるのだろうか…

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