もしもカカロットが幻想郷に落ちていたら   作:ねっぷう

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第493話 「Struck」

神社の縁側に座って八雲紫に事情を話したシロナ。宇宙でモロという凶悪な脱獄囚が猛威を振るっている事、それに対抗できる術を考えてあるという事。

 

「そんなことがあったの。それで私に見てもらいたいものがあると?」

 

「これなんだけどね」

 

シロナは立ち上がると、紫の目の前でスッとスムーズにファントムシロナへと変身する。ビルスの破壊を受けた影響で子供の姿にまで縮んでしまった体がこの時だけ元に戻り、目の色と髪が紫色に染まり、かつ髪は地面に引きずるほど長くなる。

 

「それは…」

 

「私はファントムって呼んでる。地獄から蘇ったレイムと融合してなれるようになったんだ。それでこの状態だと体の形を変幻自在に変えられるようになるんだけど…」

 

シロナは右腕を鞭のようにしなる刃に変えたり、左腕を水のように柔らかくしたり逆に鉄の如く硬化して見せる。さらに様々な形状に肉体を変形させ、紫はその様子を興味深げに見つめていた。

 

「そして、その変形能力を使って最も戦闘に向いた姿に変身したのがこれ」

 

そこでシロナはさらに体を変形させ、もう1対の腕を両脇の下から生やして4本腕となり、額にももう1対の眼を増殖して4つ目となる。同時に長かった紫色の髪は短くなり、シロナの言う通り手数・視力・身軽さ共により戦闘に特化した姿になった。

 

「なんか…すごいことになってるわね」

 

「ははは…モロにはここまでやっても勝てなかった…だから、今度はヤツにも通用する多彩な技で攻めるしかないと思ってさ。そこで頼みがあるんだけど…」

 

シロナは改まって紫に申し出る。

 

「紫なら、前に幻想郷で暮らしていたみんなや妖怪たちの居場所をわかってると思ったんだ。私のファントムなら手本とコツさえ分かれば変幻自在な体を駆使していろんな能力を再現できるから」

 

「…なるほど」

 

「勇儀とか魔理沙とか、付き合いの長い人の能力なら覚えてて使えるんだけど…あまり関わりのなかった人の能力はこの目で見ないと覚えられない。だからお願い、私にみんなのいる場所を教えて!」

 

紫は少し考え、扇子で口元を隠しながら返事をする。

 

「私が思うに、シロナ…そのファントムでモロに勝てなかった理由なんだけど、恐らくは器用過ぎたことが原因じゃないかしら」

 

「器用過ぎた…?」

 

「確かにそのファントムは何でもできることが強みなのかもしれない。でも、もっとできることを絞って一極化させた方が、モロには刺さったのかもしれないわよ?」

 

紫はさらに続ける。

 

「『制約と誓約』、『縛り』、あるいは『等価交換』…自らに何らかのルールを設けたり不利な条件を課すことで別の能力を向上させる事よ。例えば…霊夢が考案したスペルカードルール、あれは技に名前を設定しわざわざ相手に符を提示するという本来の決闘であれば不要な流れを組み込むことにより、より決闘としての強力な束縛性や契約性を与えているの」

 

「ああ!技の名前をあえて叫ぶことで威力を底上げする…みたいな?」

 

「まあそんな感じね。戦いにおいて不利と成り得る、大声を出したり技や能力の説明をすることで、その分威力を底上げする。霊夢やカカロットも無意識のうちに行っていたテクニックよ」

 

「確かに、言われてみれば…」

 

「何を封じ、何を引き出すのか…色々試してみるのもいいかもしれないわね」

 

「じゃあ私だったら…」

 

紫からヒントを貰ったシロナは、さっそく制約や縛りを試し、一番バランスのいい塩梅を模索する。紫はそんなシロナに付き添い、感慨深げに微笑んだ。

 

 

 


 

 

 

「この星の精神と時の部屋は入っていられるのは外の時間で2日、中の時間で2年が限度。それを超えると出入口が消えてしまう」

 

ブロリーとメルスは、平然と会話しながら激しい組み手を行っていた。ブロリーが全力で攻撃を仕掛け、メルスはそれを止めたり受け流して無効化する。

外の世界であれば地表を容易く抉るほどの威力を持つであろう拳を正面から放たれようとも不思議な気の流れによって逸らし、逆にブロリーを投げ飛ばす。

 

「ですから、ブロリーさんにはこの中でひたすらに地力を高めてもらいます。2年が経った後は外に出て、ある場所へ案内しますのでそこで続きを行います」

 

メルスの動きは全く気が読めず、まるでその身体が勝手に動いているかのように的確な反応を見せる。

 

「ハァ…!それよりもメルス…お前のその動き…」

 

「…これは私が元々備える能力、とでも言いましょうか。しかし、ブロリーさんはこれを手本にはしないでください」

 

ブロリーはまたもメルスへ襲い掛かり、細かな気弾を連射しつつ背後へ回り、背中へ鋭い突きを繰り出す。

が、メルスは気弾を避けながらブロリーの足を払い、バランスを崩した彼を蹴り飛ばした。

 

「力でもって力を制する剛の戦いを主とするブロリーさんの戦闘スタイルには合いません。それよりも、むしろこの動きをする私へまともな一撃を加えられることを目標としてください」

 

「…なるほど」

 

受け身を取ったブロリーは膝をついて起き上がりながら口元を拭い、そう呟く。

そして、スッと立つと同時に全身から青い闘気を噴き出し、超サイヤ人ブルーへと変身した。

 

「では俺も本気でやろう。よろしくな」

 

「ええ、お願いします」

 

(もう俺はひとりではない…守るべきものが増えた。だからモロは絶対に倒す…そのためならなんだってやってやる!)

 

 

 


 

 

 

「逃がすな!捕らえてモロ様へ献上するのだ!」

 

モロが乗っているサガンボの宇宙船は、とある惑星の大気圏内ギリギリのところで停止していた。いつも通り、サガンボらが金品や宝を奪おうと星へ近づいたのだが、そのタイミングで予期せぬ敵襲が起こった。

不意を衝くように現れたその敵は星へ降り立とうする宇宙船を襲撃し、撃退しようと現れた囚人たち数名を瞬く間に惨殺したのである。

 

「この程度か?もっとオレに力を見せてみろ」

 

そう低くも威厳ある声を発する主を、我々は知っている。しなる尻尾、上半身の胸部や肩を覆う白い外殻。そう、クウラだ。

クウラはサガンボの号令によって襲い掛かってくる囚人の頭を掴んで動きを止め、それを鈍器のように振り回して他の囚人を殴りつけぶっ飛ばす。

 

「クククッ、銀河刑務所から囚人どもが解放されたとは聞いていたが…なんともな」

 

そのままクウラは迫ってくる囚人を次々と撃破してゆく。その様子にしびれを切らしたサガンボが甲板上から身を乗り出し、一直線に飛び降りる。

 

「…!」

 

一際強力な戦闘力を察知したクウラがそちらへ向き直り、ズタボロになった囚人を放り捨てると好戦的な笑みを浮かべて迎え撃つ。

クウラは腕でパンチを受け止め、反撃のアッパーを放つがサガンボに避けられ、さらに腹へ膝蹴りをめり込ませられる。

 

「ゴ…!」

(こいつ…思ったよりも…!)

 

さっきまで戦っていた囚人どもがただの犯罪者にしては不釣り合いな力を持っている事を疑問には思っていたが、このサガンボの力は規格外だとクウラは思った。

鳩尾に一撃を喰らい動きの止まったクウラの顔面にサガンボの渾身の拳がヒットする。さらに一発、もう一発。衝撃波を発生させるほどの重い一撃がクウラに炸裂した。

クウラは顔面を血に染めながら力無く吹っ飛ばされる。だが、その勢いを利用して惑星の地表へ向けて全速力で降下していく。

 

「…!アイツ…逃げるつもりか!」

 

サガンボはクウラを追おうとするが…

 

『待て』

 

モロはテレパシーを使ってサガンボを呼び止めた。

 

「モロ様!」

 

『シモレッカが今のヤツの物と思われる宇宙船を発見したぞ。他の囚人どもにあの星は任せて、お前は戻ってこい』

 

「分かりました」

 

「サガンボ!」

 

その時、サガンボの元へふたりの囚人がやってくる。太った大柄な体躯を持つユンバと、美しい容姿を持つ男ユズンという者だった。

 

「俺らがあの星で暴れてくる」

 

「分かった。気を付けろよ」

 

サガンボはユンバらと入れ替わる形で宇宙船へ戻った。甲板上には一隻の宇宙ポッドが置いてあり、これが恐らく先ほどの襲撃者、クウラが乗っていたものだろう。

 

「こりゃ…フリーザ軍の小型ポッドだよな」

 

「じゃあアイツ、まさかフリーザ軍の残党とかか?」

 

「セブンスリー、このポッドの履歴を解析しろ」

 

「わかった」

 

セブンスリーはポッドに手を置き、手の平から微細なコードと端子を伸ばし、それを差し込んで中身のデータを探る。しばらくそうしていたが、セブンスリーは手を放す。

 

「どうだ?」

 

「情報や履歴と呼べるものは何も残されていない」

 

「何だと?そんなことが…」

 

「だがひとつだけ、ある惑星系のある地点がピン留めされていた。『地球』という星だ」

 

クウラは自身の宇宙船に、いずれブロリーを打倒するために向かう場所として地球を設定していた。

 

「地球?」

 

と、そこへモロがやってきた。モロはどうやら地球という単語に心当たりがある様子。

 

「あそこは原始的で無価値な星だったはずだが…さっきのヤツがわざわざ向かおうとしていた星ならば、それに見合う何かがある星なのだろうな」

 

「いかがいたしましょう、モロ様」

 

「偵察を送れ。良質な星だとわかればオレが直接喰いに行ってやる」

 

モロの一声により、直ちに地球へ向けて偵察部隊が送られることとなった。メンバーはシモレッカとセブンスリー…両者ともサガンボ銀河強盗団の古い構成員であり、元々強力だった戦闘力がモロによって強化されている。

ついにモロの飽くなき食欲が地球へと向けられてしまった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「気がついた?」

 

頭の上で声を聴き、目を覚ます。

クウラはパッと目を開け、声の主を睨みつけた。

 

「よかった。山に倒れていましたよ」

 

状況を思い出す。自分は力試しのためにならず者へ勝負を挑んだつもりが返り討ちに遭い、最寄りの星へ墜落したのだろう。

そして、この星は…

 

クウラを介抱していたと思われる人間は、衣類を纏わず、毛皮も持たず、白と紫色を基調とした皮膚と長細い尻尾を持っていた。

その特徴は、まるでクウラ自身やその父のコルド、弟のフリーザの特徴とよく似ていた。

 

(…そういうことか。この星はまさか…)

 

クウラたち一族の、正確にはコルドが生まれたであろう惑星なのだと気が付いた。

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