もしもカカロットが幻想郷に落ちていたら   作:ねっぷう

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遅くなりました…


第494話 「Luminous」

(なるほどな…やはりここはオレや親父の一族の生まれ故郷と見るべきだな)

 

目覚めてから数時間の時を、周囲の景色を眺めながら過ごしたクウラはそう結論付けた。

この星は見渡す限りが永久凍土に覆われた極寒の惑星。その環境に適応した種族や巨大な動物が生息しており、自身のルーツはこの星の種族にあるだろうということも分かった。

 

ここはこの星の人間の集落のひとつで、巨大な氷山の内側をくり抜いて出来ている。凍土ではあるが日は射しており、内部は明るい。

目の前では、外で狩猟したのであろう巨大な動物の肉を運搬する人々や、恐竜と牛が合わさったような外見の家畜を連れる人々が往来しており、やはりその人々すべてが多少の個人差はあれどクウラやフリーザに似通った姿をしており、男女の区別は存在しないようだ。

 

(親父は突然変異だった。この種族…確か自分らで『アイザード人』と名乗っていたか…元々は大した力はないようだ)

 

クウラは驚きこそしたが、特に感慨に浸ることも無く平和に暮らす同族たちを見てつまらなさそうに鼻を鳴らした。

 

「貴方はどこから来たのですか?」

 

そこで話しかけてきたのは最初にクウラを助けたアイザード人…名前はカルトといったか。

 

「さぁな」

 

「でも、あんな場所へ倒れているなんてただ事ではありませんよね?」

 

「勝手に想像しろ」

 

その時、クウラの腹がグウと鳴った。クウラは無反応で無愛想なままだったが、カルトはそれを聞いて小さく笑った。

 

「意地を張らず、あの中へお越しください。食事を用意していますよ」

 

クウラはまあ別にいいか、と思いカルトの後をついてくる。

やがて、目の前に氷山に埋まるようにして崩壊したと思われる巨大な城跡が現れた。クウラは案内されるまま、ゆっくりと開かれた扉の奥へ足を踏み入れる。

 

ジャキッ

 

「…くくく、まあそういうことだろうとは思ったがな」

 

中に入り、暗がりの中に潜んでいたアイザード人たちが槍や剣を手に、それを一斉にクウラへと突き付けてきた。だが、武器を向けている彼らの方が恐怖の入り混じった複雑な表情を浮かべていた。

 

「我々は同じ失敗を繰り返さない。二度と邪悪なる存在をこの星から宇宙へ解き放つわけにはいかんのだ」

 

「大方、貴様も他の里で迫害されてここへ辿り着いたのだろう。同情はするが、この里は完全に異端なる者を無に帰すことにしている」

 

どうやら、彼らは何故かクウラを恐れ、、打倒しようとしている。

 

「コルド大王のように、か?」

 

そしてクウラがそう返すと、彼らの表情がさらに強張る。

その通り、彼らはかつて生まれた邪悪な突然変異として生まれたコルドを宇宙へ排出してしまった事をアイザード人という民族全体で悔やみ、戒めとしている。だから人並み以上の力を持ったり、何かに突出した能力を持つ異端者は全て抹殺する規則が出来ているのだ。

 

「やれるものならやってみるがいい。貴様らの力を…オレに魅せてくれるんだろ?」

 

クウラは一番近くに迫っていた槍の矛先を指で摘み、バキンと砕く。

その音を合図に、無数の刃がクウラを串刺しにすべく襲い掛かる。

 

「くははっ!」

 

一身へ向けられる殺意を前にして、クウラは笑った。直後、己の尻尾を超高速で振るい、周囲を薙ぎ払う。クウラの尻尾が届く範囲にいた者たちはその尾の一振りで頭部を跡形もなく消し飛ばれ、即死し後ろへ倒れ込む。

後方にいた者は、血を噴き出しながら臥していく仲間を前にしても何が起こったのか理解する間もなく、目の前に迫ったクウラの不敵な笑みだけが目に映される。クウラはその者の胸に手を当てると、手の平から斬撃を放ち、肉体を三枚おろしに断ち切った。

 

ザンッ

 

「ぐおおっ」

 

周囲の者たちも同時に放たれた乱れる斬撃によって全身を両断され、その場に転がった。

 

「なんだ…あの力は…!」

 

幸いというべきなのか、アイザード人は体が切断された程度では簡単に死なない生命力を持っている。とはいえ、容易く何の躊躇いもなくそれを実行したクウラに対し、彼らは恐れを抱くほかなかった。

圧倒的な自己。まさにクウラを評するのに相応しい言葉であろう。

 

「どうした?その程度で死なないことは外ならぬオレがよくわかっている。はやくかかってこい…でなければ今度こそ完全に死ぬぞ?」

 

クウラはまだやる気のようだ。そのクウラを殺すつもりで襲い掛かったはずの彼らも完全に怖じ気づいてしまい、起き上がって立ち向かおうという者はいなかった。

 

「…つまらんな。…ん?」

 

その時、クウラは何らかの気配に気づき、外へ通じる扉の方へ目を向ける。

扉の向こう側からガヤガヤした声と悲鳴が響き、やがてそれはどんどんこちらへ近づき…ついに扉が強引に開け放たれた。

 

「おーおー、カス共が集まってるじゃねぇか」

 

外で戦ったのであろう、既に意識を失っているアイザード人を放り投げ、骨のついた肉塊を齧りながら現れたのは、モロの手下であるサガンボ銀河強盗団のユンバとユズンであった。

 

「な、なんだお前らは!」

 

そう問われると、ユズンはにやにや笑いながら口を開く。

 

「お取込み中失礼。ふふふ…寒いけどエネルギーに溢れた素晴らしい星ね。モロ様に献上しやすいように、少し静かになってもらおうかしら」

 

カルトを含めた重傷を負っていないアイザード人たちは聞き捨てならないユズンの言葉を聞き、とりあえずクウラを後回しにするかのように真横を通り抜け、ユズンらの周囲を取り囲う。

 

「直ちにこの星から立ち去りなさい!貴方達のような邪悪な者は足を踏みこむことすら許されません!」

 

「…この星は寒くて腹減るからイライラすんだよ…死にやがれよコラァ!」

 

が、ユンバはそう怒号を上げると、巨体とパワーを活かしたタックルでカルトを押し倒し、大ぶりな拳を叩きつける。カルトらこの星の種族とユンバ、ユズンの大乱闘がすぐさま激化し、一帯が激しい爆発に巻き込まれる。

しかしモロから力を分け与えられたユズンらに、カルトらは全く太刀打ちすることが出来ず、ものの数十秒で全員が地面へ叩き伏せられた。中には強引に力を叩きつけられたため拉げた姿になった者もおり、重傷を負いながらも種族自体の生命力の高さにより死んではいない。

 

「呆気ねぇな、まあこんなもんか」

 

「そんなことよりも、ちゃっちゃとお宝を探してこんな寒い星は早いところモロ様に食べて戴きましょうよ」

 

ユズンとユンバはそう言いながら乱雑に捨てられたアイザード人を踏みつけながら部屋の奥の方へと歩いてゆく。

 

「く、くそ…」

 

が、ダメージを受けたもののまだ立ち上がることが出来たカルトだけが起き上がり、ユンバらの背後へ近付いていく。

 

「何故私たちは普通に生きられないんだ…どうしていつもお前たちのような者に暮らしを台無しにされてしまうのか…!」

 

そして、拾い上げた槍を構えてユンバの背中を串刺しにしようと襲い掛かった。

しかし、とっくにそれに気付いていたユズンがカルトを蹴り飛ばす。地面へ倒れ込んだカルトは再び起き上がり、もう一度槍を突き出すも、今度はユンバに掴んで止められ、顔面へ強烈なパンチを叩き込まれた。

 

「ぐふ…うっ!」

 

バキッと鈍い音が響き、鼻や口を潰されたカルトはまたしても地面を転がり、顔から流れる血に塗れた。

 

「何故かですって?そんなものは…」

 

さらにユズンはそう言いながらカルトが取り落とした槍を拾い、それを投げ飛ばしてカルトに突き刺し、地面へ縫い留めた。

 

「ぎゃああっ!」

 

「みんな、生きるのに必死だからに決まってるじゃない。生きていくのに奪うことが一番簡単だと気付いたら、もうそうやっていくしかないものねぇ」

 

ユズンの全く悪びれないその言葉を聞いたカルトは、血に塗れる顔を悔しさに歪め、その場で唸り声をあげる。泣きたいのに、鼻と口が上手く動かないため声を発せられないのだ。

 

(悔しい…!一体、どうすれば…私たちの罪を贖うことができるの…)

 

だがその時、カルトの顔のすぐ横に、誰かが足を置いた。

 

「貴様らは何故そこまで弱い。泣く暇があるなら石を投げろ、唾を吐け。弱い者が己の理を貫き通せるわけがなかろう」

 

クウラはカルトの横を通り過ぎ、ユズンとユンバの目の前で仁王立ちする。ふたりは明らかに戦う気満々のクウラを見ても、その実力はモロによって力を与えられた自分たちには及ばないであろうことを見抜き、余裕のあるニヤつきを浮かべたままだ。

 

「おいおい、オレらとやろうってのか?」

 

「いいけど、アンタにはふたつの未来しかないわ。ここで死ぬか、モロ様に喰われるか」

 

が、クウラも不敵な笑みを崩さない。

 

「くくくっ、他人を威を借ることしかできんのか。いいだろう…貴様らには死の未来しかないがな」

 

そう言いながら構えたクウラは、次の瞬間にユンバの巨体と激突する。ゴウン、と岩と岩同士がぶつかったようなくぐもった衝突音が響き渡り、両者は反発して後ろへ下がる。

もう一度、地面を蹴り腕と腕をぶつけ、鍔迫り合いが起こる。が、その最中にユズンがクウラの背後へ気配なく忍び寄り、頭部を横から蹴り付けた。

 

「!」

 

吹っ飛ぶクウラの尻尾を掴んだユンバはクウラの体を振り上げ、遠心力と勢いのままに床に叩きつけた。石材が割れて捲れ上がり、地面が揺れる。

 

「ねぇちょっと!ここが崩れたらどうするつもり!?」

 

「ん?ああ、ワリィ…」

 

クウラはその隙に後ろへ飛んで距離を取り、口元の血を拭って払う。

 

「ふふふ…なるほど、確かにそれほどの力を持たされれば威張りたくなるのも頷ける」

 

「あぁ?なんだか余裕ありって感じだが、これから殺されるのを分かってるのか?」

 

「…まさか」

 

しかし、ユズンだけが何らかの勘によるものなのか、何か異変を感じ取っていた。

その直後、空気が変わった。ユンバとユズンの顔色も変わる。まるで周囲に鋭い糸が張り巡らされ、それに触れるとたちまちに切り裂かれてしまうかのような…身動ぎひとつできないほどの威圧感がクウラから発せられる。

 

「ふんッ」

 

クウラの肉体がめりめりと膨れ上がり、巨大化する。頭部がせり出し、肩や肘の白い甲殻が伸びて全体的に刺々しい様相へと変貌していった。

 

「さぁ、終わりにしようか」

 

ザンッ

 

「…な」

 

その時、ユズンの頭上スレスレのところを見えない何かが高速で通過していった。ユズン自身は勘が働き咄嗟にかがんでそれを回避したが、背後にあった柱が真っ二つに切断され、音を立てて倒れこんだことを見るまでもなく察知し、彼の顔が一気に青ざめ汗が流れる。

 

「くくくっ、実るほど何とやらだな…よほど頭が軽いと見える」

 

ユズンはクウラのその言葉を聞き、恐る恐る目線をずらし、横を見る。

 

「ユ…ユンバ!!」

 

そこには頭部を横一閃に切断されたユンバの姿があった。既に事切れているその体はゆっくり前後に揺れ、後ろに倒れて血だまりを作る。

 

「お、おのれッ!!バアッ!!」

 

ユズンは一気に決着をつけるため、温存していた変身を遂げる。ごつごつとした肌の爬虫類然とした大柄な体格と顔つきになり、その戦闘力も大幅に増す。

が…

 

キンッ

 

「な!?」

 

再びクウラの方から斬撃が飛び、ユズンは間一髪横へ飛んでそれを避けた。

 

「ほう、ザーボンと同じ種族だったか、勘がいいな」

 

「何すん───」

 

キン キンッ

 

変身し、戦闘力と共に身体機能も上昇したユズンは、連続して放たれる無数の斬撃を何とか避け続けることができているが…

 

「ほれ、頑張れ頑張れ。死ぬ気で避けないと死ぬぞ」

 

それでも多少は体を掠めており、まともに喰らうのも時間の問題。それに気が付いたクウラは落胆したように眉を顰め、斬撃を止める。

 

「…つまらんな。だが、まあいい…冥土への土産にいいものを見せてやろう。本物の『力』というものだ」

 

ここからは、ユズンと…そして意識のあったカルトらアイザード人数名が見たままの光景を語るしかない。

先ほど、一度変身したはずのクウラに、再び変化が起きる。体表がピシピシとひび割れ、その内側から黄金の光が漏れ出たかと思えば───瞬く間に全てが白光に包まれた。

これが彼らが最期まで目にしていた光景である。悪であろうが正義であろうが、全てを平等に鏖殺する圧倒的な『力』。

 

 

 

「…ハァ───」

 

氷、過去の遺物、生物…あらゆる物体が熱と光によって消し飛ばされ、一帯が更地となった中心で、クウラは小さくため息を吐いた。姿は元の通常の姿へ戻っており、その目はどこか虚ろで、立ってはいるものの脱力した体は痙攣している。

 

「ただ変身するだけでエネルギーの暴発を抑えきれず一瞬でガス欠…超サイヤ人を真似て金色にしてみたものの、やはり上手くいかないものだな」

 

さて、ここからどうするか。オレが動けるようになるまで何時間かかかるだろうが…奴らの乗ってきた宇宙船があるはずだな。モロとやらはこの星に来るだろうか…いや、地球を知っているならヤツの興味はあっちへ向いているはずだ。だとしたらモロはブロリーとぶつかるな。

 

「…くくくっ、オレは必ずこの力をコントロールして見せる。そしてモロだろうがブロリーだろうが、このオレが宇宙最強だという事を教えてくれる」

 

 

 

 

 

──────

 

───

 

 

「ユンバとユズンが死んだな」

 

「え!?あのふたりがですか…!?」

 

宇宙船の中で、モロとサガンボがそう話した。

 

「どうやら襲ってきたという宇宙人はなかなかの手練れだったらしい」

 

「…どうしますか?ソイツを始末…もとい喰いに戻りますか?」

 

「いやいい。まずは地球だ…それにヤツはすぐに逃げるだろう、戻ったところであるのはただの星だけだ」

 

「…わかりました」

 

その時、宇宙船の上層部から何か爆発のような音が轟いた。

 

「なんだ、一体どうした!?」

 

「それが、さっきのヤツが置いていった小型ポッドが急に…」

 

クウラから奪った一人用のポッドが突然爆発しバラバラになってしまったらしい。恐らく、クウラは遠隔でポッドを破壊したのだろう。そうなるだろうと理解していたモロは不敵に笑うと、これから向かう地球のエネルギーに思いを馳せるのだった…。

 

 

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