「だが2か月も寿命延ばしてやるんだ、条件がある。その間、地球には手を出すんじゃないぞ。ボクはこの星のグルメを堪能したいんでね…邪魔はするなよ」
「ハッ…今のうちに好きなだけ喰っておくがいい、それが最期の晩餐になる。オレが貴様を殺した暁には、地球を喰らうとしようか」
「それ地球のことわざで何て言うか知ってる?捕らぬ狸の皮算用っていうんだよ?」
「フフフ…だがそのセブンスリーだけは連れて行かせてもらうぞ。ソイツが居なければオレも色々と苦労するからな」
ビルスはいまだに動けないセブンスリーをモロへ投げ渡す。足を掴む形で雑に受け取ったモロは開けっ放しだったワープホールへ片足を入れ、ゆっくりとその向こう側へと消えようとする。
「では、2か月後…ここへ来る」
その最中もビルスとモロは目線を合わせたままで、姿が完全に消え失せる瞬間まで互いに目を離すことはなかった。
「2か月後に…ビルスがモロと決闘?」
約数時間後、精神と時の部屋からメルスと共に出てきたブロリーは流石に驚いた様子でそう言った。それもそのはず、自分やサザンカらはモロを倒すために修業を開始した、しかもブロリーは体感時間で2年近くも修業をしたのである。それを自分よりもかなり実力が上であろうビルスが掻っ攫おうとしているのだ、まず混乱と驚きが来る。
「そうらしいのよ。なんかケジメだとか何とか…1000万年前に面倒くさがってモロを放置した分、2か月の時間を与えて強くなったモロを倒したいんだって」
ブルマも泣き止んだジュバンを抱きながらそう言った。
「どうするの?まだ修業…続ける気?」
ブルマの声にはブロリーを心配する色がこもっている。
「…ああ、修業は止めない。お前たちを守るため…万全を期すつもりだ」
───ヤードラット星
「ええ?そうか、そんなことがあったか…しかし、破壊神直々に処刑宣言とは驚きだ」
ハーツは銀河パトロールから渡されていた通信機で、ジャコと話をしていた。地球で何があったのか、そして2か月後にビルスとモロがぶつかるという話を聞かされた。
「サザンカくん!ちょっといいか?」
「ハァ…ハァ…何だ?」
ピバラによる修業…スピリットを磨きながら術の伝授を受けていたサザンカは汗を流して息を切らしながらハーツに返事する。
「実は…」
…
「なるほど…じゃあ2か月後に地球で決戦って事か」
「ああ。だが安心はしないでくれよ、いくらあの破壊神ビルスとはいえ万が一もあり得る…もしもモロが勝つようなことがあれば…」
「当然だ!むしろアイツなんかよりもアタシらがモロをぶちのめす気合で行ってやるよ」
「その意気だ」
「えー!?そんなことがあったのー!?」
シロナもまたブロリーからの連絡を受け、知らずのうちに起こっていたことや今後の事を聞いて驚いた。横には八雲紫もいるが、今いる場所はどうやら大きなデパートの屋上のようだ。
「…うん、わかった…2か月後にね。私もその日に合流するよ」
シロナはそこで電話を切ると、改まって目の前にいる人物と向かい合う。
「じゃあ取引の話の続きをしようか…天弓千亦さん」
天弓千亦と呼ばれた、パッチワークで虹色に構成された衣服に白いマントを羽織った女性は不敵にほほ笑んだ。
「ふぁ~あ…お腹もいっぱいになったし1か月くらい寝ようかな」
「ちょっと!ここで寝ないでよ!」
ビルスは買い込んできた大量の屋台料理やファストフードを喰い漁り、ブルマの自宅の庭でごろりと寝ころんだ。当然、1か月も寝られてはたまらないのでブルマも怒って追い出そうとするが…
「当たり前だろ。今はちょっと微睡んでるだけだ…寝る時は自分の部屋に戻るに決まってる」
「ならいいけど…あ、いけない!さっき洗濯が終わったんだった」
ブルマはそう言いながら洗濯機から洗濯物を取り出そうと家の中に駆け込んでいった。その場に乳母車に乗ったジュバンを残して。
ビルスは静かに目を閉じ、じっと動かなくなる。が、少し離れたところにいるジュバンは何故かずっとビルスの事を眺め、こちらへ手を伸ばしている。
「…なんだ。ボクは見世物じゃない…とっととあっちを向きな」
「あー」
そう言いながら手でしっしっとやって視線を外させようとするも、ジュバンはやたらとビルスに興味があるようで少しも目を離さない。
ジュバンは、ビルスがじっとしているつもりでも無意識に動かしてしまっている細長い尻尾を追うのに夢中だったのだ。そして、ビルスが不意に尻尾を大きく動かしたとき…
「あ」
身を乗り出したジュバンを支えきれず、乳母車が倒れていく。ビルスは咄嗟に腕を伸ばし、ジュバンが地面に落っこちる前に難なくキャッチする。
「おい、危ないじゃないか…」
「きゃっきゃっ」
ジュバンはビルスの手の上で笑い…その小さな手が彼の小指を握っていた。
「ふん…まあ、どの種族の赤ん坊もこんなもんか」
「お待たせー…って、あら」
「…自分の子供から目を離すんじゃないぞ」
戻ってきたブルマは肩に乗ったジュバンに好き放題耳を引っ張られているビルスを見て少し吹き出した。
「なるほど…奴ら、確かに力を増やしてやがるな」
宇宙のどこかで、モロはブロリーやサザンカ、シロナらのパワーを薄々と感じ取っていた。
「あの時逃げたものだと思っていましたが…まだモロ様に楯突く気のようですね。今のうちに殺しに行きますか?」
「奴らは修業中のようだ…ということは、少し待てはより大きなエネルギーを得られるということだ。ククク…面白い展開になってきた、破壊神を下した暁には地球ごと奴らを喰ってやることにした。それまでにこちらも限界まで力を蓄えてから地球へ向かおうじゃないか。もしオレに『限界』なんてものがあればの話ならな」
「は…はは…」
「サガンボ、もっと条件を満たす星を見つけてこい」
「りょ…了解しました」
こうしてモロは地球での決戦までの間、銀河中の惑星を喰い漁っていった。
───2か月後…
ほぼすべての銀河パトロール構成員が地球へ集結していた。様々な種族…小柄な者から大柄な者、皮膚の色から頭部の形状までそれぞれ異なる容姿を持つ者たち。しかし、彼らの目的は一致していた。
モロを無力化し、その猛威を今日この時をもって終わらせること。
「しかし…モロは破壊神が相手取るんだろ?だったら我々の出番はないんじゃ…」
「…ジャコ、お前バカか?俺たちの仕事は破壊神と一緒にモロを倒すことじゃない。ヤツが引き連れてくるであろうサガンボ銀河強盗団を一人残らず捕まえることなんだ。これは銀河パトロールがやらなければならないことだ…他人に任せることはできない」
「あ、ああ、もちろん分かっていたさ。ということだお前ら!気を抜くんじゃないぞ!」
さらに銀河パトロールらと共に集まっていたのは、この日のために2か月間腕を磨いてきた地球の戦士たち。
紅美鈴、豹牙天龍、ミスター・サタン。
「悪いなお前ら…うちの
スカッシュが少し申し訳なさそうにそう言った。
「あはは…気合はそれくらいあった方がいいってことでしょう」
美鈴は気にしない様子。
「宇宙の犯罪者か…しかも親玉のモロとやらに強くされてるんだったな。俺の腕がどこまで通じるか試せる機会だ」
天龍も修業は怠っておらず、まだまだ自身の伸びしろを信じている。
「荒事は任せてもらおう。ひとりでのトレーニングは飽きてきたところだ」
サタンも世界チャンピオンになるべく修練は続けており、記憶兵器の扱いも鈍ってはいないだろう。
「…来たぜ!」
青く澄んだ空の彼方から無数の小さな光がやって来る。そして、それらは急激に方向を変え、それぞれが別の方角へと飛び去って行く。
「まさか…!地球を攻撃する前に各地の財宝を強奪するつもりだ!」」
「散らばった囚人どもを倒しに行きましょう!」
早速、美鈴がひとつの偵察艇を追っていく。天龍やサタンもそれに倣って偵察艇を追って各地へ散る。
「チームに分かれて地球の戦士のサポートに回れ!後方から支援するんだ!」
集まっていた銀河パトロールもすぐに連携して宇宙船へ乗り込み、偵察艇を追っていく。その中でスカッシュはある一隻の偵察艇を目で追っており、それが飛んで行った方角へ単身向かうのだった…。
「いよいよ来たようですね」
ピッコロは地球へ接近してくるモロの気配を感じ取り、そう言った。神殿には付き人のポポの他にナメック星人の生き残りのエスカと模範囚だったレモ。そしてジュバンを連れて避難してきたブルマと、各々の修業を終えてきたブロリー、シロナ、サザンカ、ハーツらが揃っていた。
「もしもビルスが負けた場合…俺たちがモロを倒せるのはその直後だ」
「ああ…手は打ってある。アタシら全員の手が必要だ」
「…うん」
誰も、ビルスの敗北を悟っているわけではない。むしろ、ビルスがモロに勝利する想像しか抱いていないだろう。だが、最初に決めた自分たちの役目を降りるつもりは毛頭ない、ただそれだけだった。
シュン…
と、この神殿へビルスとウイス、そして界王神シンが瞬間移動で現れる。
ピリ…
「!!?」
その瞬間、神殿一帯を凄まじい緊張感とプレッシャーが覆いつくした。
(なんだ!?これがビルスの本気か…!?)
(気は全く感じないのにとんでもない圧力だけは降りかかってくるぜ…!)
(まるで全身に刃物を押し当てられているような緊張…!!)
この場に現れたビルスは以前会った時とは全く別物といえるほどの威圧感を身に纏っており、表情もいつものにやけた顔ではなく目を吊り上げ口を引き結んだ真剣そのものといえる。
付き人のウイスでさえもおっとりした朗らかな態度は鳴りを潜め、ビルスと同様に来る敵を見据えているかのようだ。また界王神も、宇宙の命運をかけた決戦に際し、破壊神と対をなす存在として神妙な面持ちだった。
ブロリーたちはその神々が本来もつ威厳ある様相に圧倒され、目の前をゆっくりと歩いて通り過ぎてゆくビルスを前に言葉を発することすらできない。
「あうー」
だが、ブルマの抱いていたジュバンだけは無垢な表情と仕草でビルスに向かって手を伸ばした。
「こら…」
ブルマがそう言って叱り、ブロリーも危険を感じて思わず立ち上がるも、ビルスはその場で立ち止まり、ギロリとブルマとジュバンを睨んだ。
「おい!アタシらのことは気にすんなよ!無駄な努力だったな、で終わらせてくれ!」
が、咄嗟にサザンカがそう言うと、察したシロナが続けて口を開く。
「勝ってよ、破壊神サマ!」
「おほほほ、言われてますよビルス様」
「…ああ、とんだ間抜けな連中だな…」
ビルスは少しだけいつものにやけ面に戻ってそう言うと、空の果てを見上げる。
そして次の瞬間、フッ…と僅かな風だけをその場へ残して消えた。
「…ククッ、いよいよだな」
地球へ向かって航行中のサガンボの宇宙船。その中で、モロは玉座にふんぞり返りながらビルスの覇気を察知し小さく呟いた。
「はい。これから地球に着陸します」
「その必要は無い。なあサガンボ…お前が行ってこい。あの破壊神に教えてこい、この宇宙で最も強いのは誰なのかをな」
次の瞬間、モロは指先から魔力を放ち、サガンボに命中させた。
「お、おお、おお…!!ががが…!!」
するとサガンボに肉体がボンと膨れ上がり、衣服を突き破ってはち切れんばかりの筋肉が露わになる。同時に凄まじい量の気がその全身を駆け巡る。
「オレの力をもっと分け与えた。それでオレの役に立ってこい」
「…はい…!モロ様…!!」
サガンボは白目を剥き、正気ではない様子だったがそう返事をし、宇宙船のガラスを突き破って飛び立っていった。
「いたぞ、いたぞおおおおお!!モロ様にケンカを売ったのは…お前だなぁぁああ!!?」
サガンボの視界の先にビルスの姿が映る。忠誠を誓った偉大なモロにケンカを売った者を、それが誰であろうとサガンボは許すつもりはない。肉体が崩壊してしまう程のパワーを与えられてもなお、根は義理堅い性格のサガンボは尽くそうと身を奮い立たせる。
「ア゜」
が、真正面からビルスの破壊の力を浴び、一瞬にして消滅。
「!!」
当然、モロはサガンボを戦力として頼ることなどしていない。ただの戯れとしてもうじき不要となるサガンボを利用し、弄ぶために放った。が、当然察知する…サガンボの消滅を。
と同時に、宇宙船を貫通する小さな影。
「よお、久しぶり!!」
ビルスは宇宙船を木っ端みじんに破壊し、モロの顔面を掴んだまま宇宙空間を光速に匹敵する速度で飛行しUターン、そのまま一直線に進んでゆく。文字通り身を焼くほどの摩擦熱に晒され、かつ口を押さえ込まれる形で身動きの取れないモロはビルスの腕を掴むことしかできない。
その向かう先には…ブロリーの体に残されていたベビーの卵が究極ドラゴンボールに願い、復活させた惑星プラントが有った。
ドオオオォォォ…ン…
惑星プラントの大地へ叩きつけられたモロは超巨大なクレーターの中心で仰向けに倒れこんでいた。
「…やれやれ、とんだご挨拶だな」
上体を起こしながらそう呟くモロに対し、ビルスはクレーターの淵から見下ろしてくる。それは現在の決戦開始直後における戦況を表しているようだった。
“星喰い”モロ
vs
“破壊神”ビルス
FIGHT!!