もしもカカロットが幻想郷に落ちていたら   作:ねっぷう

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第499話 「Incarnation」

猛攻を受け続けているビルスだったが、その身体に変化が起こる。攻撃を喰らうたびに、その箇所から紫色の炎のようなオーラが滲みだしている。モロはそれに気が付くことなく、夢中で次々と殴打をヒットさせる。

 

「どうした!?さっきみたいな大口をまた叩いてみろよ」

 

そして、最後に渾身の力で蹴りを浴びせる。吹っ飛んだビルスは地面を滑り、倒れ込んだ。

 

「ハァ…ハァ…!!」

 

ビルスは息を切らしながら立ち上がり、わなわなと震える。

 

「はっはっはっは!悔しいのか?破壊神ともあろう者が…情けないな」

 

モロはゆっくりと歩み寄りながら挑発の言葉を投げる。が、ビルスは震える両手を握りしめ、痛みと怒りを受け入れるかのように歯を噛み締めながら笑う。

 

「言ってろ。今のボクは…闘争心を燃やせば燃やすほど…強くなるんだよ」

 

「…何だと?いい加減に、恐怖に怯えろよ」

 

散々攻撃を受け続けたビルスの発言に苛立ちを覚えたモロはそう呟くと、一気に前進しビルスの腹へ膝蹴りを叩きこむ。

 

「ぐお…!」

 

それは完全にビルスの体の芯を捉えていたが、ビルスは口の端から血を流しながらも好戦的な笑みを崩さない。そしてモロの足を掴むと強力な踏ん張りを発揮し思い切りモロを地面へ押し倒し叩きつけた。

 

「チッ!」

 

流石に見え見えの投げ技に受け身を取るモロ。そして、未だに足を掴まれた状態ながらも魔力で体を浮かせて手の平から気功波を放ち、爆炎がビルスを包み込む。

またも、それは確実にビルスに響いてはいるが…

 

「…!」

 

全身が焼けたような甚大なダメージを受けながらも、ビルスはモロの足を離さない。再度振り上げて地面へ叩きつけて押し付けるとそのまま猛ダッシュし、引き摺りながら途中途中の岩にぶつけていく。

さらにプラントの廃墟の街にまで到達するとビルの壁へ叩きつけ、そこでようやくモロは強引にビルスを引き剥がすことに成功する。

 

「舐めるなよ…!」

 

さらに、細かな気弾を撃ち出しビルスを集中攻撃する。一発一発が凄まじい爆発を起こし、爆風が吹き荒れた。

が、ビルスは爆炎の中からピュンと高速で飛び出してモロへ突撃する。咄嗟に守りの構えを取るモロだが、横を通り過ぎていくビルスとのすれ違い様に脇腹へ鋭い一撃をもらった。

 

「ぎっ…!?」

 

背後へ飛んでいったビルスを追おうと振り返るモロだが、今度はその瞬間に額への一撃を喰らい、思わず眩暈がし後ろへよろめく。

 

ガシッ

 

と、その時、ビルスがモロの肩の黒い体毛を掴んで体を支える。モロは揺らぐ視界を何とかこらえてビルスを見据えるが、その風貌を目にした瞬間思わず身をすくませた。

眼窩上隆起が起きて眉の盛り上がった凶悪な面、かっ開かれた目はギラギラと闘争心に燃え、好戦的な笑みを浮かべる口元からはむき出しの牙と歯茎が。さらに全身から紫色の炎と煙のようなオーラが立ち昇り、その姿はこの世のものとは思えぬほど禍々しかった。

 

 

 

 

 

「なんかビルスのやつ、様子が変じゃないか…?」

 

「ああ…普通じゃないな、もう既にダウンしてもおかしくないダメージを受けてるはずなのに、倒れるどころかどんどん動きが荒々しくなってる」

 

「ウイスさん、あれはいったい!?」

 

サザンカ、ブロリー、シロナが尋常ではないビルスの様子に困惑しつつ、彼の付き人であるウイスへあれが何かを尋ねる。しかし、ウイスは困ったように眉を顰めた。

 

「さあ?知りませんねぇ…何でしょうかアレ…コワ…」

 

「あれ!?」

 

「この2か月間…モロを倒すためにいろいろと模索していたのは貴方たちだけではありません。ビルス様もまた…未知なる進化を遂げたことは間違いないでしょう」

 

 

 

 

 

 

 

(なんだコイツの変化は…!力そのものは劇的に変化したわけではないが…セブンスリーのストック分強くなったオレに差し迫ろうとしている!!)

 

ゴン!

 

ビルスはモロの額へ頭を打ち下ろし、自分の額からも血が流れるのにも構わずに何度も頭突きを放つ。途中でモロはビルスの頭を掴み、押し退けようとするが…

 

ゴオオッ!!

 

ビルスの口からエネルギー砲が飛び出し、モロは吹っ飛ばされて地面を滑りながら受け身を取った。

 

(気迫だけは先ほどまでと別人だ!いや…力そのものも少しずつ増しているな)

 

モロが立ち上がった時には、既にビルスは彼の頭上で身を翻して回し蹴りを放つ構えを取っており、モロは間一髪で顔面に叩きこまれるところだったそれを腕で防いだ。

だが腕はあまりの威力にビリビリと痺れ、鈍い痛みによって動かなくなる。続けて胸へ膝蹴りがヒットするが、モロは何とか耐えて後ろへ飛んで距離を取る。

 

(ならば───)

 

モロは向かってきたビルスの拳を手で止め、放った魔力を操作し巻きつけてその体を拘束し動きを止める。そしてもう片方の腕を伸ばし、ビルスの首の後ろを掴もうとする。

 

 

 

 

 

「セブンスリーのコピー能力も使えるのですか!?」

 

戦いを見守っている界王神がモロの行動を見て驚いた。当然、モロの一味だったセブンスリーの能力もブロリーたちへ共有されており、界王神も知っていた。

セブンスリーは対象の首の後ろを掌で触れることで能力とスペックをコピーでき、今のモロの掌にはセブンスリーと同様の赤い水晶体がはめ込まれていた。

 

(確かにまずい…!もしモロがビルスの力さえも手に入れたら…!)

 

それこそ悪の結末を辿るシナリオの始まりとなってしまうだろう。誰もが最悪の想像を重ねるが…

 

 

 

 

 

ガッ

 

しかし、ビルスは長い尻尾を動かしモロの腕へ巻き付けて防ぎ、そのままグイっと引っ張ってバランスを崩させ、顔面へ踵蹴りを当てる。

 

「ぶ…!」

 

さらに追撃として振り上げた足で勢いよく後頭部目がけて踏み下ろすが、モロも瞬時に後ろへ飛んで回避し、右手に作った魔力の光弾をビルスの胴体に押し付けてさく裂させた。

ボン、と凄まじい衝撃を至近距離から受けたビルスは歯を食いしばりながら吹っ飛び、地面へ倒れこむ。モロはすかざすそれを追い、真上から拳を振り下ろす。

 

ドゴォ!!

 

モロの拳がビルスの顔面を圧し潰し、貫通した衝撃が地面を凹ませ、超巨大なクレーターが出来る。凄まじい地震が発生し、周辺に立ち並んでいた廃墟のビル群が次々と倒壊した。

 

「お前…一体…!」

 

だが、顔面が血に塗れながらも、モロの拳の向こうから覗くビルスの双眼は秘めた闘争心を一切損なわせずギラギラと輝き、それどころかさっきよりもさらに…

 

ドゴゴゴゴ…!!

 

ビルスはそこでようやく、魔力の拘束を強引に解き、反撃による猛連打をモロの腕に浴びせた。無数の拳が間髪入れず叩きこまれ、腕がへし曲がって跳ね除けられると、今度はビルスの拳が鳩尾にめり込んだ。

 

「ごおっ…」

 

吹っ飛ぶモロはつま先を地面へ食い込ませて踏みとどまり、星のエネルギーを操作しビルスの足元から噴出させる。打撃を喰らうのとは訳が異なると思ったのか、ビルスは連続ハンドスプリングで距離を取る。

だが、モロは地面へ腕を突っ込むと、なんとビルスの背後の地中から腕が飛び出し、再びビルスの首筋を掴もうと狙う。セブンスリーがストックしていたピッコロの、ナメック星人の能力である身体の伸縮を使ったのだ。

 

 

 

 

 

 

「まずい!また…」

 

サザンカがモロの行動を見て焦る。

だが、シロナは微かな違和感を感じていた。

 

(いや待って…セブンスリーのストックしておけるコピーは3個だったはず。まずモロ自身のコピー、そしてピッコロの…もうひとつは?空きがあるからビルスを狙っていると考えるのが妥当…)

 

第一、モロとビルスとでは勝利条件が違う。ビルスはモロに勝てばそれで終わりであるが、モロは仮にビルスに勝てたとしてもその後にシロナやブロリーたちが控えている。そのためにビルスのコピーを確保したいのが普通なのだろうが…

 

(でもそれはブラフだったとしたら?モロは既に3個のコピーを持っていて、残るひとつの存在を隠すためだという可能性も…)

 

セブンスリーは地球へ襲来した時点で、ハリネズミ型の異星人が持っていたワープ能力を使っていたらしい。だとしたら、

シロナがそう考えたのも束の間、伸縮したモロの腕はビルスの首筋をしっかりと掴んでしまった。

 

「!!掴まれた…!」

 

(どうなる…!?)

 

 

 

 

 

 

「…!」

 

「甘いよ」

 

が、ビルスは何ともない様子で自身の首に触れたモロの腕を掴み返し、一気に引っ張った。地中を通っていたモロの腕が地上へ飛び出し、ロープのようにピンと張るとモロ自身の体も浮かび上がりビルスの方へ吹っ飛ぶ。

すかさずビルスは蹴りを繰り出すが、モロはそれを腕で防ぎ、両者は再び激しい肉弾戦を展開する。

やはりシロナの思った通り、モロはブラフとしてビルスのコピーを狙っていた。少しでも敵を混乱させ気を削ぐ魂胆だったのだろう。ビルスはそれを見破り、コピーはされないと判断したからだ。

 

ドドッ

 

モロの腹へビルスの連撃が入る。

 

「『破壊』」

 

そして、モロの力を削るための破壊が放たれた。

が…

 

シュウウ…

 

破壊は突如出現した何らかの物体に阻まれ、全てを無に帰すはずのエネルギーを消し去ってしまった。まるで、大きな湖に、破壊という名の絵具を一滴垂らしたところ、それが溶けて広がり薄まってゆくように…

 

「出てこい、『ムルキア』」

 

ビルスは全身に叩きつけられた衝撃により後ろへ吹っ飛ばされる。一体何だと思い顔を上げると、そこにあった光景を見て一瞬硬直する。

 

モロは、取り込んだセブンスリーと、彼がコピーしていたモロ、ピッコロ、ハリネズミ型異星人の力を融合させたうえで超強化を施し生み出した召喚獣『ムルキア』を顕現させた。

それぞれの特徴が歪に露出した、モロの倍近くある巨大な体躯、現在のモロに比肩するほどの圧倒的な戦闘力。

 

「クコココココ…」

 

喉を鳴らしながら迫るムルキアと、その背後で自信有り気にほくそ笑むモロ。

臆することなく挑みかかるビルスであったが、果たして戦いの結末は如何に…




ムルキア…モロの名前の由来を「モロヘイヤ」だと仮定して、エジプトでの呼び名の「ムルーキア」から取りました。

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