もしもカカロットが幻想郷に落ちていたら   作:ねっぷう

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第501話 「Fusion」

「はっはっはァ!やっぱしモロ様に貰った力はスゲェ!どの星で暴れたってだれも止められるヤツはいねぇし、どんなヤツもばんばんぶっ飛ばせる!」

 

サガンボ銀河強盗団が一人、ザウヨギは軽い身のこなしで周囲を縦横無尽に駆け回り、無駄のない拳と蹴りの応酬を仕掛けながら笑った。

参謀としても活躍していたザウヨギは幹部として元々かなり高い戦闘力を有しており、モロの魔力を分け与えられてからも惑星襲撃で常に負けることは無かった。まさに有頂天、まさに絶頂、かつて自分らを捕らえた銀河パトロールでさえも怖くはない。

 

(だが…だが何故、オレの攻撃が一度たりとも当たらねぇんだよ!?)

 

対するは豹牙流拳法師範代こと豹牙天龍。ザウヨギの容赦ない連打を華麗に避け続け、他の銀河パトロール隊員から引き離していく。

 

「このオレをなめるなよ!!」

 

ドウッ

 

ザウヨギは両腕を伸ばし、高出力のエネルギー波を発射する。天龍はその軌道を見切り、真上へ跳躍し躱す…が、それを隙としたザウヨギが天龍の背後に現れ、その背中に手刀を突き立てた。

 

スカッ…

 

(消え…残像!?)

 

あまりの手ごたえのなさに実体のない幻を攻撃したのかと錯覚してしまうが…

 

「違うぞ」

 

ザウヨギの手刀は天龍の脇の下に挟まれていた。天龍は背後からの攻撃を見切り、最小の動作と速度で回避し、それによりザウヨギは一切の手ごたえを感じなかったのだ。

 

ドドドッ!!

 

そして、直後に放たれた天龍の3連撃。それは目で追う事すらできない程自然かつ流麗な動作であり、しかしその貫通力と衝撃に耐えきれず、あえなく戦闘不能となるのだった。

 

「よし…。他のところは大丈夫だろうか?」

 

 

 

 

 

「な、なんなんだよコイツは!」

 

「デカい腕振り回す化け物みたいなオッサンだぜ!?」

 

既に恐れ慄き、逃げ惑うことしか出来ない強盗団を、大きな地響きと共に追い詰めるているのは「ペンチ」の記憶兵器を発動したミスター・サタンだった。彼の両手は自身の身長の倍ほどもある巨大な鋼鉄の手へと変形しており、それを軽々と振り回すための怪力を発揮するサタンは正しく悪魔と呼ぶに相応しい戦いぶりで、サガンボの手下たちは既に戦意を失っていた。

 

「ひえええ!た、助けてくれ銀河パトロールゥゥ!!」

 

彼らは恐れのあまり自分らを追っているはずの銀河パトロール隊員に助けを求め、自ら捕まりに行く始末だった。

 

「なんだなんだ、このチャンピオンである俺を超えてくれる輩はいないのかね?…ム!」

 

呆れながらそう言葉を零したサタンであったが、直後に上空から強いエネルギーを感じて反応する。

 

ヒュウウウ… ズドォン!!

 

降ってきたのは超重厚な金属で構成された寸胴のロボットのような異星人。見た目通り、いやそれ以上の重量を誇る物体が地面へ激突した衝撃で地面が大きく陥没し、サタンや銀河パトロールたちは宙へ跳ね上げられる。

 

「アイツは…!サガンボ銀河強盗団の『ビックラ・コイター』です!」

 

「全身が金属のような素材でできたメタルマンという種族ですよ!」

 

その厄介さを身を持って体験している隊員の言葉を受け、サタンは一気に叩きのめそうと巨大な手を振り上げる。

そしてコイターへ向かって飛び掛かり、思い切り横薙ぎのビンタを繰り出した。

 

ガッ ゴィイィ…ン

 

しかし、巨大な手による渾身の殴打を受けてもコイターはビクともせず、鐘を叩いたような轟音が響き渡った。

 

「ポポポポポ」

 

サタンを嘲笑うかのように電子音を発するコイター。その直後、コイターは反撃の拳を振り下ろし、サタンは間一髪それを腕でガードした。

 

(なんという硬さ…!!しかもこのパワー、尋常ではないな)

 

メタルマンという種族が持つ肉体の頑強さ、そして重さ。それらにより如何な攻撃も通さない鉄壁の要塞が如き防御力。それは記憶兵器たるサタンの腕をもってしても突破することは、断じて不可能。

 

「と、君は思っていていただこう」

 

「…?」

 

サタンは記憶兵器を解除し生身の腕に戻すと、再びコイターへ攻撃を仕掛ける。

生身の腕。それでコイターの胴体を叩き…

 

ポキン

 

「シュポ…!?」

 

パキン ペキン ガシャアア

 

その後はものの一瞬の出来事だった。サタンは目にも止まらぬ滑らかな動作で、コイターの体をテキパキと“分解”したのだった。

瞬く間に腕、脚のパーツを外され駆動させることができなくなったコイターはガクリとその場に崩れ落ち、何が何だかわからないまま戦闘不能に陥いる。

 

「私は記憶兵器だ。お前が機械パーツを体に持ち、自分で駆動できる存在である時点で記憶兵器には勝てない」

 

かつて人造人間を破壊するために作り出された記憶兵器。工具を模した武器に変形させた肉体による破壊力以外にも、彼らには人造人間の体の構造を熟知している記憶が刷り込まれている。

よって、記憶兵器は基本的に各部品が組み合わさり駆動するモノを分解することが出来、それは特に何でもない当り前の技能として備わっているのである。

 

「さて、あとは専門の方々に任せるとしよう」

 

「シュ…ポォ…」

 

 

 

 

 

 

ドゴッ

 

「いっ…!」

 

「く、クソッタレ…」

 

「ナメやがって…!」

 

一方、華人小娘こと紅美鈴はサガンボ銀河強盗団のミザ、イワザ、キカザら3人を相手取りながらも優勢を維持していた。

 

「どうしました?まだ終わりじゃないですよね?それとも、もう大人しく刑務所へ戻る気になりましたか?」

 

美鈴は片手の指だけで手招きし挑発しながらそう言った。

 

「ふざけんじゃねぇ…!誰があんなトコロに戻るかよ!」

 

ミザたちは激昂し、再度美鈴へ襲い掛かる。3人がそれぞれ息の合った連携で同時攻撃を仕掛けるが、美鈴は足で地面を踏み抜いて気の衝撃波を発生させ、それで3人を吹き飛ばし、空中で身動きの取れなくなったところを順番に一撃を加えていく。

 

「『発勁』!」

 

打撃箇所から内部を貫通する衝撃を生み出す拳法の技である発勁を胴へ食らわせられ、ミザたちは想像を絶する苦しみにその場で蹲り、胃液を吐き出す。

 

「ぐ…えええっ…!」

 

「まだやりますか?」

 

冷酷にそう口に出す美鈴を、ミザは苦しみながら見上げることしかできなかった。

だが、そこへ別の何者かが歩み寄り、その足音に気付いたミザはそちらへ目を向ける。

 

「ありがとな、美鈴。あとはアタイに任せな」

 

スカッシュが現れ、銀河パトロールの手錠を手にミザの背後へ近寄っていく。

 

「あ…ス、スカッシュ…!」

 

ミザたちはスカッシュの事を知っている様子だが、何かやんごとなき事情がありそうな様子。美鈴もそれについて探るようなことはせず、手錠をはめられていくミザたちを見つめている。

 

「もう終わりだ。お前ら、もう一度刑務所へ戻って一からやり直せ」

 

スカッシュはもともとかつての自分たちの子分達にそう諭すが、当のミザ達はわなわなと怒りに顔を歪ませ、身動きが取れないながらも大声で怒鳴り上げる。

 

「ふざけんじゃねぇよ!!誰のせいでアタシらがこうなってると思ってんだ!」

 

その言葉に、スカッシュの手が止まる。

 

「そうだ!姉御があの時コルド軍に入ったりしなけりゃ…私らは銀河パトロールに捕まることも無かったんだ…!」

 

「アンタがいなくなってから全てがおかしくなったのよ!」

 

イワザとキカザも口々にスカッシュに暴言を吐く。

スカッシュは反論することも出来なかった。昔、故郷のメタモル星を追放されたスカッシュは宇宙を放浪し、そこで出会ったミザたちを手下に加え盗賊を生業とするようになった。

だがその悪評を聞きつけたコルド大王がスカッシュらをスカウトし、スカッシュは子分のミザたちを守るために彼女らを捨てて自分だけで軍へ加入した。

そう、ミザたちを守るため…と思っていたのだが、どうやら本人たちはそうは思っていなかったらしい。きっと、ボスである自分が消えた後のミザ達は無茶な犯罪を繰り返し続けたのだろう。その時にサガンボとも組んでいたのかもしれない…そうだ、ミザ達よりさらに後に仲間になったガキ…チライは今どうしてるんだ?

 

「おいお前ら!アレをやるぞ!」

 

「ああ!」「ええ!」

 

スカッシュが思考により動きを止めている時、ミザが叫んだ。それにイワザとキカザも同調すると、彼女ら3名の姿が光り始める。

 

「…!スカッシュ、離れて!」

 

次の瞬間、ミザたち3人の体が光ったまま融合し、さらに大きな光となる。

目の前で光が収まった時には、そこにはミザ、イワザ、キカザが融合して生まれた大柄なひとりの戦士がいた。

 

『ぐふふふ…!』

 

大柄というよりも体型も身長も太々しく巨大化したような風貌で、戦闘力は単純に3人分足した以上となっているだろう。その付近には、ミザたちの合体の衝撃に晒されて吹き飛ばされたスカッシュが頭から血を流して倒れていた。

 

『さぁ、ここでぶち殺してやるよ!』

 

そのまま一歩足を踏み出すと振動が響き渡る。そして二歩目で地面を踏み締め、三歩目で足を上げようとした途端、異変が訪れる。

 

『な、なんだ…!?足が動かねぇ…!』

 

ミザの足がまるで地面に吸い付いてしまったかのように微動だにしなくなった。足を上げようとしても、すり足で移動しようとしても全く動かない。

 

「『接地拳』」

 

それは、気の扱いの応用で美鈴が編み出した技のひとつ。自身の気を地面へ流し、電磁力のような性質となるよう操作し相手の足と地面を接着させる。

 

「『界王拳』」

 

美鈴が修行の一環として蛇の道を踏破し、その先にある界王星へ辿り着き界王から伝授された技。

それを20倍まで高めた美鈴の全身からはバーナーの炎のような赤いオーラが吹き上がる。

 

「『気功砲』!」

 

からの気功砲。かつて同じ道場で修行に励んでいた鶴という男から原理だけを聞き、それを時がたち武の技術が熟達してから聞いた原理をもとに独自に編み出した必殺の大技。それは奇しくも、鶴の弟子であり天津飯が習得した気功砲と全く同じ性質と命名を行っていた。

界王拳を使いさらにそれが何倍にも倍増した威力を持つ気の砲撃が、今まさに放たれようとしている。

 

「待て!美鈴!」

 

「スカッシュ…」

 

だが、いつの間にか立ち上がっていたスカッシュが美鈴を呼び止めた。

 

「コイツらは…アタイがケジメつける」

 

スカッシュはそう言うとゆっくりとミザに近寄っていく。

 

「やっぱミザならそう来ると思ってたぜ。アタイが教えてやった簡易版フュージョン、それ気に入ってたもんなぁ」

 

『…!来るな!』

 

ミザは腕を振り上げ、スカッシュに向けて叩き下ろす。が、スカッシュは軽くそれを躱すと制服の中から取り出したカードのような物体を取り出して口に挟むと、渾身の拳をミザの腹にめり込ませた。

 

『う…!』

 

スカッシュの拳は威力的にはあまり効いてはいないようだが、喰らったミザは何か違和感を覚える。

その直後…

 

ポンッ

 

「な…!」「え…!?」「うそ!?」

 

合体していた3人がそれぞれに分裂して元に戻った。

さらに、スカッシュは3人を一発ずつ殴ると、その体からモロの魔力が抜け出て煙となって消えてゆく。

 

「ミザ、イワザ、キカザ。お前ら全員再逮捕だ」

 

一気に弱体化し、元々の強さに戻ったミザたちは全く抵抗できないままスカッシュと美鈴に手錠をかけられ連行されていく。3人は宇宙船へ乗せられるまでいつまでもスカッシュを睨んでいた。

そして、スカッシュが咥えていたカードのようなものにはサザンカだと思える絵柄が描かれており、それは燃えるように消失する。美鈴もそのカードが一体何なのか既に知っているようで、特に突っ込むこともなかった。

 

 

これにて、サガンボ銀河強盗団は全員お縄につくこととなった。

 

 

残るは星喰いのモロひとりのみ!




スカッシュが使用した、サザンカの姿が描かれたカードですが、これが今後のモロ戦で重要な役割を果たします。
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