もしもカカロットが幻想郷に落ちていたら   作:ねっぷう

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第508話 「Absolute」

モロに引き連れられ地球へやってきた大量の脱獄犯を捕まえたメルスは、特殊な映像装置を使ってモロとビルスの決着を見届けていた。

 

「そんな…破壊神様が、まさか敗北なさるとは…!」

 

モロの防御壁を展開しつつそれに相手を巻き込み体を抉り削る技により、胸部前面と両腕を失い敗北したビルス。その事実に動揺するメルスだったが、しばらく何かを考えた後に決心したかのように口を引き結び、直後に飛び立った。

続けて繰り広げられているであろう、シロナたちとモロとの戦いの場所へと一直線に向かってゆくメルスであったが…

 

「おや、どこへ行こうというのですか?」

 

突然目の前に何者かが現れ、思わず動きを止める。

 

「お、お兄様…!」

 

メルスが兄と呼ぶ人物、それはビルスの付き人であり天使であるウイスその人だった。

 

「ビルス様は…亡くなられたのでは…!?」

 

「ふふ…確かに破壊神が死ねば、それについている天使も機能停止します。ですが、ビルス様は一命をとりとめておりますよ」

 

その言葉を聞いたメルスは安堵するのと同時に、バツの悪そうな表情を浮かべる。

 

「もしかしてと思いましたが…まさかアナタも戦おうとしているのではないでしょうね?」

 

「そ、それは…!」

 

図星を突かれたメルスは動揺を隠せなかった。

 

「天使同士で隠し事などできませんよ」

 

メルスは天使だった。そして、天使は稽古目的や道具を用いる以外の戦闘行為の一切を禁じられている。

 

「掟を破った天使は消滅してしまうのですよ、跡形もなく。私も大神官様も貴重な天使をこれ以上失いたくはありません」

 

「はい…分かりました」

 

そう返事をするメルスだったが、どうにも煮え切らない複雑な表情を浮かべていることにウイスは気付いていたのだった。

 

 

 

 

 

モロの「斬撃」と「刺突」はただ攻撃するだけの能力ではない。一度ナイフで切り、フォークで刺した食べ物を強制的に口へ運び、食すことができる。

シロナとサザンカは既に何度も斬撃と刺突を浴びており、既にモロに喰われる条件を満たしてしまっていた。

 

そして、姿を現したのは完全無欠。

セブンスリーを直接喰らった時と同じ原理で二人を取り込んだモロはその分戦闘力を増加させるとともに姿も変化させていた。

背中や足に生えていた黒い体毛はサザンカの超サイヤ人4のような赤毛に変わり、再びセブンスリーを取り込んでいた時のような地球人らしい顔つきに変わった。さらにファントムシロナの特徴も如実に現れ、その双眼の下にもう一対の眼が浮かび上がり、それは絶えずギョロギョロと独立して動き周囲を探っている。脇の下からはさらに一対の腕が生え、さらにそれよりも不気味なのはモロの腹に生えた大きな口だった。

 

キュウウウ…

 

「…?おい、これは…」

 

「まさか…エネルギーの吸収か!!」

 

この期に及んで、モロは捨て去ったはずのエネルギー吸収能力を回帰させていた。地球中からエネルギーを集め、それを追加した腕で無限に掴み、腹の口へと絶えず放り込み貪り食う。モロは急速なエネルギー吸収を行いながらも両手が空になり、かつ心肺に負担をかけず腹の口で効率よく喰らい続けることができている。

徐々にゆっくりと、それでも目に見えるくらいの速度で地球の自然が痩せ細り、各地の何も知らない地球の住民たちも倦怠感や脱力感を微かに感じていた。

 

モロは口元に笑みを湛えたまま無言でブロリーたちに歩み寄る。脱獄直後の頃程度まで弱ったモロだったが、シロナとサザンカを吸収したことによりその二人分の力が加算されていた。なおかつ、今この瞬間にも地球のエネルギーを貪り続けている。

 

「やるしかないな…!」

 

「ああ…!」

 

ブロリーとハーツは全く万全な状態ではなかったが、それでも勝利を諦めずにモロへと立ち向かう。

しかし…

 

フワ…

 

「な…!」

 

彼らの体が勝手に浮かび上がり、モロの元へと吸い寄せられていく。

 

「オレの斬撃と刺突の両方を受けた者は、いわば皿を離れた一口も同然だ。あとはオレに喰われるだけだ」

 

なんと、モロはブロリーとハーツですらも取り込むつもりのようだ。

ふたりは抵抗も出来ず、何とかならないかと思案を巡らせるが…

 

 

「諦めるのはまだ早いですよ」

 

 

ブロリーにとって聞き馴染んだ声が聞こえると、彼らとモロを結んでいた魔力が切断され、その場で地面に墜落する。

モロが何事かと驚いた瞬間、その目の前には細長い光線が迫っていた。着弾する寸前、モロはそれに気付き咄嗟に手を掲げてガードするも、想定以上の衝撃と波動が発生した。

 

「…お前は」

 

「メルス!?」

 

両者の間に割って入ったのは銀河パトロール隊員。そう、光線銃を構えているメルスだった。

 

「クハハハッ、弾丸に自分の気を込めたか!」

 

モロはメルスの乱入を予想外だと感じつつも思わぬ副菜が出てきたことに歓喜する。

メルスは光線銃を腰のホルダーに仕舞い、短い棒のような武器を握り締めると構えた。

 

「すみません、いろいろと事情があって遅くなってしまいました。ブロリーさん、貴方に最後の稽古をつけたいと思います」

 

「お前…」

 

ブロリーはメルスの真意を勘付いてしまう。

そして、メルスは素早くモロに飛び掛かり、棒を伸縮させそれを振るって攻撃する。

 

ガッ

 

モロはそれを右上腕で受け止め、右下腕で棒を掴み、左腕二本を同時に突き出してメルスを殴り飛ばす。

 

「お前からは気を感じないな、正体は神の類だろう。前に戦った時は偽装していたな?」

 

ナメック星で戦った時にも感じた違和感の正体を看破し、モロは言葉を投げる。だがメルスはそれに取り合うことなく、さらに棒術を用いて鋭い突きを無数に繰り出す。

 

「やはりか…」

 

その会話を聞いていたブロリーはメルスが神であったと知り、薄っすらと感じていた予想が当たったと思った。

モロは素早い動きで避け続け、その軌道と速さを見切ると刹那の隙間を縫って接近し、拳を振るう。が、メルスも後ろへ倒れ込むようにそれを躱しつつ棒を地面について体を支え…

 

ギュンッ

 

棒をさらに伸縮させモロの顎を打ち上げた。

吹き飛ばされるモロは地面に降り立ち、口から垂れる血を拭いながら巨大な斬撃をいくつも放った。

メルスも、また刹那の時間でその軌道を全て予測し、身軽な動作で斬撃と斬撃の僅かな隙間を潜り抜けながらモロに迫る。そして、モロの目の前に飛び出し、その瞬間に顔面目掛けて飛んできた斬撃を棒で弾き、一撃を振りかぶる。

 

ビッ

 

モロは四つの眼から魔力の光線を放つ。メルスは棒を回転させてそれを防ぎ、さらに棒で突きを繰り出し、モロの腹にめり込ませる。

 

ガチッ

 

しかし、棒はモロの腹の口が噛みついて止めていた。そして棒を噛み砕かれ、握っていた残り部分が細かな斬撃によって切り刻まれ使用不能となる。

 

「お前…力を隠して戦っているな?何故こんな道具しか使わない?」

 

腹の口が噛み折った棒を手に取り、弄んでから細切れにしつつモロが言った。

 

「そうだメルス…そんな戦い方じゃモロには通用しない。退いてくれ…俺が戦う!」

 

ブロリーはそう言いながら必死に気を溜め始める。だが、そんなブロリーの様子を見たメルスは爽やかな笑みを浮かべた。

 

「ありがとうございます。ですが心配なさらず…」

 

メルスは天使の杖を出現させそれを握る。

 

「メルス…やはり、お前は…。だとしたら、そのまま戦えば…!」

 

「言ったでしょう、心配なさらず。私は貴方の修業の最後の仕上げをするだけですよ」

 

モロがゆらりと揺れながら拳を振りかぶり、こちらへ接近してくる。

 

「私は善でもなく悪でもなく、中立の立場である天使として生まれました」

 

剛速の拳を身を翻すことで躱し、真上から念力を撃ち込みモロを地面へ押し付ける。そして杖の切っ先を下へ向けたまま急降下し、その掌に思いきり突き刺した。

 

「ぎっ…!」

 

メルスはそのまま杖のエネルギーを流し込みモロを体内から爆破しようとするが、モロは咄嗟に斬撃で自らの手首を切断してそれを回避し、慌てて立ち上がる。そして反撃の斬撃を無数に繰り出し、メルスは杖でそれらを弾くも一本の斬撃が頬を切り裂いてゆく。

 

「クソッ」

 

モロは失った下右腕を魔力で止血することはできたが、欠損した部位を再生させることまではできない。

 

「ですから本来この宇宙が荒れようが消えてしまおうがただ見守ることしか許されていません」

 

激昂したモロがメルスへと猛攻を仕掛け、それに対して杖を振るいながら応戦する。

 

「でも銀河パトロールとして彼らと共に活動する中でいつからか私の中にも芽生えてしまいました。正義の感情が」

 

モロの腕は残り三本あり、例え一本が使えなくなろうがそれでも怒涛の連撃や腕の数を活かした戦法で攻め立てる。

 

「彼ら銀河パトロールは出身惑星ではエリートかもしれませんが宇宙レベルで見れば非力です。銀河法を犯す犯罪者は彼らより強い者の方が多いくらいです。しかし彼らは信念に基づき必死に銀河を守ろうとしていました」

 

メルスはモロを上空へ吹き飛ばし、杖の先端を向けて照準を合わせ、光線を発射する。それは真っすぐ飛び、モロの右上腕を貫通した。

 

「ぐあッ」

 

モロの右腕が二本とも使えなくなった。

 

「そんな仲間たちの姿を見て思ってしまったんです。この銀河を失いたくはないと」

 

だが、穏やかな表情でブロリーを見据えながらそう言ったメルスの姿は、心なしか薄くなって透き通っていた。

 

「メルス…!そのままでは本当に…!」

 

「そしてブロリーさん、貴方と出会ってから私の心は固まりました」

 

天使であるメルスの存在が消えかけようとしている。だが当の本人はそんなことはお構いなしと言った様子で力を高め、その首に天使特有の光輪が出現する。いよいよ本格的に天使の力を行使するつもりなのだ。

 

「次が最後の攻撃になるでしょう」

 

「おのれクソガキめ…!オレは神々の作ったものを喰って生きているんだ…お前らより上位の存在なんだよ!」

 

モロは左腕二本を真上へ掲げ、巨大な魔力の光球を生成する。そして不敵な笑みを浮かべたままメルスを睨み、一気に魔力の柱を発射した。

対するメルスも全身に神々しいオーラを纏い、一直線に飛び上がって光球へ向かってゆく。

 

(ブロリーさん、貴方は本当に素晴らしい人だ)

 

 

 

「この宇宙は何度もブロリーさんに救われているんですね」

 

精神と時の部屋の中、共に修行していた頃のブロリーとの会話を思い返すメルス。

 

「どうやらそう思われているらしいな。だが俺は…今まで本当に守りたいものを守れたことが無い。何故そうなってしまうのかも…大体わかっている」

 

「それは一体…?」

 

「これは恐らく俺の背負っている何らかの業のせいなんだ…俺は敵の命を絶つことでしか争いを止めることが出来ない。俺が子供の頃の記憶を失う前か、あるいは別の次元の俺のせいだったりするのかもな。だから俺の大事な人たちも死んでしまう。俺には死の鎖が付き纏い常にこの体を縛っているんだ」

 

メルスは天使の力を使うまでもなくブロリーの心の奥底にある深い悲しみを読み取ることが出来た。

 

「俺は戦いが好きではない。本当は俺が拳を握ることなく皆が楽しく平和に暮らせればそれが一番いい。でもそれじゃいけないことも分かっている。死の連鎖は決して俺から途切れることは無いんだ」

 

「そうですか。ブロリーさんは…本当に優しいんですね」

 

 

 

ズオオッ

 

メルスはモロの放つ魔力の柱を真正面から突き抜け、そのままモロへと突撃していく。モロは攻撃を破られたことに驚くもすぐに冷静さを取り戻し、間髪入れず二発目の魔力の光球を生成し今にも放とうと構えた。

が、メルスはそこで急加速し、モロが反応できない速度で渾身の一撃をお見舞いした。それはモロの腹へ命中し、そこにあった大きな口の中に拳を突っ込む形となり、次の瞬間には気が炸裂、口内で爆撃を受けたかのような衝撃が発生し、モロの腹の口はズタボロになった。

 

「ギャアア…!」

 

もう腹の口でエネルギー吸収することはできない!

モロは勢いのままにぶっ飛ばされ、地面を削りながら大岩に激突しその瓦礫の中に埋もれたのだった。

 

「メルス…!」

 

モロをぶっ飛ばして見せたはずのメルスの身体はどんどん薄くなり、足元はすでに消失している。だが、今モロを殴ったときに感じた、明らかなる勝機。

それを確信したメルスも自身の消滅を悟り、最期の言葉をブロリーにかける。

 

「ブロリーさん。貴方なら絶対にモロに勝てるはずです。そして、これからの貴方の選択は全て間違いではありません。どうか、心のままに、望みのままに戦ってください。そして、この素晴らしい宇宙を…頼みましたよ」




メルスが消滅するところを初見で読んだとき、普通に泣きました。
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