もしもカカロットが幻想郷に落ちていたら   作:ねっぷう

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第514話 「奈落の巨竜バルフート!」

カカロット、霊夢、ウスターの3人同時の蹴りを受けたバルフートは悲鳴を上げながら仰け反り、空に浮かぶ岩石を足場にして後ずさる。

 

「コイツ、思ったより強いぞ」

 

だが、バルフートはそれだけに終わり、特に傷を受けた様子も無く再びカカロットたちの方を向く。今のは思いがけない反撃に遭ったため驚いただけに過ぎなかったようだ。

 

「ギシィィィィ」

 

錆びた金属が軋むような唸り声を上げる巨竜バルフート。その体は全体的に錆色の甲殻と鱗に覆われたトカゲのようなフォルムであるが、大きさは50メートルを優に超える巨体で、四肢の強靭な力とフック状の爪によって暗黒の海の壁面や空中に浮かぶ岩石を掴み足場にして縦横無尽に動き回ることができる。

そして、バルフートは再びカカロットたちへ向けて突進を仕掛ける。

 

「はっ!」

 

霊夢は気弾を連続で放ちバルフートの頭部で炸裂させ、カカロットが素早く接近し首を蹴り、ウスターはオーラで作った腕を操ってバルフートの顎を掴んで締め上げる。

が、次の瞬間バルフートの甲殻や鱗の隙間から極低温の冷気が噴き出し、カカロットに浴びせられる。

 

「…!」

 

カカロットは腕で胴体を守ったが、その両腕が顔の前で交差させたまま凍り付いてしまった。

そして、頭で発生する爆炎を跳ねのけたバルフートの頭突きが霊夢に襲い掛かる。

 

「『八方龍殺陣』!」

 

霊夢は咄嗟に自身の周囲に高密度の弾幕を展開し八角形の柱のような結界を張り、一撃をガードする。その時、霊夢はバルフートの頭部を至近距離から見ることによって、ある違和感に気付く。

 

(コイツ…目が無い…?)

 

バルフートは眼が無かった。本来両目がある位置は真っ黒に落ち窪んで穴が開いているだけだ。まるで眼球を抉り取られ、その惨い傷もセットで。

だがそんな事を思った次の瞬間、想定以上の衝撃が伝わり、結界が砕かれると同時に霊夢は吹っ飛ばされる。

そして、首に食い込んでいるウスターのオーラの腕を前足で掴み、強引に払い除けると大口を開け、特大の冷気を放出した。

 

「ぐおお…!」

 

ウスターは下へ移動してそれを躱すも、バルフートは頭を振って冷気を薙ぎ、ウスターに直撃させた。

だがその時、気の熱で氷を解かしたカカロットがバルフートの脳天へ拳を叩きつけた。その巨体を震わすほどの衝撃が発生するが、バルフートは怒り、頭を振るってカカロットを撥ね飛ばした。

 

「シイイイイィ…」

 

とりあえず邪魔者を退けたバルフートは遠くを飛びながら様子を窺っていた飛行機に目を向け、再度突進を開始する。

 

「こっちに来た」

 

ハイビスは慌てて飛行機の速度を上げて逃げるが、バルフートもグングン加速し追い縋る。

 

「いてて…!」

 

「どうやらナメてはかかれんようだな」

 

「…ねえ、ちょっとここは私に任せてもらえないかしら」

 

霊夢がそう言うと、カカロットとウスターは快く頷いた。霊夢もニッと笑みを浮かべ、その場で全身の霊力を解放し、赤い尾を残しながら超スピードでバルフートを追いかける。

やがて、霊夢はバルフートと並走しその顔の真横を通過する。

 

「キ…!?」

 

驚くバルフートに、霊夢は一発の気弾を叩きつけてさく裂させて怯ませ、そのまま速度を上げてハイビスの飛行機にしがみつく。

 

「ちょっと開けて~」

 

そして飛行機の中にひとまず入り込み、息を整える。

 

「おい、どうするつもりだ…あれは流石に規格外すぎるぞ」

 

と、グロリオが霊夢に言った。しかし、霊夢は考えがあるかのように笑みを浮かべたまま何も言わず、ハイビスに話しかけた。

 

「アンタ、ハイビスだっけ?頼みがあるんだけど、その腰のベルトについてる目玉を私にくれない?」

 

「えー?」

 

ハイビスは霊夢の要求に気の抜けた返事を返し、少し考え込む。

 

「何かと交換ならいいぞ」

 

「交換!?んー…じゃあこうしましょう、今回の件が解決したらカダン王に頼んでアンタにボーナス出させるわ!それでどう?」

 

「おー、それならいいぞ。ボーナス楽しみだなー、何買おっかなー」

 

ハイビスは表情には出ないが上機嫌になった様子でベルトを外し、それを霊夢に手渡す。霊夢は受け取った手にズシリと圧し掛かる重厚な不吉を感じ取り、思わず固まる。

やはりハイビスが持っていたこれは、昼間に売店でも見かけた「魔のサードアイ」と同じものに間違いない。売店では容器に入ったものを見ただけ…それでも十分な魔力は感じ取れたが、実際に手にするとそれ以上の魔力を直に感じられてしまう。まるで纏わりつくような、生暖かい不気味な感触だった。

 

「さんきゅ!」

 

「それで一体何をする気なんだ?」

 

「いいかしら?アイツ、目を失って何も見えてない…地上へ出てきてここらでうろつくようになったのは最近の事。だからアイツは地上の事が何もわからず、何も見えないなりに色々なことを探って学んでいる最中じゃないかしら。だから、この目を使ってアイツに視力を与えて、地上には私たちみたいなヤバい奴らがいるってことを知ってもらうのよ」

 

「そんなに上手くいくか…?」

 

「上手くいかなかったら…ただぶっ倒すだけよ」

 

霊夢はサードアイを持って再び飛行機を飛び出し、バルフートの元へ向かう。

 

「ギシィィィイイイイイ!!」

 

バルフートは怒りの咆哮を轟かせ、特大の冷気のブレスを霊夢に向かって放つ。霊夢はそれを霊力の波動で打ち消し、錐揉み状に回転しながらバルフートへ迫る。

が、霊夢は異様な光景を目撃する。冷気を吐き出しているバルフートの背中の甲殻が赤く熱を帯びている。それは冷気を出せば出すほど熱が高まっているようで…

 

グッ ボオオオッ

 

直後に身を翻し背中を向けたバルフートは、とてつもない熱波を解き放つ。

 

(この熱…!)

 

霊夢は間一髪結界を駆使して熱風から身を守る。

 

(冷気を吐けば体温が上がり熱が溜まる…それをアイツは背中から放熱している…!)

 

冷気と熱、その両方をコントロールできるほどの圧倒的な身体機能の強さ、そして魔力。周辺に浮かんでいた岩塊は燃えて吹き飛ばされ、足場を失ったバルフートは地面へ降り立つ。

霊夢もまた地面へ着地し、結界を解除する。熱い空気と砂が焼けた匂いが肺に入り込んでくる。

 

「大丈夫か!?」

 

そこへカカロットとウスターが心配して駆け寄ってくる。

 

「全然平気」

 

霊夢はそう返すが、やっぱり一人では想定よりも骨が折れそうだ。

 

「ごめん、やっぱ手伝ってくんない?」

 

そう頼まれたカカロットとウスターはすぐに自分らの役割を理解し、バルフートの元へ駆け寄っていく。

バルフートは放熱を終えたことにより再度冷気を吐き出せるようになり、早速口から冷気を吐き出し、カカロットとウスターをしつこく狙い続ける。

そこで、ウスターは全身の気を高めオーラを大きく膨れ上がらせ、オーラの手を分離させる。その手はウスター自身の気の大きさに比例し、今までよりも比較にならない程巨大で、バルフートの胴体を軽く握って掴めそうなほどだ。

ウスターのオーラの手でバルフートの冷気のブレスを防ぎ、そこでバルフートは再度放熱の必要に迫られる。真っ赤に熱せられた背中の甲殻を展開し、放熱しようとするが…

 

ガシッ!

 

そこへウスターのオーラの手が覆い被せられ、放熱を妨げられる。

 

「ギシャアアアアアア!!」

 

放熱ができないバルフートはどんどん高まっていく体温に耐えられずその場で暴れ狂うも、その直後に頭上へ現れた金色の影に気付く。

超サイヤ人に変身したカカロットがバルフートの顔面へ迫っていた。

 

そして、刹那…一撃。

 

渾身の拳がバルフートの顔面へ叩きこまれる。あまりの衝撃にバルフートの頭部が歪み、大口を開けて声にならない悲鳴を上げながら頭部が地面にめり込んで動かなくなる。

 

バシュッ ゴオオオ…

 

さらに、それを見計らっていた霊夢がいよいよバルフートに接近する。その手にはハイビスからもらったサードアイが持たれており、そのまま動けないバルフートの額へとそのサードアイを押し付けるのだった。

 

ぎゅむむ…

 

サードアイは額へハマり込むと、それを中心に周囲へと赤い光が溢れ出す。

 

(おお…これはどういうことだ…?)

 

その時、低く響くような声が耳に届く。

 

(バルフートの攻撃が封じられて、顔をぶっ飛ばされるなんて…こんなことは初めてだ)

 

霊夢はその声が、どうやらバルフートの方から発せられていることに気付く。

 

(いいや、それよりも…見えなくなっていた目が見えるようになっている!前よりも鮮明に!それどころか頭の中もスッキリして、スラスラと考えと言葉が浮かんでくる!こんなことは初めてだ!)

 

「ええと、バルフートさん?」

 

霊夢が恐る恐る声をかけてみると、バルフートはグルンとこちらへ顔を向ける。額に取り付けられたサードアイも動き、霊夢を見据える。

 

(おお、お前か!バルフートにこの眼を与えたのはお前か?)

 

「そうだけど…それよりもアンタが毎夜ウロウロするおかげで迷惑かけられてる連中がいるんだけど?」

 

霊夢がそう言うと、バルフートはその場で両手を下ろし、さらに頭を垂れて地面に吻先を押し付けた。その様子は、霊夢には人間でいうところの土下座をしているように見えた。

 

「ちょ、ちょっと何して…」

 

(本当に申し訳なかった!ならばバルフートは毎夜暗黒の海より上へ出ることを止める!しかし弁明もさせてほしい!)

 

「弁明…?」

 

「なんだ、どうしたんだ?」

 

そこでカカロットとウスターも何か異変を感じて霊夢の横へ降りてくる。

 

(バルフートは()()に眼を奪われた!だからバルフートは夜の間だけ暗黒の海から上がって姉上を探していたんだ!)

 

それを聞いた霊夢たちは何とも言えず、黙ったままバルフートの話に耳を傾ける。

 

(しかしお前がくれたこの眼があれば、もう姉上を探す必要は無い!だからバルフートは暗黒の海に帰り、もう二度と上がっては来ないと約束するぞ!)

 

 

 

バルフートから言質を取り、棲家である暗黒の海の深くへ帰っていくのを見届けた霊夢たちとグロリオはカダン城へ戻り、カダン王にそれを報告したのだった。

 

「おお、そうだったのか!しかしよくあのバルフートを鎮めることができたな、感謝するぞ」

 

「ええ、あのハイビスってののおかげだったのよ。だから彼には褒美をたんとくれてやってくれないかしら?」

 

「もちろんだ!ハイビスには臨時特別ボーナスを出すとしよう」

 

「それでカダン王…飛行機の件は」

 

元々はバルフートを退治する代わりに飛行機を一機貸してもらう約束だった。

 

「うむ、いいだろう。既に用意させている…好きに持っていくがいい」

 

「ありがとうございます」

 

「おっさん、まるで俺たちがバルフートを退治して帰ってくるのが分かってたみたいに準備がいいな?」

 

カカロットが揶揄うように軽口を叩くと、カダン王もニヤリと笑いながら言い返す。

 

「オレをナメるなよ若造。お前らを見ればわかる…バルフート如き大した敵ではなかっただろう。それで聞くが、お前たちは飛行機を使ってどこまで行くつもりだ?」

 

「ああ、この大魔界をドラゴンボールをちょっとな」

 

そう言った瞬間、カダン王は驚き、横にいたパンジまでもひっくり返る。

 

「ドラゴンボール!?まさか…お前らタマガミと戦うつもりか!?」

 

「おお、なんか強いらしいな」

 

「あぁ、おいおい…そんな馬鹿なことをするつもりだったのかよ?…お前らの強さはオレも認めるが、それは辞めておいた方がいい…」

 

「今まで魔界のドラゴンボールを3つ揃えたヤツはいないんだよ!タマガミがあまりにも強すぎるから、あのダーブラでも集められなかったんだよ!?」

 

「それ前にもグロリオから聞いたし、まあ何とかなるでしょ。ねえ?」

 

霊夢はそう言いながらカカロットとウスターと目を合わせ、3人は何ともないような態度を崩さない。その様子を見たカダン王は呆れたように頭を抱えて王座に座り直し、ぶつぶつと呟く。

 

「確かに、実際にあのバルフートを何とかして見せたコイツらなら、満更不可能ではないかもしれんな…うーむ…あいわかった!オレは止めはせん、行ってこい!」

 

 

その後、カダン王が用意した中型の飛行機に乗り込んでいくグロリオたち。それを見送ろうとしていたカダン王だが、大きな荷物を引っ張ったパンジが目の前を通過していく。

 

「おいパンジ、なんだその荷物は」

 

「アタシも行く」

 

「何だと!?お前が行っても邪魔なだけだ、それに危険だぞ」

 

「コイツらがタマガミと戦うとこ見たいんだよ。それにアタシはメカに強い!もし飛行機に何かあったら困るだろ?」

 

「しかし…」

 

「いいじゃない!グロリオもそこまでメカに強くないみたいだし、パンジがいたら助かるかも」

 

渋るカダン王に霊夢がそう言った。

 

「さすが霊夢、話が分かるじゃん!」

 

「危なくなったら私たちが守るしね」

 

「ううむ…しょうがない、わかった。行ってこい」

 

飛行機はグロリオ、霊夢、カカロット、ウスター、パンジ、そして大量の荷物を載せて飛び立った。手を振って見送るカダン王や城が窓からどんどん小さくなり、やがて見えなくなる。

 

「グロリオ、タマガミのところまでどれくらいで着くんだ?」

 

「休憩も入れて四日ってところだな」

 

「そんなにかかるの?」

 

「そうだよ、だって第3魔界は魔界の中でいっちばん広いからね!四日くらい我慢しようよ」

 

ボシュッ

 

その時、飛行機のエンジンから煙が上がり、様子がおかしくなる。

 

「うわああっ、エンジンがヤバそう!!」

 

「ボロいのに荷物を積み過ぎだああああああ!!」

 

ついにエンジンが動かなくなり、飛行機はそのまま真っすぐ地面へ向かって墜落してゆく。

 

「しっかり掴まってろよ!」

 

グロリオは必至に飛行機を安定させようとし、そのまま不時着させる。飛行機はすさまじい衝撃と共に地面へ激突したが、何とかそのまま地面を滑り停止することに成功した。

 

「いてて…」

 

パンジが起き上がりながらふと窓の外を見ると、何故か巨大な影が落ちていた。

そして、飛行機のフロントガラスの目の前には巨大な竜が姿を見せているではないか。

 

「…バルフート!?」

 

その巨大な竜は、あのバルフートにそっくりで…!?

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