もしもカカロットが幻想郷に落ちていたら   作:ねっぷう

515 / 552
第515話 「姉上現る!?巨竜姉妹喧嘩勃発」

「…バルフート!?」

 

重量オーバーにより不時着した飛行機。その目の前に現れたのは、あの奈落の巨竜。

霊夢は思った。おかしい、バルフートは確かにもう地上へ来ないと誓っていたはずだ。嘘をついていた?もしくは別の個体、まさか姉上とやら?

 

「おい…テメェ、誰だ?」

 

だが、カカロットがいち早く違和感に気付く。

次の瞬間、目の前のバルフートらしき巨竜は頭に生えていた二対の4本角の角度を変えて折り畳み顔を覆うように変形させると、その巨体に電流が迸る。

そこで、やっと霊夢もよく見ればバルフートと角の形状が違うことに気付き、慌てて飛行機の外に出る。

 

ギュイイイイイ…

 

迸った電流は真っすぐに伸びた巨竜の体の尻尾の先端から背中を通路のように駆け巡り頭部の折り畳んだ角に増幅・集約され、そして魔力によって特大の電撃砲として撃ち放たれた。

 

バヂィイイ!!

 

視界を真っ白に染めるほどの閃光と、地割れでも起きたかと思う程の轟音が発生し、やがて煙が晴れる。今まで飛行機がいた場所は、超高圧の電流により大地が溶けてガラス化したフルグライト鉱石の塔が形成されていた。

 

「ふう、危なかったわね…」

 

霊夢、カカロット、ウスターの3人は飛行機から飛び出しており、かつウスターが飛行機を片腕で持ち上げて退避させていた。

 

 

「って、バルフートはもう地上へ来ないって約束したんじゃないのかよ!?」

 

飛行機の中でパンジがそう叫ぶ。グロリオもどういうことかと身構えていたが、どうやらそこで彼も気付いたようだった。

 

「いや…コイツはバルフートじゃない!」

 

 

正体不明の巨竜は閉じていた角を展開し、その素顔を露わにする。頭部の形状はやはりバルフートとそっくりだが、その目は真っ赤で黒い小さな瞳が覗き、それが4つあった。

 

(なんじゃあ貴様ら…ぶち殺されたいか!?)

 

巨竜は心臓を揺らすような低く恐ろしい声で物騒なことを言い放つ。が、霊夢は怯まずに尋ねた。

 

「アンタ、誰?バルフートじゃないの?」

 

(身共はガルフートじゃ!バルフートは身共の愚妹である!)

 

その巨竜はガルフートと名乗った。姉のガルフート、妹のバルフート。ややこしいが、コイツが姉上とやらで間違いないだろう。

 

「妹の目玉を奪ったそうね、なんでそんなことを?」

 

(五月蠅いのお、身共は身共が喋りたいことだけ喋りたいんじゃあ。イライラするじゃあ!)

 

ガルフートは霊夢の質問に嫌気がさした様子で、再び角を畳んで電撃を発射する。それは霊夢を正確に狙うが、彼女は上へ飛んで躱し、地面に着弾すると白煙と共にフルグライトの塔を生み出す。

カカロットとウスターも遠くから気弾をぶつけて攻撃するが効果は薄い。

 

「くっ…オレも戦える…!」

 

その時、グロリオも飛行機から飛び出し、ガルフートへ接近しながら両手の指先を向けて構える。

 

「やめとけグロリオ!お前じゃ無理だ!」

 

カカロットがそう叫んで忠告するも、グロリオは自身の雷魔法を解放し、10発の雷撃を同時に放ってガルフートへ直撃させた。

 

バリィ ギュンギュン…

 

だが、紫色の閃光と共に着弾した雷撃はガルフートの背中に吸収され、さらにそれが尾の先まで流れて引き返し頭部でまた折り返し、数秒の間に何度もガルフートの背中を往復させることで増強した電力を角に集め…

 

ドォン!!

 

特大の電撃砲をカウンターのようにグロリオへ向けて放った。

 

「な…!」

 

「あぶねぇ!!」

 

カカロットが咄嗟にグロリオの前に割って入り、背中で閃撃を受け止める。貫通した電撃が地面に流れ、葉の筋のような巨大なフラクタル模様が走る。

 

「アンタ…!」

 

「く…いってぇな…」

 

カカロットは痛みを軽減するために超サイヤ人に変身しようとするも髪の毛が一瞬光り輝いただけで不発に終わり、そのままグロリオにもたれ込むように倒れてしまう。

 

「おい…大丈夫か!?」

 

グロリオがそう呼びかけるもカカロットは応答できなかった。

霊夢も思わずカカロットの方へ駆け寄ろうとするが、ガルフートが地面から伸びる巨大なフルグライトの塔にしがみ付き特殊な背甲殻をこちらへ向けているのに気付いて立ち止まる。

 

(焼け死ね)

 

そして、背中に何度も電流を流したことにより蓄積された電熱を熱波として放出した。

 

しかし

 

パキパキパキ…

 

熱気に何か別のエネルギーがぶつかり、それらが相殺し合って止まっている。何事かと思った霊夢の頭上から巨大が影が降り、同時に冷気の霧が漂う。

 

「バルフート!」

 

ガルフートに対抗するかのように冷気を吐き出しているのは愚妹と称されたバルフートであった。

 

(むう!貴様は愚妹か!ぶち殺すぞ!!)

 

直後、拮抗していた熱波と冷気は爆発を起こし、両者は後ずさる。

 

(博麗といったか、約束を破ってしまってすまない!しかしバルフートの弁明も聞いてほしい!お前が授けてくれたこの眼のおかげか、姉上の気配をハッキリ感じ取れるようになったのでようやく姉上を見つけることができた!)

 

バルフートは霊夢にそう言った。

 

(愚妹が…ぶち殺されたいのか?わざわざ目を奪ってやったのによく身共の居所が分かったものだな!…ん、貴様…)

 

その時、ガルフートはバルフートの額に取って付けたようなひとつの眼が存在することに気付く。

 

(なるほど、その目のおかげで身共を探し当てたというわけか!ぶち殺すぞ!)

 

(やってみるがいい姉上!)

 

次の瞬間、バルフートとガルフートは後ろ足で立ち上がり、上半身を勢いよく振り下ろして互いに叩きつけ合った。鉄の塊同士が激突するような凄まじい金属音が鳴り渡り、続けて両者は電撃砲と冷気のブレスを至近距離からぶつけ合い、凄まじい爆発を起こす。

霊夢とウスターは襲い来る衝撃波と冷気から思わず顔を背ける。

 

(ようやく見つけた姉上!バルフートが姉上を探していたのは、何故バルフートの両目を奪い取ったのか、何故暗黒の海から姿を消したのか聞きたかったからだ!)

 

ガルフートは4つの眼を見開き、バルフートを睨みつける。その間にも両者は長い体をぶつけ合い続けている。

 

(何故か、だと!?それは貴様が一番よく分かっているはずだ!)

 

(分からぬわ!教えてくれ姉上!何故目を奪い姿を消したのだ!)

 

(それは…!)

 

繰り広げられる戦いと話に霊夢たちも耳を傾ける。一体、この姉妹の間に何か起こって対立しているのか、その理由とは…!?

 

(それは…!!バルフート、貴様が身共の大事にとっておいたベヒーモスの肉を勝手に食べたからだろう!!)

 

「!!!」

 

(あれは元々バルフートが仕留めた獣だ!!)

 

「!!!??」

 

(ぶち殺すぞバカ愚昧が!貴様は既に6匹のベヒーモスを平らげた後だったろう!)

 

(今バカと言ったか!?バカと言った方がバカなんだぞ!!)

 

(バカにバカと言って何が悪い!?身共はもう貴様のバカさ加減には飽き飽きしておるのだ!いい加減に死ぬか、暗黒の海の底の底、奈落へと帰れェ!!)

 

「え、なにこれ」

 

「…俺に聞くな」

 

霊夢とウスターは、まるで幼い姉妹の喧嘩のように言い争う2匹の巨竜を見て呆れたようにそう言った。

肉体だけでなく、互いの操る電気と冷気をぶつけ合い周辺の環境が荒れ狂うほど激しく争う。だが、バルフートの冷気による氷はガルフートの電気を通しにくいが、それでも超高圧電流によって生じる電熱は冷気に強い。さらに互いに共通する排熱能力だが、これも冷気を使うバルフートにとっては自分が喰らうぶんには効果抜群だった。

 

「すまない、カカロットが…!」

 

その時、二頭の竜の争いを眺めていた霊夢とウスターの元へグロリオがやってくる。その肩には、苦しそうに顔をしかめているカカロットがいた。

 

「カカロット!大丈夫!?」

 

「オレの所為だ…カカロットはオレをかばって…」

 

体を電撃が貫通したカカロットは死にこそしていないが、体内に甚大なダメージを受けているようだった。

 

ドズ…ン

 

(ぎゃああああ…!!)

 

やがてバルフートが押し負け、地面に叩き伏せられる。地面が揺れ、さらに無防備となったバルフートの首へガルフートの電撃砲が炸裂した。

 

バヂイイイイイッ!!

 

特大の電撃が貫通したバルフートはぐったりとし、抵抗していた手足も力なく垂れる。

 

(そうだ!貴様は一生そうして、姉であるこの身共に対して頭を垂れてつくばっていればよいのだ!身共は暴れたいのだ!思うがままに全てを蹴散らしたいのだ!そうすれば再び身共ら古代竜の時代が来るだろう!)

 

「アンタやりすぎ!!」

 

だがその瞬間、いきなり急接近して来た霊夢の言葉と共に蹴りが放たれ、ガルフートはそれを横っ面へ喰らい、上半身を大きく後ろへ逸らす。

 

(ヴォゲェエ!!)

 

そのまま地面へ滑るように倒れ、地響きと共に砂埃が舞う。

 

「どんな理由があれ、姉妹が殺し合うもんじゃない!仲良くしなさい!」

 

宙に浮きながら仁王立ちし、そう宣言した霊夢。まるでドンッという大きな効果音が付いていそうな迫力だが、ガルフートはむくりと起き上がり、咆哮と共に霊夢に襲い掛かる。

と、そこへウスターも戦いに加わり、ガルフートの豪快な攻撃を避けつつ周囲を飛び回って反撃を見舞う。

 

(…すごい)

 

バルフートは首だけを持ち上げながら彼らの戦いぶりを見ていた。

ガルフートの電撃を躱し、その後隙に打撃を差し込む。電撃が地面に着弾したことで発生するフルグライトの塔を活用しようとするも、それを瞬時に破壊されてバランスを崩し転倒するガルフート。

そして、電撃を繰り返したことによって溜まった電熱を放射しようとするも、排熱用の背甲殻を攻撃されて不発に終わり、オーバーヒートし爆発する。

 

(チイイッ!!)

 

霊夢とウスターに追い詰められたガルフートは舌打ちしながら後ろへ下がり、4本の角を閉じて再度電撃を構える。

 

(なかなかやるな…紅白の女と黒髪の男はこの大魔界の者ではないな!どこか異郷から来たのだろう!だが身共はもう貴様に構っている暇はない!残念じゃの~)

 

「何言ってんのよ!バルフートに謝りなさい!」

 

そう言いながら霊夢が一気に叩みかけようと迫るが…

 

(身共はもっと強くなるぞ!()()()()の言う通りにしたら全てが視えるようになったのじゃあ!次こそは貴様ら全員ぶち殺したいのお、楽しみじゃあ~)

 

カッッ

 

ガルフートは角を開いた瞬間、電撃ではなく眩い閃光を放った。それは数秒間続き、霊夢たちの視界が元に戻った頃には、あれほど巨大だったガルフートの姿は魔力の残滓すら残さず一切が消え去っていた。

 

「デカいくせに…気配の消し方上手いじゃない」

 

「それよりもカカロットだ」

 

「あ、そういえばそっか」

 

「俺は平気だ」

 

霊夢とウスターがそう話しながら地面へ降り立つと、そこへカカロットが歩いてきてそう言った。

 

「ちっと電気で筋肉が動かなくなっただけだ…少し痺れるがもう大丈夫だ」

 

「そう?ならよかったけど」

 

ズズ…

 

復帰したバルフートもゆっくりと霊夢たちへ近付いてくる。

 

「アンタも大丈夫だった?」

 

ザッ

 

そして、バルフートはまたしてもその場で両手をつき、頭を深く下げて額を地面に押し付ける姿勢を取った。

 

(お前たちに、頼みがある!)

 

「…アンタ、前も思ったけど…それどう見ても土下座よね」

 

(その通り!お前たちから、この姿勢が精一杯の誠意を伝える構えだと読み取れた!お前がくれたこの眼が教えてくれたのだ!)

 

「それで頼みってのはなんでぇ?」

 

カカロットがバルフートにそう聞き返す。

グロリオとパンジも恐る恐る彼の後ろへ近寄ってきた。

 

(昔から強かった姉上ガルフートには…バルフートがどんなに頑張っても勝てなかった!だから両目を奪われ、結果地上の者らに迷惑をかけることになった!)

 

バルフートは続ける。

 

(バルフートの冷気は姉上の電気を通さない…だが熱に弱い!だから総合的には相性が悪い!だから姉上に負ける…弱いから。バルフートが強かったら姉上の言いなりになんかならない!バルフートは姉上のように他の生き物を食べる以外で殺したいとは思わない!だがそんなある時…お前たちに出会った)

 

バルフートはカカロット、霊夢、ウスターを順番に見据える。

 

(そんなに小さいにも拘らず、お前たちは強い!その()()()()で、バルフートや姉上と渡り合った!バルフートも能力だけじゃなく、体を使った技を磨きたい!バルフートは体験したのだ、その身体からバルフートへ伝わったとてつもない衝撃を、一気に上昇するパワーを、卓越した能力の使い方を!)

 

「お前、頼みってのは…」

 

ボタ…

 

もう眼球の無いバルフートの双眼から涙が流れる。

 

(バルフートは姉上に勝ちたい!!だから頼む!バルフートに、その()を使った戦いを教えてくれ!!)

 

 




そういえば、かなり序盤に書いた月の客編で「超月光発生装置ツキノカク」という、地上のエネルギーを持つ生命を電池代わりにして月の都にエネルギーを供給している装置を出したのですが、当時それを出した時は正直「いくら東方の月の民でもここまでやらないだろうな~」と思って書いてたんですけど…
東方最新作で普通に月の民がそれに近い所業を行っていてドン引きしました。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。