もしもカカロットが幻想郷に落ちていたら   作:ねっぷう

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第516話 「睥睨!タマガミナンバースリー!」

(バルフートは姉上に勝ちたい!!だから頼む!バルフートに、その()を使った戦いを教えてくれ!!)

 

土下座をしながら、涙ながらにそう懇願するバルフート。

 

「いいけど…ちょっと難しいわね」

 

「ああ、なんせお前はデケェ!人の動きをそのまま伝えることはできないぞ」

 

「俺のはそもそもが軍隊で習った殺人術だ…教えられるものではない」

 

霊夢、カカロット、ウスターは口々にそう言った。だが、バルフートは気にせず続ける。

 

(その通りだ!バルフートに直接付きっきりで指導しろとは言わん!バルフートはお前たちの戦いぶりをよく観察して自分に合うように調整して身に着けることにした!そこで…このバルフートを、大魔界を巡るための足として使ってくれないか!)

 

バルフートの提案に、霊夢たちは驚いた。

 

(お前たちは大魔界を巡り、何か成し遂げたい事があるのだろう!そのために戦うこともあるだろう!バルフートがお前たちをどこへでも運んでやる!その代わり、お前たちの戦いをバルフートに見せてくれ!!)

 

「なるほどね、いいんじゃない?」

 

霊夢がすんなりとバルフートの提案を受け入れた。しかし、それにパンジが反発する。

 

「えええ!?バルフートに乗って移動するなんて危険すぎるよ!第一、ソイツはもう地上へ上がってこないって約束だったじゃないか」

 

(確かに、その通り。しかしバルフートがここで暗黒の海へ帰ったところで、姉上が大魔界を徘徊している以上危険な事には変わりない!それに、バルフートが姉上に勝てたら必ず姉上と共に暗黒の海へ帰り、今度こそ二度と姿を現さないと約束する!!)

 

「まあこう言ってることだし、それに飛行機だって直すの手間でしょ?じゃあ運んでもらいましょうよ、バルフートは信頼できるわよ」

 

(紅白の…)

 

「…そうだね、仕方ないか。じゃあ飛行機はとりあえず親父たちに回収してもらうよう頼んどくよ」

 

「そうと決まれば、さっそくバルフートに乗ってタマガミのとこへ行こうじゃねぇか」

 

「どれくらいかかる?」

 

(えっと…どこ?)

 

「ここだ」

 

タマガミの居場所を分かっていないバルフートに、グロリオが地図を使って教える。

 

(…休憩も入れれば4日くらいはかかるな)

 

「そんなに…?」

 

「第3魔界は魔界の中で一番広いんだ。いくらバルフートが起伏の激しい地形の移動に適しているとはいえ、それくらいはかかるな」

 

バルフートもグロリオも、タマガミの所までは結局4日はかかるだろうという結論を出した。

そして、一行はバルフートの背中によじ登る。肋骨が逆向きに生えたように聳える背甲殻の間に収まるように座った。

 

(ではゆくぞ)

 

バルフートはゆっくりと歩き出し、ぐんぐんスピードを上げていく。

 

「おおおお」

 

胴体はそれほど揺れず、四肢を用いて力強く大地を掴みながら移動するバルフート。目の前に岩山が現れても、難なくそれを避けながら一定のスピードをキープしている。

 

「あははは!意外と快適だね!」

 

パンジが予想外の乗り心地を楽しんでいる。霊夢たちも顔をなでる魔界の風を堪能していた。

と、その時、行く手に巨大な崖が現れた。その下には暗黒の海が広がっている。

 

「大丈夫?」

 

(大丈夫だ)

 

バルフートは宙に浮かぶ岩塊を足場にし、まるでボルダリングでもするかのように掴んで空中を移動する。途中で暗黒の海に巣くう魔物や怪物に遭遇するが、彼らはバルフートを目にしたとたん一目散に隠れだすので妨げにはならなかった。

 

 

一行は竜の背でくつろぎ、まったく代わり映えのしない荒野の景色を眺めていた。地球と同じように大魔界も陽が傾き、やがて夜が訪れる。

 

(どうする?今夜はここらで休むか?)

 

バルフートが霊夢に尋ねる。

 

「…そうね、アンタもお疲れ様。今日はここいらで休みましょう」

 

バルフートはその場に停止し、霊夢たちを下ろすと自分の食料の調達に出かけていった。

霊夢らは近くにあった大きめの洞窟の中に入り、バルフートの背中に積んできていた荷物を広げて野営を準備を整えた。焚火を囲み、缶詰などの食料を頂く。

 

「お、美味いな」

 

カカロットは缶詰をかき込みながら呟いた。

 

「確かに。何の缶詰?」

 

霊夢が缶のラベルを見ると、そこにはムカデのような生物が描かれていた。

 

「あまり考えずに食った方がいいぞ」

 

ウスターは元から知っていたか慣れているような様子で平然とそう言い、霊夢も「そうね」と一言だけ言ってとりあえず腹を満たした。

 

 

全員が食べ終わり、しばらくしてからパンジが用意した寝袋にくるまり、そのまま明日に備えて眠りにつくことにした。

 

「カカロット」

 

その時、グロリオがカカロットに声をかける。

 

「おお、どうした?」

 

「今日はすまなかった…オレが後先考えずガルフートに魔法を当てたせいで足を引っ張ってしまった」

 

「はは、気にすんなよ。相手がガルフートじゃなければかなりいい攻撃だったぜ!あれがお前の魔法ってやつか?」

 

「そうだ。オレは手から魔力を電撃に変換して放てる」

 

グロリオはそう言いながら両手の指先で小さな紫色の電流を迸らせて見せた。

 

「なるほどなぁ」

 

「だが結果はあのザマだ…さっきのバルフートじゃないが、アドバイスをくれないか?」

 

そう言われると、カカロットはまず最初にこう質問した。

 

「その魔法で使える電気は外付けか?それとも体で生み出したものか?」

 

かつては魔法使いである聖白蓮に師事していたカカロットは多少魔法について明るい。だからこその質問であり、カカロットは続ける。

 

「外付け…ようは魔法で生み出した電気を体外から取り入れて使っているのか、それとも魔法で直接体ン中で発電してるのかってことだ」

 

「これは…魔力を使って体内で生み出している電気だ、それを体外へ放つ形で運用している」

 

「なら話は早え。それを手先から放つ前に、一度全身へ行き渡らせてみろ。自分自身の形に魔力を成型するイメージで、それをそのまま練り上げて高めるんだ。放たずに込める…そうしたら一歩前へ出てみろ。自然と腕が振り回せるはずだぜ」

 

カカロットは自分が「気」を扱えるようになった時のことを踏まえてそう言った。体内で生み出した気は全身に漲らせたり、拳や足など一点へ集中させたりして練度を磨き、そうしていたらやがて実力は伸びていた。

 

「…そうか、今度やってみよう」

 

その会話を洞窟の外の壁面にしがみついて聞いていたバルフートは、少しの音も立てる事無く壁を登りどこかへと消えていった。

 

 

夜も更け、焚火も消えて全員が寝静まった頃。ひとりで寝床から抜け出したグロリオは離れた場所で小型通信機を手に取り、何者かと会話していた。

 

「はい…うまくいきそうです。明後日には…」

 

『ふふふ…順調にいってるようね。何かあったら連絡を…』

 

「もうひとつ。実は…第3魔界のとあるサービスエリアの店に…魔のサードアイが」

 

『…それは本当?』

 

「はい、この目で確認しました…あれは間違いなく…」

 

『なるほど…いい情報をありがとう』

 

グロリオと通信していた者はそれを切ったあと、魔のサードアイの情報を聞いてほくそ笑んだ。

一方のグロリオも何事もなかったかのように寝床へと戻っていくが、ウスターだけは眼を開けて聞き耳を立てていた様子だった。

 

 

さて、翌朝。寝床を片付けて出発しようとしていたカカロットたちの目の前に、恐ろしい巨体が立ちはだかっていた。

 

「朝飯を狩りに出かけようと思ったら運がいい!お前らを喰ってやるとしよう!」

 

「そうか!悪いが俺たちは出るぞ!」

 

湾曲した大きな角と筋骨隆々な肉体のミノタウロスだった。強力な力を持つ魔人であることは間違いないが、カカロットはそれを歯牙にもかける様子もなくスルーしようとする。

 

「おい、お前らオレ様が誰だか分かっているッおわああああああっ!!」

 

そう言いかけたミノタウロスの目の前にさらに巨大な竜の足が振り下ろされる。驚いたミノタウロスは今までの様子とは打って変わった悲鳴を上げて飛び上がる。

 

(さあ、タマガミの元へ行こう)

 

バルフートがカカロットたちを迎えに来たのだ。種族として格が違う存在に慄いたミノタウロスはその場で固まり、その横をカカロットたちがスルスルと通過してバルフートの背によじ登り、荷物を積み込む。

そして出発したバルフートが地平線の向こう側に消えていくのを見届けたミノタウロスは大きなため息をついて胸を撫で下ろし、ねぐらの洞窟の奥へ帰っていくのだった。

 

「…今のは古代竜…だよな…?うん、さ~て、オレは何も見ていないぞっと…」

 

 

その後も、カカロットたちはバルフートの背に乗って第3魔界を進み続け、二日が経った日の夕方。ついにタマガミがいるという場所までたどり着いた。

 

「ここだ」

 

グロリオがこの場所で間違いないと言い、一行はバルフートの背から降りる。ここは崩れた建物の残骸が点在しておりどう見ても寂れた集落のように見えるが…

 

「お…」

 

「アレ見てよアレ!」

 

一際ひらけた何もない場所に、一本の木とその脇に古い祭壇が。その祭壇の上には、大きなハンマーを肩に担いだ銅像か石像のような、またはロボットのような、全く微動だにしない不思議な生命体が、夕焼けを背にして直立で佇んでいた。

 

「これがタマガミだ」

 

「おお~」

 

霊夢は思わずタマガミを見上げながら感嘆した。タマガミの腹にはサッカーボールくらいのサイズのドラゴンボールが埋め込まれている。三ツ星が刻まれ、どうやらナメック星のドラゴンボールと同じ大きさだ。

 

「誰がやる?」

 

「俺だ」

 

「いや俺だろ、ここへ来てからあんまいいトコ無かったんだからよ俺はよお」

 

カカロットがウスターを制止して名乗りを上げ、強引にタマガミの目の前へ進み出る。ウスターは舌打ちしながらもそれを受け入れた。

 

「おーい、タマガ」

 

「なんだァ~~~!!!」

 

衝撃波が生まれるほど大きな声で返事をするタマガミ。カカロットたちは思わず耳を塞ぎ、パンジはあまりの大音量に吹き飛ばされそうになりグロリオにしがみついた。

 

「お前と戦えば!そのドラゴンボールがもらえるんだよな!?」

 

カカロットも負けじと大声で言い返すと、それを聞いたタマガミは足を開いて構え、重そうなハンマーを軽々と振り上げてポーズを決める。

 

「その通り!オレはタマガミ・ナンバー・スリー!」

 

久々の燃える強敵を前に、カカロットの口角が吊り上がった。

 

 

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