もしもカカロットが幻想郷に落ちていたら   作:ねっぷう

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大変遅くなりました。
それはそうと連載開始から8年が経過したようです。8年間毎日この作品の事を考えてるのってヤバくないですか


第520話 「降魔が如き!魔人ウスターの本領!」

ウスターはいよいよ気を高め、本気を出す。全身に溢れ出た紫色のオーラが肉体から分離し、自由自在に動き回る巨大な手となってウスターに寄り添う。

 

「…」

 

タマガミもただならぬ予感を察し、真剣な表情でトライデントを握り直し、構える。両者の間には、しばし膠着した空気が流れる。一触即発…両方が互いの仕掛ける隙を伺っている。

 

その時。

 

「グオオオオオオオオオオ!!」

 

海中から、先ほどウスターに穴を開けられたクラーケンが飛び出してきた。怒りに燃え、大口を開けて二人同時に呑み込まんと襲い掛かる。

それを合図に、ウスターはクラーケンの影に隠れるように身を隠した。が、タマガミはクラーケンを挟んだ反対側を移動するウスターの気配を読み取っており、トライデントを大きく引いて構えエネルギーを込める。

そして空へ突きを繰り出すと、込められたエネルギーが斬撃となって一直線に飛んでいった。

 

「グオオオオ!?」

 

それはクラーケンの触腕を貫き、向こう側にいたウスターの眼前へ迫る。だがウスターはギリギリでそれを回避し、今度はタマガミへ一直線に向かってゆく。

その間にも、怒り狂ったクラーケンが何本もの触手でウスターを捕らえようと襲い掛かっており、続けて放たれるタマガミの斬撃へと誘導して当てていく。

 

「…!」

 

だが、タマガミがいると思っていた場所を見ても既にそこにタマガミはおらず、ウスターは少し面食らう。次の瞬間には彼女の真上を並走するように飛行していたタマガミは雨のような細かな気弾を降り注がた。ウスターはその場で止まり、逃げ場が無くなってしまう。

真上からは隙間ない弾幕が如き気弾、後ろからは巨大なクラーケン。

 

しかし、ウスターの闘志は揺るがない。

自身が操るオーラの腕を振るい、気弾の雨を振り払う。同時にクラーケンの触手を蹴りで弾き、オーラの手を握った拳で強烈な一撃を胴体へ叩き込んだ。

 

「グオオ…」

 

クラーケンは海に叩き込まれ、恨めしそうに海中からウスターを睨みつけながら深海へ潜って消えていった。

 

「邪魔が入ったな」

 

「よくあることだ」

 

ウスターとタマガミは軽口をたたき合い、もう一度攻防戦を繰り広げる。遠距離から空に槍を突き斬撃を飛ばすタマガミに、ウスターは真正面から突撃する。オーラの手で斬撃から頭を守り、さらに手を広げてタマガミの視界から自身を隠し、その隙にタマガミの背後へ回っていた。

 

「!?」

 

ドゴッ

 

次の瞬間、ウスターのパンチがタマガミの頭部へ直撃した。ゴギゴギと石や金属のようなボディが軋み、タマガミは下方へぶっ飛ばされる。

 

ガシッ

 

が、ウスターはオーラの手でタマガミの体を鷲掴みにし、動きを封じると同時に自身の元へ引き寄せる。そしてその顔面へ連続で拳を浴びせる。

 

「チィィ…ハアアッ!!」

 

タマガミも負けじと槍を振りかざし、オーラの手を貫通してウスターを狙う。しかしウスターも最小限の動きだけでそれを躱し、カウンターの肘打ちを胸に叩き込んだ。

 

「ごあ…アアッ」

 

魔人の本領を発揮し、オーラの手を操り怒涛の連携攻撃を叩き込むウスターに対して完全に劣勢となり押され始めるタマガミ。このまま戦い続ければ、第3魔界の時のようにタマガミが負けを認めるだろう。

しかし、この戦闘の様子を見ていたネバが不敵に笑う。

 

「ひひひ…どれ、戦いを面白くしてやろう」

 

そう呟くと、目が青く発光し何らかのエネルギーが発せられる。

一方、ウスターに防戦を強いられていたタマガミは、ネバの目によって送られてきた不思議なエネルギーを浴び、その上半身が青く発光し輝き始める。

 

「む…ぬぬ…!」

 

その瞬間、目に見えてパワーが膨れ上がり、ウスターの拳を片手で受け止めた。

 

「何…?」

 

タマガミは口元を引き結んだまま顔をゆっくりと上げ、目を黄色く発光させると、もう片方の手から発射した衝撃波でウスターを吹き飛ばした。

さらにタマガミは吹っ飛ぶウスターに追いつき、その背中を思いきり蹴り上げた。

 

「ぐお…!」

 

急激にパワーとスピードを増したタマガミの様子に、観戦していたカカロットや霊夢たちもおかしいと気付く。

 

 

「なんか…急に動きが良くなったな?」

 

「…まさか、ネバさん…?」

 

霊夢はすぐにそれがネバの差し金だと気付き、彼を睨みつける。

 

「ひひひ…あの魔人の願いを叶えてやったまでよ。もっと本気を出せるほど強い相手との試合をしたがっているようだったからな…」

 

 

ウスターが繰り出すオーラの手をトライデントで貫いて動きを封じ、守るものが無くなったウスターの腹へ至近距離からの気弾を炸裂させ、さらに蹴り付けて下方へぶっ飛ばす。

 

ドボ…ン

 

ウスターはそのまま海へ突っ込み、勢いのままに深くへと沈んでゆく。どんどん深く、光さえ届かない水底へと───

 

パリッ

 

だが、ウスターの全身が紫色の炎か電気のように激しく揺らめきだし、海底が明るく照らされる。そこに棲んでいた巨大な海棲魔獣たちがその恐ろしさを目の当たりにし散り散りになってゆく。

まるでエネルギーの塊そのものとなったウスターは姿勢を変え、一気に海上へ向かって高速で泳ぎ始める。

 

「…ん?」

 

海の様子をじっと観察していたタマガミは、海底から紫色の光が上がってくるのを見てトライデントを構える。

海が沸騰し泡立ち、蒸気が周囲を白く染める。

 

「ゼヤアアアッ!!」

 

次の瞬間、タマガミは構えていたトライデントを思いきり海に向かって投げた。青い気が纏われたそれは海に刺さったとたん周辺の水を全て跳ね除け、円柱状の穴が空く。だが、その穴の底で紫色の光が一層大きく輝くと、直後にはタマガミが投げたトライデントが凄まじい速度で投げ返され、タマガミ自身の顔の横スレスレを通過して遥か上空へと消えていった。

 

「貴様ァ…」

 

そして、海に空いた穴からゆっくりと、腕を組んで仁王立ちした姿勢のウスターがゆっくりと浮かび上がってきた。その姿は以前までのウスターとは異なり、まるで止め処なく溢れる闘気を圧縮したかのような容貌だった。

首の周りに紫色の電気か炎のような揺らめくオーラを纏い、それはマフラーのように後ろへ伸びてはためいている。さらには腕や足首にも同様のオーラが靡き、ウスターの銀髪が逆立つと共にオーラが混じって銀と紫のグラデーションが揺らいでいる。

 

魔芯解放

 

それは、生前のウスターが編み出した最終形態であり奥義。本来、生物が持つ「気」は肉体という形の中に留まるもので、あまりに強い気は体外へ溢れ出し放出されることもあるが、基本的にはそういうものだ。しかし魔芯解放は肉体そのものをも気に変換し膨大な力を得ることができるが、その膨大な気を強引に肉体の形に留めていることとなりそれは神業であり諸刃の剣。器なく溜められた水が流れて散るのは必然。

 

魔芯解放

降魔の相

 

しかし、ウスターは死後大界王星へと招待され、そこでカカロットや霊夢と再会し過去の英雄や傑物との試合を経ることで新たなる境地へ達した。

まずはカカロットの超サイヤ人のような爆発的な気の増加と霊夢の結界術からある着想を得た。超サイヤ人のように単純に魔芯解放の出力を大幅に高めると同時に自分の肉体の外殻を結界に見立てて認識・運用することでそれを押さえ込むことに成功している。

 

ウスターはタマガミを見据えたまま、顎で伝える。「かかってこい」、と。

 

「ウオオオッ!!」

 

タマガミは消えていったトライデントを操作して呼び戻し、怒号と共に強烈な一突き。しかし、ウスターは腕を組んだまま体の向きを90度変えるだけで容易くそれを躱し、タマガミの腹を思い切り蹴り上げた。

 

「ぐはっ!!」

 

打ち上げられたロケットの如く真上へビュンとぶっ飛んでいくタマガミ。その勢いは全く衰えず、雲を突き破ったところでその行き先には仁王立ちしたままのウスターが待ち構えており…

 

ドガッ

 

ただ空中で立っていただけのウスターの足にぶつかり、跳ね返される形で今度は下方へと真っ逆さまに落ちてゆく。

 

「おおおあああああ…!!」

 

そしてタマガミが海に激突する直前、目にも止まらぬ速度で追い付いてきたウスターの膝に弾かれ、海面と平行に吹き飛ばされた。

 

 

 

「ウスターのヤツ、生きてる時にアレ使えれば死なずに済んだのになぁ」

 

ウスターの戦いぶりを見ながらカカロットがそう言った。

 

「どういうことだ?」

 

と、グロリオが疑問を口にする。

 

「今のウスターが使ってるのは『降魔の相』っていう変身。元々は『魔芯解放』っていう変身だったんだけど、これは使うとすぐに死んじゃう諸刃の技だったのよ。でも、ウスターはそれ使って死んで大界王星に来てから物凄いスピードで魔芯解放を改良して新しい変身に昇華させたのよ」

 

「そういうこった。全く、なんでその熱意を生きてる間に発揮しなかったのかね…そうすりゃあ、死ぬ必要も無かったのによ!」

 

 

 

…お前はそう思うか、カカロット

 

ウスターは変わらずタマガミを圧倒しながらも心の中でカカロットに言葉を向ける。

 

元々はただのメイドとして働く女だった俺は、俺を殺そうとしたアルマンドへの復讐のために生き、結局はそれを成し遂げられなかったときに自分の生きる意味はなんだと考え続けた。

ひたすらに力を磨き最強にこだわり続け、そして幻想郷一武道会の存在を知り貴様や霊夢と出会った。それからは貴様らに勝利することが生きる意味となった。

 

(そいつは大事にとっておくんだな…)

 

結局はそれも叶わなかったがな。そして俺は再びこれからの生きる意味を見出すための旅に逆戻りだ。

魔界も幻想郷も抜け、外の世界を回った。あらゆる場所で鍛錬し、時には用心棒まがいの仕事もして、貴様らの子供…シロナにも会ったな。

だが、それだけ一人で力を磨いても、自分で納得がいくほどの成果は得られなかった。幻想郷での最後の決戦でも、俺の力は大して通用するものでもなかった。

 

(おい…俺は真っすぐ立ってるか?)

 

だから死に場所を求めた。使えば死ぬ技を開発し、役目を終えるための戦いにあえて首を突っ込んだ。その直前に、死後の世界があるという事を知ったからな。

 

死んであの世へ行った俺は大界王星へ招待されたが、まずは地獄にいた親友アルマンドに会って話をしたよ。

それから貴様らと再会したが…その時、俺は燃え上がったんだ。幻想郷にいたころとは比べ物にならんくらい強くなっていた貴様らを見て。

 

 

 

───わかるだろ?それから俺は自分でも信じられんほどのスピードで強くなった。

俺がこうして貴様らと並んで戦えているのは…貴様らのおかげなんだよ!

 

ウスターはさらにタマガミを真上から蹴りつけ、海中に叩きこむ。深くへと沈んでいった様子を見届けたウスターは、それを追って自分も海へ突っ込んだ。

 

「くっ…!」

 

一方、タマガミはダメージを負いつつも態勢を整え、トライデントを構えた。そして、予想通り自分を追って海へ入ってきたウスターへ向けて突撃し、槍による連撃を浴びせる。

 

キンッ キキキキキキン…

 

しかし、ウスターは片足のつま先だけでその全てを防ぎ、未だに組んだ腕すら解かない。そして、最後の一蹴りによって槍は柄を残して砕け散り、海の中で散っていく。

 

「な…!」

 

驚くタマガミに対し、ウスターは再び蹴りを放つ。だがそれは気を込めたもののタマガミに直撃はせず、蹴りの軌道上に斬撃の如き衝撃波が発生した。

 

ズバアアアッ!!

 

その衝撃波により海は縦に割れ、生じた風圧で吹き飛ばされるタマガミ。

 

「ぬああああ…!!」

 

ウスターはその様子をじっと見据えながら、首元になびくマフラーのような紫色のオーラをまるで自分自身の口のようにぐわっと開き、その中に溜めていたエネルギーを砲撃のように解き放った。

 

「『降魔口砲』!!」

 

ドオオオッ!!

 

「!?」

 

凄まじい勢いで迫りくる膨大なエネルギーの柱を、タマガミは間一髪両手で掴み、抑え込む。だが、あまりの威力に耐え切れずにそのままグングンと後方へ押し出されていく。

 

「ぬううう…!!ッハアアア!!」

 

タマガミは全パワーを集中させ、最大限の出力でウスターの降魔口砲を空へ向けて逸らした。しかし、奇しくもこの状況は第3魔界のタマガミと同じだった。

ウスターにとってはダミーに過ぎない一撃を逸らすことに全力を注いだ結果、その直後に大きな隙を晒す。案の定、隙だらけになったタマガミの顔面へウスターの蹴りがクリーンヒットした。

 

「ぐ…」

 

タマガミは首に力を込めて何とか耐え切ろうとするも能わず。ウスターの攻撃による衝撃を殺しきれぬまま吹っ飛ばされる。

叫び声を上げながら上空の惑星に激突し、それを砕いて尚も止まらずに打ち上げられる。

 

ガシッ

 

青色に発光していたタマガミのボディは既にもとに戻っており、いつの間にか軌道上に先回りしていたウスターがタマガミの首の後ろを掴んで止めた。

 

「まだやるか?」

 

その問いかけに、タマガミは項垂れながらも口を開く。

 

「降参だ。お前の力を認めよう…」

 

ウスターはその言葉を聞くと、自分が打ち負かした相手であるタマガミに敬意を払うかのようにそのまま彼を元の岬まで運び、そっと地面の上へ降ろしたのだった。

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