「ダーブラ様!ダーブラ大魔王様!!」
第1魔界の最奥にして中心部、魔王城にて大魔王ダーブラの名をけたたましく呼ぶ声が響く。声の主である小柄な影、大魔界の副大魔王に座するゴマーは慌てた様子でダーブラの部屋のドアを開き、中に飛び込む。
「なんだ…うるさいぞ…」
部屋の中は一面が真っ白く、中央に大きなベッドが置かれ、その周辺には無数のコードを伸ばした医療機器が立ち並ぶ。
そしてベッドの上に横たわり、呼吸器やチューブに繋がれているのは大魔王ダーブラに他ならなかった。
トキトキ都でのサラガドラとの戦いで、ダーブラは彼の攻撃により甚大なダメージを受けた。死にこそはしなかったものの、半身が吹き飛び、肺などの内臓を損傷されたことでもはやまともに動くことさえ儘ならず生命維持装置が欠かせない状態となって生き長らえていた。
「失礼しました…!しかしダーブラ様、大変な事態でございます!第3、第2魔界のタマガミを倒しドラゴンボールをふたつも手に入れた者どもがいるようです!さらに、この第1魔界のタマガミすら…しかもそれをやったのはドクター・アリンスであるようで…!」
「なに…!?」
アリンスはダーブラ直属の研究者として仕えていた。その彼女がまさかドラゴンボールを手に入れるとは思っていなかったようで、驚きを隠せなかった。
ゴマーは杖を使いダーブラの目の前に状況を確認できる窓を作って見せる。そこには、確かにドラゴンボールを手に持つアリンス、そして見たことのない外の人間を含めた集団がふたつのボールを手にしている姿があった。
ダーブラは苦し気に唸りながら頭を抱え、少し何かを考える。
「…ゴマー、貴様が事態を何とか治めて見せろ」
「はいっ!…はい!?」
「やって見せろ。これを治めた暁には…ゴマー…貴様が大魔王になれ…」
「私めが…大魔王に…!!?」
ゴマーはダーブラの言葉が信じられないと言った様子でわなわなしながら聞き返す。
「トキトキ都で重傷を負った私をこの大魔界へ送還してくれた貴様ならわかるだろう…今の私ではもう大魔王は務まらん、もう命も長くないからな…序列で言えば貴様がなるのが順当だ…大方、アリンスもドラゴンボールを使って大魔王の座を狙っているのだろう、私の寝首を掻こうといういうのか、それとも貴様と争うための力を得たいのかは計りかねるがな…」
「…ははっ!勿体なきお言葉!このゴマー、必ずや事態を収束させダーブラ様の期待に応え、大魔王の座に就いて見せましょう!!」
「頼んだ…」
ゴマーは今にも飛び跳ねながら歌い出したい気持ちを抑え、速足で部屋を出た。そしてパタンと扉を閉め、外で待機していた側近の魔人デゲスに話しかける。
「…おい、聞こえていたか?」
「ええ、ゴマー様が持っていた盗聴器で会話を聞いていましたから」
「くう~~~~ッ!!ついにオレも夢にまで見た大魔王だ!!いっちょやったるぞデゲス!!」
「はいゴマー様!」
ゴマーとデゲスはあからさまな上機嫌でスキップしながらその場を去っていった。
ウスター、霊夢、カカロットはアリンスの宣戦布告に対してこちらも戦闘態勢に入ることで意思を示す。
アリンスは不敵な笑みを崩さないながらも、ふうっとため息を吐く。
「勝負は勝負でも、スマートにいきましょうよ。いい?こっちの代表とそっちの代表が戦って、負けた方が勝った方に…持っているドラゴンボールを全て渡すというのは?」
アリンスの提案に、霊夢たちはヒソヒソと話し合う。
「ってことは結局、タマガミの役割がアイツらに置き換わっただけだな?」
「ということは…第1魔界のタマガミと戦う予定だった私が出る番ってことでしょ」
「…だな」
霊夢が代表として前に進み出る。
「私がやるわ。ところで、タマガミを倒したのは誰なの?」
そう尋ねられると、魔人クウがにやりと笑いながら言った。
「俺は魔人クウ!俺は負けた!タマガミを倒したのは魔人ドゥー!俺の弟だ!」
クウに親指を刺されたドゥーは、飛ぶ蝶を目で追うのを止め、片手を高く上げて挨拶する。
「んちゃ!オレ、魔人ドゥー!好きなものはチョコクッキー!」
「いらんこと言うんじゃないよ!」
アリンスが突っ込みを入れるが、ドゥーはどこ吹く風と言った様子。
霊夢はクウとドゥーの強力な力を感じ取り、分析の思考をする。
(どちらもふざけてるけど強さはかなりのものね…でも感じた限りクウは計算高く戦闘前にパターンを組むタイプ。ドゥーは間違いなく直感のパワータイプ…でも戦闘IQは高い感じね)
「じゃあこっちからはドゥーが行きなさい」
「ん、わかった」
アリンスに指名されたドゥーは返事をし、ドシドシと歩いて霊夢の前に進み出る。両者はしばし睨み合った後、アリンスが勝負開始の合図をする。
「始めなさい」
「ふんふーん!」
直後、ドゥーは頭に空いている小さな穴からプシューッと蒸気を噴き出し、一気に力を高める。対する霊夢は先手を打ち、ドゥーの顔面へ拳を叩き込む。
霊夢はかなり本気で殴ったはずだが、ドゥーは拳がめり込んだ顔面をグググ…と正面を向かせ、今までのどこかふざけた態度からは一変した凶悪な表情で霊夢を睨み…
口を開き、気弾を発射した。間一髪、霊夢は身を屈めてそれを躱し、距離を取る。が、ドゥーは両腕を伸縮させて霊夢の両肩を掴み、逃げられないようにしてから口の中にさらに強力な気を込める。
霊夢はドゥーの力から逃げられないと悟ると、咄嗟の判断でその場で猛スピードで体を独楽のように回転させた。
「う、ああああ」
ドゥーの腕は一本のロープのように捩じれ、ドゥー自身の体もそれに引っ張られて回転しながら空中へ舞い上がる。そして、霊夢は向かってきたドゥーを蹴り飛ばした。
ボールのように勢い良く吹っ飛ばされ、城塞跡の壁に激突するドゥー。
が、ドゥーは体を折り畳んで正真正銘ボールになって霊夢に体当たりを食らわせる。そして体勢を崩した霊夢の足に自身の頭部に生えた触角のような細長い器官を巻きつけ、そのまま霊夢を持ち上げ地面へ叩きつけた。
「うわっ」
何度も地面へぶつけ、さらに抉れて荒れた石のタイルに擦り付けるように引きずってから上空へ投げ飛ばす。しかし、霊夢は逆にドゥーの触角を掴んでおり、投げ飛ばされずにドゥーの目の前へ留まっていた。
「つっかまえた~」
直後、霊夢の体から深紅の霊力が立ち昇り、
そして、呆気に取られているドゥーの顔面、腹へ怒涛の拳の連打を浴びせた。
「ぬうううう…!!」
足を踏ん張り耐えていたドゥーだが、だんだんと足が後ろへずり下がっていき…
「ふふふ…ふん!」
さらに霊夢が霊力を高め、その髪すらも燃える炎のような鮮やかな暖色へと変わり、白い光の粒が周囲に舞うと、ドゥーは力負けし宙へ放り出されていた。
「ふがぁ───ッ!」
だが、空中でさらに力を高め、雄叫びと共に頭部の穴から大量の蒸気が噴き出す。周囲が霧が立ち込めたかのように真っ白になり、空中で静止したドゥーは再び霊夢に襲い掛かる。
超夢想天生を発動した霊夢は、自分の守りに回した霊力を下回る攻撃であれば基本的に自動で回避することが可能で、さらに最小かつ的確な反撃を行える。対するドゥーは気を最大まで高め、それぞれの力に呼応するかのように赤黒い空にさらにどす黒い黒雲が立ち込め、渦巻いてきている。
「…?」
しかし、観戦していたカカロットはその黒雲に違和感を覚える。
だがその違和感の正体に気付けないまま、いよいよ両者がぶつかり合う…その瞬間。
「おいおい、あの雲は…!」
黒雲から特大の稲妻が迸り、霊夢とドゥーの頭上目がけて落ちてくる。二人はそれに間一髪気が付くと互いに距離を取るように飛びのき、ギリギリで躱した。
石畳がめくれ上がって弾け飛び、凄まじい衝撃波が周囲を襲う。
「な、なに!?」
(ぶち殺すぞ貴様らァ、このガルフートがお出ましじゃあ)
稲妻と共に、というよりも電気を帯びながら空から高速で降り立つ様が落雷と見紛う迫力であった巨竜ガルフートが姿を現していた。
「あはははっ、馬鹿どもが雁首揃えてんじゃないの」
さらに、ガルフートの頭の上に乗っている何者かがいる。その者こそ魔界の人造人間の片割れ、パストだった。
カカロットたちにとっては見覚えのない者だが、それでも一目でパストの実力を把握し身構える。
さらに次の瞬間、また別の何者かがこの場へ現れる。
「今度はなんだよ!!」
カカロットがツッコむと、突如出現した紫色の玉が溶けるようにして中にいた小柄な者が姿を現す。
「お取込み中失礼する!貴様ら、ここが大魔界であると知っての狼藉か?不届きな輩には即刻鉄槌を下してやろう!この…副大魔王ゴマーがなァ!!」
副大魔王ゴマーは不敵にニヤけた表情で両腕を広げ、魔導の杖を掲げて高らかに宣言する。
乱入に次ぐ乱入、次から次へと現れる喧々たる来訪者たち。カオスさながらの様相を呈する大乱闘の予感に、霊夢たちはどう立ち向かうのだろうか…!
「めんどくさぁ…」
【現在公開可能な情報】
現在集結している勢力
・カカロット、霊夢、ウスター、グロリオ、パンジ、ネバ
・アリンス、クウ、ドゥー
・パスト、ガルフート
・ゴマー
この場にいるが戦いに参加していない者
・タマガミナンバーワン
どこかで様子をうかがっており、今にも突入しようとしている者
・バルフート