もしもカカロットが幻想郷に落ちていたら   作:ねっぷう

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あけましておめでとうございます、今年もよろしくお願いします。


第523話 「悪夢!第三の眼は誰の手に!?」

今、第1魔界の城塞跡は混沌を極めていた。

 

クウやドゥーを従えるアリンス陣営とドラゴンボールを巡って決闘していたカカロットらの前に乱入したのは、副大魔王を名乗るゴマー、そして巨竜ガルフートを従えるパストという魔人。

 

「キャハハハ!馬鹿どもが雁首並べて揃ってるじゃない!」

 

「…お前はパスト?」

 

アリンスはパストの事を知っているようで、彼女の名前を呼んだ。そもそも、パストもアリンスの一派の一員であったはずだ。アリンスは界王神が大魔界のドラゴンボールを狙っていることをパストの報告によって見抜き、同じタイミングでグロリオを案内役として差し向けたのだから。

 

「ようアリンス。念願のドラゴンボールはまだ揃わねぇようね?でもそんなものに頼るより…私は大魔王になるのにもっと最適なアイテムを手に入れてきたのよ」

 

パストはそう言いながら、二つの小さな玉を取り出した。それは赤い瞳の眼球のようなものであり、ぎょろりと蠢いていた。

 

「そ、それはまさか…!魔のサードアイ!?」

 

ゴマーがそれを見て仰天する。アリンスもハッと驚いたように魔のサードアイを見つめる。

 

「そう!アリンス、お前はグロリオの報告を受けても後回しにして重要視してなかったみたいだけど、私はキッチリ魔のサードアイを手に入れてきたよ。あの通信を聞いていたからなぁ」

 

「そうか…あの時のグロリオの話を傍受していたのね」

 

「ああ…そして、魔のサードアイは身に着けた者に絶大なパワーと魔力を与えるのよ。こんな風にね!」

 

そして、パストは魔のサードアイのひとつを自身の額に押し当て、取り付けた。その瞬間、彼女の体から禍々しい紫色の光が溢れ出す。

 

「おお…!」

 

溢れ出る魔力は自動的に彼女の肉体を最盛の状態へと戻す。かつてサラガドラとの戦闘で失った右腕が元に戻り、それが極まってさらに変身形態である超パストへと変身を遂げ、その目が黒く染まり、白い髪が逆立っている。

 

「キャハハハハ!素晴らしいじゃない!全てのダメージが無くなって…ずっとできなくなってた変身までできるようになったわ!」

 

漲る魔力はパストを強制的に全盛期のスペックへと押し上げた。その源たる魔のサードアイが彼女の額で見開かれている。

霊夢やカカロットたちはそんなパストを見ながらも、特に焦るでもなくただ黙っていた。

 

(パスト様…身共にもそれを…)

 

「もちろん、約束だったからなぁ。既にお前に与えたやった知性と、魔のサードアイがもたらす魔力があればお前の夢も叶うこと間違いなしだろう」

 

パストは残るひとつのサードアイを摘み、そのまま足場にしているガルフートの額に差し向ける。今までサードアイ無しで強力な力を秘めていたガルフートがさらに力を得てしまうが…

 

パキ… キ…

 

「…?寒い…?」

 

(まさか)

 

しかし、周囲が急激に冷え込み、冷気が漂ってきていることに気付く。

そして次の瞬間…

 

ドゴオオオッ!!

 

巨大な物体が凄まじい勢いで突進してきた。それに激突されたガルフートは体をくの字に曲げながら吹き飛ばされ、頭の上にいたパストも投げ出される。

 

(姉上!!決着をつける時だ!!)

 

(愚妹かァ!!身共の邪魔をしくさりおって!!)

 

突っ込んで来たのは妹のバルフートだった。2体の巨竜は長い体を絡ませもつれ合いながら、振動と共に転がるようにこの場から離れていった。

 

「チッ、邪魔が入ったわね…!」

 

パストは城塞の塔の天辺に着地した。が、その手にあったはずの残るひとつのサードアイが無くなっていることに気付く。

 

(しまった…)

 

バルフートの突撃を受けた際、衝撃によってつい手放してしまったと気付く。きっとすぐ近くに落ちているはずだ、今すぐ探せばまた拾える…

そう考え、目線を下へ向けた瞬間、視界の端に金色を捉えた。

 

「うおっ」

 

迫っていたのは、超サイヤ人と化したカカロットの拳だった。パストはそれを間一髪で、それでも余裕の伺える声を上げながら顔を逸らして避ける。

 

「やってくれんね」

 

「だろ?」

 

そして次の瞬間、両者の拳と拳がぶつかり合った。

 

 

 

一方、アリンスはカカロットがパストとの戦いに向かったのを見届けると、今度は霊夢の方へ目を向ける。

 

「何やってんだいお前たち!ドラゴンボールを勝ち取る戦いはまだ終わってないよ!」

 

そう言われたドゥーは再度霊夢を睨み、闘志を露わにする。

だが、霊夢はその様子を少し眺めた後、口を開く。

 

「あのさ、さっき少しやって分かったんだけど…たぶんアンタじゃ私には勝てないわよ」

 

「なに~…?」

 

霊夢の言葉にドゥーはムッとなり、アリンスも霊夢の言葉に首をかしげる。

 

「…どういうつもり?」

 

「言った通りよ。だからさ、クウだっけ?アンタも加わってふたりでかかってきてもいいよ?」

 

「アリンス様、奴さんえらく自信過剰ですけどどうします?」

 

クウも霊夢を指差しながらアリンスに尋ねた。

 

「…そうね、でも後悔しない?決着がついた後で多対一だったから今の無し!…とか言わないでよ?」

 

「もちろん。兄弟なんでしょ?じゃあ仲良く協力して、敵を倒してみなさいよ」

 

「じゃあ二人とも、いきなさい。今の発言を“縛り”とするわ!破ればペナルティがあるのはアイツ!」

 

「アイアイサー!」

 

魔人クウも先頭へ加わり、ドゥーと並ぶと二人同時に霊夢へと襲い掛かる。

自身の体質を活かしたドゥーのハチャメチャな攻撃をサポートするかのように、的確な牽制や隙つぶしを差し込んでくるクウ。

 

「ホチャ!アチョオ!!」

 

クウもクウでふざけた戦い方だが、それでも霊夢はその攻撃をすべて捌き、ふたり同時に相手しても互角かやや優勢の戦いを見せている。

というのもこれには霊夢なりの考えがあり、現在混戦となっているこの場でフリーになっている者は何をするかわからないので、とりあえず自分と戦わせることで注意を向けておきたいという狙いがあった。

 

(あとは…ウスター、そっちは任せたわよ)

 

 

 

「な、なんなんだ貴様はァ~~~!?」

 

ゴマーは自身の周囲にいくつもの魔方陣を展開、その中央から無数の魔力の砲弾を放つ。それらは弾幕となって絶え間なくウスターへと降り注ぐが…

 

ヒュン

 

ウスターも目にもとまらぬ身ごなしで隙間を縫い、蹴りで魔方陣を破壊し道を開くと一気にゴマーへ接近し腕を振り上げる。

 

「ぎゃあああ~~!!」

 

ゴマーは叫びながらも防御に特化した魔法陣を咄嗟に展開し、ウスターの打撃から身を守るとその脇腹にカウンターの魔力の波動を命中させつつさらに距離を置いて逃げた。

 

「ち…」

(アイツ…パワーは大したことないが魔力とその操作が卓越していて厄介だな…副大魔王とか言っていたか、大口も伊達ではないな)

 

その通り、ゴマーは力はそれほどでもないがこの通り魔力による無制限の攻撃と運用方法の無駄の無さが厄介だとウスターは思った。魔力を使っての魔道の使い方、その物量においても大魔界では一流だろう。

 

(だが…)

 

ウスターは目を閉じて全身の筋肉を緩め、脱力する。その様子を不思議に思ったゴマーが動きを止め、訝し気に目を細める。

 

「なんだ?」

 

「ふっ!」

 

そして、目を見開くと今度は一瞬にして全身の細胞を戦闘態勢に切り替え、気と魔力を解き放つ。紫色のオーラを身に纏う降魔の相となったウスターは、先ほどとは比べ物にならない勢いでゴマーへ向かう。

 

「うおおおお!?」

 

ゴマーは自身を囲うように竜巻を発生させ、魔方陣から放出した魔力をそれに乗せて旋回させ荒れ狂うミキサーを形成し、身を守ろうとする。

 

ガシッ ガガガ…

 

が、ウスターは両手をオーラの爪で覆い補強し、それを強引に魔力の竜巻に押し当てる。ガリガリと削れるような音が響くが、それはウスターの手ではなく竜巻が強引にこじ開けられる音だった。

 

バギィン!!

 

竜巻を真っ二つに引き裂かれたゴマーは視界に飛び込んできたウスターの姿に驚いて飛び上がる。

 

「ほぶっ」

 

次の瞬間、ウスターの豪速の蹴りを顔面へ受けたゴマーは驚きの声や悲鳴を上げる暇もなくぶっ飛ばされ、城塞の壁を突き抜けて地面へ激突し、転がっていく。

 

「ぐ…いでで…クソ!アイツ強すぎるだろ…このままでは私が次の大魔王になる日が遠のいてしまう…!何か手はないか…」

 

ゴマーはダメージを負った体を起き上がらせようとする。しかし、このままもう一度飛べばウスターに見つかり、さらに追撃を受けてしまうだろう。何かいい手はないかと思案していた時…

 

「ゴマー様!ゴマー様!」

 

なんと、側近であったデゲスがしゃがんだまま素早く歩いてきた。

 

「デゲスか!何かいい作戦でも思いついたのか?」

 

「ゴマー様、これをご覧ください」

 

そう言いながらデゲスがゴマーに差し出したのは…

 

「これは…魔のサードアイ!?どうしてお前が…!」

 

「遠くからゴマー様のご勇姿を拝見しようとしていたところ、私の近くへこれが飛んできたのです。もしやと思い持ってきたのですが…」

 

「そうか、あのパストとかいう魔人が吹っ飛んだ時に飛んでいったのだな!でかしたぞデゲス!」

 

「さあゴマー様、サードアイを付けちゃってください!そして私も副大魔王に…」

 

「わかっている!してやるからさっさよ寄越せ!」

 

デゲスからサードアイを受け取ろうとするゴマーだったが…

 

「そこか」

 

空からウスターの呟きが聞こえ、次の瞬間に彼女の放った一発の気弾がすぐ付近に着弾し、ゴマーとデゲスは爆発に吹き飛ばされた。

 

「どわあああ!!だが…手放すものか…!サードアイは!!」

 

ゴマーは吹き飛ばされた勢いのまま素早く地上を走り、退避を図る。ウスターは続けて気弾を撃ち込み、着弾させるが、ゴマーは再度それを躱し…

今度はゴマーが、空から降り注ぐウスターの猛攻をかいくぐりながら魔のサードアイを装備する隙を確保しようと奮闘するのだった。

 

 

 

そして、視点は再びカカロットへ。

目の前にいるパストに拳を振りかぶり、目にもとまらぬ連撃と気弾を織り交ぜた龍撃拳を繰り出す。

 

「でやああああ!!」

 

だが、パストはそれを喰らっても何ともないように顔を上げ、カカロットの頭を掴むと地面へ叩きつけた。

 

「ぐ…!」

 

石畳が砕け、破片が浮かび上がる。そのままグリグリと地面へ押し付け、背中に衝撃波をぶち込むとカカロットの体がメキメキと音を上げながら埋め込まれていく。

 

「キャハハハ!!」

 

そして、パストは魔力の波動を操作し地面ごとカカロットを空高く掬い上げた。

 

「さっさと殺してあげるわ、オッサン!」

 

打ち上げられ、石の破片と共に宙を舞うカカロット。顔からは血が流れてこそいるが…

 

「うれしいコトを言ってくれるじゃねぇか」

 

彼の表情は気味が悪いほどに楽し気な笑顔を浮かべていた。

その直後、カカロットの体から黄金が弾けた。溢れる光がスパークとなってバチバチと迸り、呼応するかのように髪が長く伸びる。

 

「…へえ」

 

「久々に楽しくなってきちまったよ。徹底的に、お前を痛めつけたくてしょうがねぇや」

 

超サイヤ人3となったカカロットが、ゆっくりとパストを見下ろした。

 

 




実はこの物語も全体で見るとかなり佳境に入ってきてます。最近投稿ペースが落ちていて申し訳ありませんが、連載開始時より密かに掲げてきていた「一話一話の文字量を長く感じない程度に抑え気軽にどんどん次へと読み進められる作品」をモットーに、今年いっぱいで無事に完結させられるように描いていきたいと思っております。
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