もしもカカロットが幻想郷に落ちていたら   作:ねっぷう

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第524話 「誰もいない空を振り仰ぐ!」

時間はほんの少し遡り、カカロットがパストと戦い始める前の事。

 

「ちょっとそこのお前」

 

「あ?俺のことか?」

 

アリンスが小さな声でカカロットに呼びかけた。

 

「そうよ。あの魔のサードアイについて…どこまで知っている?」

 

「どこまでって…ただデコにつけると強くなるってんだろ?」

 

「じゃあ具体的な効果も、外し方も知らないようね」

 

「効果?外し方?」

 

「恐らく個人差はあるのだろうけど…私が調べたときに使った文献には使用者に膨大な魔力を与え、尽きることのないエネルギーは使用者に無限の再生力を与える。さらに再生するごとに魔力より強力になってゆくともあるわ。そしてアレの外し方は…使用者の後頭部を三回連続で叩くこと。そうするとサードアイを取り外せるらしいわ」

 

「つまりアイツを倒すには…再生させない程度の攻撃で隙を作り、後頭部を狙う…」

 

「そういうことよ」

 

「…だがなんでお前はそれを俺に教える?ドラゴンボールが欲しいんならよ…アイツに俺らを倒させた方がいいじゃねぇか」

 

「確かにそうね。まあ利害の一致って奴よ、まずは邪魔を片付けてから…ドラゴンボールを懸けて戦いましょうよ」

 

「へ…そりゃそうだ」

 

「それと注意しなさい。アイツが使う魔法は…」

 

「大丈夫さ、わかってる」

 

「え…?」

 

「アイツの事はちっとばかし知ってんだよな。それよりも…なぁグロリオ」

 

しばらくアリンスと会話していたカカロットだったが、そこでグロリオに話しかけた。

 

「…なんだ?」

 

突然名前を呼ばれたグロリオも困惑しながらカカロットの近くへ来る。

 

「お前のボスもこう言ってることだしよ、お前も少し…手を貸しちゃくれねぇか」

 

「オレの手を?…何故だ、お前たちの戦いにオレがついていけるとは…」

 

「大丈夫だ、俺を信じろ。これだけ覚えとけ…『ヤツは最後に、誰もいない空を振り仰ぐ』」

 

──────

 

 

「テメェよぉ、前に俺のガキ…虐めてくれてたよな」

 

超サイヤ人3と化したカカロットは、ゆっくりと地面へ降り立ちながらパストにそう言った。

 

「んん…?ああ、その金髪見覚えあるなって思ってたけど…そういうことね。でもどうでもいいからもう名前も覚えてないっつーの!キャハハハ!」

 

パストは笑った。が…

 

「確かに笑えるよな、俺のガキ程度にやられそうになったんだろ?インチキ手品師」

 

くす…

 

笑っていたのはカカロットも同じだった。毛の消えた眉を顰め、まるでパストを見下すかのように口元をにんまりと曲げて、嘲笑ったのだ。

 

「クソジジイ、テメェから先に殺す!!」

 

パストは両手を前に向け、魔力を溜め込む。それを見たカカロットは瞬時に後ろへ飛び退くが…

 

ボオオウッ!!

 

突然、黄緑色や紫色となったサイケデリックな毒々しい色合いの爆炎が彼を取り囲うように発生した。それらは連鎖するようにさらに大きく炸裂し、カカロットを容易に包み込んだ。

 

「思い知ったか!」

 

パストは念押しと言わんばかりに荒れ狂う爆炎をさらに圧縮し、カカロットを逃げられぬまま封殺しようとする。

 

 

だが、次の瞬間に爆炎の中からカカロットが飛び出した。その体には鮮やかな炎が付着しており、黒煙を吹き上げていた。

燃えている。カカロットは自身の体が燃えているのも構わずに一気に宙へ跳躍していた。パストもあり得ないものを目撃するかのような目でそれを見上げていた。

 

「ぃえええええええィ!!」

 

そして、割れ鐘のような気合の掛け声と共に、カカロットは悪鬼の如き表情でパストの脳天目掛けて狙いを定める。その時、パストはカカロットの背後に巨大な猿のような獣の幻影を目撃し、咄嗟に体を横へずらした。

 

漸!!

 

同時に振り下ろされたカカロットの右腕と右足が、それまでパストが立っていた地面を狭く深く抉り抜いた。

 

「キサマァァ」

 

パストは顔中に冷や汗を伝らせながら震える声で呟く。

 

「次は…外さねぇぜ」

 

そう言ったカカロットの瞳は、パストにとっては至近距離で顔を覗き込まれているかのように鮮烈なものとして映った。

パストは抉られ、あまりの威力に溶岩化している地面を一刻も早く視界から外そうと、カカロット目掛けて魔力の波動を無数に撃ち込む。カカロットは後ろへ飛び退き、それを躱してゆく。

 

「逃げたって無駄だよォ!」

(今のが当たっていたら…)

 

パストは無尽蔵の魔力により波動弾をばら撒きカカロットを攻め立てながらも、その脳裏には先刻のカカロットの一撃の威力と、もしもそれが直撃していたら自分はどうなっていただろうという最悪の結果がどうしても過ぎり戦々恐々としていた。

 

 

「ちょっと…何をやってるのよあの男は!」

 

そんなカカロットの行動を見て、アリンスは焦っていた。

 

「アリンス様、どうしたのですか?カカロットの戦い方に何か問題が…?」

 

グロリオがそんなアリンスへ質問する。

 

「あのパストが得意な魔法は知ってる?それは『伝達』よ。自分と他人を魔法の糸で繋いで感覚や反応を共有する…それをパスト自身とあの男を繋げてしまえば、あの男は大きな威力で攻撃するほど自分もそれを喰らってしまうことになる…

 さっきあの男はそれを『知っている』と言った…ならどうしてあんな危険な戦い方をするのよ!今のがもしも直撃していたら、それを受けるのはあの男自身なのよ?しかもパストにはサードアイによる再生能力がある…攻撃するだけ無駄にもなるし…」

 

それを聞いたグロリオはカカロットを見つめた。同時にグロリオはカカロットの言葉を反芻する…『ヤツは最後に、誰もいない空を振り仰ぐ』。聞いた時はどういうことかと思ったが…

 

(まさか、そういうことなのか…?)

 

 

カカロットはパストの放つ魔力の弾を避けながら戦場を縦横無尽に駆け回る。

 

「いつまでそうやって逃げ回ってるつもりだ!?私はずーっと魔力を放出できる!無限に!いつかはテメェに当たるんだよォ!!」

 

確かに、カカロットは最大限のパワーを発揮できる超サイヤ人3に変身したにも関わらず、先ほどから逃げてばかり。

 

(確かに俺としたことが…慣れないことをやってるな。しかも、あの時を思い出す…)

 

カカロットは生前での最後の戦い、ツルマイツブリ山でのフリーザとの戦いを思い出していた。あの時、カカロットはヒットアンドアウェイの戦法を休まずに丸2日間近くも続け隠れながらフリーザを攻撃し続けていた。

 

「もう一度…やってみようかい」

 

そして、微かな笑みを浮かべてそう呟くと、再度跳躍し、宙を翻りながらパストの頭頂部へ狙いを定める。

 

 

「飛んだら落下点が丸わかりでしょうが!パストは待ち構えてるじゃない!」

 

思わずアリンスが焦って叫んだ。

 

 

カカロットは先ほどのように、右腕と左足に気を込めながらそれを構え、パスト目掛けて振り下ろす。速度も強さも、先ほどと一切変わっていない無慈悲な一撃。カカロットの背後にはまたしても大猿の如き気迫が浮かび上がった。

だが…パストはカカロットへ何発もの魔力の波動を命中させながら、襲い来る一撃を躱して見せた。

 

「うお…」

 

眼前スレスレを大猿の気迫が通り過ぎ、風が顔を払う。肝が冷えたが、その攻撃を完璧に躱し、かつカカロットへはカウンターをいくつも叩き込んでやった。

 

「きゃはは…当ててやったぜぇ…!」

 

焼け焦げ、ボロボロになったカカロット。地面へ着地したが、直後によろけてしまい…

 

ザッ

 

が、カカロットはすぐさま飛び跳ね、再びパストから距離を取る。

 

「また逃げんのかよ!」

 

だが、パストは内心でほくそ笑んだ。

 

(今度もあの攻撃を避けることができた。くくっ、わかってきたぞ!あのイヤな『気迫』を、アイツは攻めてくるときに出すんだ。

 それを感じたら、それを避ければイイ!)

「分かれば次こそ殺してやるよ!」

 

 

アリンスは爪を噛んで焦りながらカカロットとパストの戦いを見ているが、グロリオは真剣な眼差しで思考しながら彼の行動を分析していた。

 

(今までの戦いでも、カカロットは無駄な攻めはしなかった…だとしたら──カカロットは二度飛んだ。パストの感覚を繋げる魔術があることを知り、それが悪手と分かっていながら。

 そしてパストは今、カカロットを狙い撃つことに夢中だ。それはカカロットが挑発したから)

 

戦いを始める前、カカロットがパストを煽っていたことを思い出す。

 

(あの時パストはこう思った…『インチキ手品と嘲笑った私の魔術で死んでゆくコイツの顔が見たい──』

 大規模な破壊力の魔力を放ったらそれは見られない。カカロットが言葉で誘導したからだ…だとしたらカカロットには考えがある!そして俺に言ってくれた…『ヤツは最後に、誰もいない空を振り仰ぐ』…)

 

 

カカロットは長い金髪を振り乱しながら、パストの放つ魔力の波動を避けて走り続ける。着弾した波動はその場で燃え上がり、黄緑色と紫色の爆炎を噴き上げる。

 

(ち…あの波動弾を見切ってやり過ごしたつもりだったが…やっぱ威力があったな。かなり燃やされちまった)

 

先ほどの攻撃ざまにカウンターとして受けた魔力が当たった個所の服が燃え、素肌に火傷を負っている。そして着弾した際の爆発は当然、体内にもダメージを及ぼしている。正直、そう何発も多くは喰らえないだろう。

 

(でも…思ったより喰らい付いてくれてるからいいか)

 

「バカが、直線で逃げやがってよ!すぐ仕留めてやるよォ!」

 

パストはさらに激しい魔力を放ち、いよいよカカロットにトドメを刺そうとする。

 

(あとはグロリオ、お前次第だ!)

 

す…

 

だが、カカロットは先ほどパストに地面へ押し付けられた際に割れて捲れ上がった石畳の瓦礫の裏を通り過ぎると見せかけ…隠れて姿を消した。

 

「な…消えた!?」

 

パストは魔力を放ち、瓦礫を粉々に破壊する。そこにカカロットはおらず、困惑するパストだが、落ち着いてカカロットの「イヤな気迫」を探る。

 

「上手く消えたと思ってんだろうが、私はもうテメェの気配は覚えてるんだぜ!それがわかりゃ…」

 

案の定、パストの背後にあたる位置から大猿の幻影にも見える「イヤな気迫」が立ち昇った。

パストは振り向き、魔力の波動弾を気迫目掛けて放った。

 

───ヤツは最後に、誰もいない空を振り仰ぐ

 

 

「あの男…殺気だけを宙へ放り上げたというのか…」

 

アリンスにはこう見えていた。カカロットはパストの背後で堂々としゃがんでいるのにも関わらず、パストはそれに気付くことなく何もない空へ向かって攻撃を放った。

 

パスト自身も、呆けたようにその光景を眺めていた。上から覆いかぶさるように襲い来る気迫の幻影は、自分の放った攻撃を透かし、そのまま何事もなかったかのように消えていく、

 

「やれ、グロリオ」

 

状況を呑み込めていないパストの背後へグロリオが飛び出し、その後頭部目掛けて素早いパンチの連打を浴びせる。

 

シュシュシュッ…

 

グロリオは魔法で生み出した電気を体内へ留めることにより脳からの命令の伝達速度と稼働速度を極限まで速めていたのだ。

 

ポンッ

 

直後、パストの額から魔のサードアイがすっぽ抜ける。

 

「え…?」

 

やっと自分が何が起こったのか理解したパストは、飛んでいくサードアイを掴みなおそうと手を伸ばす。しかし…

目の前に、拳を振りかぶっているカカロットの姿が現れた。

 

「よう」

 

「…キャハハハ!やるならやりなさいよ!ただし、テメェが私を倒そうと全力の攻撃をぶち込めば、それを喰らうのはテメェも一緒だよ!!」

 

パストは既にカカロットと痛覚を共有している、つまり、カカロットが全力でパストを殴れば、同じだけの威力がカカロット自身にも襲い掛かるのだ。

 

「お前、変身も解けてるだろ」

 

「…あ」

 

ドゴォ!!

 

魔のサードアイを失ったパストは、超パストへの変身も解除され元の姿へ戻っていた。当然、戦闘力そのものも戻っている。よって、超サイヤ人3のカカロットの()()()()()()()()()()パンチに耐えきれるはずもなく、カカロットはそんな自分のパンチを受けたところで何ともなかった。

 

「ぐああああ~~~!!」

 

結果、腹が凹むほどのダメージを受けたパストだけが白目を剥きながら宙を舞っていた。




少年サンデーで連載中の「シルバーマウンテン」、面白いですよ。
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