もしもカカロットが幻想郷に落ちていたら   作:ねっぷう

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第525話 「咎は戦禍に睡臥する!」

「パンジ、ネバを連れて離れていろ」

 

カカロットとパストの戦いが始まる前、グロリオはパンジにそう言った。

 

「わ、わかったよ!けど…大丈夫?」

 

「…」

 

そう聞かれたグロリオは言い淀み、少し俯いてから顔を上げた。

 

「大丈夫だ。ネバもいる…ドラゴンボールで願いを叶えることはできる」

 

そう言い残してから、グロリオはパンジとネバを安全な場所…鎮座しているタマガミナンバーワンの側において行くのだった。

 

──────

 

 

「ぐあああ~~…!!」

 

魔のサードアイを外され、変身も解除されてしまったパストは超サイヤ人3のカカロットの一撃を脇腹へ受け、苦しみながら吹き飛ばされようとしていた。痛覚を共有する魔法を自身とカカロットにかけていたが、カカロットは自分の攻撃を喰らったところで特にダメージも受けず、パストだけに痛烈な衝撃が襲い掛かっていた。

 

(クソめ…!()()()()()()()()()()()()()()()()()で攻撃をしやがった…ナメやがってオイ…!この私が)

 

そして、朦朧とした消えゆくパストの意識は、これだけを考えた。

 

「ただでやられてやるかァァァ!!」

 

パストは口から大量の血反吐を吐きながらも根性のみで叫び、意識が途切れる直前に最後の魔術を使用する。

彼女が扱う魔術『伝達』、それを自身と…グロリオに適用させた。

 

「…ッッ!!?」

 

変身が解かれたパストにとって、カカロットの一撃はとても耐えられなかった。が、死にはしない。せいぜいが意識を失い、しばらくは目覚めることすらできない全治数か月の損傷を受けるくらいだと理解した。当然、カカロットが自分が受けても問題がない威力に調整していたし、何より死者であるカカロットはいくら敵とはいえ生きている者を殺そうとはしていなかったからだ。

 

しかし、パストであれば死にはしない攻撃、痛み、ダメージであっても…それをグロリオが受けたらどうだろうか。

 

ボグンッ!!

 

パストが拳を喰らった位置と同じ、脇腹が凹んだかと思えば、発散した衝撃が彼の胴体の左半分を吹き飛ばした。

 

 

 

「に、兄ちゃん…コイツ…強い」

 

「なんでこんなに強いんだ!?何を食べて育ったんだ!?」

 

ドゥーとクウは終始霊夢に圧倒され、攻撃を受けた顔を拭いながら、空に浮かぶ霊夢を見上げた。

赤い雲に覆われた空をバックに、霊夢は青い闘気を立ち昇らせている。『超夢想天生・壊』、超夢想天生の守りや回避性能を捨て攻撃に特化させた姿。

さらに霊夢の背後に展開された7つの陰陽玉は発散と蓄積を意味し、縛りにより7回の攻撃を成功させると無差別に無制限の気を放出する。

既に陰陽玉は7つのうち6つが点燈している。

 

ビュッ

 

そして、一瞬にしてクウとの距離を詰めた霊夢は腕を振りかぶり、横薙ぎの一閃を放つ。だが、その時ドゥーが咄嗟に両者の間に入り、口からエネルギー波を吐き出して霊夢を迎撃する。

ドゥーの放つ波動に全身を呑み込まれる霊夢だが、直後に割れたガラスのような刃状の気が飛び交い、それを切り裂きながら飛び出してきた。

そして、ドゥーもろともクウを蹴り飛ばした。

 

カチ

 

そこでついに7つ目の陰陽玉が点燈した。

直後、霊夢は胸をそらして前方を睨み、点燈した7つの陰陽玉から無数の光弾が発射された。

 

「うわああああ~~!!」

 

それらは真っすぐに飛んでいくものと途中で軌道を変えるもの、標的の背後から迫るものと織り交ざっており、ドゥーとクウの全身を360度全方位から絶え間なく撃ち続ける。

 

「ドゥー…!大丈夫か!?」

 

「ううう…!」

 

クウは霊夢の無制限の気弾を受けながらも、真っ先にドゥーを心配する。ドゥーも同様に攻撃を受け続けているが、歯を食いしばって唸り声を上げながら耐えている。クウも自分自身のほうが危ういと感じていたが、それでも弟を優先し守ろうとする。

 

ドドドドドド…

 

しかし、霊夢の気弾の雨により行動を阻まれドゥーの傍まで近寄ることができない。

 

(どうするんだ魔人クウ(オレ)!このままじゃドゥーも負けてしまう!どうしたら…)

 

自分がドゥーのもとへ一瞬で移動でき、かつ守れるほど強くなるには…

そう考えた瞬間、クウの脳裏に不思議な光景が思い浮かぶ。

 

(これは…)

 

まったく見覚えのない光景だったが、クウはすぐに理解できた。これは自分の前身であったらしい魔人ブウの記憶だ。ブウは吸収という手段を用いることで自分を強化することが出来ていたのだ。

クウはすぐに打開策を閃いた。すぐさまドゥーに声をかける。

 

「ドゥー!!()()をやるぞ!!」

 

「アレ…?

 

「決まってるだろ?合体だァ!!」

 

さすがは兄弟、というよりもより濃く魔人ブウの情報を受け継いでいるドゥーはすぐにクウの意図を理解し、霊夢の光弾を浴びながらもその隙間の縫うように腕を伸ばし、クウの手首をつかんだ。

その瞬間、互いが引き寄せられるようにくっつきあい、直後にまばゆい光に包まれる。竜巻の如く魔力がうねり上がったかと思えば、その中心により強力で濃い魔力が溜まってゆく。

 

「…!」

 

霊夢も様子に勘づき、無制限の霊力を放出しながら状況を探る。放出させる霊力は一種の防御結界の役目も果たすが、この攻撃が終わるまで霊夢は身動きが取れない。

やがて放出が終わると、赤く熱を帯びた地面から大量の蒸気が噴き上がり、その中から大きな影が姿を現す。

 

「イエーイ!!」

 

蒸気の煙を破って飛び上がったのは、クウでもドゥーでもない魔人であった。

 

「さぁお待ちかね、この『魔人ドゥーク』様が引導を渡してやるぜ!」

 

そう名乗りながら空中で足を広げ片腕を挙げた魔人ドゥークは、小柄なクウや太っちょのドゥーとは打って異なり、長身かつ筋肉質のより戦闘向きな体格へと変化していることがわかる。

 

 

 

一方、ウスターの攻撃から逃げ惑うゴマー。その手には魔のサードアイを掴んでおり、どうにか装着する隙を探している。

 

「ちょこまかと…」

 

空から連続で気弾を放ち、ゴマーを狙っているのだが魔力を駆使して逃げ足だけは優秀なためになかなか攻撃を直撃させることができないでいる。

 

(ここら一帯を丸ごと吹き飛ばせば済む話だが…)

 

しかし周囲には同じく戦っている仲間やパンジやネバなどもおり、ゴマーもそれを考えてかあえて城塞跡付近に留まっているため迂闊にそういった手は使えない。

とは言え、ゴマーも逃げ続けるのには限界がある。すでに攻撃の余波を受け続けた影響で少なからずダメージを負い、魔力も消耗している。

 

「ハァ…ハァ…!クソッ、しつこい奴め…」

 

「それはこちらのセリフだ」

 

崩れた瓦礫の影に隠れて悪態をついたゴマーだが、その瓦礫の反対側からウスターの低い声が聞こえて身を震わせた。次の瞬間、瓦礫が強い力によって砕かれ、その衝撃で吹き飛ばされる。

 

「うおおお!?」

 

「ちょこまか逃げ隠れやがって…」

 

「チッ…!」

 

魔力を使って逃れようとするゴマーだが、それよりも早く飛んできたウスターのオーラで出来た巨大な手が彼を掴んで拘束した。

 

「ぐ!」

 

ゴマーは頭以外をすっぽりとオーラの手に覆われていた。当然手足も微動だに出来ない。

 

「これで大人しくしていろ、殺しはしない…」

 

ついにゴマーを捕縛したウスターだが…

 

ゴッ…

 

その時、ゴマーはウスターのオーラの手に額を強く打ち付けた。ウスターがその行動を疑問に思い、数秒硬直する。ゴマーが顔をあげたとき、すべて理解した。

 

…ゴマーはウスターに捕まる寸前、咄嗟で口の中にサードアイを入れた。手に捕まり、手足も動かせなくなったが、自分を掴んでいるオーラの手に上にサードアイを吐き出して置き、そこへ額を叩きつけ…ようやく魔のサードアイを装着した。

 

グググ…

 

ゴマーの体が見る見るうちに大きくなっていき、それを握るオーラの手がどんどん開かれていく。ウスターは力を込めて握り返そうとしても、ゴマーの体の膨張と怪力によって手を解かれ、終いには

 

ブヂッ!!

 

引き裂かれ、原形を保てず消滅した。

 

「な…!」

 

 

 

 

 

 

 

「グロリオ!!!」

 

カカロットは超サイヤ人3を解除し元に戻ると、すぐにグロリオの元へ駆け寄る。

即死だった。地面に倒れこんだグロリオは目を見開いたまま、血だまりの中で既に息絶えていた。

 

「なんてことを…」

 

一部始終を目撃していたアリンスも、唖然としながら小さく呟いた。

 

「…すまねぇ、こんなはずじゃなかった…!」

 

カカロットも悔し気に眼を固く閉じながら絞り出すようにそう言うと項垂れた。

 

ヒュウウウウ…

 

だがその時、一陣の風が吹くと、何者かの気が突然現れる。

 

「…誰だテメェ…」

 

「お前は…マーバ…」

 

カカロットはその者を睨みつけ、アリンスはその者を知っているのか名前を呼んだ。

大魔女マーバは宙を浮遊しながらゆっくりと移動し、グロリオの亡骸を見下ろした。

 

「…空を飛ぶもの全てが鳥ではないし…地にうずくまるもの全てが敵に非ずじゃ…世にも珍しい、肉体を持つ死人に、ドクターアリンスよ…」

 

マーバはしゃがれた声でそう呟いた。

 

「お前の知り合いか?」

 

「ええ…」

 

カカロットとアリンスを尻目にマーバは続ける。

 

「なんだ、風がやいやい騒ぐもんでちょいと見物に来てみたら、あんたんトコの小僧がおっ死んだのかい。アリンス、これじゃああんたの企みは…うまくいかないかもしれんねぇ」

 

だが、マーバにそう言われたアリンスはずいっと大魔女に迫る。

 

「グロリオを生き返す術をしなさい。その対価を言いなさい」

 

「…術はある。簡単なものではないし代償も大きいぞ。頼む者の『命』じゃ」

 

アリンスは言葉も出せずに押し黙る。

 

「ひひひ…これじゃあグロリオが生き返ったとて、よもや大事な己の命を差し出せるかい?」

 

アリンスの野望は自分が大魔王の座に就くこと。肝心の自分の命が無くなるとなれば…

 

「俺のをくれてやる。持ってけ」

 

「…お前」

 

が、カカロットがマーバとアリンスの間に割り込みながらそう言った。アリンスは驚いて後ずさり、マーバは片目だけを見開いてカカロットを凝視する。

 

「んん?何を言っておる…その頭の輪っかを見ただけでわかる、あんたは死人じゃないか!それに、何故小僧の命が惜しい?」

 

「だからこそさ。もう俺は一度死んでる…いまこうやって肉体を持ててるのもただの棚から牡丹餅式のご褒美みたいなもんだ。だからいつだって消える準備は出来てる。生きてるモンより死んだモンの命の方が安いだろ」

 

「…ま、いいか…そりゃ確かだろうね」

 

「ああ、約束するぜ」

 

「仕方がないね。なら魂魄が小僧の体にあるうちが勝負だ。それに小僧を殺した人造魔人も必要だ」

 

マーバは目の前に並んで寝かせられた、グロリオの遺体と気絶したパストの体を眺めながら、次々とアリンスとカカロットに指示を出す。まず、マーバの手によって何もなかった地面へ紋章が魔方陣となって浮かび上がった。

 

「小僧はここに寝かせろ。わしが描いた図形を消すでないぞ。人造魔人は隣に寝かせな!ただし頭は小僧と逆方向へ向けな」

 

「本当にグロリオは生き返るの?」

 

「黙って見ていな」

 

「グロリオを生き返らせんのは分かったが、そのワルはいるのかよ?」

 

カカロットはパストを指差して言った。

 

「当たり前じゃ。あんたが殺さないでおいてくれてよかったよ。そしてあんたはグロリオの横に座んな、儀式が始まったら喋りかけ続けな。

 …では、『帰りなん いざ常若(とこわか)の国』の儀…仕初(しそ)むとしよう」

 

 




魔人ドゥークですが、体色は緑色で体格は悪ブウそっくりな感じで想像してください。
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