もしもカカロットが幻想郷に落ちていたら   作:ねっぷう

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第530話 「暴走!オレンジの迦楼羅炎」

グロリオを蘇生させるための儀式が行われていた頃…

 

 

「なんという…パワーだ…」

 

「ナメック人ってこんなに強いの…?」

 

魔のサードアイを装着し、大幅にパワーアップしたネバ。その体は若返り、鮮やかな黄緑色の肌に、筋肉の隆起した大柄な肉体となっていた。

そんな彼を前にし、たった数発の攻撃でダウンしてしまった霊夢とウスター。以前とは比べ物にならないパワーを前に彼女らは倒れ伏すことしかできなかった。

 

「っていうか、それよりも…ネバさん!一体どういうつもり!?」

 

「ああ…そんなサードアイなど使って、何をしようというのだ」

 

ネバは倒壊しかけの城塞跡の頂点へ降り立ち、ゆっくりと霊夢らを見下ろす。

 

「…君たちは、何万年という時を…たったひとりで過ごしたことはあるか?」

 

そして、静かに、だが何かを訴えかけるような確固とした声でそう言った。

 

「来るかもわからぬ同胞を…ただひとり孤独に待ち続ける…その間、歳だけを取り続ける。同胞は既に滅びたのかもしれない、わしの待った幾星霜の時は無為に終わったのかもしれん。もうわしは老いさらばえた…これ以上待つのももう嫌になった…

 だがそんな時…希望が見えたのだ。この間、君らとわしが初めて会った時に君らはわしを見て『ナメック星人だ』と言った…だからまだ外の世界では同胞が生きていると分かった。そして、年老いたわしがあの頃のパワーと魔力を取り戻せる都合の良い道具(魔のサードアイ)もある。このチャンスを逃すわけにはいかん…だから、わしにドラゴンボールを使わせてくれ。外で生きている同胞をこの大魔界へ呼び戻すためにな」

 

悪意はない。ただ、ネバは自分の悲願を成し遂げたいだけ。その為にドラゴンボールを使いたい。だから霊夢の持つドラゴンボールを奪おうとしている。

 

「だから頼もう。ドラゴンボールを寄こしなさい」

 

ネバはあくまで霊夢に頼む形でドラゴンボールを貰おうとする。だが、霊夢も立ち上がりながら声を絞る。

 

「そういうわけにはいかないのよ。私も頼まれててね…私の子供らが散々頑張って悪いヤツを倒したのに、ソイツが残した被害が大きすぎるから…必死に元に戻そうとしている。だから親である私が頑張らなくてどうすんのよ」

 

両者の意見がぶつかる。ネバは霊夢にも揺るがぬ意志があることを改めて認識すると、さらに口を開いた。

 

「大丈夫だ。わしには…願いを叶えた直後のドラゴンボールを復活させ、すぐに次の願いを叶えられる状態にできる能力がある。わしの願いを叶えたら、すぐにお前さんたちの願いも叶えさせてやろう」

 

それは、ネバの古代ナメック人としての能力。ネバだけが特別なのかは定かではないが、彼が制作した大魔界のドラゴンボールだろうと、地球のドラゴンボールだろうとそれができる規格外の力を持っているのだ。今ではさらに魔のサードアイによって強化されているかもしれない。

 

「今の貴様の言うことを、誰が信じると?」

 

と、そこでウスターがネバを睨みつけながら言った。首元や手足から紫色のオーラを噴き出し、今にも飛び掛かろうとしている。

が、霊夢は手でそんなウスターを制した。

 

「待って」

 

「なんでだ」

 

「ネバさんの言っていることは…本当の事よ、本当にそんなことができるんだわ」

 

「なぜそう思う」

 

「勘よ」

 

「…」

 

霊夢もウスターも、使った後のドラゴンボールは基本的に石となり、1年間は効力を失うことを知っている。だが、ウスターは霊夢の「勘」というものにも信頼を置いており、確かであると思っていた。

 

「じゃあネバさんを信じる。だから、先に願いを叶えちゃって」

 

「…すまんの」

 

霊夢のその言葉を聞いたネバは静かに頭を下げる。そして、超能力を発揮する。

発せられた不思議なパワーが周囲に降り注ぎ、地面へ隠されていた霊夢が持っているドラゴンボール2個、そしてアリンスが所持していたであろう第1魔界のドラゴンボールが独りでに浮かび上がり、ネバの元へ集まってくる。

計3個のドラゴンボールはネバの周囲を旋回するように浮遊し、合言葉を唱えられる時を待っている。ネバはいよいよ神龍を呼び出そうと息を吸い込む。

 

「タッカラプト…うぐ!!?」

 

しかし、ネバに異変が訪れる。額のサードアイがドクンと脈動したかと思えば、その体が急激に強張る。苦しみに目を見開きながら胸を掻きむしり、その場で地面へ落下する。

 

「ネバさん…!?」

 

霊夢が心配そうに駆け寄るも、ネバは変わらず苦し気に膝をつきながら息を荒くしている。黄緑色の肌の上に玉のような汗が浮かぶ。

 

「離れていてくれ…!わしとしたことが…サードアイの力がここまで強力だとは思わなんだ…!ぐ、あ、ああああああ!!」

 

直後、ネバは叫び声と共に溢れる魔力を放出した。衝撃で霊夢は吹き飛ばされ、その中で紫色の魔力に覆われていくネバを見ていた。

ネバの身体が、サードアイから溢れる魔力に侵されていく。本人でさえもこうなることは全く予想できず、魔のサードアイがもたらす力の強大さが垣間見える。

 

…光が収まったとき、そこには圧倒的な災いが立っていた。

 

「グウウウウ…!」

 

明るい黄緑色だった肌の色は、ドラゴンボールの色を彷彿とさせる橙色に変化し、顔つきや背丈、体格もより厳つくなり荒々しい仁王の如き風貌へと変わってしまっている。表情は苦し気に強張っており、その目は白目を剥き理性は感じられない。

 

「何が起こったというんだ」

 

ウスターも吹っ飛んでいた霊夢を受け止めたままの姿勢で困惑している。

 

「わからない…でもわかることは…アレはもう、今までのネバさんじゃない」

 

ネバの周囲に浮いていたドラゴンボールは既に地面の上を乱雑に転がっており、これまで願いを叶えようとしていたネバ自身ももはや見向きしていなかった。

 

「サードアイに取り込まれ暴走したということか?」

 

「多分ね。ウスター、いい?くるわよ」

 

ふたりが覚悟を決めた次の瞬間、暴風が吹いた。

ネバが真横を通り過ぎただけで地面が捲れ上がり、ふたりが体勢を崩す。すると背後へ移動していたネバがもう一度突進し、同時にラリアットを繰り出した。

 

ドゴォ

 

ふたりはそのまま押され、引きずられるが、霊夢は腕の下をすり抜けて背後へ回り、そのまま踵落としを繰り出す。後頭部へ一撃が落とされ、ネバの動きが一瞬硬直する。

 

「霊夢!サードアイを外すには後頭部へ衝撃を3回だ!」

 

「ええ!」

 

さらに反対の足による払い蹴り、続けて3発目の手刀を振り下ろす。

 

「グカアッ!」

 

だが、それが当たる前にネバの背中から紫色の巨大な刺々しい結晶が勢いよく発生し、霊夢は吹っ飛ばされる。そして片腕でウスターを投げつけ、霊夢を狙う。

 

「おっと」

 

霊夢はウスターの足首を掴み、そのまま大きく振りかぶる。意図を察したウスターも上半身の前面へオーラの手を作り出し、拳が巨大な鈍器となって叩きつけられた。

 

ガガッ

 

それはネバの顔面へ命中するも、ネバは特に効いた素振りも見せず、腕でウスターを退かすともう片方の手からエネルギー波を発射し弾き飛ばした。

 

「ぐあ…!」

 

さらに、宙を舞う霊夢へ飛び掛かり、いつの間にか結晶の塊をグローブのように纏った拳を振り下ろす。オレンジ色の剛腕と紫色の塊が振るわれ、霊夢の腹を殴りつける。

 

「ぐふ…!」

 

「カアアアアッ!!」

 

ネバは甲高い雄叫びと共に足を踏み下ろし巨大な衝撃波と共に大地から結晶の柱を発生させ、さらに霊夢を吹っ飛ばした。

その隙にウスターがネバの鳩尾へ強烈な肘打ちをめり込ませる。ネバは一瞬顔をしかめ、苦し気な仕草を見せるものの…

 

ドゴッ

 

「チッ…!」

 

すぐさま剛腕を何度も地面へ叩きつけて暴れ狂う。叩きつけられた箇所から巨大な結晶が生えては砕け、生えては砕ける。

ネバは巨大すぎる魔力をコントロールできず、結晶化させて放出している。その様子は、穏やかさと理知的を併せ持ったあのネバだとは到底思えないほどの…怪物のようだった。

ウスターは振り翳される剛腕を何とか躱し、ネバの懐へ潜り込むと、自身の腕にオーラの腕を纏わせ補強し、その胴体を切り裂いた。

 

ザシュッ…

 

やむを得ない。ウスターは例え殺してしまってでもネバを無力化するつもりであり、ネバも胸を深く抉られ大量の血と臓物を零している。

 

キィン…

 

しかし、魔のサードアイが光を発するとその損傷がすぐに元に戻ってしまう。

 

「やはりダメか…」

 

「やっぱサードアイを外させる方向でやらないといけないわね」

 

後ろへ飛び距離を取ったウスターへ霊夢がそう言った。

 

「俺がゴマーと戦った時は上手くいったが…そもそもの膂力と魔力が段違いだ。拘束したり、再生中の隙に後頭部を叩く戦術も…効果は薄いだろう」

 

「…だったら…サードアイごと、ネバさんを…」

 

「…マジか?」

 

「やりたくはないけど…でも、あの穏やかで平和を望んでいたネバさんがこのまま暴れ続けて破壊の限りを尽くすなら、止めてあげた方がいいと思う」

 

「できるのか?」

 

博麗降魔捨法(はくれいごうましゃほう)威波離(いばり)』。それを放てれば、きっとサードアイごと、再生する暇すら与えず消し飛ばせるわ」

 

だが、その時、ウスターはそっと霊夢の手を掴んだ。

 

「考えるな。それでは生前の二の舞だ…カカロットの考えには、お前も気付いているだろう?」

 

カカロットの考え…それは、人を殺す、あるいは殺そうとすれば自分も死と殺しの運命の輪に囚われること。そして、死者は生者を絶対に殺してはならない。

 

「でも、ならどうやって」

 

霊夢が困りながらそう呟くと、ウスターは腰のポケットから小袋を取り、その中から何かを摘み出した。

 

「これを使う」

 

「これは…」

 

ウスターが霊夢へ見せたのは、体の両端が上半身となり頭部が2つある不気味な虫の死骸。第3魔界の雑貨屋でウスターが購入した、「クッツキ虫」だった。

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