もしもカカロットが幻想郷に落ちていたら   作:ねっぷう

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第532話 「煌めきの果て、勝機を掴め!」

「これって確か…」

 

「くっつき虫だ。半分に割ってふたりで食べれば合体できるという…」

 

ウスターは第3魔界の雑貨屋で買っていたくっつき虫を取り出して霊夢に見せた。そう、これがあれば合体することができる。そうすれば、きっと暴走するネバをねじ伏せ魔のサードアイを取り外せると踏んだのだ。

 

「とにかく、これを食うぞ…なりふり構ってられん」

 

だがその時、ネバが吐き出した特大の気功波がふたりに迫った。間一髪、両者はそれぞれの方向へ飛んで回避する。

ネバは続けて気弾でふたりを狙ってきており、くっつき虫を食べる暇が無い。

 

「食べようにもこれじゃキツイわ!」

 

「ちっ…!」

 

次々と向かってくる気弾を避け続けるが、そのうちの一発が霊夢の足へ当たり、空中でバランスを崩す。しまった、と思い追撃を予感し、ネバがいた方を向く霊夢だが…

すでにその場にネバはいなかった。かと思えば、頭上から影が差し、慌てて上を見上げる。その瞬間、ネバの振り下ろしたスレッジハンマーが命中し、霊夢は地面へと叩きつけられた。

 

「霊夢!」

 

彼女の名を呼ぶウスターだが、ネバはその目の前にも迫っていた。大口を開け、その中に込められていた魔力が至近距離で炸裂し、ウスターはその爆発によって吹き飛ばされる。

 

「クソッ…!」

 

ネバは追撃し、結晶化した魔力を纏う拳を大きく振り上げる。ウスターは万事休すかと思い、その場で立ち尽くす。

 

ビュウッ ドガアッ

 

しかしその瞬間どこからか飛んできた物体が、ネバの側頭部を打ち抜いた。それは何者かの拳で、緑色の伸縮した腕によって放たれているようだった。

頭を傾けたネバとウスターがその方を目だけを向けて見ると、息を切らした様子の魔人ドゥークがそこにいた。

 

「うおおおおおおッ!!」

 

ドゥークは気弾を連射し、次々と炸裂する爆炎に包まれるネバ。しかしそれを切り払い、ぐわっと両手を広げて飛び出そうとするが、ドゥークが放ったさらに大きな気弾が直撃し怯んだ。

 

「アリンス様は…死んだ!!」

 

涙を流しながら、怒りの形相で放つ気弾をどんどん大きくしてゆく。行く手を阻まれ動けないネバだが、その場で地面を強く踏みつけると、足から放出された魔力が地中を通り、ドゥークの真下から結晶となって突き出した。

 

バキィィン!!

 

巨大な結晶の塔が一瞬にして伸び、その先端が樹木のように枝分かれして広がる。普通の魔人や人間であれば、それに巻き込まれれば体が滅茶苦茶に破壊されていただろうが、ドゥークの弾力と液体性のある肉体は上手くその隙間に潜り込んで回避していた。

 

「この悲しみ…お前にぶつけてやるァ──!!」

 

ドゥークは怒りのままに拳を振り下ろし、結晶の塔を粉々に破壊する。その間にネバが接近し飛び掛かろうと向かってきたが、それに気づいたドゥークは回し蹴りで迎撃する。

大きく上体を仰け反らせるネバの胸をさらに蹴り、地面へ押し倒した。そのまま無数の拳の連打がネバを打ち続ける。

 

「今のうちだ!」

 

ウスターは霊夢の元へ行き、瓦礫の中から這い上がってきた霊夢へくっつき虫を渡そうと手を伸ばす。

しかし次の瞬間、ネバのサードアイが光を放ち、細長い光線が放たれる。

 

ミャイイイイイ…

 

それは魔力の光が収束する刃となって旋回し、周囲を薙ぎ払う。地面を焼き抉りながらドゥークの身体を横一文字に両断し、ウスターと霊夢の間にも通過していった。

 

「うおっ!」

 

ウスターが渡そうとしていたくっつき虫の半分は焼き切られて消滅し、効力を失う。

両断されふたつに分かたれたドゥークは、そのまま合体が解除されドゥーとクウに戻った。

 

「あれ、戻っちゃったぞ!?」

 

「兄ちゃん!」

 

驚いたのも束の間、いつの間にか迫ってきていたネバのラリアットを受けて吹っ飛ばされ、ドゥーとクウは城塞跡の瓦礫へ叩きつけられた。

 

「ガアアアアア!!」

 

ネバは再び霊夢とウスターへ狙いを定めると、圧倒的な気迫と共に飛び掛かる。霊夢はすぐさま突撃を躱し、腹へ肘打ちを繰り出すが、なんと攻撃を当てた個所が魔力の結晶に覆われ、威力をほぼ軽減されてしまう。しかも、結晶の棘が密集している面を叩いたため、逆に霊夢の腕に結晶の針が痛々しく突き刺さっていた。

 

「ぐ…!」

 

「ハアアッ!」

 

すかさずウスターが巨大なオーラの手で背後から殴りかかるが、やはりネバの背中一面に結晶のガードが生まれ、攻撃を阻まれた。

 

(どんどん魔力操作が精密になってきている…!)

 

ネバ自身は理性なく暴走していても、魔のサードアイの影響で自動的に魔力が最適に操作されているようだ。そのままウスターのオーラの手を抱き込んで潰し、破壊すると、結晶で覆った全身で再度突撃を敢行する。

 

ガクン

 

「グ…!?」

 

だが、ネバの動きが止まった。

前方に出現した無数の魔法陣に行く手を阻まれている。

 

「貴様は…」

 

ウスターは、その魔法陣がゴマーのもとであると気付く。魔のサードアイを失ったゴマーだが、なけなしの副大魔王としての魔力を振るいネバの動きを封じていた。

 

「おい貴様たち…!約束しろ…!」

 

ゴマーは切羽詰まった声でそう言った。その間にも、ネバは魔法陣を突破しようと突進し続けており、魔法陣は揺らぎ震えている。

 

「オレ様も力を貸してやるから、絶対にあのナメック人をどうにかしろ…!そしてその功績はすべてこの副大魔王ゴマーであると証言しろ…!」

 

「…わかった」

 

ウスターが半ば呆れたようにそう返事をすると、ゴマーは残る魔力をすべて振り絞りさらに魔法陣を展開する。重なり合ったことでもはや球状の結界となった魔法陣は、内に閉じ込めたネバを逃がさない。

しかし、だんだんとネバの力も上昇していき、ゴマーの力では抑えられなくなる。そして…耐え切れなくなった魔法陣の結界はガラスが割れるように砕いて破壊され、解放されたネバは一瞬でゴマーとの距離を詰め、腹に素早い拳の一撃を食らわせる。ゴマーの小さな体が弾丸のようにはじき出され、はるか彼方に浮かんでいた岩塊に激突しその中に埋もれた。

 

「どぼじで…」

 

ゴマーはガクリと項垂れ、気を失った。

ひとまず邪魔を片付けたネバは、相変わらず理性のない目で霊夢とウスターに向き直る。そして、グッと力を込める動作をしたので身構えるふたりだが、次の瞬間…

 

ブゥン…

 

ふたりの周囲に球状のバリアーが生まれ、閉じ込められる。

 

「な…!」

 

ネバはゴマーの技を見て真似ていると思われ、どんなに殴ったり蹴っても内側からは破壊できなかった。

そうこうしていると、突然霊夢の夢想天生・壊、ウスターの降魔の相が意思に反して強制解除された。一気にノーマルな状態に戻され、力を失ったふたりはバリアーの中に渦巻く魔力の重圧によって全く抵抗できなくなってしまう。

 

「ウスター…!くっつき虫は…まだあるでしょ?」

 

「ある…だが、もう半分を貴様に渡せない…!」

 

互いに結界に閉じ込められており、半分に割ったくっつき虫の受け渡しができない。

その状態のふたりに対し、ネバは大口を開け膨大な魔力を集中させている。あの威力の攻撃を放たれれば、今の霊夢とウスターでは致死確実、跡形も残らないだろう。

 

いよいよ一撃が放たれようと、閃光が周囲を照らした、その時。

 

ガシッ

 

「カカロット!」

 

超サイヤ人3のカカロットが、高速でネバの背中に飛びついた。そのまま両手で顎を掴み、思い切り上へ引き伸ばす。ネバの頭が真上に逸れ、口に溜めていた魔力があらぬ方向へ伸びてゆく。

 

「ガアアッ!」

 

ネバはカカロットの首根っこを掴んで背中から引き剥がし、振り回して地面へ叩きつける。だが、カカロットは両足で受け身を取って構えており、そのまま腕にしがみつくと思い切り気を噴出して飛び上がり、その腕を引きちぎった。

 

ブヂイッ

 

紫色の鮮血が飛び散るが、すぐに傷口が魔力の結晶により塞がれ、かと思えば一気に腕が生えて再生されてしまう。同時にカカロットが千切り取って抱えていた腕はいつの間にか枝のように干からびており、それに少し面食らった瞬間にネバの剛腕がカカロットの顔面を殴りぬいた。

 

ガッ

 

カカロットは顔を血に染めながらも、その剛腕を掴んで一気に引き寄せ、ネバの首を抱きかかえると渾身の力で上体を捻り、首をへし折った。

 

ゴギリ

 

「アガ」

 

嫌な音が鳴り、肉と皮だけが繋がっている頭部が真横へ垂れる。額のサードアイも、力の通り道である首を外されたことでさすがに再生するための力を送るのに手間取っている様子だ。しかし、後頭部への衝撃は相変わらずサードアイに妨害され効果がないだろう。

カカロットはそれを瞬時に見抜くとすぐさま霊夢を覆っている結界に体当たりし、どんどんとウスターの結界へ向かって押していく。

 

「お前らの魂胆は分かってるぜ…手伝ってやるからさっさと合体しやがれ!」

 

霊夢もまた、カカロットの目論見を理解する。

 

(これは内側からの脱出を制限する結界…故に、外側からの干渉には弱い!ウスターの結界も同じ性質を持っているはず…ならばふたつをぶつければ…)

 

だが、ゆっくりと首を再生しつつあるネバは足で地面を踏み、魔力を送る。するとカカロットの下の地面から巨大な氷山の如き結晶の塊が生成され、それが魔力によってカカロットの身体に縛り付けられる。結果、カカロットは結晶の山を引きずって霊夢の結界を動かさなければならないことになり、さらにこれには見た目以上に高密度の魔力による仮想の重量まで含んでいる。

 

「く…ぬ…!」

 

カカロットは額に血管の筋が浮かぶほど力むが、どんどん速度が落ちていく。

 

「頑張ってカカロット!あと少しよ!」

 

ウスターの結界とぶつかるまであと少しだが、カカロットにも限界が訪れ、結晶の山の重さに負けて下へ墜落していってしまう。

 

「くそ…!」

 

動かす力を失った霊夢の結界だが…

 

「諦めるなァァ!!」

 

「うおおおおお───!!」

 

ドゥーとクウが反対側からウスターの結界を押してきている。ふたつの結界の距離が一気に縮まり…

 

ズズッ…

 

ついにぶつかり合った。

カカロットと霊夢の想定通り、内側からの脱出の防止に特化した結界は外側からの干渉に弱かった。激突の衝撃が互いの結界の外側から流れ込み、その個所が潰れて穴が空く。

 

「霊夢!」

 

ウスターはもう一度半分に割ったくっつき虫を霊夢に投げ渡し、霊夢はそれをキャッチする。

そして、ふたりはほぼ同時に口の中にくっつき虫を放り込み、噛み砕いた。

 

「あ、意外と佃煮みたいでおいしい」

 

「売ってるやつは味がついてるからな」

 

その会話を最後に、ふたりの身体が共鳴するかのように震え、青い光を放つ。そして不思議な力で引き寄せ合わされる。

 

キュイィ────

 

「やったな…」

 

結晶の塊の下敷きになったカカロットが、融合する霊夢とウスターを見てそう呟く。

ようやく折られた首を再生し終えたネバは、大きく腕を振るい、カカロットを潰していた結晶の塊を浮遊させて投げつける。

 

ゴオオ…

 

それは青い光の球の中で融合している霊夢らへ向けられていた。もちろん、融合中の無防備な状態ではまともに喰らってしまうかもしれない。

だが…

 

バッ

 

光の球が若干小さくなると共に、その中から腕が伸びる。そして向かってくる結晶を手の平で受け止めたかと思えば、その結晶の一部を握り壊した。

 

パキッ メキメキ…

 

バキャアアッ

 

山の如し巨大な結晶の塊は、一部分を割られただけでヒビが全体にまで達し、粉々に砕け散った。

そして、そこにいた全ての者が目撃した。砕ける結晶の破片が煌めき、その奥から現れしひとりの戦士を──。

 

 

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