もしもカカロットが幻想郷に落ちていたら   作:ねっぷう

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第533話 「覚悟の証明、閃煌の嵐!」

砕けた結晶が吹雪のように舞う向こう側で青い光が縮まってゆき、霊夢とウスターが融合して誕生したひとりの戦士が姿を現す。

頭の上には死者の証である光の輪は健在であり、黒髪の中に銀髪が混ざり、顔つきは霊夢のままだが眼光はウスターのように鋭く、耳も魔人特有の尖り耳になっている。背丈や体格はちょうど両者の中間といった具合。感じられる気も、霊夢のような流麗な霊力の面影がありつつ、ウスターのような磨き練り上げられた強大さも併せ持つ練り上げられた嵐のような気だ。

 

「だ、誰なんだお前は!?」

 

一番にクウが驚いて声を漏らした。合体、ないし融合したということは分かる。だが自分とドゥー以外の魔人が合体できるとは思ってもいなかったのだ。

 

「霊夢とウスターで、レスターとでも呼んでおけ」

 

レスターはぶっきらぼうにそう言うと、早速ネバの方へ向かって勢いよく飛んでいく。

 

「ガアアアア!!」

 

対するネバも現れた脅威を始末しようと拳を振り上げ、向かってくるレスターへ向けて殴りかかる。

 

ドゴ

 

その拳はレスターの頬を捉え、命中した瞬間に凄まじい衝撃波が周囲を薙ぎ払う。

が…

 

バゴオ

 

間髪入れず、レスターのカウンターパンチがネバの胸に突き刺さった。同時に、ネバのパンチの時よりもさらに巨大な衝撃波が上書きするかのように周囲にクレーターを形成し、まるで地面が液状化したかのように撓んだ。

 

「ギ…」

 

ぶっ飛ばされたネバは空に浮かぶ島や岩塊に当たってはゴムボールのようにバウンドしながら遥か彼方へ吹き飛ばされていく。

 

「こっちは任せろ、お前はドラゴンボールを」

 

レスターはネバを追って飛び去る寸前、カカロットにそう言った。カカロットもすぐに頷き、周囲に散らばっているはずのドラゴンボールを探し始める。

 

いくつもの島にぶつかりようやく止まったネバは、拳の形に凹んだ胸を押さえて苦し気な表情で息を整えていた。明らかに肋骨どころか内臓まで潰れているダメージだったが、やはり瞬く間に回復し、ネバの表情も再び理性のないものに切り替わる。

 

ヒュン

 

だが、その瞬間に物凄いスピードで突っ込んできたレスターの膝蹴りが迫る。ネバは間一髪岩場から飛んでそれを避ける。

 

「立場逆転だな」

 

さっきまで霊夢とウスターがネバの攻撃から逃げ回っていたのに対し、今ではネバがレスターの攻撃を危険だと察知し、避けていることに揶揄してやる。

 

「避けるってことは、私の攻撃が危険だと思ってるんだろ?なんでだ?」

 

続けて、ゆったりとした動きで振り返ってから一転、急加速して放たれた拳も、ネバは後ろへ飛んで避けた。ネバ本人は未だにこちらへ敵意をむき出しているが、どうやら額のサードアイはそうでもないらしい。

 

「単純な膂力の差で、勝てないと理解したか?いくら弱点の後頭部を守ろうと、力づくで突破されると思ってるか?」

 

手の平から連続で放たれる気弾を、身軽な動きで避けるネバ。

 

「その通りだ。私はお前の首根っこを強引に掴んで後頭部を3回叩ける」

 

気弾を避け続けているネバの背後へ、いつの間にか移動していたレスター。その首を腕で締め上げ、両足で腰を抱き込み動きを封じる。

そして

 

「こうやってな」

 

1発目、魔力の波動により拳を跳ね除けられるも強引に突破し殴打。

 

2発目、後頭部に刺々しい結晶が生まれ拳阻まれるも、強引に結晶を破砕し後頭部を殴打。

 

3発目を打つ寸前にネバがレスターの頭と腕を掴み引き剥がそうとするが、ビクともせず。そのまま殴打。

 

「ガ…」

 

計3回の衝撃が後頭部へ与えられた。ウスターの経験上、魔のサードアイはこれで取り外しが可能。

そして案の定、サードアイはネバの額から外れ宙に放り出された。

レスターはネバを救い出せたことに内心で安堵の息を吐いた。だが…

 

「…マジか」

 

次の瞬間、レスターは目の前の光景に目を疑った。

魔のサードアイを外されたはずのネバが、外れたサードアイをもう一度掴み、そのまま額へ付け直したのだ。再びサードアイの支配下に置かれたネバは、先ほどよりも一段と強烈な魔力を纏いながら復活した。

 

しかしレスターの判断は揺らがない。すぐにまたネバの無力化に舵を切り、一瞬で近づきつつ鳩尾に肘鉄をめり込ませた。

 

ズム…

 

「ゴハ…!」

 

苦し気にえずくネバだが、すぐにレスターを捕まえようと前方を両腕でホールドする。

対するレスターは既にその場から消えており、距離を置いた位置から一発の気功波を放っていた。

 

ズオオッ

 

それはネバの腹に直撃するが、体を貫くことはなくネバの身体を勢いよく押していく。そしてレスターはその軌道上に先回りし、背中に膝蹴りを命中させる。

 

「グオ…」

 

重い音が振動となって空気を揺らし、ネバがガクリと項垂れる。しかし、すぐにサードアイが光を放ち、ネバは万全の状態となってレスターを振り払い、腕で殴打する。

肩でガードし全く効いていないレスターであったが、内心では焦りと葛藤が微かに生まれていた。

 

恐らく、レスターが本気を出せばネバを倒すことは出来るだろう。しかし、ネバは生半可な攻撃では瞬時に再生・回復してしまう。恐らくはナメック人特有の再生力とサードアイがもたらす魔力による超回復が上手く嚙み合った結果、シナジーとなってサードアイを使っていたバルフートやゴマーよりも強力な能力を引き出せていると考えられる。

だからこそ、その再生・回復を踏み倒してネバを撃破するには高火力の一撃をぶつける必要があり、それが成功してしまった場合…

 

(殺すことになる───…)

 

魔のサードアイ単体では非力であることは確認済み。であれば、サードアイ以外のすべて、もしくはサードアイもろとも灰燼に帰すことで撃破することが可能。だがそれは、ネバに死を与えるということに他ならない。

 

(死者は生者を死なせてはならない)

 

それはレスター…というよりも霊夢が特に強く抱いていること。霊夢は生前に博麗の巫女として、死者、つまり魔の存在が生者たる人間を脅かさぬよう力を使ってきた。ここで死者となった自分が生きている者を殺したとなれば、それは自分自身も落魄れてしまうということ。

それはあってはならない。

 

(となればやれることはひとつ。どうにかして、サードアイとネバを完全に切り離す───)

 

ただ取り外すだけではだめだ。サードアイとネバの強固な繋がりを断ち切らねばならない。そのためには、ただ物理的に切断するのではなく、概念から切らねばならないだろう。

それはレスターでも出来ない芸当だ。

しかし、霊夢であれば出来る可能性がある。

 

『神降ろしの能力』、霊夢が使える能力の一つ。八百万の神をその身に降ろし、力を行使することが出来る。

が、ここは大魔界、八百万の神の与り知らぬ処であるがゆえに不可能だろう。

であれば、大魔界の神霊、ないし高位の精霊を召喚する必要がある。それは魔人であるウスターと、神降ろしが可能な巫女である霊夢が合体しているレスターだからこそ可能性がある。

 

「やるか」

 

レスターは身を翻しつつ腕を振るって横薙ぎの衝撃波を放ち、ネバを吹き飛ばす。続けて連鎖するかのように次々と衝撃波が発生し、ネバは絶え間なく攻撃を食らい続け動きが封じられる。

 

「グオオオ…!!」

 

それを尻目に、レスターは静かに両手で印を結び、祝詞を唱える。

 

「いと高き御身。風の御身。夜と昼…明るき処と暗き処に御座す御身よ。敬い奉る御身よ。今こそその鋭き切っ先を示し給え。精霊の宝、玉散る刃を顕現させ給え」

 

力を借りたい神霊を想像したとき、自然と脳裏に思い浮かんだ神名をそのまま口にする。

 

「『精霊王タカヤベルネ』」

 

レスターの目の前に顕現せしは、切断の精霊王タカヤベルネ。この大魔界において、切断と時を司る最高位の精霊のひとり。

 

「我を高き場所より呼び出したのは汝か。この切断の精霊王タカヤベルネを!」

 

「私に、力を貸してほしい」

 

「了する」

 

マーバの時とは異なり、今回は命をどうこうする契約ではないので代償は命ではない。それに、霊夢の神降ろしは元々代償はなく、神霊本人を使役するのではなく能力のみを借り受け使用するものである。タカヤベルネもそのことを認知しており、レスターの願いに応えた。

するとタカヤベルネの姿が消え、代わりにレスターの両腕を覆うようにうっすらと刃状のオーラが見えるようになった。

 

「よっし、これならいけそうだ」

 

ちょうどその時、サードアイによる強化を終え攻撃を耐えきったネバがこちらへ歩いてきていた。レスターはそれに向かい合い、グッと姿勢を落として構える。

 

「絶対に助けてやるからな、ネバさん」

 

 

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