もしもカカロットが幻想郷に落ちていたら   作:ねっぷう

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第534話 「流星万丈!地より昇る滅浄の裁き」

「もういいんだ」

 

ネバは、自分の魂魄に触れてきたレスターに対し諦めたように小さく呟いた。

ここは恐らくネバの心の中。両者が対峙した瞬間、恐らくは精神が繋がり魂同士での対話が可能になったのだろう。

 

「わしは長いこと生きた…死ぬ前に少しだけ我儘になろうかと思ったらこのざまだ。他のナメック人が大魔界の外で生きていると知れただけでも僥倖だった。少し口惜しいが思い残すことはない…わしを葬ってくれ」

 

「私が、楽な道を選ぶと思ったか?」

 

レスターはネバに言葉をかける。

 

「お前を殺すのは簡単で、それが一番楽だ。でも、あえて難しい道を…ネバさんを生きたまま助けるって道を進むとするよ」

 

 

 

 

 

両者を中心に、大魔界全体が傾いているかのよう。重力の向きが狂う…そう錯覚するような圧。

 

次の瞬間、両者の姿が消える。と思えば空中で何かがぶつかる大きな音と衝撃波が発生し、それは空高くへ向かって連鎖するように続いていく。

 

(やはりさっきよりも強くなっているな)

 

レスターとほぼ互角の格闘戦で追い縋ってくるネバは、予想通り魔のサードアイによる強化によってどんどん強くなっている。

だが、それでもレスターの方がまだ大きく上回っている。その腕に、タカヤベルネを神降ろしすることで借り受けた切断の力を纏い、ネバの腹を殴る。

 

ジャキン

 

何かが切り裂かれるような小気味の良い音が鳴り、ネバの動きが一瞬硬直する。同時に、その体に亀裂のような傷が走り、そこから靄のような魔力が零れるように溢れだす。

額のサードアイが驚いたように瞳孔を開き、明らかに震えて動揺している様子を見せる。

今、レスターはサードアイとネバを結んでいる強固な繋がりへメスを差し込んだのだ。

 

ネバ…というよりも正しくはサードアイが危険を察知し、素早く後ろへ距離を取る。

 

「そうだ。私が戦っているのはお前なんだよ」

 

レスターはネバではなくサードアイに対して冷ややかな視線を向けながらそう言い放ち、後を追い瞬時に追いつく。

そして、目にもとまらぬ高速の連撃を全身へ食らわせ、最後に鉄山靠による強烈な一撃を叩きこむ。魔力と霊力が同時に衝突し、赤と紫の閃光が弾けた。

 

「ネバさんを解放しろ」

 

ザシュッ

 

再びネバとサードアイの繋がりに刃が入る。

 

「ゴアアアアアアッ!!」

 

ネバが吠え、ノイズが入ったように歪む全身から魔力が噴き上がる。溢れる高密度の魔力は、周囲の空間で結晶化するとその場で固定され巨大に膨れ上がる。一瞬にして結晶地帯へと一変した荒野の中で、ネバは呼吸を整え一気に駆け出す。

進路上の結晶を砕いて身に纏いながらレスターへ接近し、足を振り上げる。

レスターはそれを滑るような動きで躱し、やり過ごす。かと思えば、足元から鋭く巨大な槍のような結晶が伸びた。

 

「ふっ!」

 

レスターはそれを蹴り砕き、ついでに気弾をネバへ叩きこむ。

 

「ガアアアッ」

 

小さいがそれなりの威力で、もろに食らったネバは後ずさりながら爆炎を振り払い、レスターの姿を探す。気付いた時には、すでにレスターは上空へ舞い上がっており、こちらを見下ろしていた。

 

ヒュン

 

そして、高みから気弾を弾幕のように広範囲へ無数に降り注がせた。まさに流星群、いや、光の滝とでも呼ぶべき超高密度の気弾がネバに襲い掛かった。

 

「グアアアアアアアア!!」

 

絶え間なく全身に降り注ぐ気弾とそれが引き起こす壮絶な爆発に成すすべなく圧倒されるネバ。その体が無茶苦茶に揺らされ、悲鳴の雄叫びを上げながら抵抗する事さえできない。同時にレスターの気弾でさえタカヤベルネの切断の力を得ており、食らうたびにサードアイとの繋がりが剝がされていく。

ダメ押しとばかりにレスターはさらに気弾を撃ち続け、範囲が広すぎる所為でネバに当たらなかった気弾はそのまま地面へ着弾し、地中へ染み込むように消えていく。

爆発の光を透かして、苦しみ藻掻くネバの姿が映し出される。

 

キィン…

 

だが、サードアイもやられっぱなしではない。絶え間ない攻撃に晒されながらも、際限のない無限の魔力をネバへと送り込み強化と適応を図る。

 

ゴゴゴゴゴ…

 

ネバの身体が油溜まりのような濁った虹色の光を放ち、膨らんだ。

元々大柄だった体躯が、もはや大柄という言葉では収まらないほど巨大化してゆく。もはやその大きさは足先だけでレスターを潰せそうなほどで、上空にいたはずのレスターと目線がほとんど合っている。

 

「オアアアアアアア!!」

 

特大の咆哮が衝撃波となってレスターを吹き飛ばすが、少し移動しただけで体にバリアーを張って防ぎ、元の位置に戻る。そして、ひとまず足を攻撃して巨体を崩そうと再び気弾を連射し狙う。

案の定、足に集中攻撃を受けたネバはよろめき、姿勢を崩して倒れそうになる。だが、サードアイはそれを許さない。ネバの脚部へ魔力の結晶を発生させ、それで地面とネバ自身の巨体を強固に固定した。

 

「オオオオオオ!!」

 

さらに、絶対の安定力を得たことで巨大化したネバの身体がさらに巨大化する。下半身は完全に結晶と一体化し地面に根付き、上半身はより筋肉質に肥大化している。

その姿はもはや巨大な樹木のようで、煌めく結晶の幹とオレンジ色の葉が茂っているようにも見える。

ネバは早速常軌を逸したパワーを振り翳す。腕を振り上げ、薙ぎ払うようにレスターを攻撃してきた。

 

しかし

 

レスターは至って冷静。避けるでも防ぐでもなく、ただ攻撃を待っていた。

そして、ただひとつの動作だけを行う。両腕を一気に真上へ挙げた。

 

ズオッ

 

次の瞬間、ネバの下の地面から青色の気が津波のようにせり上がり、その巨体を包み込んだ。

それは空から気弾を放射した際、ネバには当たらずに地面へ浸透し消えていったエネルギーたち。当然、ネバに当たった数よりも地面へ当たった数の方が多く、レスターは今そのすべてを地面から噴き上がらせているのだ。

先ほどまでとは比べ物にならない気の濁流、そして切断の力。的が大きくなった分、その力もよく通る。

 

 

 

 

 

「だから言っただろう」

 

「そうだな…まさか、本当にわしを救ってくれるとは」

 

再び、ふたりの精神が繋がった空間にて問答を交わす。ネバは地面に腰を下ろし、安堵した表情でレスターを見上げている。

 

「いや、救ってくれたのはお前の方だ、ネバ」

 

「…?」

 

「私がここまで強くなった…いや、カカロットと出会い、それからも楽しく暮らせたのはドラゴンボールがあったからなんだ。長く停滞していた景色が鮮やかになった。己の旅路に意味を見出せた。思い返せばその発端はドラゴンボールだった」

 

「…まさか、ということは…」

 

「そうだ。ネバさん、お前が大魔界に残ると決めたからこそ、ほかのナメック人は安心して外の世界へ旅立てた。旅立ったナメック人は各地へ散らばり、それぞれの地でドラゴンボールを作った。きっと、作り方もネバさんのやり方を相伝してきたんだろう。ドラゴンボールこそが私たちの縁を結んだのだ」

 

「…そうであったか」

 

「だから、ありがとう」

 

 

 

 

 

「とんだ苦労を掛けたな…」

 

一帯が更地になった激闘の跡で、ネバはレスターに言った。ネバは既に巨大化も、オレンジも、若返りも全て解除され元の老人の姿に戻っていた。全身が痛むし、一歩も動けないほど苦しい。だが、ネバは清々しいほどの自由を感じていた。

レスターはネバから切り離されたサードアイが足元で蠢いているのを見つけると、足で踏みつぶす。誰かにくっついていない時のサードアイは脆弱で、すぐに蒸発するように消滅した。

 

「騒がせやがって」

 

そう悪態をついた瞬間、レスターの身体が光ったかと思うとくっつき虫の効果が切れ、霊夢とウスターに分離して元に戻った。

 

「あら」

 

「うお」

 

「合体って不思議な感覚ねえ」

 

「だな…ま、一回こっきりだ」

 

もう手持ちのくっつき虫もなし、霊夢もウスターも他人との融合という貴重な体験はこの1回だけだろうと確信めいたものがあった。

 

「ん?」

 

その時、空が急に真っ暗になった。元々赤黒かった空だが、正真正銘夜のようになったのだ。

 

「これは…」

 

「ドラゴンボールの龍が呼び出されたんだわ。向こうに光が見える」

 

暗い空の地平線の先に光の柱が上がっている。恐らく、あそこで大魔界のドラゴンボールが使用されているのだろう。

 

「ネバさん…よかったの?」

 

「ああ、もういい。君たちの願いを叶えてくれ」

 

 

 

「じゃあグロリオ、頼んだ」

 

大魔界の3つのドラゴンボールを揃えたカカロットは、グロリオを呼んで願いを叶えてもらうようにした。大魔界のドラゴンボールはナメック語による呼びかけにしか反応せず、かつナメック語を話せるのはグロリオしかいない。

既に目の前には、ドラゴンボールより出でし龍が顕現している。だが幻想郷のドラゴンボールの龍神たちとは比べ物にならない程巨大で神力に満ち溢れていた。

カカロットは見たことがないがナメック星のポルンガと同じ姿で、体色は深紅に染まっている。

 

「ドラゴンボールを揃えし勇気ある者よ。さあ、願いを言うがいい…どんな願いも叶えてやろう」

 

ポルンガはそう低い声で言いながら、グロリオを見下ろした。その姿からは圧倒されるほどの威厳が感じられる。

 

「…カカロット、願いは本当に()()でいいんだな?」

 

「ああ、頼む。さっき言ったとおりだ」

 

グロリオはカカロットへ最後の確認を取る。そして、いよいよ事前にカカロットから聞いていた願いをナメック語で口にする。

 

「『トウロナイラ、モロ…パリトリナラサイプ、フップライトイコ、ロメキシコポルットナライパサム』」

 

その願いは、事前にカカロットたちが界王様を通じて界王神から伝えられていたものだった。もっと正確に言えば、ブロリーが考えた願いを界王神が代弁したに過ぎないのだが…とにかく、カカロットはその願いをグロリオへ伝えていた。

そして、願いを聞いたポルンガの眼が光り、その天まで届くような巨体の周囲に鮮やかな光輪が出現し、回り始める。

願いの力を秘めた光輪は波紋のように広がり、魔界全体へ行き渡り、さらにその外側へと向かう。

 

「願いは叶えた。ではさらばだ」

 

ポルンガはそう言うと、その姿が光の粒子となって消えていき…3つのドラゴンボールも勢い良く空へ登っていくと、それぞれ別の方向へ飛び散っていった。

 

 




今回出てきたナメック語は完全に捏造です。何と言ったかは次回…
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