もしもカカロットが幻想郷に落ちていたら   作:ねっぷう

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最終部、始まります。


最終部 【The Absolute Survivor】
第536話 「夕暮れの鳥」


宇宙は泡である。

その泡は何も存在しない虚数空間に浮かんでおり、円を描くように旋回しながら並び合っている。

破壊神ビルスと天使ウイスが配置される第7宇宙もこの12個の泡のうちひとつで、今その中心に呼び出されていた。

 

 

「破壊神はどうなされましたか?」

 

全王の宮殿の廊下で、大神官はウイスへそう尋ねた。

 

「ビルス様は未だ療養中です。無理にでも連れてきた方がよろしかったですか?」

 

「…いいえ、ならば仕方がありません。さ、全王様がお待ちです」

 

ウイスは大神官と共に、全王の御前へ連れ出される。玉座に腰掛け、足をブラブラさせながら退屈そうにしている子供のような全王は、彼らが来たことに気付くと姿勢を正した。

 

「待ってたのね」

 

「全王様、ご健壮なようで何よりです」

 

「うふふ。実はね、ボクの捜してる人間が、第7宇宙にいたみたいなのね」

 

ズバリ切り込んだ全王に、ウイスは内心ヒヤリと驚きながらも表情や態度を崩さないまま言葉を返す。全王が個人的に人間を探すなど、普通であればあり得ないことだ。

 

「あら…一体どなたでしょう?全王様がお探しになる人間だなんて」

 

「こちらをご覧になれば、あなたもすぐに分かるはずですよ」

 

大神官がそう言いながら頭上を指でなぞると、何もなかった空間にスクリーンのような空間の歪みが出来、そこに第7宇宙の全景が映された。

ウイスと全王も見ている前で、スクリーンの景色は宇宙空間をぐんぐんズームしながら移動し、ついに北の銀河、その中の太陽系を、そして地球を映す。さらに地球のとある地点へズームしていき、そこにいた人物は…

 

「あらま」

 

どこかの建物の屋上で、焦燥した様子で膝をつく…サザンカだった。

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

───地球・西の都

 

4月。今、西の都は長閑な春真っ盛りであった。

星喰いのモロとの戦いが明け、宇宙が元通りに戻ってからはや2か月ほどが経過しており、サザンカはブルースターハイスクールの3年生となっていた。だが相変わらず、彼女はスケバンスタイルを貫いており、学校では最も恐れられる不良として名を轟かせていた。流石にもうサザンカに喧嘩を売ろうとする者はおらず、彼女の素行もやっと落ち着きを見せていた。

 

放課後の鐘が鳴り、校庭からは運動部の掛け声、校舎からは吹奏楽の演奏が聞こえてくる。傾き始めた陽光と、まだまだ冬の残り香を醸し出す冷たい風が桜の木々を揺らがせた。

 

「サザンカ」

 

教室の廊下で黄昏ていたサザンカの元へ、カズラが現れて声をかける。サザンカは振り返ると同時にパッと明るい顔になり、彼に駆け寄った。

 

「遅かったな、おい」

 

「はは、ごめんて…だけどもうちょっと待っててくれないか?提出する課題があるから、ちょっと出してくる」

 

そう言われたサザンカは少しムッとした顔を見せるも、冗談っぽくカズラの脇腹を小突いて誤魔化す。

 

「はやくしろよ!それか、アタシも一緒に行ってやろうか?」

 

「いやいいって。先に昇降口で待っててくれ。…あ、それと、サザンカ」

 

「あ?」

 

「後でさ、商店街に新しくできたラーメン屋行ってみようぜ」

 

「ああ~あそこか、アタシも気になってたんだ」

 

「そんで食い終わったらさ…俺ん家で映画とか見てかないか?」

 

少しおずおずした様子でそう言ったカズラの様子を見て、サザンカはその意図を察した。

頬と耳が熱を帯びてくるのを感じながらも、なるべく何ともないような強気な態度を保って言う。

 

「ああ、いいぜ」

 

速足で去っていくカズラを見送ると、サザンカは約束した通りに昇降口へ移動するのだった。

 

 

 

「はい、お願いします…失礼しました」

 

課題を提出し、その場でのチェックも乗り越えたカズラは職員室を後にし、夕暮れの空から窓に差し込む赤い日差しを浴びながら昇降口へ向かっていた。

 

(俺としたことが…恥ずかしい誘い方しちゃったな…)

 

などと考えながら移動していると、廊下の向こうに不自然なシルエットが浮かび上がっているのに気付く。廊下は暗く、夕焼けの日差しが差し込んでいるにも関わらず、立っているその姿は光も影も存在しないかのようにやけにくっきりと見える。

 

「来たか。我々のベイブよ」

 

「…は?」

 

カズラは思わず呆けた声を上げてしまう。耳元で囁かれるようでもあり、頭の中に直接送られたようにも思えたその声が言うことが理解できなかったからだ。

廊下の奥に浮かんでいたシルエットが、いつの間にか数歩先の距離まで接近していた。

 

「あ」

 

目に映るその姿は、情報が散らかりすぎていて頭に入ってこない。ひどく醜悪でありながら、どこか美しいとも取れ…

あるいは矮小でありながら偉大にも見える佇まいをしている。

 

「なんだお前は…来るんじゃねぇよ!」

 

カズラは得体のしれない存在に相対した恐怖をかき消すように強い言葉を放ち、威嚇するが謎のシルエットは構わずにこちらへ腕を伸ばし…

 

ドズッ

 

「うぐ…!」

 

カズラの胸のど真ん中に、その手を挿し込んだ。口から血を流し、苦し気に咳き込むカズラはどうすることもできず、そのまま意識を手放しかける。

しかし同時に、彼の両手や首筋に幾何学的な模様が浮かび上がる。カズラは痛みを伴って広がるその模様に驚きながら、声にならない絶叫を上げた。

 

 

 

 

 

 

サザンカは歩きながら、ここ2年間で起こった出来事を思い返していた。

 

まずこの学校の入学式があった日の夜。仮面のサイヤ人…ブロリーと争いながら現れたトランクスによって、過去の歴史に渡って暗黒ドラゴンボールを集めた。その中で過去の母親と会ったりもした。

夏には海水浴に行ったついでにトランクスと共にトキトキ都へ行き、サラガドラと戦った。

 

さらに時間がたち、次の年の5月には天下一武道会に参加した。カンバーという悪のサイヤ人やベジータによる波乱が起き、そこで暴走した自分のせいで多くの人が死に、その影響で地獄とこの世が繋がり死者が溢れかえるという大事件に発展した。それを解決するため、自分は地獄へ行ってジャネンバと戦い、カズラはシリアル星へ行ってその星のドラゴンボールを使わせてもらった。

 

しばらくたって冬が訪れる頃、地獄で倒したはずのベビーの卵が頭の中に残っていたブロリーが究極ドラゴンボールを使ってしまい、それを探すため宇宙へ冒険に出た。その直前に、ブルマにブロリーとの子供であるジュバンが生まれ、アタシにも妹が出来た。

 

いろんな宇宙を回って究極ドラゴンボールを集めたけど、銀河刑務所から脱獄したっていうモロに奪われて勝手に使われた。そしてアタシや姉貴、ブロリー、ハーツでやっとモロを倒して一連の事件を解決できた。

 

思えば様々なことが起きすぎた2年間だった。

しかしそれよりも、カズラと付き合い始めてからあと1か月くらいで1年が経つ。その期間がずっと濃くて考えることが多かった。

 

薄暗い下駄箱で、ゆっくりと靴を履き替えながらカズラを待つ。

 

ドオオオォォ…ン!

 

その時だった。どこかで激しい爆発が起こり、サザンカは瞬時に振り返り、その方角へ向いた。

 

「な、なんだ!?」

 

カズラはまだ来ない。しかし…

 

「クソッ、何だってんだよ…!」

 

サザンカはカバンを放り投げながら外に出ると、一飛びで屋上に降り立った。

爆発が起きたであろう方角を見ると、遠くにある街中が崩壊し炎上していた。

 

「なんだありゃ…誰が…」

 

もしも悪意ある何者かによるのであれば、サザンカならその気配を察知できるはずだ。しかしそれも無かったということは、普通の人間によるテロの可能性もあるが…それはないだろう。この破壊の規模が一般人が爆弾を使ったとしても起こせるものではない。

 

「…!上か!」

 

気は感じられない。しかし、サザンカは母親の霊夢譲りの勘の鋭さで真上を見上げた。そして、信じられないものを見た。

 

「…何やってんだ」

 

学校の真上上空には、サザンカの良く知る男、間違えるはずもないその男、カズラがいたのだ。しかし、その表情は冷酷そのもので、何の感情もなくただ眼下に広がる街を見下ろしている。それよりも奇怪なのは、カズラは頭を下に向けた上下逆さまの姿勢で浮いていることだ。

 

「カズラ!!!」

 

サザンカが大声で彼の名を叫ぶ。すると、カズラはそれに気づきこちらへ目を向ける。そしてその直後、手の平をこちらへ向け、禍々しい黒色のエネルギー弾を放った。

サザンカは咄嗟に屋上を蹴って飛び上がり、落ちてくる気弾に向かって拳を叩きつけた。ドゥン、と凄まじい音と共に衝撃波が周囲を薙ぎ、空気が震える。

 

「く…おお!」

 

サザンカの拳を受けても気弾の勢いは変わらなかった。だが、さらに渾身の力を込めると、気弾はその場で炸裂し、サザンカは吹っ飛ばされながらも再び屋上の上に受け身を取って着地した。

そして、黒煙と炎を発散させる爆発の向こう側を凝視する。先ほど目に入った光景が、間違いであってくれと祈りながら。しかし、爆発が治まると、やはりよく見知った、間違えようのない姿が浮かび上がる。

 

「おい!!カズラ!!テメェ何やってんだよ!!」

 

低く凄みを効かせた怒号が、空気を震わせながらカズラへ向かい、その髪を揺らす。しかし、カズラは全くそれを意に介さず、冷たい目で彼女を一瞥すると、今のものとは比べ物にならないほど巨大な黒いエネルギー球を眼下へ向かって投げつけた。

 

「!!…オイオイ」

 

サザンカは超サイヤ人と化し、一気に飛び立つと街中へ落ちようとしていたエネルギー球を蹴り上げ、空に向かってはじき返した。

エネルギー球は空の果てまで昇り見えなくなるほど、その直後に空を真っ白に染めるほどの閃光と爆発を巻き起こして消えていった。

 

(マジか!今の当たってたら、地球なんてぶっ飛んでたぞ!)

 

サザンカは頬を伝う冷や汗を拭いながら、こちらを見下ろすカズラの元へ移動し、目の前に迫る。

 

「どういうつもりだカズラ…」

 

問いかけるサザンカに、カズラは向き直る。相変わらずその体は上下逆さまで、感情の読めない鋭い目つきが彼女を見据える。そして、その口元が微かに動き、カズラのものとは思えないほど恐ろしい声色で言った。

 

「我々は『エオス』…全ての宇宙に夜明けを告げる存在。宇宙に滅亡をもたらす戦闘力が集うこの惑星を危険と判断し…破壊するために来た」

 

 

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