もしもカカロットが幻想郷に落ちていたら   作:ねっぷう

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第537話 「どうかしてる」

何の変哲もない平和なある日の夕暮れ時に、突然異変が起こる。

カズラの姿をした謎の存在が、街並みを破壊し地球すら破壊しようとしていた。サザンカはそれを止めるよう問い詰めるが…

 

「我々は『エオス』…全ての宇宙に夜明けを告げる存在。宇宙に滅亡をもたらす戦闘力が集うこの惑星を危険と判断し…破壊するために来た」

 

「へえ…今日はよくわかんねぇコト言うじゃねぇか。でもよ、知ってるはずだぜ…アタシがそういう冗談が苦手ってことをな」

 

「冗談ではない。連鎖的に起こる宇宙の消滅…『マヒティキ・ホロフレス』の発生を阻止するのが我々『エオス』の役目。それを邪魔立てするのなら…消えてもらうしかない」

 

自らをエオスと名乗る者は、カズラの姿のまま、掲げた左手にエネルギーを込める。一切の光を通さないような黒色のエネルギーは膨張し、あと一息で炸裂するというタイミングでサザンカへ向けて投げ飛ばされた。

周辺の大気組成を焼き尽くしながら迫るそれを、サザンカが気を纏わせた拳で叩く。だが勢いは止まらず、そのまま地平の先まで押し込まれていく。

 

「舐めんな!」

 

が、サザンカは拳で弾くのが難しいと分かるや手を開き、その指をエネルギー球へ突っ込んでしっかりと握って掴むと、それを思い切り振りかぶり投げ返した。

 

「無駄な足搔きだ」

 

しかし、そのエネルギー球はエオスに当たることなくその姿をすり抜け、空間を裂いて現れた虚空の中へ沈んで消えていく。

 

「なんだそりゃ!」

 

「いつの時代も…増大した人間の戦闘力は忌々しい」

 

エオスは再び腕をサザンカへ向け、手の平から無数の気弾を連射する。

各々がバラバラの軌道で散らばっていくそれを、サザンカは片っ端から潰していくつもりで拳の連打を振るいながら高速で飛び回る。しかしすべてを相殺することは出来ず、逃れた気弾が次々と街中に降り注ぎ、たちまち町は爆炎と人々の悲鳴に包まれた。

 

「チ…!なんてことしやがる!」

 

舞い上がる火の粉が視界で煌めき、夕暮れを通り過ぎ夜へと変わっていたはずの夜空が再び赤く染まる。

 

「何がしてぇんだテメェは!カズラの姿を真似しやがってよォ!」

 

サザンカもいよいよ洒落にならない被害を目の当たりにし、エオスに対して問いかける。

しかし、エオスは相変わらず全く感情の機微を見せない表情で淡々と答える。

 

「すでにお前の言うカズラという人間は…存在しない」

 

「は?」

 

「この人間は我々がかつて送り込んだ端末。すべての宇宙に現生する知的生命には我々の因子が忍んでおり、それは1億年に一度、すべての宇宙の中からたった一個体のみが覚醒し、我々と同調する。同調した端末は我々と同一の存在『エオス』にして一部となり、この宇宙を調停する…」

 

それを聞いたサザンカは、静かに怒りの炎を燃やす。

 

「能書きはいいんだよ。いいから黙って、カズラを返しやがれ!」

 

その声と共に、サザンカの体を覆う金色のオーラが一気に膨れ上がる。黄金の閃光が瞬き、超サイヤ人4となったサザンカが姿を現す。

身に纏うスケバンスタイルのセーラー服の隙間から赤い体毛が覗き、同様に赤い隈取の中の黄色い瞳がエオスを睨む。

普段よりも筋肉量が増した肉体を引き絞り構えると、締められた筋肉から灼熱の熱気が上がる。その熱気はすなわち有り余るパワーの象徴で、サザンカの有無を言わさぬ拳撃に込められる。

 

パァン!

 

拳に圧縮された空気が爆ぜる音が轟き、巨大隕石の如き威力の一撃が炸裂する。これ以上町を破壊しないよう、一点集中を意識した攻撃だったが…

 

(あれ…?)

 

エオスは目の前におらず、拳を振りぬいた後の姿勢のサザンカの背後にいつの間にか移動していた。

 

「無駄な足掻きだ。お前が我々に接触することは…不可能だ」

 

サザンカは続けて拳を振るうが、エオスに掠りもしない。空しく拳が空を切り、衝撃波や突風が吹き抜けていく音が鳴るだけ。

 

「我々は実在しない。よって、存在しないものを認識し、触れることは不可能」

 

何度も攻撃を繰り出すが、そのすべてが空ぶり続ける。しかしそれは、避けられているわけでも、すり抜けているわけでも、ましてや時を止めたり行動の過程を消し飛ばされているというわけでもない。

もっと得体の知れない胡乱さの片鱗を味わっている。

 

「ここにいる我々は、あくまで因子を持つ端末の形状を取っているに過ぎない。我々から接触した人間だけが我々の姿を視ることが可能…それだけだ」

 

エオスは、認識しなければ実在しない不確定な存在。それは人間の身体を奪いその姿形となることで初めて認識が可能になるが、それでも姿を視認することしかできない。姿が見えても存在そのものはやはりそこに無いため、干渉することは不可能なのだ。

 

「戦闘力という滅亡の証憑に侵されし人間よ、永遠に眠れ」

 

対して、エオス自身は一方的にサザンカへ干渉できる。人差し指を向けると、そこから放たれた謎のエネルギーがサザンカの心臓を狙って真っすぐに襲い掛かる。

だが…

 

「だからなんだァこの野郎!いい加減…カズラを解放しやがれ!!」

 

サザンカはエオスが攻撃を放つその瞬間を狙い、目にもとまらぬ速度で拳を振るい、敵の指先から放たれるレーザーのような光線が腕を貫いていくのも構わずに叩き込んだ。

 

ドズッ!!

 

サザンカの一撃は確かにエオスの脇腹にヒットした。エオスはサザンカへ攻撃を放つその瞬間のみ、どういう訳か攻撃が通るようになる。サザンカは無意識に本能のみでそれを見切ったのだ。

 

「…!!」

 

拳を受けたエオスは怯み、素早く後退する。ダメージこそ全く与えられていないが、それでもサザンカに対しこれまでとは違う警戒を見せる。

 

「まだだ!カズラを返せ!!」

 

サザンカから発せられるのは魂からの願いの叫びだった。血が滴る拳を振り上げ、さらに追撃しようとエオスに襲い掛かる。

 

「言ったはずだ、無駄な足掻きだと。一度我々と同調した人間が元に戻ることは…無い」

 

エオスは憎らし気にこちらを睨みながら、空間の裂け目の向こうへゆっくり消えていく。それを追いかけようとするサザンカだが、カズラと全く同じ顔から向けられる憎悪の視線に怯み、それ以上動けなくなってしまう。

 

(カズラ…どうして…)

 

しかし、サザンカはこの逆境において闘志を爆発させる。

 

「テメェ覚えてやがれ…!!テメェがどこの誰だろうがどこにいようが、絶対に追い詰めてぶっ飛ばしてやる!!そしてカズラを返してもらうぜ…晩飯時でも安心すんじゃねぇぞコラァ~~!!」

 

「それは無理な事だ、すべての知的生命から我々に関する記憶は削除される。もちろんお前からも、我々の記憶は無くなる。絶対的な絶望をその身に刻むがいい…」

 

「待て…!」

 

そう言い残し、エオスは完全に姿を消した。

 

「なんでだよ…!」

 

その時、サザンカの頭の中を深い悲しみが襲った。何故か、カズラにはもう二度と会うことが出来ないと確信めいたものが浮かんだのだ。

気が付けば、その目からは涙の筋が伝っていた。

 

──悔しい

 

しかし、サザンカはすぐに記憶を失う。エオスという存在、そして…それと同調したカズラという人間と、その思い出すべてが忘却されていく。

 

変身を解除したサザンカはゆっくりと降下し、元居た学校の屋上に着地すると、その場で膝を落とす。

 

「…あれ?なんでアタシ…泣いてんだ?」

 

サザンカは泣いていた。訳も分からずに。

声こそ上げないが、なぜ涙が出るのかすら…もう分からない。

 

 

 

だが、彼女の元へ…新たな受難が訪れる。

破滅の喇叭はいつも突然に、何度も鳴り渡るものだ。

 

「サザンカ…我々と一緒に来い」

 

そう言いながら目の前に現れたのは銀河パトロールのジャコとスカッシュ、そしてメルスであった。3人とも、神妙であるがどこか辛さも垣間見える複雑な表情でこちらを見ている。

 

「お前ら…」

 

「サザンカさん、貴方を…過去の改竄およびそれに伴う並行世界の創造を罪人とし…我々と同行願います」

 

 

「…はぁ?」

 

 

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