もしもカカロットが幻想郷に落ちていたら   作:ねっぷう

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第539話 「もうどうなってもいいや」

「優勝した宇宙には何もしませんが…敗退した宇宙は全王様が消してしまわれるそうです」

 

大神官のその言葉に、全ての宇宙の神々が静まり返る。今聞いた言葉が本当なのかどうか、いやしかし大神官ともあろう者が嘘や冗談を吐くはずがない…それぞれが、頭の中で様々な思考を巡らせ、フリーズしている。

 

「な…なな…ななな…なんだってェ────!!?」

 

そんな中、一番初めにビルスの絶叫が木霊したのだった。

 

 

そこで、玉座ごと前に出た全王が口を開く。

 

「ボクはね、前から宇宙って、多すぎると思っていたのね。だからね、もうこんなにいらないんじゃないかって思うのね」

 

それを聞いた途端、神々からざわめきが起こる。

 

「何だと…!?」

 

「急すぎる…!」

 

「思っていたより大事になりましたね」

 

「想像の遥か上をいく最悪の事態だ…」

 

そんな会話を横で聞いていたサザンカも、フードの下から全王と大神官を睨みつける。

 

「ひとつの宇宙だけが残ると…そういうことですか?」

 

と、ベルモッドが大神官に尋ねる。

 

「ひとつではありません。第1宇宙と第12宇宙、それに第5宇宙と第8宇宙も残ります」

 

「え?それはどういう…」

 

第2宇宙の破壊神ヘレスが困惑する。

 

 

「全王様は各宇宙に『人間レベル』なる基準を設定しておられます。それによれば、ほとんどの宇宙は特段変動はなく横ばい状態…平均でいえば少し下がっているくらいです」

 

「そうそう。全然成長してないのね。これならたくさんある意味がないのね」

 

「ですが申し上げた4つの宇宙は人間の平均レベルが7以上ありますので、今大会の出場は免除されました」

 

 

「た、助かった…!」

 

「よし…」

 

「真面目に働いといてよかったですね」

 

免除となった宇宙の神々は皆ホッとして胸をなでおろす。そんな様子を横目で見ていた第4宇宙の破壊神キテラはバツの悪そうに悪態をついた。

 

「クソッ…」

 

「あの…もし宇宙が無くなってしまったら、我々はどうなるのでしょうか?」

 

第10宇宙の破壊神ラムーシが大神官に尋ねる。

だが、大神官はあたかも当然だというように淡々と返す。

 

「ご心配なく。ガイド天使以外は神の皆さんも一緒に消えますから」

 

「そ、そんな…」

 

 

「免除…ということはこの大会の本当の趣旨は、要するにレベルの低い宇宙は本来問答無用で消されてしまうところだが大会で優勝すればしょうがないからご褒美に残してやろう…という感じでしょうか」

 

と、ウイスが述べる。

 

「流石ウイスさん、お察しの通りです」

 

 

「おいウイス、第7宇宙はそんなにレベルが低いのか?」

 

「そうですね、第7宇宙の人間レベルは下から2番目だったと思いますが」

 

「そんなに低いのか!?お前のせいだぞ界王神!自力でレベルの高い人間の星にならなければ意味がないなんて甘いことを言っているからだぞ!」

 

「あなただってほとんど眠っているだけじゃないですか!」

 

言い争いを始めるビルスとシン。

 

 

「いいえ、第7宇宙のレベルはここ数年間でぐんぐん上昇していますよ」

 

大神官がその時そう言った。

 

「え?そうなのですか?」

 

「はい。免除となった宇宙に比べればまだまだ向上の余地ありと言ったところですが…成長ぶりに関しては全王様も認めておられるところです。そしてその一因を担っているのは、そこにいらっしゃるサザンカさんの存在によるものだそうですよ」

 

その時、他の宇宙の神々の目線が一気に第7宇宙へ、サザンカへと集中される。

 

「え?あ、アタシィ?」

 

「初めましてなのね、サザンカくん。単刀直入に言うとね、キミが過去の時空へ行って歴史を改竄した疑いがあるのね。だから聞くのね、キミは、本当にその罪を犯したの?」

 

全王直々にそんなことを尋ねるなど前代未聞。全宇宙の神々が注目している。歴史の改竄という重罪を追及され、この人間がどう切り抜けるのか、あるいはどのような罰を受けるのか気になり目が離せない。

しかし全王自身の思惑としては、歴史の改竄は実際に起こったことであるが、それはタイムパトロールの管轄でありサザンカに責任はないし、自分が介入する事ではない。今回こうしてサザンカを呼び出し問い詰めているのには別の理由があるのだ。

よってサザンカがここで否定するのであれば、この件に関しては全王は何も咎めはしないだろう。

 

「そうだ、アタシがやった」

 

しかし、サザンカは肯定した。

全王も、大神官も、各宇宙の神々も、その返答を聞いて硬直し、静寂が訪れる。

 

「ですが、サザンカさ───」

 

「当たり前だろ。アタシがやったんだよ」

 

大神官の言葉すら遮って、サザンカはさらにまくし立てる。

 

「…そうですか。では、動機はなんですか?」

 

「こっちじゃあよ…アタシの両親は、アタシが生まれた日に死んでんだ。だからあっちの歴史は、親が死なねぇように変えてやった。有難迷惑だろうが罪だろうが知ったこっちゃねぇよ!アタシが親のいない寂しさを味わわなかった歴史が一個くらいあったっていいだろ」

 

それはサザンカの本心だった。今頃、暗黒ドラゴンボールとタイムパトロールの介入を受けたあの歴史では、霊夢とカカロットが死なずに済み、自分とシロナと4人で楽しく暮らしているはずだろう。

だが、次に大神官から告げられた事実は、そんなサザンカの願いを打ち砕く。

 

「残念ですが、すでに当該の歴史は消滅しています」

 

「…え?」

 

「原因は不明ですが、こちらをご覧ください」

 

そう言いながら、大神官は厳重そうな小箱のようなケースを取り出し、全員に見えるようにそれを開いて見せる。

 

「『時の指輪』。神々は既にお分かりかと思いますが、この指輪の数だけ並行世界の歴史が存在します」

 

ケースの中には、翡翠色をした指輪が5個入っていた。

 

「地球の時間でいう2年ほど前、ここに6つ目の指輪が出現しました。我々はそれを6個目の並行世界が生まれたのだと確認しましたが、ついこの前、その指輪が消えたのです。これは並行世界の消滅を意味します」

 

「…なんで」

 

「原因は不明です」

 

大神官も嘘は言っていない。しかし、今回全王がサザンカを呼び出した目的がここにある。原因は不明であるが、全王はそれに心当たりがある。その見極めのためにサザンカを呼び出したのだ。

 

「…そうか」

 

サザンカは意気を消沈し、今にも前のめりに倒れこみそうな青い顔で小さく呟き、それ以上は何も言わなかった。

ビルスやシンも気の毒だと思ったが、それを顔に出さず、あくまで厳格な神の立場を貫く。

 

「話を戻します。サザンカさんに対する処罰を言い渡します」

 

そして、サザンカが自分の罪だと認めた以上、全王や大神官も立場上厳格に判決を下さねばならない。

 

「第7宇宙の神々よ、力の大会の選手に、サザンカさんを選抜される予定ですか?」

 

「ええ、それはもちろん…!」

 

大神官の問いに、ビルスが返す。そして少し考えた後、全王の内緒話のように耳元で話す言葉を聞いた上で述べる。

 

「まず、過去において類似のケースが存在する事とその処罰、そして近く『力の大会』開催を控え、第7宇宙の貴重な戦力を減らさない事などを考慮し…こう言い渡します」

 

類似のケース…それは過去、第12宇宙においてタイムマシンを創造し歴史を変えてしまった事件だ。その犯人は破壊神によって消滅させられ、タイムマシンは現在も保管されている。

 

「サザンカさんは『力の大会』へ強制的に参加するものとする。そして、力の大会が終了し最優秀選手が超ドラゴンボールで願いを叶え終わった後、破壊神の手により消滅させられるものとする」

 

「それは…!」

 

それは、実質的な処刑宣告。力の大会へ参加し、もしも第7宇宙が敗退した場合、その場で即刻宇宙ごと消滅。もし勝ち抜いた場合であっても、願いを叶えた後に彼女だけ消滅される。

 

「何か異議のある方はいらっしゃいますか?」

 

「はい。もしも、仮に我々第7宇宙が優勝した場合…超ドラゴンボールに『サザンカさんが絶対に消滅しないようにしてくれ』と、もしくはそれに類する願いを叶えさせたら、どうなりますか?」

 

と、ウイスが質問した。対する大神官も、淡々と返答する。

 

「大丈夫ですよ、それにより破壊神では対処できない事態になった場合、全王様自らが消滅させます。全王様のお力は超ドラゴンボールの効力さえ凌駕するものです」

 

そんな、処遇に対する意見が矢継ぎ早に飛び交っているが、当のサザンカ本人にはもう聞こえていなかった。

サザンカは真上を見上げ、紫色、青色、黒色と色を変えてゆく不思議な空を眺めた。

 

(もう…どうなってもいいか)

 

 

「大神官様並びに全王様!!不躾ながら申し上げます!!!」

 

その時、雷鳴かと思うような大声が轟いた。ビリビリと空気を震わし、ドンと心臓を打つ。

大神官がそちらを向くと、そこにいた第11宇宙の神々は慌てた。

 

「おいトッポ…!不敬であるぞ…!一体何のつもりだ!」

 

ベルモッドは焦ると同時に怒りを見せながら、後ろに控えていた灰色のフードを被った大柄な人物を叱責する。しかし、その人物は物怖じせずに言い返す。

 

「無礼であるのは承知の上。しかしそれでも、私には見過ごせないことがあるのです」

 

「…そうか、お前はプライドトルーパーズの中でも随一の正義感を持つ…やってみろ」

 

「はい」

 

 

「どうかなさいましたか?第11宇宙」

 

「大神官様、申し訳ございません。この者の無礼をお許しください。そして紹介が遅れました、この者はトッポ…私の次の破壊神候補として育成中であり、たまたま一緒にいたところへ招集がかかったものでこれも経験と思い同席させております」

 

「左様でしたか。それで、トッポさん…申し上げたいこととは?」

 

トッポは羽織っていたフードを脱ぎ去る。それはサザンカが羽織っているフードと同じもので、恐らくは彼もサザンカと同じ理由で着用していたのだろう。

 

「力の大会が始まる前に、一度そのサザンカという者と手合わせを願いたいのです!別の宇宙の人間同士が戦うとどうなるのか、全王様にも前もって見ていただきたいと思った次第であります」

 

「なるほど。全王様、如何なされますか?」

 

「おもしろそーなのね。戦い、見てみたいのね」

 

「全王様の許可が下りました。よって、トッポさんとサザンカさんの全覧試合を執り行います」

 

その瞬間、トッポは第11宇宙の議席から飛び降り、眼下の白い武舞台の上へ片膝をついて着地した。ドズン、と重たい音が響き、露わになった闘気が揺らめく。

 

「さあ下りてこい!!第7宇宙のサザンカ!プライドトルーパーズのトッポが相手をする!!」

 

「な、なんだァ…!?」

 

いきなりトッポと戦う運びになったサザンカは、困惑しながら彼を見下ろすのであった。

 

 

 

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