もしもカカロットが幻想郷に落ちていたら   作:ねっぷう

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第54話 「進め!霊夢反撃の時!」

「ふう…甲板はどうなってるんだ?」

 

魔理沙が額の汗を袖で拭きながらそう言った。船は甲板上の勇儀たちと紡馬との戦いの影響で揺れたり震えたりしている。

魔理沙と一輪、そして雲山は船の底部の中で、ひたすらに大砲の弾を装填する作業にいそしんでいた。装填された弾は永琳と村紗の操縦によって、遠くの戦艦たちを狙って放たれている。

 

「わからない…でもすごい戦いのようね」

 

もしも彼女らがここで装填を辞めてしまったら、すぐさま戦艦たちの攻撃を受けてしまう事だろう。

 

「皆、無事ならいいけど…」

 

一輪の言葉に、雲山が心配そうにうなずいた。

 

 

一方、月の客軍の戦艦では。

 

「小賢しい!あの小さな船から放たれる砲弾の所為で、我が戦艦の砲撃が当たらん!」

 

「こうなったら、一斉射だ!全ての戦艦で一か所を狙うのだ!」

 

残る20隻ほどの戦艦は照準を聖輦船の前部に定め、そこを狙って一斉に光の砲撃を放とうとする。

 

「いや待て、あそこには紡馬様がいるだろう。怪我をされたらどうするつもりだ」

 

「むう…そうだったか…」

 

 

 

 

「グオアアアアアアアア!!」

 

紡馬は叫びながら吹き飛ばされていく。その腹には風穴が空き、血が飛び散っている。

しかし、空中で踏みとどまる紡馬。

 

「くはははは…この程度でくたばってたまるか…誰か一人でも殺して、戦果を上げてやる!!」

 

紡馬は細い目を見開き、口から血を流しながらも狂気染みたともいえる表情で聖輦船を見た。

 

 

紡馬が聖輦船から離れていった様子を確認した月の客の戦艦は、再び砲撃の準備をする。

 

「紡馬様が船から離脱した!」

 

「今なら撃てる!全艦、発射せよ!!」

 

全ての戦艦が、一斉に聖輦船に向けて砲撃を放った。

 

 

「ハァ…ハァ…まずい!」

 

勇儀がそれにいち早く気づいた。戦艦たちの砲撃はこちらを狙い、紡馬は遠くにいる。まだ驚異のタフネスを誇る紡馬の息を根を止めることはできていない。咄嗟に勇儀が取った行動は…再び注連縄を掴み、それと繋がっている紅魔館を引き上げることだった。

それを思い切り振り回し、紡馬の横から接近させる。

 

「なに!?」

 

紡馬は紅魔館に激突し、その勢いのままに移動していく紅魔館に成す術もなく押されていく。その軌道の先には…戦艦たちが一斉に、かつ一点に向けて放った砲撃の通過地点だった!!

 

カッ

 

砲撃は紡馬を間に挟んで紅魔館に命中した。とてつもない爆発により紅魔館は砕け散ってしまうが、同時に紡馬自身も粉々に吹っ飛ばされて消滅していく。彼女らは、霊夢やカカロットの力無しに親衛隊の一人を倒したのだ。

 

「は…はは…やったか…ちっと哀れな最期だったな」

 

しかし、それに伴う大きな犠牲を払ってしまった。

 

「最後の一発だ、当たってくれよ!」

 

最後に残った、地面ごと抉りとってきた地霊殿。勇儀はそれを投げ飛ばし、砲撃を一点に当てるために密集していた月の客の艦隊に命中させた。戦艦は大破し、互いに衝突し合いながら地面へと落下していく。

 

「聖!」

 

村紗が甲板上に飛び出し、重傷の聖を抱きかかえる。

 

「村紗…私はもうここまで…。今まで付き合ってくれてありがとう」

 

息も絶え絶えの様子で、そう言葉を絞り出した。それも仕方がないだろう、地上の民を一撃で殺す威力を秘める親衛隊の攻撃をまともに受けたのだ。いくら聖と言えど、無事では済まなかった。

 

「うん…こっちこそ、楽しかったよ…」

 

「カカロットと霊夢にも、もし会う事があれば伝えてください…あの子らも私の可愛い弟子のひとり…だから」

 

「ええ、必ず」

 

そうして、聖白蓮もまた、その長い人生を終えたのだった。

 

「聖白蓮がいなかったら…私らは勝ててなかった…。よくやったよ」

 

勇儀はそう呟くと、浮かび上がって聖輦船の後ろまで移動した。

 

「何をするつもり?」

 

と、輝夜が聞く。

 

「どうやら、この船はそこまでのスピードは出せないようだね。だったら、私が思い切り押してやる。目指してんのはあの月に重なって開いてる通路なんだろ?ま…いまの私じゃせいぜい手前までが限界だろうけどな」

 

「聞いたわ、じゃあお願いするわ」

 

永琳が勇儀にそう呼びかける。

 

「…どうもありがとう」

 

「いやいいさ。これが私にできることだからな」

 

勇儀は聖輦船の船尾の部分に手を置き、妖気を込める。

 

(カカロット…お前の活躍は全部華扇から聞いてたよ。すごいじゃないか…あんな、弱っちい癖にやけに暴れん坊だっただけの小僧が、もう私じゃ到底追いつけないレベルにまで到達してしてしまった。もう思い残すことは無いが、できることなら、最後にもう一度…)

 

「オラアアアアアアア!!」

 

ギュオ

 

勇儀は渾身のパワーで聖輦船を押し出した!

聖輦船は猛烈なスピードで槐安通路の入り口目指して飛んでいく。それを見届けると、勇儀は自らの体が動かなくなり、静かに落ちていくのを感じ取った…。

 

 

 

 

 

 

一方その頃、霊夢は襲い来る兵士たちをかいくぐりようやく槐安通路の中へとたどり着いた!

しかし、本当の戦いはここからかもしれない。入った途端、今までよりも膨大な量の兵士たちがこちらへと向かって来たのだから。

 

「博麗霊夢!覚悟を~!!」

 

「ふん、覚悟するのはどっちかしらね?」

 

霊夢は自信ありげに背負っていた袋の中に手を伸ばし、そこから何かを取り出した。それは大きな葉っぱできた扇であった。

 

「『天狗のうちわ』よ!!」

 

それを思いきり振るうと、周囲にとてつもない突風が巻き起こった。それにより兵士の一団は遥か彼方へと吹き飛ばされてしまった。

 

「おのれ~!!」

 

それでも向かってくる無事な兵士には、再び袋から取り出した何枚もの皿を投げ飛ばす。

 

「『布都の皿』!!」

 

皿は霊夢の周囲を旋回するように高速で飛び回り、向かってくる兵士たちを一網打尽にしていく。

 

「驚いたかしら?これはアンタらと戦ってやられていった奴らからの贈り物よ!みんなもういらないからって私にくれた…その力を思い知るといいわ!」

 

「くっ…博麗霊夢めが様々な武器を…止められん!」

 

「何か手は…!…そうか、分かった…オイ、これからイツルギ隊が到着するそうだ!道を開けるぞ!」

 

「おお、イツルギ隊が!それは助かる…!」

 

月の兵士たちは口々にそう言うと、途端にサッと霊夢から離れた。

不思議に思った霊夢は、開けられた道の向こう側を覗き込む。すると、五つの光がチラリと見えた。

 

「我ら、不動紡馬様に直属するイツルギ隊なり!不浄なる地上の民を、瞬く間に惨殺してみせよう!!」

 

「な、なに…!?」

 

イツルギ隊を名乗る五人は、瞬時に霊夢へ飛びかかり、手に持った剣を叩きつけた。

 

ビリビリ…!

 

「ぐ…お、重い!」

 

下へ向けて押し出される霊夢。さらに止めを刺そうと、イツルギ隊が追いかける。

 

「見たか地上の民!我々は不動紡馬様直々に鍛えられ、1人1人が戦闘力だけならばあの綿月姉妹に匹敵すると言われた精鋭部隊だ!」

 

「だったらこっちももっと武器を!」

 

霊夢は袋の中から、二振りの剣を取り出した。片方は武骨で使い古された重たい剣だが、もう片方は細身で煌びやかな装飾が成され、柄の先には太陽を模したような飾りがある。

 

「『白狼天狗の剣』と、『神子の七聖剣』よ!!」

 

「むっ、キサマも剣を使うのか!」

 

5人が同時に振るう剣を、霊夢も剣で受け止めた。

 

「しかしそのような使い古しのなまくらで我らが剣と打ち合おう等とは片腹痛いわ!!」

 

だが、イツルギたちは剣に気を込め、霊夢の使っていた二本の剣を粉々に砕いてへし折ってしまった。霊夢はすぐさま後ろへ飛び、もう一度袋へ手を伸ばす。

 

「だったら、これならどう?『スピア・ザ・グングニル』!それと『レーヴァテイン』!!」

 

取り出したのは、レミリアとフランドールがスペルカード等で使う武器だった。これは彼女らが力尽きる寸前に全ての魔力を結集させて作った、光の武器である!

 

「せぇのッ!!」

 

「う、うわ…!」

 

霊夢が振るったグングニルとレーヴァテインを、兵士に叩きつける。兵士はその武器に込められた魔力と霊夢の霊力による衝撃で大ダメージを受け力尽き、そのまま銀色の流星となって通路のはるか向こうに見える月へと飛ばされていく。

 

「ほう、我が隊員を倒すとは!」

 

しかし、イツルギ隊の1人はそれに耐え、未だ霊夢に敵対していた。

 

「だがこの私は倒せないぞ!私はイツルギ隊の隊長イツルギ!他の奴らよりも数段上なのだからな」

 

倒された他の四人が取り落とした剣を超能力で引き寄せ、自らの剣と合わせて頭上に浮かばせる。

 

「私の発射剣の術を喰らうがいい!」

 

そして、イツルギは片腕を前にかかげるとそれに連動させて5本の剣を触れずに高速で前へ打ち出した。無数の剣が一瞬にして霊夢に襲い掛かり、グングニルとレーヴァテインで押さえ込もうとするが、全て防ぎきることはできずに何本かの剣が霊夢を切り刻んだ。

 

「うぐ…!」

 

「ふはははは!二刀流では我が発射剣には勝てんぞ!」

 

「二刀流じゃ勝てないですって…?だったら…!」

 

次に霊夢が袋から取り出したのは、緑色に輝く斧だった。それの持ち手の部分を口で咥え、刃の先をイツルギへ向ける。すると斧は巨大化し、バリバリと雷を纏った。

 

「『ライエムドアクス』も追加してやるわ!」

 

それは正しく、レミリア達の姉であるスカーレットが使っていたライエムドアクスであった。霊夢はそれを振り下ろし、イツルギを両断するかのごとく狙う。

 

「ば、馬鹿な!」

 

斧と激突したイツルギは悲鳴を上げながら、他の隊員たちと同じく月目がけて吹き飛んでいった。

 

「さて…次はあそこにいる月夜見の戦艦に行きたいんだけど…まだ簡単に突破はできないか。いつまた親衛隊がやって来るかわからないし…」

 

霊夢はイツルギが倒されてもなお膨大な数でこちらへ向かってくる月の兵士を見ながらそう言った。そして槐安通路の奥を目指して進撃を再開した。

 

 

 

 

「よし、槐安通路に入ったわ!」

 

勇儀の最期の力で投げられた聖輦船は、その勢いのままに槐安通路へとたどり着いた。しかし、勇儀の力によって得られていた推進力も尽き、あとは聖輦船だけの力で飛んで行かなければならないが…。

 

「ねえ、この船はもっとスピードでないの?」

 

「無茶言わないでよ、この船は闘う舟じゃないんだよ!進むのだって普通の舟が水の上を進むような速さしか出せないし…」

 

その時、遠くの方から月の客の艦隊が迫ってきていた。

 

「ちっ、また奴らのお出ましか!」

 

一方、下層の倉庫の中にいる魔理沙と一輪。敵が迫っていることを知り、再び大砲の弾を装填していく準備に入る。

 

「あの数で今度は助けもない、避けるスピードも出ないらしいな」

 

「そうね…聖もいないし、今はどうしようもできないか」

 

一輪が聖が亡くなってしまったと聞いたからか、ここにもどんよりとした雰囲気が漂っていた。いつも一輪の傍らに寄り添っていた雲山でさえも、かける言葉を失い、下を向いている。

さてこの状況をどうしたものかと魔理沙は考えていた。そして、ふと自らのポケットに手を伸ばしたとき、ひらめいた。

 

「そうだ!」

 

魔理沙は階段を駆け上がり、甲板上へ上がる。

 

「ごめん、私がちゃんと操縦さえできれば…」

 

操縦室で村紗は永琳に対してそう言った。

こう見えても、永琳はかつて月の客を殲滅したこともある。今回の戦いよりは規模も小さかったが、それでも今永琳が戦える状況にあれば、この不利を打破することができただろう。

 

「仕方ないわ、誰にでもブランクはあるもの」

 

「おい!聞いてくれ!」

 

その時突然、窓を開けて魔理沙が顔を出し、そう叫んだ。

 

「なに、どうしたの?」

 

「今からたぶんこの船がドカンと加速する!月夜見王ってヤツのところへ行きたいんだろ、だったらソイツがいる場所へ真っすぐに進路を合わせてくれ!」

 

 

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