色々あったが、約40時間後の「力の大会」を知らされたビルス、ウイス、界王神、サザンカは第7宇宙の破壊神界まで送還されていた。
「まったく、えらいことになったな」
「選手は誰を選抜しましょう?」
ビルスと界王神は頭を抱えた様子で、力の大会に参加させる10名を誰にするか相談を始める。
「サザンカは決定として、あとはブロリー、シロナ…ハーツとかいう人間も強いらしいな」
「モロと戦った主力の方たちは候補にしてもよさそうですね。後は、ブロリーさんたちに聞いてみましょうか」
とりあえず、ビルスたちが挙げたのはこれで4人。
「ではブロリーさんの所へ行きましょう、サザンカさんもお送りします」
一行は界王神の背中に触れ、界王神は「カイカイ」という呪文と共に瞬間移動で地球へ移動した。
移動先はブルマの家の庭。既にあたりは夜の帳が降りており、満月が空に浮かんでいる。
確か、サザンカが銀河パトロールへ連行された時は夕暮れだったが、今はもう夜遅い時間だろう。
「サザンカさん、お疲れさまでした…大変でしょうが、大会までゆっくり休んでください」
「ああ…っと、破壊神サマに界王神サマ」
サザンカは返事をしたついでに界王神を呼び止める。
「はい?」
「悪いが、力の大会が終わったらアタシは消えちまうってコト…誰にも言わないでおいてくれ…頼む」
「わかった。それについては口外しないよ」
ビルスもそう言って了承してくれた。当然、ブルマたちやみんなに知られては余計な心配をかけてしまう。アタシが消える時になったら、いきなりスッパリといなくなりたい。
サザンカはそのまま家の中には入らず、庭から外へ向かって歩いて行った。背後で、ビルスたちがカプセルコーポレーションの中へ入っていく音だけを聞いていた。
サザンカは少し歩くと、とある公園に立ち寄った。ポール時計と街灯だけが薄暗く中を照らしており、サザンカは一飛びでジャングルジムの頂上へ降り立つと、そこへ腰かける。
「…40時間か」
そう、全王と大神官に言い渡されたサザンカの罰。それは力の大会の終了後、勝ち負けに関わらずサザンカを消滅させるということ。
それも、暗黒ドラゴンボールが流布し歴史が乱されようとしていた所をタイムパトロールと共にサザンカ達が暗黒ドラゴンボールを回収していったことがあった。その際、サザンカ達はその過程で意図せぬうちに歴史の流れを変えてしまっていた。
結果的には、変わってしまった方の歴史では両親であるカカロットと霊夢が死なずに済んだようだし、良かったと思ってその後のことは気にしていなかったが…
「まさか、あの世界もろとも消えちまってるたァ…思わなかったな…」
自分とシロナは、これまでの人生において経験してきた戦いが辛く厳しいものであり、変わった歴史の彼女らはそれらを経験していない。それを悪ととるか良しと取るかは人により意見が分かれると思うが、少なくともサザンカに関しては後者の考えだった。
そんな幸せを手にしていた自分がいる歴史が、今や消滅し、無かったこととされた。この事実だけは、今いる自分が消滅する事よりもどうにも受け入れ難かった。
「ま、もともと付き合いの広いほうじゃねーし…でも、ちょっと奴らといて…面白かったかな…」
残されたのはこの世界。しかし、それともあと40時間でお別れだ。
「やーねぇ、なに黄昏れちゃってんのよ、サザンカ」
そんな時、ジャングルシムの下から声をかけてきたのは、シロナだった。
シロナは普段と変わらない調子の笑顔だった。
「姉貴…」
「ん?何かあったの?」
「…ビルスどもから聞いたろ?力の大会について…」
「うん。私も参加することにしたよ、あとブロリーさんも。これからハーツさんにも声掛けに行ってそのあと参加してくれる人を探すんだって」
「じゃなくて、負けたら宇宙が消えるって話も」
「うん。負けなきゃいい話でしょ?」
「そうだけどよ…ま、そうだよな…」
「なーによ、なんでそんなに元気ないの?もしかしてカズラくんと喧嘩でもした?」
笑いながらそう揶揄うシロナ。
「…誰だそりゃ、ちげーよ」
こりゃ絶対何かあった上に重傷ね…と思い、シロナはそれについてはこれ以上何も言わなかった。
「ごめんね、サザンカ。昔…ずっと会いに来れなくて」
「いきなりどーしたんだよ…?」
「これは私の決意表明だよ。いいから聞いて」
「おう…」
シロナはそのままサザンカの隣に座り、話し始める。
「私、サザンカの事を忘れていたわけじゃないんだ。ただ、もっと強くなってから会いに行こうって思ってて…そうしてたら、事故に巻き込まれて本当に忘れちゃってね」
そこから、シロナは自分が経験してきた壮絶な戦いについてすべて話した。
ヴァンパイア王国でペペロン女王と戦い魔理沙の血とパチュリーの魔力を受け取ったことで魔法使いへ覚醒したこと、敵の自爆を防ぐため犠牲になりAA財団という組織に保護されたこと。その時にすべての記憶を失ってしまったこと。
「それからが大変でさ」
そして記憶兵器の一員として人造人間と戦ったこと。その時に記憶兵器を移植されたこと。
それから幻想郷へ戻り、記憶がすべて戻った後にレイムという邪悪と戦い、勝ったこと。
「その時に私は思えたんだよね、私の今までやってきたことは無駄じゃなかった、って。いい?サザンカ」
そういったシロナはサザンカに向き直り、その頬に手を添えて言った。
「私、今とても楽しいよ。記憶を忘れていた時の私は人間じゃなかった…何かに怒ってて全部気に入らなかった…周りのすべてが敵に見えてたよ」
記憶兵器の仲間となり、倒し損ねた本物のスカールを追いかけ続けた修羅の日々を思い出す。
「でも、天から役目なしに降ろされたものは無い。そう思えたのは、アンタの事を思い出したからよ、サザンカ。アンタが、私を人間に戻してくれたの」
シロナの黒い綺麗な瞳が、サザンカの真紅の瞳を覗き込んだ。そして、ピシャリとサザンカの頬を叩くと、シロナはいつの間にかジャングルジムを降りていた。
「はやく帰りなさいよ、明日も学校あるんでしょ?」
「まったく、姉貴はよ…」
力の大会があるというのに全くそれを気にしていない様子のシロナに、改めて呆れと感心が同時に湧いてくる。
(でもさ、姉貴…あと40時間で、アタシとは永遠におさらばなんだぜ。ま、言わねーけどな…)
一方その頃、カプセルコーポレーション。
「力の大会…負けたら宇宙消滅か…」
ビルスたちから話を聞いたブロリーは驚愕するほかなかった。ブルマの寝室では彼女とジュバンが眠っており、起こさないように声は控えめである。既にその話を聞いたシロナは参加を告げた後すぐに外へ出て行ってしまった。
「ああ…消えたくなければ10人の選抜選手を挙げてみるんだな」
ブロリーは少し考えこむ。まず自分とサザンカ、シロナは確定。ハーツにも何とか連絡を取って掛け合ってみることにした。残るは6人だが…
「すぐに思いついたのは武道家のサタン、豹牙天龍、紅美鈴、別の星になるがリルドという男もいる」
「どこの星ですか?」
「惑星M2という星だ。場所は分かるが、そこまで行くのに40時間ではとても足りない…そこは界王神の力を借りたい」
「もちろんです。選手候補の元へは私が瞬間移動で連れていきますよ」
宇宙船を使っても何週間もかかるような場所にある惑星には、さすがに界王神の瞬間移動を使わなければ間に合わないだろう。というより、それを使う前提で時間を設定されているのかもしれない。
「あとは…」
ブロリーが悩んでいると、そこへシロナとサザンカが帰宅してくる。
「銀河パトロールはダメなの?彼らだって第7宇宙の人間だよね」
シロナがそう言った。
「そうか…!銀河パトロールも参加していいなら、スカッシュとメルスに頼んでみよう。それで別にいいよな?」
「はい、構わないと思いますよ。私たち神々が出ることはできませんが」
ブロリーはウイスにそう確認を取ると、ウイスは良しとした。メルスは以前まで天使見習いであったが、モロと戦ってしまったことで存在が消え、後に人間として蘇ることができた。
「あとアザミから聞いた話だが…前にシリアル星へ行ってもらった時になかなかに強ぇヤツがいたって言ってたな…グラノラとかいったっけ」
サザンカも、アザミの話を思い出しながらそう言った。シリアル星にいたグラノラという青年は狙撃に特化した能力を持ち、戦闘能力もなかなかのものだったらしい。
「シリアル星のグラノラ…か。わかった、そこへも案内してもらおう」
「じゃ、私は天龍さんや美鈴、サタンさんに話をしてみるね。ハーツさんにも連絡してみるよ」
「アタシは…寝てもいいか?明日学校あるし…」
「ああ、サザンカはそうしてくれ」
「わかった。じゃ、頼んだ」
もう夜も更ける頃だが、今は少しでも時間が惜しい。ブロリーは界王神と共に惑星M2を始めとした別の惑星の仲間の元へ向かい、シロナは天龍や美鈴、サタンのところをめぐることにした。
力の大会へ参加する選手探し。時間はないぞ、急げ第7宇宙…!
【現在公開可能な情報】
エオス
突然姿を現した正体不明な謎の存在。自らを「夜明けを齎す者(エオス)」と名乗る。
無数の宇宙を連鎖的に滅ぼすとされる現象「マヒティキ・アポカリプス」を防ぐべく、強大な戦闘力が密集する地球という星を破壊するためにやってきたらしい。
エオスは実体を持たず、もっと言えば存在すらしない。よって触れることは愚か、エオスについて想像したり考えることすら不可能。
しかし、エオスは活動するために1億年に一度、全ての宇宙のどこかに同じ因子を忍ばせた生命を発生させ、その肉体に受肉する。受肉することで初めてエオスは宇宙に存在し、あらゆる事象に干渉することが可能になる。
受肉された生命はエオスと同一の存在と化し、実在した一切の証拠・記憶が消滅する。サザンカも受肉されたカズラの存在は頭から消えており、彼が存在したあらゆる痕跡も消えるか別のものに置き換わっている。
しかし、どういうわけかシロナだけはカズラの存在を未だに認知している。
加えて、全王や大神官もエオスの存在を認識し、警戒している。