もしもカカロットが幻想郷に落ちていたら   作:ねっぷう

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第544話 「Plazma」

一気に別方向から衝撃的な意見を繰り出されたブロリーは眩暈を感じ、ガクンと倒れこみ机に覆いかぶさった。もう既に今は日が昇り始めた朝方であり、ブロリーは寝ずに参加者を募って宇宙を渡りクウラとも激戦を終えたばかりだ。疲れも出ていて不思議ではない。

 

「え!?大丈夫!?」

 

『ブロリー、何があった?無事か?』

 

シロナとハーツから心配されたブロリーは何とか立ち上がり、携帯電話を持ち直した。

 

「すまんハーツ、またかけ直す…」

 

そう言って電話を切り、シロナに向き直った。

 

「それで、どういうことだ?カカロットがうんたらって…」

 

「知り合いに占いババって人がいるんだけど…」

 

 

時は数十分前…

 

「じゃが…わしならば。わしならあの世からたったひとりだけ、死んだ人間をこの世へ連れて来れるとしたら…どうする?」

 

「…え!?そんなことできるの?」

 

「ふっふっふ…伊達に500年も生きとらんわい。何度も死神に命を狙われてそのたびに死にかけて閻魔大王に交渉してきたからの、あの世の連中にも顔が広いんじゃわしは」

 

シロナは、昔に幻想郷でも長生きする仙人は死神に命を狙われているという話を聞いたことがあった。占いババは仙人ではないだろうが、それほど長く生きていれば同じように死神に襲われていてもおかしくない。

いや、今はそんな事よりも…

 

「…誰でもいいの?」

 

シロナは目を丸くし、心臓を早鐘のように鳴らしながら尋ねる。

 

「いいとも。既に魂が輪廻に導かれた者は無理だがな」

 

「じゃあ、カカロット…私の父親を…」

 

「カカロットか。あいわかったぞ、閻魔大王に話を通しておこう。ああ、閻魔大王やカカロットにも力の大会や諸々の事情は話してよいな?」

 

「うん、もちろん」

 

「して、何故カカロットを選んだ?わしの占いによれば、確かにお前の父親は強い…じゃが今のお前さんらに比べればそれほどでもないじゃろう」

 

シロナにも考えはあった。

 

「ただ強い者ならあの世にたくさんいると思う。でも、いるだけで…勇気や希望、それに力を与えてくれる人がいい。そう考えたら、父ちゃんしか思い浮かばなかったんだ…へへ」

 

はにかみながらそう答える。

 

「もちろんお母さんやウスターさんとかも思い浮かんだけど…今回はブロリーさんも出る。だったら、父ちゃんと揃ったら無敵だろうなって」

 

「なるほどな。ではその時間までに、お前たちの所へカカロットを連れて行くとしよう」

 

 

 

「…ってことがあってね」

 

「それは…本当か?カカロットが…こっちに来るのか?」

 

「うん!24時間だけだけど、大会は48分間だから終わってからも一緒にいられるよ」

 

ブロリーはその事実に目頭が熱くなるのを感じ、目元を押さえて上を向いた。

 

「そうか…カカロットが戻ってくるのか…24時間だけ…それは最高だな」

 

「でしょ?じゃあ次はハーツさんの話を聞いてあげようよ」

 

ブロリーは続けてハーツに電話を掛け直した。

 

「すまん…シロナの方も決まって選手はあと一人揃えば10人になる。それで、誰を出すんだって?」

 

『ベジータだよ。ベジータを10人目にしよう』

 

「ベジータって…カンバーと一緒に蘇ったんだろ?そんな奴で大丈夫なのか?」

 

『彼はオレの仲間だよ。大丈夫さ、もう話はつけて言い聞かせてもある…勝手な真似はさせないさ』

 

ベジータはジャネンバの事件の際にシロナと戦い、そのまま敗れて再起不能となったところをハーツに回収されている。今まで秘密の場所で療養しており、ようやく戦えるまでに回復したのでハーツが戦いに引っ張り出したのだ。

 

「わかった。じゃあ、これで選手10人は決まったということだな」

 

部屋の後ろの方で胡坐をかいて膝に頬杖をついていたビルスはその言葉を聞くと立ち上がった。

 

「意外とすんなり決まったな。じゃ、時間までボクは少し寝ているとするよ…集合場所はこのカプセルコーポレーションの中庭にするぞ、いいな」

 

「…ああ」

 

「お前たちも…特にブロリー、よく休んでおけよ。選手の中じゃお前が主力になるだろうからな」

 

そう言うと、ビルスはウイスと共にどこかへ去って行った。

入れ替わるように起床したブルマが現れ、疲れた様子のブロリーの背中に手を置く。

 

「アンタは休みなさい」

 

「すまないな…」

 

ブロリーは重そうな足取りで部屋を後にしようとするが、その時、シロナは唐突に思い出したかのようにある疑問を口にした。

 

「あ、ねえ!サザンカってカズラ君と喧嘩でもしたのかな?様子がおかしくて…何か聞いてる…?」

 

だが、ブロリーとブルマはキョトンとした顔でシロナを見返しており、シロナはあれ?と思いそこで言葉を止めた。

 

「あ、ごめんごめん。誰だっけ?それ」

 

「サザンカの喧嘩相手の事か?」

 

最初はふざけているか、サザンカを気遣ってとぼけているのかと思った。

 

「え?いや、カズラ君だよ!サザンカの彼氏の…」

 

「サザンカに彼氏なんていたのか?」

 

「へー、あの子そういうこと全然話さないから知らなかったわ」

 

しかし、ふたりは噓をついているわけではないことはシロナであればすぐに分かった。

何かがおかしい───昨夜のサザンカ自身の反応も今にしてみれば気になる。

 

(これは調べてみる必要があるね…)

 

今日は登校日、サザンカもこの後起きてきて学校へ行くだろう。その前にやることはやってしまおう。

そう思い立ったシロナはすぐにブルマの家を出てサザンカの通うブルースターハイスクールへ向かった。

 

建物から建物へ、屋根を飛び移りながら高速で移動するシロナ。その胸中には得体の知れない悪い予感が渦巻いていた。

力の大会の開催は仕方がないことで、10人の選手を選抜し終わり大会へ向けて準備万端だ。しかし、それの裏で何かヤバいことが起ころうとしているのではと気が気ではなかった。

 

「おはようございます!」

 

早朝の学校へ侵入したシロナは、あたかも関係者であるフリをして用務員や朝部活の生徒に挨拶しながら校内を素早く歩く。

そして職員室へ忍び込み、気を消しながら他の先生に見つからないよう移動しサザンカの担任の机に近寄ると、朝の出席確認用に使用している名簿を手に取った。

 

「───あれ?」

 

そこには、サザンカと同じクラスであるはずのカズラの名前がなかった。空欄になったり、塗り潰されているわけではなく、初めから存在しなかったかのようにスペースが無いのである。

シロナは困惑しながらもそっと名簿を戻し、職員室を出る。

 

(なんで名前が無かったんだろう?じゃあ…)

 

そして一旦学校の外に出ると、カプセルコーポレーションへと戻る。

 

「おわっ、姉貴…」

 

まだ朝食を食べていたサザンカの前に立ち塞がるとその腕を掴み、強引に引きずりながら外に出す。

 

「お、おい!何だってんだよ!」

 

「いいからちょっと来て!」

 

次にシロナがサザンカと共に向かった先は、カズラが住んでいるとされるマンションの一室であった。なぜ知っているのかというと、何かあったときのために前に調べたからである。他意はないはず…決して。

 

「ここに覚えはない?」

 

「え?いや…さぁな、ここがどうしたってんだよ」

サザンカはカズラの自宅を大まかに知っているはずだが、一切ピンと来ていない。

玄関にも表札はなく、誰かが生活している感じすらない。カズラには両親がちゃんとおり、シロナも顔だけは確認したことがある。

シロナはファントムの力を使い指先を鍵穴に差し込んでピッキングし、ドアを開けるとするりとその中に入った。

 

「…これは、一体…?」

 

なんと、その先には…

 

 

何もなかった。

家具も、小物も、生活用品も、何も。

 

 

「なんで…?」

 

「おい、何もないじゃねぇか。こんなところにアタシを連れてきて何のつもりだ…」

 

シロナはサザンカの肩を強く掴む。

 

「本当に分からないの!?カズラ君のこと!あんなに好きだったじゃない!!」

 

「は、ハァ!?何言ってんだ、そんなヤツァ知らねーし好きって…何の話をしてんだよ昨日から!」

 

どうやら本当にサザンカはカズラの事を知らない。というより、その存在が痕跡も含めてすべて抜け落ちてしまっているかのようだ。

 

「その通りだ。既にカズラという人間は存在しない」

 

その時、シロナとサザンカの間に割り込むように何者かが突然現れる。

 

「!?」

 

「…カズラ君!?」

 

シロナはその存在の姿だけはカズラと同一であると見抜く。しかし、その体は頭を下にした逆さまの状態で浮遊しており、生物としての気は全く感じられない。

 

「カズラは我々『エオス』に取り込まれ、我々と同一の存在であった。その為に宇宙生命の中に仕込んだ因果のひとつにすぎない。この宇宙に混乱が及ばぬよう、存在したという痕跡を記憶や物理的なものを含めて全て抹消するのは、我々の配慮にすぎない」

 

「どういうこと?アンタ誰さ?」

 

「我々は『エオス』、この宇宙に夜明けを齎す存在。して、何故にお前は存在が抹消された生命の事を認識していられる?」

 

「そんなこと知らないわ。カズラ君を返して」

 

「それは不可能な事だ。既にカズラという生命は我々と同化している。100%元に戻ることは無い。こうするとお前たち宇宙生命がそのような感情を抱くので全ての記憶と痕跡を消すようにしているのだが…なるほど、イレギュラーも起こり得るということか」

 

エオスはそう言うと、今度はシロナに向かって手を伸ばす。

 

「お前を解析すれば、このイレギュラーの原因も判明する」

 

ガシッ

 

しかし、逆に腕を掴まれたのはエオスの方だった。それも、掴んだのはなんとサザンカであった。

 

「サザンカ…!?」

 

「よォ、今になって全部思い出したぜ…!このクソ野郎…こっちはもうテメェをぶっ飛ばすことしか考えられねぇんだよ」

 

「一体何故…お前にも記憶が…」

 

「もう…テメェの能書きは聞き飽きたんだよ!!」

 

次の瞬間、サザンカはもう片手をエオスの側頭部に添え、上体を後ろへ反らす。そして、勢いをつけた渾身の頭突きを顔面へ叩きこんだ。

 

「…!!」

 

さらに、拳による一撃をヒットさせる。

空気を震わす振動がマンションを揺らし、カタカタと窓ガラスが音を立てる。エオスは拳がめり込んだ顔面をゆっくりと引き離し、スーッと後ろへ移動する。

 

「…無駄な足掻きだ。たとえお前たちに記憶の消去が効かなくとも、我々に触れることが出来ようと、既に決まった因果は変えられない。カズラという宇宙生命は二度とお前たちの元へ戻ることは無い」

 

「本当にそうかな?」

 

「何?」

 

シロナは確固たる意志を持って言葉を投げる。

 

「サザンカのパンチを食らったわね?じゃあその意味を知ることになるわ」

 

サザンカも一歩前に進み出ると、エオスの前に立ってその顔を真っすぐに見据える。

 

「今…やっとカズラの事を思い出せた。だからこそ気付いた…お前は、ずっとアタシに助けを求めていたんだろ?」

 

「何を馬鹿な事を…我々は…」

 

「最初に校舎を襲った時もこの星を破壊すると言いながらすぐには実行しなかった。そして今も、わざわざアタシと姉貴の前に現れた。いつでも、お前はエオスと同化するという運命に抗っていたんじゃないのかよ?」

 

「違う。我々はこの宇宙に夜明けを齎す存在…」

 

「だからなんだ。お前はカズラだ。それ以外の誰でもねぇ」

 

「一度我々と同化した宇宙生命は二度と元には戻らない。しかし、それでも…俺を、助けてくれるのか…?」

 

窓から射す朝日に照らされたその顔は、サザンカがよく知るカズラの顔だった。

 

「ああ、絶対だ。アタシがお前を絶対に助けてやる。だからもう少しだけ信じて待っててくれ」

 

「…ありがとう。俺はこれより彼らの住処へと召喚される…」

 

カズラはそう言い残すと、パッと姿が消えた。まるでそこには最初から何もなかったかのように静けさだけが残った。

しかし、一度彼の事を思い出したサザンカは、その記憶を忘れていない。忘れない。

…サザンカがモロと戦うためにヤードラット星にて習得した「スピリットの強制分離」。それはエオスと同化してしまったカズラにとっても有効打となっていた。サザンカによる接触は両者の同調や癒着を阻害し、引き剥がす。それによって、ほんの一時に過ぎないのだが、カズラはカズラに戻ることが出来た。

 

ぽん

 

シロナがサザンカの背中に手を置いた。

 

力の大会に勝利した上でカズラを助け出す。自分の消滅などはどうでもいい。その決意を胸に、サザンカはより一層強く願いを固めるのだった。

 

 




【現在公開可能な情報】

ベジータ

サイヤ人の生き残りにして元王子。原作同様、ナッパと共に地球を制圧すべく乗り込んだがピッコロ大魔王によって返り討ちに遭った。ターレスもこの時ベジータを勧誘するために地球を訪れていたが、会うことは無かった。
その後ナメック星でも原作通りの暗躍を行い、ドドリアのついでにターレスの部下のダイーズを殺害する。ギニュー特戦隊と交戦し、遅れてやってきたターレス達と合流する。
が、その後フリーザによって殺され、地獄へ送られる。地球での戦いでカカロットがフリーザにとどめを刺す様子を忌々しい様子で眺めていた。

地獄で古代の悪のサイヤ人カンバーに素質を見抜かれ、悪の気を与えられ悪のサイヤ人として覚醒し、幻想郷跡地を経由する裏技を使い地獄から現世の地球へ蘇る。
天下一武道会に参加し、カンバーと見せかけの試合を行い敗退した。

ジャネンバの事件が起こった際にはカンバーと別行動となり、レイムを利用しシロナたちの情報を得て究極ドラゴンボールを奪おうと襲撃する。
シロナを殺害するも復活しファントムシロナの力を使って圧倒され、敗北した。その後は岩場の隙間で気絶していた所をハーツに助け出され回収されており、現在はハーツが用意したどこかの場所に潜伏している。

なお、本作のベジータは未だにカカロット直接対面したことは無い。
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