もしもカカロットが幻想郷に落ちていたら   作:ねっぷう

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第545話 「決戦前夜」

それから、力の大会開催時間まで各々は時を過ごした。

ある者はさらに鍛錬し、ある者は休んで英気を養い、ある者は想像を繰り返し、そしてある者は…

 

 

「ふいーっと」

 

サザンカは早朝の教室で腕を捲ると、床をすべて雑巾がけして回った。黒板を綺麗に磨き、チョークを揃える。

 

「よし…」

 

 

「なんか今日教室きれいじゃね?」

 

「委員長、ご苦労さんだね~」

 

朝のホームルームの前、登校してきたクラスメイトたちが続々と教室に入ってくる。サザンカは椅子にふんぞり返ってその様子など知らないふりをしている。

 

「いや、僕はなにもしていないよ」

 

「またまたそんな謙遜しちゃって!」

 

クラスの委員長と他の男子がふざけ合っていると、委員長が机に躓いてサザンカに背中から倒れこんだ。サザンカは椅子ごと後ろへ倒れ、尻餅をつく。

 

「ば、ばか、委員長…!サザンカにぶつかるなんて~」

 

それを見ていた周りのクラスメイトたちの空気が凍り付いた。

 

「ごめんサザンカさん…!」

 

委員長もサザンカの暴力を恐れ、半分土下座するような姿勢で謝った。

しかし、サザンカは何をするでもなく、柔らかい表情で言った。

 

「平気だぜ…そっちはよ?」

 

「え…?う、うん…大丈夫だけど…」

 

その時、サザンカはハッとした。今、初めてクラスメイトの表情を真正面から見た。すると、彼らの自分を見る目は皆一様に暖かいものだった。

 

「あれ…?」

 

「どうしたの?もしかして怪我したのかい?」

 

「い、いや…」

 

今まで、自分は嫌われていると思い込んでいた。小さい時から自分のこの力を怖がられるか邪魔だと思われ、友達からのけ者にされてきた。だから自分の方から他人と距離を置き、暴力以外のコミュニケーションを取れなかった。

だが、今のクラスメイト達はそんなことはない。自分が気付かなかっただけで、彼らはとっくにサザンカの事をただのクラスメイトだと認識していた。

 

「もう誰もサザンカのことを乱暴者だなんて思ってねーよ!」

 

サザンカの困惑した様子に気付いたチャラい男子がそう言うと、他の男子や女子も口々にサザンカについて話し始める。

 

「そりゃ最初はお前のことビビってたけどな~」

 

「でも1年の時からクラス変わってないし、ずっと一緒にいて最近になってわかったんだよね、ウワサと違うって」

 

「ただ話しかけるタイミングがわかんないのよ~」

 

「そうよね!サザンカさんいつも授業終わるとすぐ帰っちゃうんだもん」

 

「何かに誘おうと思ってもその時には誰かと一緒にいるしな~、あれって結局誰だったの?」

 

カズラと付き合っていた頃は学校が終われば基本的にカズラと一緒にいたのだが、カズラに関する記憶や痕跡が失われているのでクラスメイトにとっては誰だかわからない人物として改変されているらしい。

 

「あ、ワリ…」

 

そんなことを考えながら小さく返事をすると、ドッと笑いが起こる。

 

「ワリじゃねーよ!今度全員でカラオケ行くからサザンカも来いよ!」

 

「あ、ああ…」

 

 

また、休み時間に先生とすれ違った時には…

 

「おいサザンカ」

 

「は…なんすか?」

 

「お前、最近ケンカを我慢できてるじゃないか。この調子で、今年はいっそう頑張れよ!」

 

「今年は…。…うす…」

 

 

さらに、携帯電話の通知では…

 

{『やほー、サザンカ!今度の連休に私とアザミと一緒にキャンプ行こうよ』

 

友人のコナギからキャンプの誘いが来ていた。

 

(なんで、ここへきてこんなに…)

 

『気が向いたらな。また会おうぜ』}

 

そう返事を打つと、携帯をポケットに仕舞った。

 

 

力の大会開始は地球時間で今日の午後1時だ。なのでサザンカはこのまま何も言わずに学校から立ち去ろうと、体育館裏のフェンスを越えようと足をかけた。

 

「おいサザンカ」

 

だがその時、誰かに呼び止められて動きを止めた。背後には、あのアザミが立っていた。

 

「テメーどこ行くつもりだよ。まさか…また何かヤベーケンカがあるってのか?」

 

「…なあアザミ」

 

サザンカは振り向かないままアザミに呼びかける。

 

「なんでだろうなぁ…アタシ、学校なんざ嫌ェだったのにな…アタシはカズラとだけいられりゃそれで嬉しかったから、学校とか他のヤツの事なんか、どーでもよかったんだけどよ」

 

「カズラ…?誰だよソイツ」

 

やはりカズラの事を忘れているアザミの言葉を無視して、サザンカは続ける。

 

「それが、なんか様子がおかしいんだ。アタシはこれから力の大会で戦う。他の宇宙の強いヤツが一堂に集まるんだ…無事じゃ済まねぇ。たとえそれを勝ち抜いたとしてもよ…結局アタシは消滅しちまうんだと。それでもいいと思ってた…みんなが助かるならアタシはもういいかなってよ」

 

「なんだよそれ…何の話をしてる!?」

 

「それなのによ…なんか、みんな…クラスのヤツも先生も友達も…建物まで込みで『行くな、行くな』ってよ…。メーワクだよなぁ、なんでだろうな…」

 

消え入りそうな声でそう呟いたサザンカの顔は、ひどく寂しそうに見えた。

話を聞いていたアザミだが、その顔を見るとだんだんと我慢できなくなり、ついに怒りの形相でサザンカの胸ぐらを掴み上げた。

 

「何の事だか知らねーが、テメーだけ貧乏くじ引くこたァねぇ!!そんな大会になんざ出ねーでバックれて、消されそうになったら逃げちまえ!」

 

そう怒鳴りつけてきたアザミであるが、サザンカは気付いた。この怒りはなんだかんだ自分のことを心配しているから出てくるものであると。

 

「バカヤロウ。オメーとは長い付き合いで…会えばケンカばっかしてた。だからよ、今回もいつも通りだ。テメーの言うことにゃ頷いてやるわけにはいかねーな!」

 

ボグッ

 

そう言いながら、サザンカはアザミの腹を殴った。

 

「…そーかよ!なら勝手に行っちまいなぁ!」

 

アザミもまた、サザンカの顔面を殴り、膝蹴りを叩きこむ。

 

「くすぐってーんだよテメーのは!」

 

「ふん、オレをこうさせたのはオメーなんだぜ、サザンカ!」

 

アザミはサザンカのパンチを受け、鼻血を流しながらも一切後ろへ引かず、サザンカに頭突きを食らわせ、そのまま額をくっつけて離さない。

 

「あぁ?」

 

「オレを荒っぽく引きずり立たせたのァオメーだろ!?なら決着つくまでオレとのケンカに付き合いやがれ!次も、今度も、一生なァ!!」

 

小学生時代、いじめられていたアザミにわざと荒々しく当たることで彼女を凶暴にさせ、自分と争わせることでいじめられないように仕立てた事を、アザミは忘れていなかった。

 

「…だがよ…アタシが頑張らなきゃオメーも消滅確定だろ」

 

「じゃあこうしろ!逃げるな!力の大会ってやつでも暴れまくって、テメーを消そうとしてくるやつ全員ぶっ飛ばせ!」

 

最後にそう言うと、アザミは手を放し、代わりにサザンカの肩をバシンと殴った。その瞬間、サザンカの胸に何だかよくわからない熱い思いが込み上げた。

 

「応!行ってくるぜ」

 

悪友から激励されたサザンカは、名残惜しい学校をあとにし、集合場所の自宅・カプセルコーポレーションへ向かうのだった。

 

 

 

───今、この場所へは第7宇宙の精鋭が集っている。

 

「みんな揃ってる?あとは…」

 

集合場所にはブルマがおり、参加者を数えている。

ブロリー、シロナ、サザンカは既にここに来ている。ブロリーは昔に着ていた、ゆったりとした白いズボンや金色のベルトを身に着け、上半身にはブルマが作った戦闘用アンダーシャツを纏っている。シロナは博麗の巫女として赤い袴を履き、上半身にはタンクトップ型のボディスーツが剥き出しになっている。一方サザンカは、いつもと変わらない一張羅のスケバン仕様の制服を着ている。

 

「お待たせ。大変なことに巻き込まれたな、これが神々の気まぐれというものだ。好き勝手やるもんさ」

 

続けて宇宙船でやってきたハーツも合流する。彼もいつもと変わらないジーンズのような生地で出来たラフな繋ぎ服のままだった。

 

「…ふん」

 

その横にはベジータがいた。生前のようなフリーザ軍の戦闘服を着用しているが、上半身はノースリーブの別のインナーを纏う。ブロリー、シロナはその姿を見てピリ…っとした空気を放つ。特にシロナは以前ベジータと死闘を繰り広げたことがある。

 

「やあ、ベジータ」

 

「あの時のガキか。オレに勝った気になるなよ…いずれはまたぶっ殺してやるからな」

 

「言うじゃん。楽しみにしてるよ」

 

ベジータとシロナはそう言葉を交わすと、ベジータは腕を組んでそっぽを向いた。

 

「ブロリー、来たぞ。ここが地球か…いい星だな」

 

そして、界王神と共に瞬間移動で現れたのはリルドだった。界王神はまた瞬間移動でどこかへ消える。

 

「リルド!」

 

ブロリーも嬉しそうにリルドの元へ歩み寄る。

 

「結局、大丈夫なのか?メガキャノンΣはどうにかできたのか?」

 

リルドが抱いていた懸念…それはリルドの強さの本領を発揮するには補強パーツとなるメガキャノンΣ部隊の有無や、メタルリルドには惑星M2そのものが不可欠であった。

 

「まあ何とかなった…と思いたい。本番を楽しみにしてくれ」

 

リルドはそれに関して何らかの解決策を持ってきたようだ。ブロリーはそれを信じることにした。

続けて、界王神が連れてきたのはグラノラだった。シリアル人特有の狙撃に特化した右目と気の運用法を備えており、フリーザを倒すため鍛錬と実践を絶えず重ねてきたおかげでその実力は宇宙でも通用するものとなっている。

 

「力になれるかどうかわからないが…俺も全力で戦う。だからよろしく頼む」

 

「ああ、一緒に頑張ろうなグラノラ」

 

「よろしくー」

 

グラノラとブロリー、シロナが快く挨拶を交わした。

次に合流してきたのは、銀河パトロールのメルス。

 

「私も微力ながら協力します。ともに第7宇宙を救うため、戦いましょう」

 

「メルス!また一緒に戦えてうれしいぞ」

 

メルスは天使でありながら誰よりも宇宙の平和について熱い思いを持ち、モロと戦闘行為を行ったことが天使の存在理由に違反し消滅してしまったが、大神官の温情により人間として蘇った。天使としての能力や戦闘力はほとんど失われているが、正式な銀河パトロール隊員の中では最強である。

 

キィィィ…

 

だが、藹々といていた空気が突然凍り付く。凍てつくような気があたりに漂い始め、思わずその発生源へ振り返る。

そこには界王神とビルスに連れられてきたクウラがいた。

 

「おい、大会に出るからにはお前も全力で戦えよ。でなければお前ごと宇宙が消えるんだからな」

 

脅す様にクウラの背中へ向けて念押しの声をかけるビルス。だが、クウラはビルスの方を一瞥しただけに留め、他の選手たちの顔をまじまじと見つめる。

 

「…粒選りが集まっているな。せいぜい食い尽くされんよう抗えよ」

 

「それはこちらのセリフだ。お前こそ、俺と本気で戦いたいんだろ?」

 

「その通りだ…」

 

クウラとブロリーはそれだけ言葉を交わすと、あとは何も言わなかった。

現在、9人の選手が集っている。その中で、ベジータは彼らを見定めながら心の中で冷笑の態度をとっていた。

 

(ふふ…どいつもこいつも雁首並べたマヌケな奴らだ。オレはコイツらとは違う)

 

ブロリーも伝説の超サイヤ人などと持て囃されているが所詮は王の素質を持つオレには及ばない。シロナというガキも以前のようにはいくまい。あの赤い目のサイヤ人も雑種に過ぎん。クウラも所詮ブロリーには適わなかった、メルスという銀河パトロールとリルドとかいう宇宙人も得体が知れないが脅威にはならん。グラノラという雑魚は眼中にもない。

 

(そして残るひとりは、カカロット…下級戦士のサイヤ人だ。フリーザを倒した瞬間はオレも地獄から見ていたが…結局死に腐りやがったのなら意味はない。さァ、今のキサマはどんなしょぼくれたツラをしている?どんな下級戦士ヅラをしてやがる…?)

 

「よ、お前ら久しぶりだな」

 

その時、カカロットの声が聞こえた。ブロリー、シロナ、サザンカが振り返り、その姿を見た途端、感極まって駆け寄っていく。

 

「カカロット!」「父ちゃん!」「親父…!」

 

「シロナ、サザンカ…1年ぶりだなぁ、元気にやってたか?」

 

「うん!」

 

「おかげさんで」

 

「そうか。ブロリー、ここへ来るまでに占いの婆さんから聞いたぜ。子供を持つってのは苦労だろ?」

 

「はは…まったく、お前の言うとおりだったよ」

 

ベジータは他愛のない会話を背中で聞いていたが、カカロットのツラを一目拝んでやろうと目線を向けた。

その時…

 

ぞあっ

 

「!!??」

 

カカロットと目が合ったベジータは全身の毛が逆立つのを感じた。全細胞が危険信号を発しているかのようだ。

 

(なんだ…!?なぜあんな下級戦士が…!単純なパワー、潜在能力で言ってもオレやブロリー…あのガキどもの方が上回っている!だのに、一体どういうことだ)

 

カカロットから発せられるのは、単純な戦闘力が表面化したものではない。その重圧が物語るのは、凄まじい激闘の経験と、彼を構成するおぞましい程の妖怪の技。この中でブロリーやシロナサザンカとも異なる、純粋なサイヤ人であるベジータだからこそキャッチしてしまった、存在としての格の差。

 

「アンタがベジータか。前にナメック星ではタイミングが悪くて会えなかったからなぁ…今度は一緒に戦おう、よろしく頼むぜ」

 

思考しているうちにすぐそばまで近づいていたカカロットが、そう言いながら握手を求めて差し出してきた。ベジータは感情の整理がつかないまま、その手を握り返した。

 

「よし!これで10人集まったな!」

 

ビルスが号令をかける。すると、時を同じくして付近の空間からまばゆい光が溢れ、その向こう側から大神官が姿を現した。

 

「第7宇宙の皆さん、お揃いのようですね。ではこれより、力の大会特設武舞台のある『無の界』へとご招待いたします。準備はよろしいですね」

 

「もちろんです、大神官様」

 

ビルスが跪きながら答えた。大神官はそれに笑顔で頷くと、ビルス、ウイス、界王神を含めた選手たちを一斉に無の界へと転送するのだった。

 

 

 

 

 

 

また、そなたの売り物は夢。

 

以前には用のなかった私だが、今こそ夢が必要なのだ。

 

すべてが幸せに、あるいは正義が行われて終わる物語が聞きたい。

 

そのような話を、知っておるか?

 

 

無の界。眼下に浮かぶ力の大会特設武舞台を見下ろす位置に設けられた観覧席に座った全王は、続々と集まっている各宇宙の代表選手たちを見ながら静かにそう思い浮かべていた。

 

 




【現在公開可能な情報】

ガーリック

幻想郷最強の7人の賢者のひとりであり、実力はシュネックに次ぐナンバー2。他の賢者を襲い複数個のドラゴンボールを入手した上で使用しようと画策したが、カカロット、霊夢、ウスターによって倒された。

ドラゴンボールZに登場しており、ガーリックJr.の父親。Zではかつて神の座を争ってカタッツの子と争い、敗れた上で封印された。
本作においては、その後に封印された状態で幻想郷へたどり着き、解除することが出来たが現世へ戻ることは出来なかった。シュネックと出会い、ともに龍神の試練を乗り越え幻想郷のドラゴンボールを作り出した。
表向きではシュネックの友であり賢者の双璧として幻想郷を統括してきたが、頃合いを見て計画を始動。他の賢者を襲撃しドラゴンボールを奪っていった。
そこでそれをよしとしないカカロット、霊夢、ウスターと対立した。

彼の遺体は死後もその場に残され、所持していたドラゴンボールは月夜見王との戦いにおいて重要な役割を果たした。
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