もしもカカロットが幻想郷に落ちていたら   作:ねっぷう

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第549話 「君が思い出になる前に」

ジレンが起こした気の暴風によって、半数以上の選手が脱落した。

当然第11宇宙はまだひとりも脱落しておらず健在だが、第7宇宙もグラノラとシロナを落とされるという事態に陥っていた。

 

これがジレンの凄まじさ。これがジレンの強さ。ベルモッドは大声で自慢したいのを必死に堪え、ただふんぞり返りながら笑みを浮かべていた。

 

だが、ジレンの姿に違和感を覚え、注視すると、その笑みが引き攣った。

 

「ジレン!!」

 

 

 

サザンカは大会が始まり、シロナが領域結界を使用して以降、誰の目からも逃れていた。「スピリットの隠蔽」、以前ヤードラット星での修行で獲得した技術であり、これを使用している状態はサザンカは“絶対に”誰からも認識されない。領域結界の中でもシロナのエネルギーの必中打撃を無効化し、ジレンの察知からも逃れ続けていた。

 

そして今、シロナを含めた多数の選手撃破という隙をついて、ジレンの脇腹に渾身の拳を叩きこんでいた。

 

「ぬぅぉおおおおおッ!!」

 

バゴオッ

 

ジレンの強靭な筋肉と鋼の如き皮膚に拳が突き刺さり、心臓を揺らすような低い衝撃音が鳴り渡る。

 

(コイツッ…硬てェェェ!!どうなってんだよ!!)

 

サザンカはジレンがちっとも弱くなっていないことに心の中でツッコミを入れる。

その瞬間、ジレンは一瞬にしてサザンカと距離を取った。

 

(モロより硬ェな…いや、何よりビックリなのはコイツの魂だ。何か少しでもくっついてるモンがありゃ一発で全部引き剥がしてやる気合で「スピリットの強制分離」使ってぶん殴ったのに、剥がせるモンが何ひとつ無かった)

 

つまりそれが意味するところは、ジレンの桁外れの強さは全て地道な鍛錬と修行によって身に着けた正真正銘自分自身の力だということ。

 

(一体どんな人生歩めばそうなるんだ?)

 

紛うことなき剛健、寸分違わぬ自己。生物としての格の違い。そんな言葉が脳裏をよぎるが、そんなことはどうでもいい。

 

(強制分離が効かねぇのは想定内。それに…)

 

サザンカは横目で観覧席のシロナを見た。シロナは自分が呆気なく脱落したことの焦りと疲れ切った顔を誤魔化すかのように笑みを浮かべていた。

 

「テメェは…ただブチのめすだけだからよォ!!」

 

既に超サイヤ人4へと変身しているが、さらに全身から黄金の気を噴き上げ、ギチギチに拳を握りしめながらジレンへと殴りかかる。ジレンは攻撃を逸らそうと手をかざすが、その手に四角いキューブがくっつけられ、生じた重さによって意図せずガクンと落ちる。

サザンカの拳がジレンの頬まで迫るが、咄嗟に顔を逸らして回避し、後ろへ飛んだ。

 

「…お前か、ハーツ」

 

ジレンは怒りを滲ませた表情でハーツを睨んだ。が、その隙を突くように接近してきたサザンカの前蹴りが迫る。

 

ガッ

 

肘を突き出し、蹴りとぶつけて相殺する。だが続けて襲ってくるサザンカの右フックを目で追っていると、左アッパーが飛んできていることに気付き、片腕と片膝を使って防ぐ。もう片腕でカウンターを放つが、それはまたしてもハーツの重力キューブによって逸らされ、サザンカはかがんでそれを躱し、足を一気に伸ばして跳躍しながらジレンの胸へ拳を叩きこんだ。

 

「ゴホ…!」

 

ジレンは肺の中の空気を押し出され、咳込んだ。

 

 

「いいぞ!」

 

ビルスが観覧席から歓声を上げ、ベルモッドは顔をしかめた。

 

 

ズムン

 

上から降ってきたキューブに全身を閉じ込められたジレンは、その中に作用する超重力によって動きを制限されたた。

 

「くっ…!」

 

サザンカにもキューブが落とされ、その体を覆うが、このキューブには反重力が作用しておりサザンカの動きを格段にスピーディにするものだった。

サザンカは一直線に突撃し、動きの鈍っているジレンの鳩尾へ勢いを乗せた拳をお見舞いした。

鋼と鋼と打ち合わせたような低く鈍い轟音が響き渡り、ジレンの背中から衝撃波が突き抜ける。ジレンは相変わらず仏頂面で、攻撃を当てた態勢のままのサザンカを見下ろしている。

 

(これでも効いてねぇのか?)

 

不安になり後ろへ下がろうとするサザンカだが、その瞬間。

 

「がふっ」

 

ジレンは姿勢を崩し、ドサッ、と片膝をついた。

 

 

「ジレン!大丈夫か!?」

 

ブロリーと激戦を繰り広げていたトッポが心配の声をかける。加勢に行きたいが、このブロリーという男の所為でここから動けない。

 

(ヤツが膝をつくとは…!さっき落とされた少女といいあのサザンカといい、何者だ!?いや、今はそれよりも…)

 

「ハアアアアアアッ!!」

 

雄叫びと共に、戦いながら神の気を解き放つブロリー。青い鮮やかなオーラが靄のように展開され、一気にトッポを武舞台際へ向けて引きずるように押し込んでゆく。

 

「く…!」

 

 

「嘘だろ…オレたち以外、全員落とされちまったってのか!?」

 

一方、第9宇宙のベルガモ、ラベンダ、バジルのトリオ・デ・デンジャーズの3兄弟は第9宇宙の残された選手が自分たちだけであると知り、それを受け入れられなかった。

 

「兄者…どうする…?オレたちだけで他の宇宙の奴らを全員倒せるとも思えねぇ…」

 

ラベンダも焦ったように目を見開きながらそう言った。バジルも周囲を見渡し、選手は大きく減ったものの残された者たちは各宇宙有数の強者ばかりで、ある意味ふるいにかけられたのだと理解する。

 

「大丈夫だ、オレたちのパワーは他の連中には感じ取れねぇ。どこかに隠れてやり過ごせば…」

 

「バカヤロウ!そんなことをしても、あのジレンというヤツがさっきのをもう一度やったらすぐに終わりだ」

 

ベルガモは弟たちを叱咤する。

 

「それに、逃げてばかりいるんじゃオレたちの“大切な誓い”はどうするんだよ」

 

「う…確かに…」

 

「オレはもう覚悟できてるぜ。だから我ら兄弟で、最後に一番崩しにくい奴らを道連れにしてやろうぜ」

 

「…おう、兄者!」

 

トリオ・デ・デンジャーズは、未だ誰一人として脱落していない第11宇宙に狙いを定める。ジレンはサザンカと、トッポはブロリーと戦っており、今なら他の選手を落とせる。

 

「なにィ!?トリオ・デ・デンジャーズよ、何をするつもりだ!」

 

界王神ロウは残された自分の宇宙の選手が、隠れていればいいものを果敢に戦いに向かってゆく様子を見て声を荒げた。当然ベルガモたちもその声は耳に届いているが、今はそれよりも優先したいことがある。

 

 


 

 

「使えねぇガキどもだ!いつになったらお前らは俺の役に立つんだよォ、えぇ!?」

 

第9宇宙、とある惑星の森林で、しゃがれた怒声が響き渡る。鳥たちが一斉に飛び立ち、続けて森から何かを打ち付ける鈍い音が何度も発せられた。

 

「おい答えて見ろ、ベルガモォ!!」

 

「う、うぅ~~~~」

 

大柄な狼頭の獣人が、足元に転がる3匹の子供を蹴り転がしていた。この子供こそが幼いころのベルガモたち3兄弟であり、乱暴で冷徹な父親に毎日のように痛めつけられていた。周りには父親の部下たちが大勢控えているが、その誰もが彼を恐れて何も言わない。

 

「やめてよアンタッ、それ以上は死んじまうよ!」

 

しばらくすると我慢できなくなった母親が父親を止めようと背中に覆いかぶさり、肩に嚙みつく。

 

「じゃかあしいクソ女!!テメェもぶっ殺してやろうか!?」

 

父親はすぐに母親を引き剥がし、地面へ叩きつけると子供らと同様に何度も殴り、蹴りつける。

だが、見かねた老齢の部下が一人、おずおずと進み出た。

 

「ボス、奥方様や子供らをそれ以上痛ぶるのはやめなされ…」

 

「うるせぇぞジジイ!!」

 

「どうしても誰かを攻撃したいのなら代わりにワシを…この老いぼれの命を先に使ってくれんか」

 

母親とベルガモたちは朦朧とする意識の中、それを聞いていた、あの老齢の部下は度を越えた暴力を耐え凌ぎながら長らく父に付き従い、ベルガモたちの世話もしてくれた優しい男だった。

そして、彼らの父親は躊躇することなく老齢の部下の頭部に噛みつき、そのまま砕き潰した。骨の破片や潰れた眼球、脳みそまでもが口の端から飛び散り、老齢の部下の身体が力なく倒れこんだ。

 

「ふぃ~~」

 

父親は恍惚とした笑みを浮かべ、吐息をつきながら口を拭うと、とりあえずひとりの部下を殺したことで腹の虫は収まったのか、そのままどこかへ消えていった。他の部下もそれを追い、その場にはベルガモら3兄弟と母親だけが残された。

 

「ふ…へへ…へっはっはっはっは…!バカな女だぜ、親父に逆らうからそうなるんだ…はへへへ…」

 

「あ、兄者…!」

 

ベルガモはボロボロの体を起こしながら、憎く恐ろしい父親に暴力を振るわれ、自分と同じ被害者であるはずの母親を侮辱した。だが、これはベルガモが母親が同じ目に遭っているというショックから心の平静を保つための発言である。ということを理解してか、母親は言い返すこともなくその場で泣くばかりだった。

 

そんな日が何年も続いたある日、母親は逃げ出した。当然父親は怒り、ベルガモ達にそれをぶつけた。だが…

 

「うるせぇクソ親父!もうテメェに痛ぶられるだけのオレらだと思うなよ!!」

 

バジルの蹴り技、ラベンダの猛毒、そしてベルガモのカウンター能力により、長年苦しめてきた父親を倒した。最後はきっちりとトドメを刺し、ついにベルガモ達は恐怖と支配から解放され、トリオ・デ・デンジャーズとして名を馳せるようになった。

 

 

そして時は過ぎ、界王神により力の大会の開催告知と、選抜選手になれという命令を受けた後の事。

 

「兄者…本気か?」

 

「ああ…」

 

「あの女…いや、母さんは絶対に、オレらの事を…」

 

「わかっている。許してもらいたくて行くんじゃない。負ければ宇宙が消える力の大会…絶対に勝つための理由付け、それだけだ」

 

ベルガモ達は山の中腹から広大な街を眺めていた。どこから力の大会の情報が噂として漏れたのか、人々は宇宙が滅びるかもしれないという事実を目の当たりにして暴動を起こし続けていた。彼らが滞在していた平和だった町は、たった1日にして炎と怒号に包まれた地獄へと変貌していた。

 

彼らは急いだ。故郷の森と似ている環境を探し出し、そこを探索した。

 

「…!この匂いは…」

 

ベルガモは懐かしい匂いを感じ、それを辿った。すると、開けた場所に広がる渓流で、探していた母親の姿を発見した。

 

「ちょっと!子供にかかるじゃないの!」

 

「あ、すまん…俺も家族と一緒にこういうところに来るのは初めてだからさ…」

 

「うふふ、いいのよ…これからもっとこういう楽しい事が増えていくわ」

 

しかし、やっと見つけ出したベルガモの母親は、新しい家族と共にいた。逃げ出してから出会ったであろう、同じ種族の男と、その間に設けた数匹の子供と一緒に渓流のほとりで捕らえた獲物を焼いて食べていた。

その様子をしばらく崖上から眺めていたベルガモだったが、自分の視界が歪み、雫が目尻から流れていたことに気付くと、その場を後にしようと慌てて後ろを向いた。

 

(そうか…お袋は、幸せになったんだな)

 

ならば、もうやることは無い。

しかし、零れた涙が崖から落下し、下にあった岩の上にポタリと垂れた。

 

「…!まさか、ねえ!上に誰かいるの!?」

 

ベルガモの母親はそれに気づき、警戒しながらそう大声を張り上げた。ベルガモはこのまま声を無視し、立ち去ろうとする気であった。

しかし、久しぶりに聞くその声に逆らう事は出来ず、ゆっくりと崖上から顔を出し、見下ろした。

 

「…アンタ…!」

 

「誰だアイツは!おいお前たち離れていろ!俺の家族に手を出してみろ!ただじゃおかないぜ!!」

 

母親はベルガモが昔に自分が置いてきた息子だと気付くが、その夫は母親と子供を後ろへ匿い、ベルガモに対して啖呵を切った。

 

「…お袋。もう親父はいない…!死んだ…!だから安心して、幸せに暮らしてくれ…」

 

それに対し、ベルガモはそれだけ言い残し、その場から立ち去ろうとする。母親も、きっとあの親父の事を今まで恐れながら過ごしていたはずだ。これだけでも伝えることが出来れば、あとはもう何も望むことは無い。

 

「待ちなさい」

 

だが、その声にベルガモは立ち止まる。

 

「私の方こそ…ごめんなさい、アンタたちを置いたまま逃げてしまって。そのことは今まで胸に残るしこりだった…でも、無事に、元気に生きていることが分かって私もうれしい」

 

母親はしっかりとベルガモのその言葉を届けた。

 

ガサ…

 

「兄者…」

 

その時、騒ぎを聞きつけたバジルとラベンダもこの場へやってきた。そして、ベルガモと同じく崖下を見るとそこにいた女性を見て、それが母親だと確信する。

 

「母さん…!」

 

「アンタたちも…よかったわ、無事で…!」

 

その後、3兄弟と母親は涙ながらに再会の喜びを分かち合った。

そして、母親は昨日あたりから町が騒がしいので避難してきたことを話し、ベルガモに訳を聞いた。ベルガモは言い淀んだが、正直に話すことにした。力の大会や、負ければ宇宙消滅といった内容を話した。

 

「というわけで…オレらは憂いを残さんためにお袋を探していたんだ」

 

「おかげで、絶対に負けられねぇ理由が出来たぜ」

 

バジルが、母親の横にいる新しい夫と小さな兄弟たちを見てそう言った。

 

「いや…違うわ」

 

だが、母親は首を横に振った。

 

「アンタたちは私たちのために戦うんじゃないわ。運命は変えられない…でもその道中で大切なものを見つけることは出来る。ベルガモ、バジル、ラベンダ…未来はアンタたちが選びなさい!」

 

「…ああ、わかった」

 

「おいお前!母さん泣かしたらこの蹴りのバジル様が容赦しねぇぞ!」

 

新しい家族と兄弟。それらのために、ベルガモたちは母親と交わした大切な誓いを胸に力の大会へ臨んだ。

 

 


 

 

「いくぜ、トリオ・デ・デンジャーズの恐ろしさ…たっぷりと見せつけてやる!!」

 

 

固い絆で結ばれた兄弟の想いが、牙を剥く───!




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フリーザ

言わずと知れた宇宙の帝王。アイザード族という氷の惑星に住む種族の突然変異体として並外れた邪悪さと戦闘力を持って生まれたコルドから、さらに邪悪に強く産み落とされた。自分よりも弱いクウラを虐げていたが、いつしか逆転されてからは名前も思い出したくない相手としていない存在として扱うようになった。

ベジータ王と手を組んだコルドの後継者としてサイヤ人と接触する。サイヤ人を恐怖で縛り付けてきたが、彼らの徒党を組んだ時の力と超サイヤ人伝説を恐れ、数人を残して惑星ベジータごとサイヤ人を絶滅させた。

ナメック星ではターレスやカカロットらと戦うが、原作と異なり彼らを圧倒し撃退した。その後は幻想郷を決戦の舞台として地球へ侵攻する。カカロットとの一騎打ちの末に最終形態を超えた第4形態を会得し、カカロットはおろかブロリーや霊夢でさえも打ちのめすが、戦いの果てに元気玉で敗北した。

時が経ち、ジャネンバの影響で地獄から蘇る。ウスターを倒し、シリアル星でクウラと再会し殺し合いに発展するもエレクに従うガスによって瀕死となる。
ガスに劣勢となるクウラが盤外からの一手として気を分け与えられ復活するも、その後グラノラに狙撃され、クウラによって盾として投げられ二度目の死亡を迎えた。
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