もしもカカロットが幻想郷に落ちていたら   作:ねっぷう

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第553話 「ミュージック」

第10宇宙の選手の内、マガオーとアルコイルはザマスが直々にスカウトした戦士である。マガオーは単純なアタッカーとして、アルコイルはその演奏による強化能力に目を付けられ、バッファー及びサポーターとしてチームに加えた。

ジレンに対しては意味を成さなかったが、アルコイルのバフは彼自身とザマス、マガオーにしっかりと効いていた。さらに、時間が経過し演奏を重ねれば重ねるほど効果はより強くなっていく。

 

しかし、アルコイルの存在に気付いた他宇宙の選手がそれを見逃さない。今、アルコイルには第2宇宙のリブリアン、ロージィ、カクンサが狙いを定めていた。

 

アルコイルは敵に動きに目を配りつつも決して演奏の手を止めない。魔力で生成した楽器をベースからギター、ドラム、ボードへと次から次へと持ち替え、一人で曲を奏でてゆく。

 

「ロージィ、カクンサ、行くわよ!」

 

「はーい!」

 

「よっしゃ!」

 

変身したリブリアンの呼びかけを合図に、3人は一斉にアルコイルへ迫る。

 

「ヤッチャイナー拳!アタタタタタタタタ…!!」

 

ロージィの得意とする独自の拳法から繰り出される突きのラッシュが襲い掛かる。だが、アルコイルはギターを振り上げ、それを思い切りスイングしてロージィを弾き返す。

 

「ガルルル…!」

 

そして、カクンサは野性的な身のこなしでアルコイルの背後へ迫り、腕を振り上げて攻撃を仕掛ける。が、目ざとく気付いたアルコイルはベースをかき鳴らし、音圧の波動を放射した。

 

「ぎゃう!」

 

全身を砕くかのような衝撃に晒されたカクンサは吹っ飛ばされて床を転がり、リブリアンに受け止められる。

 

「大丈夫!?カクンサ」

 

「ええ…」

 

アルコイルは顔を白く塗り、髪を逆立て、派手なパンクファッションに身を包んでいる。戦士としてはふざけた見た目と戦法ながらもその実力は本物だった。楽器を武器にすることで近距離に、音を攻撃に使用することで遠距離にも対応でき、隙が無い。

そして、さらにアルコイルは反撃を仕掛ける。ドラムのスティックを両手に持つと、それは大きな棍棒へと形を変える。アルコイルはそれを振りかぶり、ロージィに接近戦を仕掛けた。

 

「くっ…!」

 

流れるような動作でリズミカルに繰り出される打撃攻撃に対し、得意の拳法で応戦するも歯が立たず、どんどん武舞台際へと追い込まれるロージィ。

 

「今助けるぜ!」

 

カクンサがアルコイルの背後へ向かって猛ダッシュし加勢しようとするが…

 

「危ないわカクンサ!」

 

リブリアンはそれを止めようとする。しかし、カクンサは止まらず、アルコイルの後頭部目がけて飛び蹴りを放つ。

…が、アルコイルは背後で起こっていることを全て分かっていた。アルコイルは生まれつき全く耳が聞こえず、口も利けない。だが音を視覚情報として認識することが出来る特異体質。背後で起こっている出来事の音は目に見える情報となって、前方を向いているアルコイルの視界にも入っていたからだ。

 

しかし、その瞬間。異質なほど鋭く、刺すような『音』が見えた。

と思えば、まるで時が飛んだかのように音が瞬間移動し、飛んできた拳撃によってカクンサが打ち抜かれ、武舞台外へ弾き出される。

続けて、ロージィも場外へ叩き落される。

 

…これは自分ではない、別の宇宙の刺客の攻撃だ。

そう思ったアルコイルは咄嗟に身を屈め、その瞬間に頭上を通過していった拳撃の衝撃波を見送った。冷や汗が流れ、その元へ顔を向ける。

 

「外したか」

 

そこにいたのは第6宇宙の殺し屋ヒット。音楽を奏でながらも、アルコイルは流石に適う相手ではないことを早々に理解し、逃げの手に出る。

 

その時、またしても乱入者の音が見える。だがそれは、アルコイルがよく知っている尊大で優しい音色。

 

「これ以上我が宇宙の選手を落とさせるわけにはいかない…!」

 

現れたのは、第10宇宙の元界王・ザマスだった。

ザマスの頭上には光の方陣が浮かび、その体も大会開始時よりも大きくなっているように見える。いや、それどころか身に纏う気の量すら比べ物にならないほど大きくなっている。

ヒットは早期に決着をつけるべく、時飛ばしを使用しザマスへ拳撃の連打を浴びせる。

 

「がっ…!」

 

気付かぬ間に攻撃を喰らっていたザマスにそれに面食らうも、間髪入れずに全身へさらに拳撃を打ち込まれる。何もできないまま攻撃に晒され続けるが、その様子を見ていたアルコイルはさらにギターをかき鳴らし、ザマスを援護する。

 

しかし…

 

「喰らいなさい!!」

 

猛然とした勢いでこちらへ突っ込んでくるリブリアンを見て、思わず硬直する。鼻息を荒げ、必死の形相で転がるように猛突進してくる。

アルコイルはギターの衝撃波を放つが、リブリアンはどこから持ってきたのか武舞台の破片の塊を装備しており、それで衝撃波を相殺した。ならば、とギターを振りかぶり同時にグランドピアノや無数のドラムを生み出し落として物量を叩きこむが、それでもリブリアンは止まらない。

 

ゴシャア!!

 

やがて、その丸い巨体がアルコイルに直撃する。両者は一緒になってゴロゴロと転がっていき、ついには武舞台の外まで突き抜けた。

 

 

「な…何をしておるのだリブリアンよ!?」

 

破壊神ヘレスは、残る最後の選手となったリブリアンが相手もろとも落下したことに焦りを隠せなかった。

だが、リブリアンはアルコイルが落ちてゆくのを見届けた後、装備していた武舞台の破片を足場にして跳躍し、舞台上へ舞い戻ったのだった。

 

「ほっ…さすがはリブリアンだ…」

 

 

「アルコイル…!」

 

ザマスはヒットの猛攻を喰らい続けながら、脱落していったアルコイルの方へ目を向けていた。

 

カチ…

 

その時、小さな機械音と共にザマスの頭上の光輪が少し回転した。その瞬間、彼の動きが目に見えて変わり、ヒットの拳撃を全て防ぐようになる。

 

「なに…!?」

 

その変わり様に驚きながら、ヒットはさらに攻撃を繰り出し続ける。

 

 

 

一方、超サイヤ人4へと変身したカカロットは、マガオーと睨み合っていた。空気が震えるほどの凄まじいパワーを感じ取ったマガオーは、居ても立ってもいられないほどに興奮する。

逸る気持ちを抑えきれず、信じられないスピードで走り出し、巨大な拳を振り下ろす。カカロットもまた跳躍し、渾身のパワーを込めた拳を真っすぐに打ち出した。

 

ドムッ

 

両者の鉄塊の如き拳が叩き合わさり、鐘を鳴らしたような轟音が響く。そのまましばらく力を込め合い、発散されるオーラが行ったり来たりとうねり続ける。

 

ガキン

 

ついに両者の拳が力に耐えきれずズレてしまい、マガオーの顔の真横へカカロットが勢い余って飛び出す。が、マガオーはそのまま回し蹴りを繰り出し、カカロットに命中させる。

カカロットは左肩と右腕でそれを受け止めつつ、逆にマガオーを押し返してゆく。

 

「おい。さっき俺に強いことは罰か、と聞いたな」

 

「おう…!我は強いだけでこの世に呼び戻され、人間の都合で弄ばれた…蘇ったことに感謝こそすれ、これは罰なのかと聞いたのだ!」

 

「多くの猛者が、お前に挑んだはずだ…全身全霊でな。理由は様々だっただろ、お前に認められたい、自分が何者なのか確かめたい。お前はそれをひとりひとり手ずから相手にしてやった。これを慈愛といわずなんと言う気だよ?」

 

「何が言いたい!」

 

「そうさ、どの宇宙も一緒ってことだ、俺たちは強いってだけで愛されている。愛されているから相手にしてもらえるのさ。だのに尚も居場所を求めるから贅沢者だと言ったんだ」

 

「では…主はどうだ!?主にも居場所はあったのだろうが…もしも主が弱ければどうするつもりだ?」

 

マガオーの力がどんどん増していき、力負けしたカカロットは大きくぶっ飛ばされる。武舞台の上を水平に吹っ飛び、途中で床に手を突いて勢いを止め、床を蹴ると獣のように両手も駆使して凄まじい速度でマガオーの元へ戻ったカカロットは、その顔面に拳をぶつける。

 

「居場所は欲しがるモンじゃねぇ…強くなろうとしているのなら、自然とそこが居場所になるだろうが」

 

これはカカロットの経験則。カカロットは強くなろうと足掻いたからこそ仲間が出来た。幻想郷という居場所を見つけた。

マガオーも生前はそうだったのだろう。必死の鍛錬や実践を積み重ね、後世で英雄と呼ばれるほどの活躍を残した。しかし、クローンとなってからはどうだろう。「居場所が欲しい」、そう頼んだだけで現代の荒波に揉まれ続け、自分から動こうとしなかった。

 

マガオーは鈍痛の中でそれを思い出した。

 

「…そうか。では今一度、我は強く成ろうとしてみよう。主という壁を越え、勝利という戦跡を刻むためにな!」

 

「よっしゃ、そう来なくちゃ」

 

マガオーは口から流れ出る血液にも構わず、触手を展開し口を大きく開き、そこへ全身全霊の気を込める。気は大きなエネルギー塊を形成し、回転しながら大きくなると同時に圧縮され周辺との圧力差により凄まじい突風を起こす。

対するカカロットも突風をものともせず、胸の前で合わせた両手に気を込めて気弾を生成し、そのまま両手を腰の横まで引いて構える。カカロットの超サイヤ人4は、本来なら経ていなければならない黄金大猿への変身と理性の獲得という過程を省略した簡易的な超サイヤ人4。それを成り立たせるために、大猿の力を引き出すと同時に界王拳によって制御している。

 

「『超華光玉』…!」

 

かつては紅美鈴の技である華光玉。マガオーの全身全霊に対抗すべく、カカロットは超華光玉を放つ。

 

「ヌガアアアオオオオッ!!」

 

「はああああ────ッ!!」

 

武舞台の床を削るほどの威力で放たれた両者最高級のエネルギー波がぶつかり合う。マガオーは攻撃を放ちながらゆっくりと足を踏み出し、カカロットとの距離を縮めつつ威力を高める。

 

(ん?)

 

その時、マガオーは幻の中にいた。カカロットを豪勢な肉の盛り合わせの如きと形容したのだが、今のカカロットはそれに収まる御馳走ではない。

 

(んんん~~~~~~??)

 

地平線の先まで広がるフルコース。食べても食べても一向に終わりが見えぬ、黄金の輝きを放つ極上の品々の数。それを見て興奮しないわけがない。

さらに、ここへ来てアルコイルの演奏強化がさらに上乗せされる。マガオーのエネルギー波はより大きくなり、ついには華光玉を丸ごと包み込んだ。そのまま武舞台外の果てまで伸び、出し切ったマガオーが口を閉じると消えた。

その場には静けさが残り、カカロットの姿は無かった。

 

「『南無三砲』」

 

しかし、カカロットはマガオーのエネルギー波に飲み込まれたわけでも、場外まで押し出されたわけでもなかった。彼は、既にマガオーの後ろにいたのだ。

 

(どうやって…!)

 

カカロットは華光玉を放ち、鍔迫り合いに発展した時点で華光玉をその場に()()し、自分は早々に離脱しマガオーの背後へ移動していた。そして、撃ち合いが終わったと思わせた隙をつくように「南無三砲」を発射した。

腰を落とした仁王立ちの構えのまま、胸元から伸びてゆく華光玉以上に特大な紫色の極太エネルギー光線がマガオーに迫る。マガオーは咄嗟に腕を前に出して防ごうとするが、その巨体とパワーを以ってしても威力を軽減しきれず、武舞台の床の上をすべるようにどんどん押し込まれていく。

 

「グググ…グオオオオオオ!!」

(カカロット…おお、主はそこまで…)

 

踵が床を削り、踏み止まろうとにも踏み込めない。マガオーは全力を出し切ってもなお想像以上のパワーで自分を倒し切ったカカロットの姿を見つめながら、場外へと落下していった。

 

(感謝する。満足だ)

 

 

「…第2宇宙、ロージィ、カクンサ選手、脱落です。第10宇宙、アルコイル、マガオー選手…脱落です」

 

判定が下され、モニターから4人のアイコンが消える。

第10宇宙の観覧席へ送られたマガオーは、どこか清々しい表情で腕を組んだ。

 

「すみませぬ、破壊神殿に界王伸殿…」

 

「いや、よい…」

 

「しかし、我が宇宙の残る選手は…オブニとザマスだけになってしまったか」

 

 

カカロットは、観覧席へ送られたマガオーを見つめ、互いに健闘を称え合った。次々と選手が減っていく中、カカロットは次の相手を探して後にする。

 

その瞬間。

 

ズオオオッ

 

「…!?なんだ!?」

 

突然カカロットに襲い掛かった何者かがいた。奇襲をかけるように真上から覆いかぶさり、その首を片手で締めながら鳩尾へ鋭いパンチをめり込ませる。

 

「テメェは…どういうつもりだ!」

 

カカロットを奇襲したのは、なんと同じ宇宙の選手であるはずのベジータであった。

 




【現在公開可能な情報】

シャドースカール

人造人間の首魁にして、諸悪の根源、人造人間1号ことスカール。かと思いきや、彼女は本物のスカールによって影武者として造られた存在に過ぎなかった。首だけの状態で起動させられ、その後にかつての拠点を焼き払う事によって、本物のスカールの失踪を隠していた。

その後は自分の首から下を自分で作りながら、拠点の残骸で動く城を作って旅に出た。行く先々で目についた岩や大木、生き物の骨格や建築物などを破壊して取り込み、それらを材料として蠢く拠城を組み上げ、仲間の人造人間を増やしつつさらに勢力を拡大していった。彼女は配下たちに自分が偽物であることを悟られるのを恐れ、絶対に配下の前に姿を見せなかった。そして、自分には人造人間を従わせる能力は無いので、城の行き先などの行動はすべて配下に任せていた。

蠢く拠城はスカールの繰るオレンジ色の糸によって操り人形のように駆動し、その糸はスカールの体内で生成される。スカールは拠城の首の根元、うなじの部分の鍾乳洞のようになった洞窟内に潜んでおり、自分の体を糸束で天井に縛り付けて、糸を操作し城を動かしている。シロナがやってくるとその糸束をほどき、戦闘態勢へと入った。

その実際の姿は、彫刻で絵で表現されてきた美しい姿のスカールとはかけ離れており、顔こそそっくりで美しいものの、その首から下は昆虫人間のような異形となっている。スカールが戦闘を行う際には、主に糸で重量物などを振り回して戦う。さらに、糸を生成する機構が内蔵された部位である重たく巨大な“腹”を自ら切り離すことにより、身軽な姿へと変わる。口から螺旋状の衝撃波を放ち、4本の腕からはエネルギー弾を無限に発射し、強力な体術も披露する。

しかし、その精神は非常に不安定であり歪。いつでも人間の生活の傍らに存在する、漫画やアニメなどの「物語」、そしてその「ヒーロー」に強い憧れを抱くようになる。だがスカールは決して望むようなヒーローになることはできず、自分の理想のヒーロー像そのものの行動をするシロナに敵意を感じていた。だが最期には鏡のように煌めくシロナの結晶に反射した、理想とは大きくかけ離れたおぞましい自分の姿に拒絶を起こし、その身体が自壊した。さらに創造主である本物のスカールに背負わされた自分の運命に気付き、シロナに礼を言いながらその機能を停止した。






マガオーの元ネタはプレデターとクトゥルフの混合で、存在そのものは私の他作品からの輸入。名前の由来は元素のマンガン、原作力の大会に出場していた第10宇宙の選手メチオープを意識してこじつけてます。

アルコイルは本名をメタル=アルコイルで由来はメチルアルコール。音楽を奏で演奏によるバフ効果を周囲に与え重ねていく戦法は狩猟笛のイメージ。
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