私生活と仕事が忙しくなってきたので思うように時間が取れません…が、これからしばらくは少し余裕ができるのでペースを速められるようにしていきたいです。
ザマスは「吹き飛ばし」と「落下」も含め、既に上限となる8回目の適応を終えている。これ以上の適応はできないのだが…
今の光輪の回転により、適応を上書き。これまでの8回分を1回分に纏めて適応し、残る適応回数は7回となる。
怪物然とした姿は元に戻り、そこにいるのは元の姿のザマス。しかし、戦闘力は引き継いでおり、かつその雰囲気もまるで闇に輝く星のように曇りなく輝いているかのようだ。
立ち姿には一切の迷いも、思惑も無い。ただ純粋な勝利への意志があった。
「いい顔になったな」
「当然だ。崇めろ、讃えろよ…この宇宙の星々を照らす星にして絶対の神…ザマスを!」
直後、ヒットは0.5秒の時飛ばしを発動。止まった世界でヒットとザマスだけが動いている。
無数の拳撃が飛び交い、両者は近付いては反発するのを繰り返している。その度に凄まじい波動がそこかしこで花火のように炸裂しているが、止まった時の世界であるが故に他へ一切の影響を及ぼしていない。
(もはやオレの全ての攻撃が効かないだろうな)
ヒットの拳の飛び道具も、時飛ばしも、時間の牢獄も、光速打撃も全てザマスは適応を完了しており、一切効かない。
(これならばどうだ?)
ヒットは変わらずに人体にのみ影響する透明な拳撃を無数に繰り出し、ザマスにぶつける。ザマスは適応を終えた攻撃は避ける意味すらないとそのまま喰らうが…
攻撃を喰らったザマスの胸に、確かな衝撃と痛みが走る。
「!?」
(バカな、何故…!)
ヒットが放ったのは
本来なら、ヒットの拳撃は的確に対象の生命活動を停止させる力が込められている。それはいわば“殺すため”の負のエネルギーとも呼べるものであるのだが、その殺しの力を同時に2回使役し、掛け合わせることで反対となる“活かすため”の力、すなわち「活人拳」へと変化を遂げる。
殺人拳から活人拳へ…それを用いた攻撃は痛みは伴うが当たれば当たるほど対象の身体を良い方向へと変化を促すダメージを与えることができる、いわばツボ突きやお灸のような攻撃。
「そんな小細工が…適応抜きにしても今更通じると思うか?」
しかし、ザマスはそれにも適応。多少はダメージが入っていたがすぐに無効化される。
(やはりそうなるか。だが…ひとつ思いついたことがある。このプラスのエネルギーで時飛ばしを発動したらどうなる…?)
ヒットはそう考える。殺し屋として長く活動していたが故に、ヒットはこの活人のプラスエネルギーを一度編み出しこそしたが利用したことは無かった。そして暗殺に使う時飛ばしは、殺人のマイナスエネルギーを使用して発動している。
ではそのプラスエネルギーで時飛ばしを使った場合、どうなるのか?何が起こるのか?
(考えたことも無かったな。いや、考えたとしてもできなかったろう…だが今なら…コイツとの戦いでオレも成長した今ならば、できる)
だが、何か仕掛けようとしているヒットを見たザマスの光輪が回転する。
(今のは何に適応した?)
ヒットはまだ何も仕掛けていない。それなのにザマスの光輪は回転し…
(まさか、オレのプラスエネルギーに…いや、オレという存在そのものか!)
ザマスの適応は一度攻撃を受けると緩やかに解析が始まり、適応が完了すると光輪が1/8回転する。その間、さらに同じ攻撃を受ければその時間が加速し、解析能力も高まっていく。そしてヒットの多数の攻撃手段に適応した時、ザマスは更なる適応を開始する。その攻撃の発信源であるヒットの解析に乗り出したのだ。
この解析が終わり、ヒットという存在への適応が終わった瞬間、ザマスはヒットの攻撃が効かないどころか向ける攻撃がすべてクリティカルとなる、絶対的な優位を獲得することになる。
さらに、ザマスの吹き飛ばしと落下への適応は健在で、場外へ落とすことが不可能となっている。
(ならばどうする…?イメージしろ…反転した力で時飛ばしを使えば何が起こる?…そうか、空間…時が反転し空間となる。そして…)
「こうか?」
ヒットの身体から摩訶不思議な謎のエネルギーが満ち溢れる。その異様な光景を目の当たりにしたザマスだったが、既に適応完了まであと1回転というところまで来ていた。
「何をするつもりだろうが、無駄だ!あと1回の適応で私は無敵の存在となる!その時が、貴様が敗北する時だ!!」
「…そうか、残念だ。初めて神と仲を深めたいと思ったのにな。ではこれを喰らってくれ…時飛ばしの反転、名付けるなら…」
「ザマス選手、脱落です」
「はっ?」
何が起こったのか理解できなかった。ザマスは気が付けば第10宇宙の観覧席へと送られていたのだ。隣には界王神ゴワスや破壊神ラムーシ、天使クスの姿が。反対側にはマガオーやアルコイルを始めとする選手たちの姿があった。
「キッ…キサマァッ!!私に何をした!?」
ザマスは声を荒げ、未だ武舞台上にいるヒットに向けてそう問いた。ヒットはその場で片膝をつき、滝のような汗を流しながら息を切らしている。
「答えろ!!なぜ私が…」
「空間を…ズラした…」
「なに…!?」
「この無の界ごとだ…
吹き飛ばされず、落下したわけでもない。ザマスだけがその場から動かず、その他すべてが動いた。その結果場外へ取り残されたザマスは、脱落の判定が下された。
「そのような…あり得ない!神に等しい所業を…人間が…!」
「生きているのなら、殺せるのなら…神や人間に差など無い。そうは思わないか?ザマス」
だが、ヒットは疲れきった顔に微かな笑みを浮かべながらそう言った。
それを聞いたザマスは胸中に何を思い浮かべたのか…ガクリと項垂れ、何も言わなくなってしまった。
「ザマス…そこまでして、我々の宇宙のために戦ってくれてありがとう。皆も、そう思っておる」
ゴワスはそう言いながら、そっとザマスの肩に手を置いた。
「それでは、選手全員が脱落となりましたので…第10宇宙、消滅となります」
「はーい!第10宇宙、消滅~!」
大神官がそう告げると、全王が片手を真上へ掲げる。その掌に眩い光が集中し、第10宇宙の面々の身体が揺らぎ始める。
今にも消えようとする第10宇宙の選手を見ていたヒットが、最後にザマスに聞こえるように呟いた。
「オレが空間逸らしを使った瞬間、お前の心が見えたような気がする。互いの力と力がぶつかる時、精神同士が一瞬繋がることは珍しくない。お前が最後に考えた願いが分かった…オレが生き残った暁には、その願いを叶えてやる」
それを聞いたザマスは一瞬だけ目を見開き、そして目を閉じる。
───なんと、美しいのか…この宇宙の生命は
そして全王の掌が閉じられ、いよいよ第10宇宙は天使だけを残して全てが無に帰った。
「…」
ヒットはそれを見届けた後、疲労困憊となった体を奮い起こし、痙攣する足を叩いて強引に力を入れ直し、次の戦いのためにその場を後にするのだった。
一方、ヒットがザマスとの熾烈な戦いを繰り広げていた頃。第4宇宙の生き残り選手であるガノスとニンクの元へ第11宇宙の魔の手が忍び寄っていた。
「隠れてやり過ごすつもりだったんだろうが、そうはいかないぜ」
そう言ったのはプライドトルーパーズの戦士のひとり、クンシー。
「ここは…戦わなければ負ける…!」
ニンクは全身に気を纏うと、一気にその場から飛び出してクンシーへ攻撃を仕掛ける。腕を振り上げ、気を込めた打撃を構えるが…
突然地面が爆発し、ニンクは爆風に吹っ飛ばされる。
「ニンク!」
その時、ガノスは気付いた。目に気を凝らしてよく見ると、クンシーの手の指先からオレンジ色に煌めく糸が垂れ下がり、それは地面に蜘蛛の巣状に張り巡らされていたのだ。
恐らくは地雷のような性質を持ち、真上を敵が通った瞬間、爆発を起こすのだろう。ニンクは受け身を取るが、その場に倒れたまま上体を上げることしかできない。
「く…!」
「それ!」
クンシーはそのまま両手の指先から伸びる糸を伸ばし、ニンクの体に巻き付けた。そして、糸を振り上げニンクの巨体を軽々と宙へ放り上げた。
「喰らえ」
ドグオオッ!
ニンクを縛っていた糸が大爆発を起こす。投げられていた勢いもあって、ニンクは黒煙を纏いながら勢いよく武舞台外へ向けて吹っ飛んでいく。
「ガノス…!すまん…私はここまでだ…!」
「ニンク!!」
ニンクは最後に遠くからそう言葉を投げ、落下していった。
「ニンク選手、脱落です」
ニンクは脱落し、ついに第4宇宙も残る選手はガノスだけとなってしまった。
「悪く思わないでくれよ。次はお前だ」
ガノスは自分の弱さを理解している。だから正面から敵に挑まない。スパイという役割も性に合っていた。だから嘘をついてアニス姫を罪人に仕立て上げ連れ出した。
嘘をつき、逃げ隠れることは得意…今まで何度もそうやって生き延びてきた。だから今回もそうしていればやり過ごせる。
しかし、既に第4宇宙の生き残りは自分ひとりだけ。はっきりと分かる…どう考えても、最後まで勝ち残るのは無理…!
ここで以前ハーツに言われた言葉が強く頭の中に思い浮かぶ。
『俺はさぁ、決めてるんだ。どっちが正しいかわからない時は、負け犬の方につくってな。お前は…負け犬か?』
(アニス姫、安心してくれよ…オレは負け犬の方につくが、絶対に…負けねぇからよ!)
ガノス、挑む!
【現在公開可能な情報】
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