もしもカカロットが幻想郷に落ちていたら   作:ねっぷう

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第56話 「メタモルフォーシス!究極戦士爆誕」

「3!2!…1!終わりだ!」

 

隠岐奈はカカロットへ向けた腕から、不思議なパワーを一気に送り込む。

 

「…うおおおおおおお!!?」

 

カカロットの周囲から柱状に燃えるような気の渦が発生する。紫色の巨大なオーラが彼を包み、やがて少しずつそれが落ち着いていく。

 

「…これが俺なのか?」

 

カカロットは自身の体にみなぎるオーラを感じて、信じられないとばかりに手を見つめた。

 

「何もしていないのに滅越拳を最大限に引き出したとき以上のパワーが満ちて来る…!」

 

そう、今までのカカロットは、気の集中や滅越拳により、一時的にしか戦闘力を高めるすべを持たなかった。しかし、現在の眠る力を引き出したカカロットは違う。常に全身にみなぎる気は何もせずとも最高潮に高まっている。

 

「そして前に切られたはずの尻尾も生えてきている…!」

 

「その尻尾がおそらくお前の力の源であると考えたから、再生しておいた。今のお前には、その滅越拳とやらはもはや必要ないはずだ。そしてお前は今、誰をも超えこの幻想郷で最強の称号を手に入れたのだ」

 

「俺が、最強だと…?ふっふっふ…ははははは!!ただの最強ではない、究極のパワーだ、俺は究極のパワーを手に入れた最強なんだ!」

 

一気に全身からオーラを放出するカカロット。紫色のオーラは後戸全体を揺るがしているかのようだった。

 

「さて、そろそろ行くか…」

 

「ならば少し待て」

 

隠岐奈はそう言うと、カカロットに指を向け、光を放った。するとカカロットのボロボロの服が元に戻り、いつの間にかその顔にはかつて愛用していたスカウターが装備されていた。

 

「私が思うにこれがお前の正装だろう。月の客共を、それでガツンとぶっ倒してやれ」

 

「言われなくてもそうする…じゃあな」

 

「その後には戻ってくるんだぞ!私の部下になる約束を破るなよ」

 

「バカが、俺がくたばるとでも思うか?」

 

そう言うと、カカロットは目の前に出現した後戸の国の出口である扉の外へ消えていった。

 

「…悪くはない、悪くはないが…何だかなぁ」

 

「まるで眠る力と同時に凶暴性まで引き出してしまった感じですね…」

 

隠岐奈と二童子たちがそう呟いた。

しかしその時、空間が振動していることに気付いた。そして、遠くから爆発の音と声が聞こえてくる。

 

「地上人の無数の反応あり!この奥だ!」

 

「さて…今度は我々が体を張る番だ」

 

後戸の中にいる普通の人間たちの気配に感づいた月の客軍が、ついに後戸の存在を突き止め中に侵入してきた。隠岐奈とその部下の里乃と舞は、襲い来る敵を迎え撃つのだった。

 

 

 

 

 

「ようやく見つけたぞ、ドラゴンボールを…」

 

「こんなところにあったとは…驚きだね」

 

妖怪の山の裏手。バラバラに崩された家屋の残骸の上で、覇乙女蛇斑とその妹である明嵐が立っていた。蛇斑の手には、なんと七つ星のドラゴンボールが握られていた。

これは三つ目の少女の賢者が持っていたボールだ。そしてこの壊れた家屋は彼女が住んでいた家…それを破壊し、破壊跡からボールを探し出したようだ。

 

「明嵐、お前はこれを持って先に月夜見王の元へ戻れ」

 

「いいけど…なんで?」

 

「私は紡馬に貸しているスカウターを返してもらってくる。やはりアレ無しでは色々と支障が出る」

 

「わかった、じゃあ先に行ってる」

 

明嵐は蛇斑からドラゴンボールを受け取ると、月夜見王のもとを目指して空を飛んでいく。蛇斑はそれを見上げると、紡馬を探しに歩き出した。

 

ボン

 

「…!誰だ!?」

 

その時、蛇斑の元へ一発のエネルギー弾が飛んできた。当たる寸前でそれをはじき返し、辺りを見渡す。

 

「よう」

 

目の前に降り立ってきたのは、カカロットだった。

 

「…ふっ、誰かと思えばカカロットとか言ったか?まだ死んでいなかったのか」

 

「生憎にな…ならば今度こそ殺してみるか?」

 

「…そうさせてもらおう!!」

 

蛇斑は拳を振りかぶり、カカロットへ飛びかかった。素早いパンチが迫ってくる。

が、カカロットはそれを首を横に動かすだけでかわし、逆に蛇斑の顔面に渾身のパンチを叩きこんだ。拳がめり込み、勢いで吹っ飛ばされる蛇斑。地面に転がるようにして激突し、慌てて手をつく。

割れた片眼鏡はどこかに飛んでいき、鼻血が流れている。

 

「な…何だと…!?」

 

「今のは腕をもがれたウスターの分だ」

 

「ち、調子に乗るなよ不浄の民がッ!!」

 

完全に逆上した蛇斑は怒りに目を見開いて再び攻撃を仕掛ける。両手から剣のように鋭い気の刃を出し、それで無数に切りかかった。

しかし、カカロットはそれをいとも簡単に全てかわしていく。蛇斑はさらに苛立ちを募らせ、気の刃を解くともう一度拳で殴りかかる。

 

パシ

 

「う…!」

 

カカロットはその拳を掴んで止めた。

 

「美鈴を貫いて殺したのはこの腕だったな?」

 

バキャ

 

そしてギリギリと力を込め、蛇斑の拳を握りつぶしてしまう。血が飛び散り骨が突き出し、蛇斑はあまりの痛みに叫びながら後ろへ下がる。

 

「うぎゃあああああ…!!」

 

「お前だけは簡単には死なさないぞ、覚悟しろ」

 

冷酷なカカロットの言葉が蛇斑の耳に届く。

 

「クソォ!!」

 

だがすぐさま起き上がり、跳躍すると飛び蹴りを放った。

 

「豊姫を踏んで殺したのはこの足だな」

 

またしてもカカロットはそれを見切り、自分もパンチを放ってそれを止める。同時に拳から気をさく裂させ、蛇斑の右足を膝からへし折った。

 

「ぐああ…!!」

 

「そしてサグメを撃ち殺したのはこの腕か!?」

 

蛇斑の左腕を掴み、肘で打つ。ボキリと音が鳴り響き、蛇斑は苦痛にうめきながら後ずさり、地面に倒れ込んだ。

 

「ハァ…ハァ…助けてくれ…!」

 

「ポンポンと色んな奴を殺しやがって、ソイツらはお前に助けを乞う暇すらなかったんだぞ」

 

カカロットは静かにそう言い放ちながら蛇斑に近寄っていく。まだ辛うじて動かせる片足を使ってずるずると後ろへ移動していく蛇斑は、必死でカカロットに話を持ち掛ける。

 

「そ、そうだ…お前も月の客の仲間になればいい!王城に住めれば毎日が天国だぞ、美味い料理も食い放題だ!」

 

それでもカカロットは歩みを止めない。

 

「ならば月夜見王に軍を退散させるように話も付けてやるぞ、どうだ!?」

 

それを聞いたカカロットは、ゆっくりと蛇斑へ手を差し伸べた。

 

「もうおせぇよ」

 

が…すぐに手のひらを返し、蛇斑の顔目がけて気功波を撃つ。それは簡単に蛇斑の頭部を吹き飛ばしてしまう。

頭を失った体はゆっくりと後ろへ倒れ、完全に動かなくなった。

 

「さて…待ってろよ、今行くからな!」

 

月に重なって浮かんでいる槐安通路を睨むと、呼び寄せた要石に飛び乗り、高速で移動を開始するのだった。

 

 

 

 

 

一方、月夜見王の戦艦へ衝突した聖輦船。そこから乗り込んだ永琳と輝夜は、兵士が1人も現れないことに違和感を感じ、警戒しながら、じりじりと奥へと進もうとしていた。

 

「って、誰かと思ったらなんで永琳たちがいるのよ?魔理沙まで…」

 

とその時、後ろから霊夢が飛んできて、永琳たちの元へ着地するとそう言った。既にボロボロで、ここにたどり着くまでに相当の戦いを経てきたようだった。

 

「霊夢…私たちを匿ってくれたのは有りがたいけど…」

 

「…いいわ、大体考えてることはわかってる。ここまできたらしょうがない、一緒に月夜見王を倒しましょう。そういえば、魔理沙たちは?いるんでしょ?」

 

「ここに来るまでに色々あってね…今は休ませてるわ」

 

永琳は横目で聖輦船を指した。その中には、気を失って眠っている魔理沙、村紗と一輪がいる。雲山はその三人の看病に能ているようだ。

 

「そう…じゃあよかった、無事なのね」

 

「さ、月夜見王の元まで急ぎましょう」

 

と、輝夜が言う。三人が進もうとした瞬間、通路の向こう側から何者かの影がこちらに歩いてきていることに気が付いた。

ゆっくりとした足取りだが、その揺れる大柄な体に秘められた魔力は底知れない。それを見た永琳と輝夜は冷や汗をかきながら後ろへ一歩下がり、霊夢は闘志を称えた目で見つめた。

 

「…わしの計画は、あと少しで完遂される。スカウターを持っているはずの紡馬の反応が無いのも、未だ覇乙女姉妹がドラゴンボールを発見してこないのも、わが軍の兵の8割以上が月へ帰されたこともまぁ仕方がないとしよう。だが、八意オモイカネとカグヤ・モトナルヒメは自分からこの場へやってきた!」

 

月夜見王は杖を突き、拳を握りしめながらそう言った。

 

「特に八意、お前はわしの失われた時を取り戻すのに必要な存在だ。ここで捕らえさせてもらう」

 

「アンタ、月夜見王!」

 

霊夢がそう叫ぶと、月夜見王はそこでやっと霊夢の存在に気づき、目線を向けた。

 

「お前はあの時の地上人か…何とか死なずにここまでたどり着けたようじゃな。だがその幸運も、ここで尽きることになるぞ」

 

「私はアンタを許さないわ!アンタは私の大切な物をたくさん奪ってしまった…だから、ここで倒す!」

 

霊夢は周囲にエネルギー弾を浮かばせ、それを無数に放ちながら月夜見王に飛びかかる。

しかし、月夜見王は顔色一つ変えずに、持っていた杖を前にかざした。

 

「なっ!?」

 

「危ない!!」

 

その直後、杖から巨大な火柱が霊夢に向けて放たれた。突然の予想だにしなかった攻撃を前に体が反応せず、避けることができなかった。

だが、永琳が自らで作り出した光の弓矢を放ち、霊夢の服の袖をかすめることで何とか火柱の軌道上から逸らす。外れた火柱は真っすぐに飛び、後ろの壁を溶かすようにして吹き飛ばした。

 

「ち、おしいのう」

 

「…そうだ、月夜見王にはあれがあったわ…!王だけが使う事の出来る、思うが儘に攻撃を繰り出す事の出来る神力の杖!」

 

「霊夢、気を付けて!綿月姉妹の神降ろしのような力で、あらゆる属性を操ると言われているわ…」

 

「気を付けてって言われても…攻撃するしかないでしょ!」

 

霊夢の両腕に溜められた気が一つに合体し、そこから強烈な気功波を放った。

しかし、今度は月夜見王の杖から特大の雷が飛び出し、それに衝突させると相殺して見せた。

 

「くっ!」

 

「今度はこちらから仕掛けさせてもらう」

 

月夜見王が杖を振るうと、半透明なガラスの破片のような刃が無数に出現し、飛び散った。

 

「だったらこっちは…『天狗のうちわ』よ!」

 

先ほどの兵士たちとの戦いでも使用した天狗のうちわを取り出し、前方を扇いだ。すさまじい突風が吹き荒れ、風は刃を吹き飛ばすかの勢いで舞った。煽られた刃は方向を変え、地面に無数に突き刺さった。

 

「そして…今の隙だわ、『非想の剣』よ、敵の弱点を!」

 

今度は非想の剣を構え、月夜見王へ向けて構えながら突撃を仕掛ける。さらに、永琳が光の弓矢を放ち、輝夜は周囲に展開させた大量の弾幕を放った。

三者からの同時の攻撃は月夜見王を襲う。だが、月夜見王が杖で床を突くと、巨大な氷の柱が三本出現し、それぞれの攻撃を受ける。霊夢の剣撃は氷に刺さり、その氷を砕くが月夜見には届かない。永琳の放った矢は完全に氷に刺さって止められ、輝夜の弾幕も氷で防がれた。おまけに、燃える炎のような刀身であった非想の剣は絶対零度の氷柱に触れた事によりその輝きを失った。

 

「ふははは、無駄じゃ!」

 

杖を掲げると、その上に一瞬にして巨大な岩石の塊が作り出される。そして月夜見はそれを高速で撃ちだし、霊夢に激突させる。

 

「うぐ…!」

 

再び杖を振るうと、砕けた岩石の破片が浮かび上がって永琳と輝夜に向かって飛んでいく。エネルギー弾でそれを防ごうとするふたりだが、尖った岩石が全身に激突し、吹っ飛ばされる。明らかに全身の骨が砕け散ってもおかしくないほど激しい攻撃だった。

 

「ふん!」

 

杖から伸びた光る半透明の帯のようなものが、倒れた永琳と輝夜に巻き付いた。腕や足を縛って拘束し、月夜見王はそれを引っ張って引き寄せる。

 

「ついに捕まえたぞ!」

 

ふたりはとうとう月夜見に掴まってしまった。月で作られた頑丈は紐で編まれた帯はどんなに力を込めても破損させることができない。一条もの隙間なく完璧に組まれた帯は、いかな衝撃も寄せ付けないのだ。

 

「さぁ、次はお前を殺して、わしは月へ帰るとしよう。今までにおいて初めてわしに直接対立した地上人も、ここで死ぬのだ」

 

もはや霊夢には武器も残されていなかった。頭や腕から血が流れており、ダメージも相当に蓄積されているだろう。

 

「聖なる水で、両断してトドメを刺してやる」

 

月夜見王の杖から、水が高圧で射出された。高水圧のレーザーは床を削りながら真っすぐに霊夢に迫っていく。素早く避ける体力も残っていなかった霊夢は、ただそれを見つめるしかなかった。

しかし、月夜見王は異変を感じ取る。持っている杖が震えだし、ピシリとヒビが入った。

 

「なっ…!?」

 

次の瞬間、月夜見王の無敵の武器であった月の杖の上半分がバキリと音を立てて粉々に砕け散った。信じられないとばかりに砕けた杖を見つめる。そして、それにより帯が消え、開放された永琳と輝夜が地面に倒れる。

 

(そうか!そういえば、先刻に戦った蓬莱人と化した地上人が熱心にこの杖を攻撃しておったな…)

 

突然杖が壊れた原因に気が付いた月夜見は、ハッと上を見上げる。このスキを突いて、霊夢が月夜見の目前に拳を振り上げて接近していた。

 

「うおおおおお!!」

 

メリ…

 

霊夢の放った渾身のパンチが、月夜見王の顔面に深くめり込んだ。

 

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