もしもカカロットが幻想郷に落ちていたら   作:ねっぷう

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第568話 「黄金の彼方 - Golden Horizon」

(わかっていた事だ…だが、ここまでとは…)

 

枯葉のように宙を舞うクウラ。武舞台と空に浮かぶ照明とを交互に移す視界の中で思考する。

共に吹き飛ばされ周辺を飛んでいた岩石が砕かれ、その奥から第11宇宙の鋼の正義感を持つ男が襲い来る。

 

「ハアアアッ!」

 

跳躍してきたトッポはクウラの真横を通り抜けざまに一発、拳の一撃をヒットさせ、吹っ飛んでいたクウラの勢いを止める。そして背後から狙いを定め…

 

「むん!」

 

渾身の飛び蹴りによってクウラを武舞台へ叩き落した。床が凹んでクレーターが出来、クウラはその中心でうつ伏せに倒れていた。

 

(オレとあの剛腕の男の戦闘力には大きな隔たりがある…技術では覆せないほどのな…)

 

クウラは起き上がり様に、首をぐりんと回して後ろを向くと降下しているトッポが着地する瞬間を狙って目から破壊光線を放った。

 

ビッ

 

トッポは寸での所で躱し、外れた破壊光線は遠くの武舞台の岩盤にあたり、爆発を起こす。思わずその様子の方へ目が行ってしまったトッポの隙を見て、接近したクウラが尻尾による刺突を繰り出す。

が、見切っていたかのように尻尾を掴まれ、振りほどけない。トッポの肥大化した頑強な腕が、それに見合った万力の如き握力を発揮し逃れることが出来なかった。

クウラはそのままグイと引っ張られ、投げ飛ばされるとその体も再び宙を舞う。そこへトッポの気弾が撃ち込まれ、吹っ飛ばされるも何とか受け身を取った。

 

「強いな。トッポ…とか言ったか?」

 

「ああ。人呼んで『自由の戦士』…貴様のような悪人を幾人も成敗してきた」

 

「くっくっく、そうか。しかしいいのか?既にほとんどの宇宙が消え去り…あと薄皮程度しか繋がっていない宇宙もある。それらが消えるということは住まう人間の営みも消えるということ…許容できるのか?」

 

「仕方あるまい。この大会においては正義も悪もない。あるのは生き残るか消滅するかだ」

 

「同意だな。弱いから消えていく…有象無象が無くなろうが、だから何だ…とな」

 

クウラがそう言った瞬間、全身から眩い黄金の気が爆発した。溶岩流のように迫りくる気の波を、トッポはあえて真正面から受ける。

しかし、まるで見えない壁があるかのようにトッポの周辺だけを気の波が避けていた。

トッポの放つ闘気がクウラの気を跳ね除けているが、クウラはそれを見越していたようにトッポを取り囲う気の波の淵から無数の破壊光線を放ち、四方八方から狙う。細く鋭い光線はトッポの気を貫き、その身体へと迫った。

 

「だがお前と一緒にするな。元から無関心だった者と仕方なく諦めた者とでは雲泥の差がある!もちろんお前は前者、私が後者だ!」

 

トッポはいつの間にか前方へ向けていた手から、無数の細かな気弾を発射した。撃ちながら自身が旋回し、襲い来る破壊光線を残らず正確に打ち消して見せる。

 

「『ジャスティスフラッシュ』!!」

 

それは、巨大な手を砲台とし、指先を銃口と見立てて機関銃の如く気弾を撃ち放つトッポの得意技。

クウラが展開し、防御にも使っていた気の波が撃ち払われ、その剥き出しとなったクウラ本体へ…トッポのジャスティスフラッシュが容赦なく叩きこまれた。

 

ドドドドドド…

 

「ぐおおおお…!!」

 

連鎖して続く爆発に晒され、クウラの身体が焼き焦がされるような衝撃と痛みが襲う。爆炎の中でもみくちゃにされ、ようやく攻撃が収まった時には、クウラはその場で膝をつきしゃがみ込んでいた。全身を包んでいた黄金の外殻と皮膚は黒く炭化し、硬化している。恐らくは立ち上がろうと膝をついたが、そこで気を失ったのだろう。

 

「お前は悪党などではなく、ただのクズだ。よって、正義の名のもとに下され、落ちてゆくがいい」

 

トッポはクウラの頭を掴み、その体を持ち上げる。投げ飛ばし、場外へ落とすつもりだろう。

 

カッ

 

しかし、クウラは突然目を覚まし、手から眩い閃光を放つ。トッポの意表を突くとそこから脱し、後ろへ飛んだ。

床の上に立ち、ぼろぼろと崩れ落ちる黒い炭を体から払い落としながら、クウラは笑った。

 

「フフフ…フハハハハ!流石だな、ゴールデンクウラで全く歯が立たんとは」

 

焦げた黒い皮膚を全て剥がし落とすと、そこには元の通常形態のクウラが立っていた。トッポは何をするつもりかと眉を顰める。

 

「だがな…オレは()()()()()()()()()()()1()()、変身を残している。クハハ…光栄に思うがいい、この変身を見られるのは貴様が最初だ」

 

本来はブロリーとの決闘の為に獲得した、更なる変身。ブロリーに勝つため、最強になるために会得した。シリアル星でブロリーとぶつかった際も使用しようとしたが、ビルスの乱入により中断され披露には至らなかった。

だが、ここで開放。ブロリーと戦うためには第7宇宙がこの大会で勝利する必要がある。ここで負けては本末転倒、決闘の機会さえ得られなくなる。

クウラの身体が金色に煌めきながら巨大化し、まず再度ゴールデンクウラと化す。そしてさらに、その金色の装甲が砕け、奥から血のような真紅の光が漏れ出でる。

 

「…!!『ジャスティスフラッシュ』!!」

 

何かが起こる───そう直感したトッポは、クウラが何をする間も与えぬよう速攻のジャスティスフラッシュを発動。変身直前のクウラへ向けて無慈悲な弾丸を浴びせ続けた。

 

ドドドドドドドドドドド…

 

何十秒間撃ち続けただろう…さすがにトッポも弾丸の尻切れ感を覚え、攻撃の手を止める。が、ダメ押しとばかりに一発のエネルギー弾を投げ飛ばし、ジャスティスフラッシュによって抉られた床をさらに広範囲に焼き払った。

たちまち広がる爆風を眺め、トッポはその中に動く気配はないか注意深く見張る。

 

「熱心にどこを狙っている」

 

「!?」

 

だが、背後から声が聞こえ、後ろを振り返る。すると、そこには金属光沢を放つ真紅のボディを持つクウラが、床に手の指先を添えた四つん這いの状態で佇んでいた。

 

「…貴様」

 

ゴールデンと同様に第4形態(最終形態)をベースとしているが、その頭部は後ろへ長く伸びて冠のように広がり、その中央ではフリーザ一族特有の水晶体が黒く光っている。尻尾は以前よりも遥かに長く、先端は剣のように鋭利だ。両手を地に添えた獣のような姿勢を取り、後ろ脚もそれを補助するように踵を浮かせた趾行の形となっている。

そして何よりも目を引くのは、血のような真紅の身体。まるで金色の外殻が割れ、内部の血と肉が露わになったような、クウラの強さへの渇望が色と煌めきとなってそのまま表面化したような…。

 

「『クリムゾンクウラ』、とでも呼ぼうか」

 

そう言いながらクウラはすくっと立ち上がる。筋肉量はそのままに、骨格が全体的に長く伸び細身となったが立った時の背丈はより大きくなっていた。

トッポは格闘の構えを取りながら、足をわずかに後方へずり下げた。その所作を、クウラは見逃さなかった。

 

「後ずさったな?得体の分からぬオレの姿に慄いたな?くくっ、正しい判断だ。しかし、あれだけ正義を名乗っていた者が、それでいいのか?」

 

次の瞬間、トッポの真横を見えない何かが通り過ぎ去った。武舞台の床が鋭い何かによって切り裂かれ、後方の遠くにあった岩盤が縦真っ二つに両断された。

トッポが青ざめる暇もなく、クウラは一蹴りで跳躍し、トッポの腹へ拳を叩きこんだ。

 

「ぐおッ…!」

 

苦し気に唸るトッポだが、すぐにカウンターパンチを繰り出す。

 

ガシッ

 

しかしクウラもそれを受け止め、にやりと笑うとトッポの脳天へ尻尾を叩きつけた。

トッポの足が床を砕いてめり込み、身動きが取れなくなる。トッポはクウラの尻尾を掴み、強靭な握力で逃がすまいとしながら振り回そうと力を込める。

 

ズズ…

 

クウラの足が徐々にずり下がるが、軽く踏ん張るだけでそれ以上動かなくなる。クウラは余裕の表情を崩さぬまま尻尾を擡げると、逆にトッポが容易く持ち上げられてしまった。

 

ふわ…

 

そして大きく尻尾を振るうと、トッポの巨体が小石のように飛ばされ、遠くの岩盤に突っ込んでいった。

 

「うおおおおッ!!」

 

だが、気合の叫びを響かせながらすぐに瓦礫の中から姿を現し、クウラへ向かって跳ぶ。

しかし、既にそこには四つ足で走ってきたクウラがすでに待ち構えており、トッポは顔面を掴まれ、再び瓦礫の山の中へ叩きつけられ、押し込められた。

 

ゴシャア

 

ガラガラ…

 

岩が砕け、崩れ落ちる轟音が響き渡る。その中央で、トッポは立ったまま項垂れていた。頭から血を流し、フラついているが、それでも決して膝を突いたり、倒れることは無かった。

 

「フー…フー…」

 

荒い息を吐くトッポの元へ、ゆっくりとクウラが歩み寄る。

 

「どうした?もっと頑張れ」

 

ドスッ

 

そう言いながら、鳩尾へ一蹴り。

 

「…ッッ」

 

トッポは叫び声すら上げず、苦悶の表情を浮かべる。だが、そのクウラの足を掴み返し支えにしてまで絶対に倒れることは無かった。

 

「私…は…!絶対に、悪に跪くこと真似はしない…!!」

 

「ほう」

 

ズバアッ

 

だが、クウラは不可視の斬撃を飛ばし、トッポの胸、肩、腿へ一本ずつ命中させる。肉が断たれ、鮮血が飛び、トッポの身体が大きく後ろへ揺らぐ。

 

「死なぬ程度に切った…支えとなる筋をな。だが、しかしなんともまあ…」

 

ドスン…

 

ついにトッポの巨体が力を失い、仰向けに倒れこんだ。表情は苦痛に歪み、白目を剥いて玉のような汗をびっしりと浮かばせている。

しかし、それでもなお、トッポは足裏を床にくっつけて離さず、後頭部を床へ押し付け、決して背中を地につけていなかった。

 

「天晴れというべきだな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『トッポ、この線からこっちに来てはいけないよ』

 

 

父さん、どうして?あの星に行くなら、僕も連れて行って!

 

 

『お前がこの線を超えるには、もっともっと強くならないとな…』

 

 

父さぁん!

 

 

 

 

 

それは古い記憶。そして、トッポにとって、父親との最期の会話だった。




クリムゾンクウラは完全に本作オリジナルの姿です。ゴールデンクウラに、フリーザ第3形態の特徴を少し加えて全身を赤くした感じを想像してください。
フリーザがゴールデンの次にブラックになったならクウラもブラックにさせるかな、いや逆にしてクウラは白かな、だとしたらシルバーにすればメタルクウラっぽくも出来るな…とかも考えたのですが、結局クリムゾン(深紅)に落ち着きました。
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