もしもカカロットが幻想郷に落ちていたら   作:ねっぷう

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第569話 「ニュー・ソウル」

「ほら、そうだトッポ!敵へ向かって伸ばした腕は、いわば鉄砲だ。もう片腕をそれに沿わせて拳を打てば、必ず当たる」

 

私は、父から教えてもらったパンチの打ち方の説明をえらく気に入り…しばらくはその練習ばっかりしていたな…。

 

父は故郷ラバトーリ星でも有数の実力を持つ武術家であり戦士だった。名はジャグ。

…なぜ、今になって父のことなど思い出す…?

 

 

母の死んだあと、子供だった私を実家へ預けて、軍隊へ戦術指導をして稼いでいた父。少し猫背で太っていたが、週末に帰ってきた時には私にも武術を教えてくれた。

 

私を叱る時には、よくこんな言い方をした。

 

「トッポ、その扉からそちら側で反省しなさい。お祖母ちゃんに謝るまで、そのカーペットの端からこちらへ来るんじゃない」

 

嫌いではなかった。厳しいが、私に何かを教える時は楽しそうだった父が。

 

 

そして、あの年の夏。

 

「父さーん!どうしたの?週末はもっと気功について教えてくれるって約束だったでしょ?」

 

「すまんなトッポ、急な用事でな」

 

珍しく正装で、ラバトーリ星唯一の宇宙船発射場へ向かおうと家を出た父を追いかけて、両脇に草原が広がる道を走った。

 

「急な用事…?」

 

「ああ、軍隊の偉い人がな…ぜひ私の力を借りて暗黒惑星の調査をしたいというんだ」

 

「暗黒惑星…って、あの…?」

 

「そうだ。この宇宙で正式に認定されているどの生物とも違う怪物が住んでいたり、凶悪な犯罪者が根城にもしているあの暗黒惑星さ。父さんは、そんな暗黒惑星を調べて人々の平和を守ろうとする偉い人たちと一緒に少し戦ってくるだけさ」

 

「だったら、僕も行く!僕も連れて行って!」

 

そう言うと、父は真剣な顔になり、私を見つめた。そして、手に持っていた杖で道のど真ん中に線を引いた。

 

「トッポ、この『線』からこっちに来てはいけないよ」

 

「なんで…僕も強くなったよ!あのプライドトルーパーズの候補生にも選ばれて、戦えるんだよ…?」

 

「守り、戦うための軍隊と同じ場所に立ちたいのなら、お前も一流の強さを持った戦士じゃないとな。トッポ、お前がこの『線』を超えるためには、もっともっと成長して強くならんとな…」

 

私は、父が引いた線を踏み越えられず、戸惑った。

 

「はは、また週末には帰るよ…そしたら武術を教えてやろう」

 

 

父は、いつまでも帰ってこなかった…。

 

 

 

それから少し経って、成長した私は件の暗黒惑星に近付いた。どうしても、一目でいいから父が居なくなったその星を実際に見てみたかったのだ。

 

だが…

 

そこは

 

到底、人が生存できるはずもないほどの

 

未知の生命体と

 

既知の悪意が渦巻き煮凝ったような

 

忌避すべき光景が広がっていた。

 

 

何百…いや、何千年もの間、あの星が放置されていた理由に納得がいく。元々宇宙のよどみが溜まりやすい位置にあった惑星が、その過酷な環境の中でも生命を誕生させ、それらは理解の及ばぬ怪物へとおぞましい進化を遂げた。そこへ人々の悪意や敵意が集中し、いつしか犯罪者の逃げ場所としても利用されるようになり、その呪いは加速した。

 

父はそんなところで、死んだのだ。

 

 

私はその時から、もっと強くなるため修業を始めた。

 

何が何でも、「線」の向こう側へ行くのだ。

 

 

 

 

 

 

しかし…

 

 

「線」は…どこだろう…?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん?」

 

クウラの目の前で、トッポの身体が強く脈動した。ドクン、ドクンとここまで聞こえるほどに大きく心臓が鼓動している。

 

「まさか…それほどまでだったのか!?」

 

クウラは驚いたようにそう声を上げるも、徐々にその顔は喜びに歪んでゆく。

トッポの上半身が、ゆっくりと起き上がりつつある。そう、ゆっくりと…

 

「貴様の掲げる正義というものは…そこまで強靭で…!破壊的だったのか!!」

 

「いや…今の私に、もう正義は…いらん」

 

「…ほう?」

 

トッポは、クウラの問いにそう返した。完全に上体を起こし終え、未だに焦点の定まらない目ではあるが、真っすぐにクウラを見据えている。

 

「今、必要なのは…強さだ。我が儘に、全てをねじ伏せたる極まった力…!そして、あの『線』を踏み越えられるだけの…ぬうう…はああああああああ…!!」

 

「いいだろう、このオレに魅せてみろ!極まった力とやらを!貴様の我儘を、このオレに貫き通して見せろ!!」

 

クウラが見ている前で、トッポの全身からすべてを破壊するかのように刺々しく莫大なオーラが立ち昇る。あまりの気迫に周辺の空気が振動し、稲妻が走る。

歓喜の笑みを浮かべるクウラの目に映るトッポの姿は変貌を遂げ終えていた。全身にはうっすらと紫色の禍々しいオーラを纏い、全身の筋肉が量を増した上で引き締まり、よりマッシブな外見となっている。

 

 

 

「あの気は…まさか…!」

 

第7宇宙の観覧席にて、界王神が驚いている。隣にいるビルスもトッポを見て目を見張っている。

一方、そんな彼らを尻目に、第11宇宙の破壊神ベルモッドは不敵に笑っていた。

 

「そうだトッポ、魅せてやれ。お前の破壊神の力…我儘の極意を!」

 

 

 

さらに、その体の腹部には破壊神の紋様が浮かび上がっていた。

 

(コイツの気が感じられなくなったな…ブロリーと同じような神の気を纏ったという事か…?目測での力量の判断ができんな。まあ、試せばわかる)

 

次の瞬間、クウラは両目から破壊光線を発射した。

 

ドシュ シュパァ…

 

しかし、それはトッポの体に直撃した瞬間、まるで分解されるかのように…光線が光の粒子となって散っていったのだった。

 

「!?…今のは」

 

 

 

「あれは…『破壊』だ!」

 

ビルスが思わず立ち上がりながらそう言った。同じく観覧席にいたシロナやブロリーが驚いてその顔を見上げる。

『破壊』の力…その凄まじさと恐ろしさはシロナたちが一番よく知っている。シロナは一度それを喰らった上に、ビルスがあのモロと戦った時の様子を見ていたからだ。あのモロを幾度となく追い詰めた『破壊』…それは悉くを分解し文字通り消滅させる神の御業…。

 

「その通り」

 

その時、ベルモッドが口を開く。

 

「あれは破壊神だけの力。そして…あのトッポは我が宇宙の破壊神候補だ。今こそオレたちとの特訓の成果を見せる時だ…破壊神トッポよ!!」

 

 

 

トッポはゆっくりと右手をクウラへ向けて掲げ、そこに鈍く輝く紫色のエネルギーを溜め…

 

「『破壊』」

 

放った。全てを無に帰す破壊の力がクウラへ向かって迫りくる。

 

(あれが破壊神の使う万物を消滅させる力か…!面白い…少し力試しといくか)

 

クウラはそれが危険だと分かっていながら、あえて両手を前に突き出し、破壊を受け止める。ズゥン、と重たい衝撃が全身を突き抜けていき、手が焼けるように熱くなる。

 

「ぐう…!これが、破壊の力というものか…!」

 

クウラの目標はブロリーと再戦し、勝利すること。そのためにこのクリムゾンクウラを編み出したのだ。

だが、その後はどうする?もちろんクウラが目指す最終目標は「最強」、その過程において破壊神と激突することは想像に難くない。ならば、その時のための予行練習とでも言おうか…うわさに聞く破壊の力とやらを受けてみたくなった。

 

(しかし、これは…!)

 

あまりにも、手に余る!

 

ズギャアアアッ

 

破壊の気弾はその場で巨大化し、一気にクウラを呑み込まんとする。これは流石にまずい…そう思ったクウラは何とか間一髪、それを逸らして回避した。

破壊の気弾はそのままクウラの後方へ飛び抜けていき、空中で静かに消えていった。

しかし…

 

「クハハハ…やってくれたな」

 

クウラの左手が、親指だけを残してそれ以外の指がすべて消し飛ばされていた。種族の特性上、形態変化をすれば肉体のダメージは元に戻るが、一旦クリムゾンを解除しもう一度変身する隙は無いだろう。

損傷はとりあえず無視し、その場から一気に跳躍し消え失せる。

 

(ヤツは先刻…オレの破壊光線を無効化した。恐らくは破壊の力を全身に纏っているからだろうが…)

 

空中に浮かぶ岩の破片を足場にし、縦横無尽にトッポの周辺を駆けまわりながら、様々な方向から無数の気弾を投げつける。

 

シュパァ…

 

それはトッポの体に当たるも、やはり破壊され霧散するように消滅する。

 

(当たりだ)

 

クウラは自身の考えに確証を得る。

 

(ならば次に考えることは…何なら、ヤツに効くのか、だ)

 

次の瞬間、トッポの放つジャスティスフラッシュがクウラの周辺を撃ち抜き去っていった。何とか回避し、四つ足になって目にもとまらぬスピードで駆け回り続ける。

 

(気光線を毛ほどの細さにして穿とうとしたとて…無駄だろうな。ヤツに接触する限り…)

 

だが、そこまで考えたところで、クウラはあることを念頭に置いていなかったと気付く。

 

(…いや、ヤツは破壊神候補だと言っていたな…いくら破壊神の力を得たとて、その扱いは本物に比べはるかに劣る。そうでなければ、最初の破壊の一撃でオレが生きていられるはずがない。ま、殺したら失格になるが故に手加減していた可能性もあるが…それも力に不慣れな状態でそんな加減ができるか?という話だ)

 

クウラの顔を覆うマスクの下で、その口元が吊り上がる。

 

(つまるところ、ヤツは『未熟』!そこに、付け入る糸口がある!)

 

破壊神の力を得た…それは即ち、我儘の極意…そのトッポは紛うことなき強敵。ジレンに次ぐ脅威!しかし、それに対するクウラの胸中に満ちるのは、ワクワク。トッポという強敵をどうやって攻略しようか、どのように己を高めようか…

 

まるで新しいゲームを始めた子供のように、クウラの心は踊っていた。

 

 

 

 




トッポの破壊神モードって、たぶん我儘の極意と同じですよね。
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