第2宇宙
第3宇宙
第4宇宙
第6宇宙
カリフラ、ケール
第7宇宙
サザンカ、ハーツ、クウラ
第9宇宙
第10宇宙
第11宇宙
ジレン
ジレンの全身から放射される灼熱の闘気は炎のようにうねり、嵐となって吹き荒び、燃え広がる。大会開始直後に放った気の暴風とは比べ物にならない威力のそれは一瞬にして武舞台全体を包み込み、さらに武舞台が存在するこの無の界全域にも熱波が届くほどだった。
…力の大会特設武舞台は、第7宇宙でのみ産出され宇宙一硬いとされる物質「カッチン鋼」よりもさらに硬い「カチカッチン鋼」により建設されている。
その武舞台が、ジレンの放つ熱気によって融解している。赤熱し、マグマのようにドロドロに溶け、やがて蒸発して消えていく。
当然、その灼熱の劫火の嵐は観覧席まで届く。ウイスや、消滅を免れた天使たちが一斉に防御壁を作り、辛うじて熱波の直撃を防ぐ。だがその熱さは一部だけ防御壁を貫通し、観覧席の選手や破壊神はサウナにいるような感覚に陥っていた。
「みんな…!」
シロナも熱に目をつむりながら心配の声を漏らした。
融解し、徐々に消えていく武舞台の上で、ハーツは重力のキューブで自身とクウラを包み、バリアーにして熱波から身を守っていた。外の光景は炎とマグマに包まれ、状況が何も見えない。
そして、サザンカは…
確かに、ジレンが全身から気を放出した光景を目の当たりにし、脱落、あるいは死を予感した。だが、周りは驚くほど静かで、焚火のようなパチパチという子気味の良い音が聞こえるだけだ。
「…ケフラ!?」
恐る恐る目を開けたサザンカの目の前には、緑色のバリアーを展開し、サザンカを守るケフラの姿があった。周りが静かなのも、このケフラのバリアーのおかげだろう。
「よう。またお前と戦いたかったのに、結局できなくて悪かったな」
「いいんだ。あたしは生まれたときから恵まれてんだ。すげぇ兄貴もいたし、何でもできた。だからよ…何も持ってねぇ奴に、何かを持たせてやりたかった。あたしはこんなにいいもの持ってんだ、だからお前も持ってみろよ…ってな。
全部は…あたしのエゴなんだよ。可哀そうだから見てらんねぇ…だから手を差し伸べてきた。
でもお前は違った。お前はそんなあたしと真正面から対等にやり合って…あたしを助けた。だからお前とは…気軽に会える友達になりたかった。でもあたしは妹分との付き合い方しか知らねぇから…そうやって勧誘してた」
「…そんなこと考えてたのか」
「だからよ…お前とはまた…会いてぇな!」
そう言いながら笑みを見せた
「そいつァ…勘弁だな」
「はははは!お前は思ってることと考えてることが逆になるんだなァ!…ありがとな」
約1分30秒の後…吹き荒ぶ灼熱の嵐は収まった。
そこに残されていた光景を見て…観覧席の面々は驚愕した。
直径1キロメートルの特設武舞台が、そのほとんどを焼失させている。残されているのは、武舞台中央に聳えていた、時間経過を表す直径30メートルほどの太さの柱と、周囲を漂っている溶けかけたまま固まった数メートル~十数メートルしかない岩石の塊のみ。
そして、先ほどまで武舞台が存在していた場所を真っ逆さまに落ちてゆく光があった。
それがサザンカとケフラを閉じ込めたバリアーであることに気付いた者は多い。
ケフラが何をしようとしているのか気付いたシャンパは、思わず立ち上がってしまっていたが、そっと椅子に座り、冷静な顔で腕を組んだ。
「まあ…こんなもんだろ。アイツも、お前らもよく頑張ったな」
(あたしはもうダメだ…だから、コイツにはありったけを残してやる…!)
ケフラはバリアーを解き、右手に作った淡く輝く緑色の光弾をサザンカの胸に押し付けた。
「おい!お前…それじゃあ…!」
「サザンカ…絶対にお前の願いを…叶えてくれよ」
ケフラが最期に残した光弾には、彼女のサイヤパワーが凝縮されて込められている。それはゆっくりと上昇し、サザンカを落下させることなく押し上げていく。
一方、ほとんどパワーを託してしまったケフラは超サイヤ人すら維持できず、通常の姿へ戻ると同時に奈落の底まで墜落していった…。
「第6宇宙…ケフラもといカリフラ、ケール選手。脱落となります」
大神官がそう告げると、ポタラによる合体も解除されたカリフラとケールが観覧席へ送られた。
「ご苦労だったな」
シャンパは静かに労いの言葉をかける。
「いや…ここまでやったのにすまねぇ。皆にも…一緒に合体までしてもらったケールにも…」
カリフラも申し訳なさそうにそう呟くが、ケールはそっと笑う。
「ふふっ…姐さん、謝らないで。最期は、やっぱり…」
「よって第6宇宙…消滅となります」
「はーい!」
全王が手を握ると、第6宇宙の天使を除く面々の体がノイズがかかるように歪み始める。
そしてその時、シャンパは急に立ち上がるとビルスを呼んだ。
「よう、兄弟!!」
ビルスがそれに気付き、振り向くと、シャンパはビルスに向かって舌を出し、あっかんべをして見せた。
カリフラもまた、妹分のケールに言われた言葉を聞き…
「ああ、そうだな。あたしに付き合ってくれて、ありがとよケール!お前は最高の相棒だったぜ!」
「…はい!」
第6宇宙は消え去った。
「アイツ…最期まであんなことを…」
ビルスは呆れたように顔をしかめてそう言うも、どこか物寂しそうな表情を見せる。だがそれも一瞬で、すぐに顔つきは真剣に戻り、視線は武舞台があった場所へ釘付けになる。
ケフラの最期の力に押し上げられたサザンカは、溶解した武舞台が再凝固して残った足場の上に着地した。
「誰か…いないのか?」
力の大会に勝利したうえでカズラを助け出す。暴れに暴れまくって、クソッタレな力の大会を滅茶苦茶にしてやる。その意気込みも、目の前の焦土と引き始めた熱、薄い空気によって根底を揺すられる。
他に生き残った者はいないか?そう思い周囲をずっと見渡すも、最初に目に入ったのは…
「ジレン…!!」
中央の柱の上に立ってこちらを見下ろすジレンだった。
その姿は、上半身のスーツが破れ、先ほどよりもさらに一層強烈となったオーラを隠すことなく曝け出しており、顔つきも凶悪な怒貌を見せている。
先ほどまでが「フルパワー」だとしたら、今のジレンは「超フルパワー」とでも呼ぶべき、巨大な闘気そのものだった。
「…まだいたのか」
ジレンはゴミでも見るような目でサザンカを睨むと、一発の気弾を放つ。
しかし、またしてもジレンの気弾がどこからか飛んできた斬撃により両断されその場で爆発し、斬撃はジレンに迫る。
斬撃はジレンの胸に命中するも当たっただけで軽く弾かれ、効かなかった。
「ハァ…ハァ…!」
そこに現れたのはクウラ。同じく溶け残った武舞台の残骸の上まで這いあがってきた様子で、潰れた両腕を向けて斬撃の構えを取っていた。
「何とか…耐え切ったぞ…」
そして、別の残骸の上にはハーツも生き残っていた。
「サザンカ君があの状態だ…俺たちふたりでやるしかないな」
「言われなくとも」
ハーツとクウラは同時に飛び出し、一気にジレンとの距離を詰める。
「ぬあああッ!!」
だが、ジレンが腕を振るって衝撃波を飛ばすと、ふたりは容易く吹き飛ばされ、柱の上から落とされる。
「まずい!」
ハーツはクウラの背中に重力のキューブを取り付け、後方への引力を発生させると彼をサザンカがいる岩の上へ緊急退避させた。
「ぐうッ…」
「おい、大丈夫か!?」
「チッ…貴様に心配されるほどではない。しかし…それよりも貴様だ」
クウラは疲労困憊と言った様子だが、立ち上がりつつサザンカを横目で見る。その顔は、口元を覆っていたマスクが既に破壊され、その下の素顔が露わになっていた。
「あの第6宇宙のサイヤ人の力を受け取っていただろう。それがあれば、貴様はあの男すら超越するパワーを発揮できるやもしれんのだぞ」
クウラはそう言うが、サザンカはその言葉を聞いても何も言わなかった。
「…怖いのか。さっきのように、異常な反動で戦闘不能になることを恐れているのか」
図星を突かれるサザンカ。
「馬鹿者が。貴様は今まで何をやってきた?サイヤ人はコロコロと変身してこそ活きる種族だろう。…いいか、フリーザもそうだったのだろうが、オレは戦闘力が頭打ちになり伸び悩めばその上限を超えるために肉体の構造を作り替える」
サザンカはハッとしたように目を見開く。クウラはさらに続ける。
「サイヤ人の変身メカニズムは知らないが…オレがゴールデン、クリムゾンと変身を編み出したのはイメージが肝要だった。己のパワーを水だとすれば、増えすぎれば容れ物は壊れる。ならばそれを収められる別の容れ物をイメージする。それが変身というものだ。よもや貴様にできんはずはないだろう?」
それだけ言い残すと、クウラは最後の挑戦に臨んでゆく。
クウラとの問答を経て少し冷静になったサザンカは先ほどの事をよく思い出す。
(確かにあの時…アタシはジレンを超えていた。だが体がパワーをコントロールできずに反動を喰らっちまった。クウラの言う通り、だったらコントロールできる体になればいいってことだろ?)
サザンカがイメージするのは、やはり超サイヤ人4。赤い体毛に黒い髪、そして超サイヤ人の黄金のオーラ。黄金のオーラはつまりサイヤパワーだ。ケフラのをもらってさらに高まったそれを上手く使うには…超サイヤ人4そのものをサイヤパワーの黄金に合わせてみるのは…どうだ…?
「よっしゃ、決まったぜ」
しゃんと立ち上がったサザンカは静かに腰を落とし、気を溜め始める。
今までのような切迫した状況での突発的なパワーアップではなく、もっと脳内でよくイメージを練り、それを再現する。緻密に、血管や産毛の一本まで意識を巡らせる。
「はあッ!!」
ハーツはジレンに最高出力での超重力を浴びせる。柱が潰れた空き缶のようにグシャグシャと崩壊するほどの威力だが、ジレンは眼力を放つだけでそれを跳ね除け、解除する。そして目の前のハーツに一瞬で接近し、拳を振り上げる。
「く…!」
そして、次はジレンの体を極限まで軽くし、その一撃の威力を軽減しようとする。
だがこれも容易く破られ、ハーツは再び絶体絶命に陥る。
しかし、その腕をクウラが蹴り飛ばし、ジレンの拳は空ぶった。クウラは続けて絶え間ない斬撃をジレンの全身に浴びせ、その動きを少しでも止めようとする。
「すまないな…!」
「礼などはいらん」
斬撃はやはりジレンの体を少しも傷つけることは出来ず、逆に弾きながら一跨ぎで迫ると、クウラの腹を渾身のパワーで殴った。
「む!?」
その瞬間、クウラの体が縮んでいた。そう、クウラはクリムゾンを解除し、一気に通常の姿にまで戻ることで体の大きさを小さくし、ジレンの拳の直撃から逃れたのだ。
しかし、その拳は脇腹に掠ってしまい、鮮血が飛び散る。クウラは痛みを堪えながらもギラついた笑みを崩さず、口の中からクリムゾンの時に破損したマスクの欠片を勢い良くジレンの顔へ吐き掛けた。
それは、既に体力も蓄積したダメージにより限界を迎え、変身すら維持できなくなったクウラの最後の抵抗だった。
クウラはぐらりと後ろへ倒れ…そのまま柱から落下する。
(ここまでか)
クウラの最終目標は紛うことなき最強。その為にまずはブロリーを撃破する必要があり、ブロリーへの挑戦権のために力の大会で第7宇宙を優勝させるためにここまで戦った。他宇宙の強者と戦い自らを高めるという打算もあったが、それでもクウラは曲がりなりにも戦士として第7宇宙のために戦ったのだ。
(しかしクリムゾンの最終調整や破壊の力を使う者とも戦えた…これは次に活かせる)
その時、クウラは見た。
遠くの岩場から、一跳びでこちらに猛烈な勢いで向かってくる金色の光を。
「…クハハハハ!いいだろう、このオレを踏み越えていけ!!」
クウラが笑いながらそう言うと、金色に輝くその者は遠慮なくクウラの顔面に足を置き、それを蹴ってさらに跳躍する。
「第7宇宙、クウラさん脱落となります」
ついにクウラまでも脱落となり、アイコンが消え観覧席に送られる。
「クウラ…よくやってくれたな」
ビルスがそう言った。
「ああ、お前の力を借りれてよかった」
ブロリーもそう労うが、クウラはギロリとブロリーを睨む。
「オレとの約束、必ず守れよ」
「…ああ、必ずお前と決着がつくまで闘ってやる」
「それでいい」
「好き勝手にオレの心を読んだその身勝手さ…!どう贖わせてやろうか」
もはやハーツの重力操作全てを、単純な闘気の量と密度だけで跳ね除けるジレン。すべての能力による小細工を受け付けず、ハーツを柱の際まで追い詰める。
「だが…第7宇宙の戦士たちは見事だった。お前たちはオレの記憶の中で永遠に生きるがいい」
そして、右手に強力なエネルギーを充填し、それを今にも放とうと構える。
しかしその瞬間、ジレンは接近してくる圧倒的な気配を察知し、そちらに顔を向ける。
「う お お
大気を揺るがすような雄叫びを上げるサザンカの姿は、これまでとは変わっていた。
超サイヤ人4がベースとなっているようだが、髪色から体毛に至るまで全てが金色に染まり輝いている。
ジレンはサザンカがこちらへ到達する前にハーツを落とそうと気功波を放つが…
それは圧倒的な光にかき消されたかと思えば、その顔面へサザンカの拳がめり込んでいた。