第2宇宙
第3宇宙
第4宇宙
第6宇宙
第7宇宙
サザンカ、ハーツ
第9宇宙
第10宇宙
第11宇宙
ジレン
超サイヤ人4をベースとし、「大猿の力×超サイヤ人」を由来とした形態だったそれを、より超サイヤパワーを発揮できるように適応・昇華させた究極の姿。
紅い体毛、黒い髪は一転して全てが黄金に輝くようになり、目の色も超サイヤ人と同じく翡翠色に変化した。それは正に「超サイヤ人×超サイヤ人」を体現しており、爆発的なサイヤパワーの発動とコントロールを可能にしていた。
そして今、その全身全霊を乗せた拳が、ジレンの頬を捉え、喰らい付いていた。
「か…が…!!」
殴られ、吹っ飛ぶという事は衝撃が逃げているという事。だがサザンカの一撃は逃げを許さない。伝わる衝撃は全てジレンの顔面から体内中へ拡散し、まるで雷に打たれたかのようにその場で爆裂する。
そして、追撃の反転サマーソルトキックが脳天へ叩きこまれた。
真上からの衝撃…本来なら足が床へ沈む、貫通した衝撃が床に亀裂を生むところだが、その全てが起こらず、衝撃は逃げることなくジレンの体内を巡り続ける。
ジレンの漆黒の眼がすーっと白く濁り、強張っていたその全身から力が抜けていく。
そしてゆっくりと膝をつき…ジレンは座ったまま、苦悶の表情で気を失った。
「そんな…馬鹿な…!」
「こんなことが…起こっていいものなのか!?」
トッポ、ベルモッドも驚愕を隠せない。
「ジレンが…たった二発でノックアウト…!!?」
驚いているのは、シロナやブロリーを始めとする第7宇宙も同様だった。これまで誰が挑もうとも真正面からその力を突破できなかったが、更なる超サイヤ人へと覚醒したサザンカが二発の攻撃でジレンを気絶へ追い込んだこと。
「いいぞ…よくやったサザンカ!そのままジレンを落とすんだ!」
ビルスが観覧席から大声で呼びかける。ブロリーやカカロットも手に汗握る様子で、クウラやベジータも平静を装っているがそわそわしているのを隠しきれていない。グラノラやリルド、メルスはサザンカの実力を目の当たりにしただ愕然としている。
「でも…これで、いいのかな…」
だが、シロナだけは心の片隅に何かが引っ掛かり、それが痞えとなっていた。
その理由と言えば、先ほど第11宇宙の選手たちから聞こえてきた会話だった。
『ギッチン様が殺されたこと…まだ気にしてやがったのか…』
『…ジレンが唯一達成していないことなんだ。師匠からの卒業、をな』
『ジレンは最後までギッチン様に認めてもらえなかったんだ』
ジレンの師匠だという、ギッチンという男。彼は何故、あれほどの強さを持っていたジレンを認めなかったのだろう。仮に当時のジレンが今ほど強くなかったとしても、そのポテンシャルを見抜けなかったとは思えない。
では、もしかしたら…ギッチンという男はジレンに何かが欠けていると気付いていたのかもしれない。これまでのジレンの行動や思想、戦い方から見て、シロナが見ても足りないと思ったものは…
(信頼…?)
「ああ、言われなくてもこれで決着をつけてやるよ!!」
サザンカは言われるまでもなく、気を込め振り上げていた足にさらに渾身の力を込め、皆が固唾を飲んで見守る中、気絶しているジレンを蹴り飛ばした。
意識を手放しても尚完全には地に臥せないジレンの精神力は流石というべきだが、それでもこの最後の一撃により、ついに武舞台外の奈落へと落下してゆく。
「終わった…我が宇宙も、これでお終いだ」
ベルモッドも座ったまま俯き、絶望する。界王神や選手たちも、最強のジレンがここまで呆気なくやられたとあれば素直に負けを認めざるを得なかった。
ジレンが力なく落下していく姿が、永久のように長く感じられる。
「諦めるな!!ジレン!!」
しかしその時、トッポだけが大声を張り上げ、その雷のような声が響き渡った。
「その無様で情けない姿が、お前の最後か!?起きろ!起きて戦え!!ジレン!!!」
「…ハ…!!?」
ただ落下し、文字通り脱落を待つのみだったジレンが、ハッと目を覚ます。咄嗟に手を上げ、柱の壁に指を突き立てる。
ガガガガ、と柱の壁を削り、やがて僅かな溝を指先がキャッチし…ジレンの落下が止まった。
「く…!」
「お前はお前の誇りの為に今まで戦ってきたんだろう!お前は私が子供のころからずっと壊したがっていた暗黒惑星を何の苦も無く制圧していただろう!恨みなどはしない、ただあの時私が感じたお前の強さを…私は今でも信頼している!!」
さらにトッポの激励が聞こえた瞬間、ジレンは柱を掴むもう片方の手をゆっくり握りしめる。そしてその全身から、再び煌めく炎のようなオーラが立ち昇り始めた。
そして、ジレンは足の裏で自身の気を爆発させ、その爆風に乗じて真上へ飛び、さらに何もない空中を蹴ることでぐんぐん上昇してゆく。
気の爆発による推進力で移動する方法は先ほどのサザンカを真似た。そして、空中には目には見えない空気の「面」が存在し、それを捉え素早く踏むことで足場にすることができる。
「うお…!」
そうすることで、落下したものの再びサザンカの元へ舞い戻って見せたジレン。
「そうだ…それでいい。お前は、お前を信じる私たちを信じろ!そして何より、私たちが信じるお前を信じろ!」
「この大会が始まってから…第7宇宙は常にオレに挑み続けてきた。そしてその誰もが、オレに戦闘力で大きく劣るはずなのにほぼ互角に喰らい付いてきた。先刻までは、大会のルールに則るあまり手心を加えすぎているか、もしくはオレ自身が無意識のうちにオレの芸風を貫いているのかと思っていた。
…しかし、やっと気付いた。お前たち第7宇宙には確たる『信頼』があった。それがオレに並べた理由なのだと。そしてそれは、今のオレにも…ある!」
ジレンはそう言いながら構え、相変わらずの熱気のようなオーラを吹き付けながらサザンカに飛び掛かる。
サザンカもまた、せっかくの新しい変身によってコントロール可能になった力を試したいと思ったのか、好戦的な笑みを浮かべながらそれを迎え撃った。
両者は空を縦横無尽に移動しながらぶつかり合い、元々武舞台があった場所すら飛び越えて広大な無の界を目いっぱいに使いながら空を飛ぶ。
「なんで!?力の大会は飛行禁止だったはずだろ!」
その通り。この力の大会では武空術による飛行が禁止されており、そもそもができないように大神官によって武舞台に術を作用させていたはずだ。出来る事は、武空術以外での飛行…翼による飛行、脚力での跳躍、気功波や気弾の推進力による空中移動、そして空中に作った(見出した)足場を使っての移動。
しかし、ジレンとサザンカは明らかにそれら以外の、つまり武空術による飛行をしながら戦っていた。
「これは…想定外ですね…。武舞台が完全に破壊された影響、そして彼らの力の大きさが、私の掛けた術を打ち破ってしまいました」
大神官も驚きを隠せない様子でそう言った。
「ぬあああああッ!!」
「ウオオオオオ!!」
ジレンとサザンカが肩をぶつけ合い、反発して反対側へ吹っ飛ぶ…かと思いきや、ジレンだけはその地点から動かない。やはり、サザンカが与える一撃はその衝撃を逃がすことなく対象の体内に反芻させてくる。
「ぐあ…」
しかし、ジレンは全身が内側から砕かれるような激痛を浴びても、全く動きのキレを落とすことなく再びサザンカに殴りかかる。
(オレは…負けない!!オレの為にも…ヤツらの為にも…!!)
サザンカはジレンの拳を避け、腕の上を滑るように移動しその顎を殴る。
効く。
だが、ジレンもすぐさまカウンターパンチを繰り出し腹を殴るが、サザンカの腹筋に阻まれてしまう。
効かない。
ジレンの方が身長も体格も筋肉量も遥かに上回っているのに、サザンカの人並みの体格に秘められた筋密度と気力はジレンのパワーを通さない。
「負けて…たまるかァアアッ!!」
群炎の如き闘気。僅かな気を膨大なカロリーへ変換し、その熱量をまた気へと還元する。ジレンの莫大な気の量はそうやって補完しており、それを右腕に集め、一気に解き放つ。
「うお!?」
灼熱の波動の直撃を受けたサザンカは、やや油断していたのもあって勢い良く吹っ飛ばされる。
そして辛うじて柱の頂上に激突し、瓦礫に埋もれた状態でハーツの真横に滑りこんだ。
「サザンカ君、大丈夫か!?」
サザンカはもぞもぞと起き上がりながら石の欠片を払い落とし、口の端の血を拭った。
「ああ、油断しちまった。アイツ…吹っ切れてやがるぜ。ここへきて実力以上のパワーを出してやがる」
彼女が見上げる先で、ジレンは太陽かと見紛うほどの熱と輝きを放ち、力を溜めていた。
ハーツはそんなサザンカを横目で見ながら口を開く。
「サザンカ…君はどんな願いを叶えるつもりだ?」
サザンカは少し考えて言う。
「アタシは…自分の願いを叶える気満々だぜ。絶対に最後の一人になって…カズラを元に戻して日常に帰してやるんだってな」
「…そうか」
「でもよ!…この大会で、前に出会った別の宇宙の奴らと再開したり…ソイツらがなんでかアタシらのために戦ってくれるのを見てたらよ…自分だけの願いを叶えて、消えてった宇宙を放っとくのが…惜しくなっちまった」
悔しそうに、それでも諦めたように、絞り出した声は震えていた。
「クソッ…!アタシだってどうしてもカズラを取り戻してえよ!でも…そうまでして元に戻ったアイツは…アタシの事…どう思うかなァ。
笑えるだろ…もうそん時には、アタシもいないんだぜ。大会が終わったらアタシも消えちまうって話だからな。
だからよ…やっぱ、願いは…『この大会で消えた宇宙を全部元通りにしてくれ』…とかかな!」
それを聞いたハーツは静かに笑い、目尻に涙を浮かべる。
「ああ…それが聞けてよかった。いいかいサザンカ…俺の言う通りにしてくれ。絶対に君の願いは叶う!」
「どうしたサザンカ!!来ないのか!?来ないのなら…これでトドメだ!!」
ジレンは眩いオレンジ色のオーラを纏い、グングンと音を立てて上昇してゆく熱量を一気に解放し、一直線に飛ぶ。まさに彗星の如き勢いで、ジレンが突っ込んでくる。
「…よし、それなら任せるぜ!来いよ、ジレン!これで終わりにしてやらァ!!」
向かいくるジレンを見据え、サザンカが吠える。
いよいよ、決着なるか───!!
次回、力の大会決着です。