もしもカカロットが幻想郷に落ちていたら   作:ねっぷう

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第60話 「剽悍無比を謳う月の王」

カカロットの放った衝撃波は月夜見王を押し込み、床に激突させた。同時にとんでもない爆発が起こり、周囲にはクレーター状の破壊跡が形成された。

 

「…終わったか」

 

既にこの場には月夜見王の気配は完全に消えていた。クレーターの中を覗き込んでも、もはや誰もいない。

カカロットはスタッと床に降り立つ。

 

「カカロット!」

 

そこへボロボロの霊夢が駆け寄る。

 

「アンタ、てっきり死んだと思ってたわ」

 

「…ふっ、待たせちまったな」

 

「でもさっきの強さは一体?前とは段違いだったわ…それに尻尾だって生えてる」

 

「実はあの後隠岐奈に助けられてな…ついでに潜在能力とやらを解放して貰ったんだ」

 

カカロットはそう言いながら尻尾を動かして見せた。

そして、上空には月夜見王が倒されたと知った月の兵士や戦艦たちが、旗艦の残骸を残して続々と去っていく。向かう先は、故郷である月の都だ。

 

「さて…俺たちはどうする?」

 

「…そうね、今回は死んだ人が多すぎる。これじゃ幻想郷は成り立たなくなっちゃうわ」

 

「そういやぁ月が沈むのと同時にこの通路も永遠に閉じるんだったな。夜明けまではあと2時間もないぞ」

 

「とりあえず出てから色々考えましょう」

 

ピピッ

 

その時だった。カカロットが装着していたスカウターが音を鳴らした。何かと思って見てみると、赤く文字が表示されており、これは警戒信号のマークった。

 

「な…まさか…!」

 

「なーに、どうしたの?」

 

おそろおそる目線を後ろへ向けるカカロット。

 

「霊夢、伏せろ!!」

 

「え?」

 

そう叫んで霊夢に注意を促すが、すでに遅かった。クレーターの中央部分の奥から飛んできたビームのような二本のエネルギー波が霊夢の背中と首を一か所ずつ貫いた。

 

「かは…ッ…!」

 

カカロットが見ている前で、霊夢が血を吐き、血を流しながら倒れていく。その時、咄嗟に前に出て抱きとめる。

反応を確認するが、既に霊夢は目を開けたまま、言葉を発することは無かった。首の傷口からヒューと漏れていた息もすぐに止まった。

このやられ方は、蛇斑が美鈴を殺害した時と同じ現象だった。気で体を貫き、同時に膨大な量の気を体内に流して死に至らせる。

 

「霊夢…!」

 

既に息絶えた霊夢の顔をわなわなと見つめる。

その後ろで、ガラガラと何かを退かす音が聞こえた。振り返ってクレーターの中を覗き込むと、中心の深いところにある岩が持ち上がろうとしていた。

 

「テメェ…生きてやがったのか…」

 

「そうだ。億永劫の時を生きる月の王たるこの俺が、あの程度で死ぬと思ったか?」

 

岩の下から月夜見王が起き上がるようにして現れた。岩を退かし、まっすぐにカカロットを見る。

 

「また姿が変わってねぇか?」

 

そこでカカロットは気が付いた。月夜見王の姿が、また先ほどとは変わっていることに。

顎髭は無くなって短かった銀髪は長くなり、前よりもしわが減り若々しくなった顔は物静かに笑みを浮かべている。

 

「どうやら、俺はまだ若返りの途中にあったらしい。おそらくはドラゴンボールのパワー不足だろうか…徐々に若く変化しているようだった。お前の攻撃が当たる瞬間、若返りが再発したことで何とかそれを耐えきり、こうして俺は全盛期の最高パワーを取り戻したわけだな」

 

そう、七星球のドラゴンボールは月夜見王を一瞬で全盛期の状態にまで若返らせるにはエネルギー不足だった。だから、徐々にゆっくりと姿が変わるように若返らせることにしたのだ。そして今この瞬間、本人が言った通り最もパワーに満ち溢れていた状態にまで戻ってしまった。

 

「…霊夢、すまねぇ…ここで待っててくれ」

 

カカロットは霊夢をその場に寝かせて目を閉じさせると、月夜見王を睨んだ。月夜見王はクレーターの上まで登り、カカロットと向き合うとその上半身の服を破って脱ぎ捨てた。心なしか前よりも細身になったような気がするが、それでも引き締まった筋肉と体から溢れ出る黄金のオーラはより鋭く大きくなっているのが分かった。

 

「さぁ、やろうか」

 

「のぞむところだ…叩きのめしてやるぜ」

 

月夜見王とカカロットがそう言うと、同時にフッとその場から消えた。それを確認すると、カカロットも素早く消えた。この戦艦の残骸上のいたる場所で両者がぶつかり合う際の衝撃波とスパークが巻き起こる。

お互いのスピードは他者が全く目で追えないほど素早く、介入の余地もないほど熾烈なものであった。月夜見王はカカロットの拳を掴むとすぐに蹴り飛ばそうと足を構えた。が、カカロットは身をひるがえして月夜見王の上へ飛び、顔面へ向けて蹴りを放った。

それを腕で防ぎ、距離を取る。続いて接近するカカロットに対して反撃する構えをとるが、いつの間にか足に尻尾が巻き付いており、それを引っ張られてバランスを崩す。

 

「しまった…!」

 

空中で横になる月夜見王の真上から、腹をめがけて拳を振り下ろすカカロット。が月夜見王も驚異的な身体能力で無理やりその場から脱し、さらにカカロットの上へ移動する。

 

「な!」

 

カカロットの首元にラリアットを食らわし、そのまま床にたたきつけた。

 

「クソが…!」

 

慌ててジャンプし、空中で回転しながら後ろへ下がる。が、いつの間にかその背後へ接近していた月夜見王の胸にぶつかる。

ゆっくりと振り返ると、腕を組んだ月夜見王がこちらを見下ろして笑っていた。

 

「ははははは!さっきまでの威勢は何処へ行ったんだ?」

 

「…『超華光玉』!!」

 

カカロットは次の瞬間、密かに両腕に溜めていた七色の気を一気に放出した。超華光玉の気功波は巨大に膨れ上がると同時に月夜見王を飲み込み、包んだ。

とてつもない気がその場を通過し、辺りは煙に満たされる。

 

「…!?」

 

「よわいよわい。その程度効かぬわ」

 

月夜見王は腕を振って煙を吹き飛ばす。なんとカカロットの超華光玉を至近距離かつ真正面からまともに喰らっても、対してダメージを受けている様子は無かった。首に手を当て、骨をポキポキと鳴らす。

そして唖然としているカカロットを思いきり殴りつけた。

 

「誰が座っていいと言ったんだ?」

 

月夜見王はそう言いながら、前へ倒れ込むカカロットの髪の毛を掴んで持ち上げる。

 

「へへ…誰も言ってねぇだろ…頭はまだボケ腐ってるらしいな…」

 

「まったく口の減らない男だ」

 

片腕によるパンチの連打をカカロットへ浴びせる。一撃一撃が彼にダメージを与え、反撃のスキを与えない。

 

「そろそろ死ぬがいい」

 

そしてボロボロになったカカロットの腹へエネルギー弾を押し付け、炸裂させた。あたりを爆発が覆い、カカロットは衝撃で吹き飛び、戦艦の残骸の中に埋もれるようにしてめり込んでいった。

 

「確実にトドメを刺してやる」

 

月夜見王はその場所へゆっくりと歩いていき、鉄の床をほじくって中を探る。

 

「…何だと?」

 

しかし、その場所には死体すら見当たらなかったのである。もっとよく探ってみるも、カカロットの気を探ってみるも全く痕跡が無い。

 

「跡形もなく消えたか?いや、そんなはずはない…ヤツは確かに…。さては逃げたな…文字通り尻尾を巻いて」

 

月夜見王が顔を上げて辺りを見渡すと、それも頷けた。

 

「巫女の死体も消えている…持ち去ったか。まぁもはやヤツらに頓着する必要もなかろう、残る目的は八意とカグヤの回収だけだ」

 

 

 

 

 

「くっ…ヤツめ…戦ううちにどんどん若返ってパワーが増してきやがる…!」

 

一方、勝ち目がないと断定したカカロットは態勢を立てなおすべく、その場を後にしようとしていた。肩には動かない霊夢を担ぎ、手には石になった七星球を握っている。

今のカカロットは気を最小限に小さくしているので、月夜見王は彼の位置を探ることができないのだ。

 

ピピ…

 

「ち…アイツこっちに来てやがる。輝夜たちを追っているのか…だとしたら俺も危ねぇな」

 

カカロットは立ち止まり、辺りを見渡す。

すると、通路の側方に何か黒い穴が蠢いていることに気付いた。近づいてみると、そこから暗黒のオーラが漂っていた。

 

「これは…?」

 

中に手を入れるも、何も起こらない。もしやと思い顔を突っ込んでみると、その向こう側の光景にカカロットは驚いた。顔を引っ込めると、背負った霊夢と手にあるドラゴンボールを見つめ、少し考える。

 

「イチかバチか…やってみるか」

 

そしてその黒い穴に飛び込んだ。

穴を抜けると、そこに広がっていた光景が目に入る。手入れのされていないイバラが伸び放題、赤と黄色が混じり合った雲に囲まれた大理石の宮殿。細い階段がそれを取り囲うように歪に伸び、悪魔的な雰囲気を醸し出している。

そう、ここはかつて幻想郷の賢者の一人であるガーリックが暮らしていた、天界の果てにある魔族の宮殿だ。あれから誰も立ち入っておらず、何もしていないので荒れ放題である。

 

「ガーリックのやつ…あの通路とこの城を結ぶ抜け穴を作ってやがったのか…」

 

カカロットはここへ来て何をしようとしているのだろうか…そして、月夜見王に勝利することはできるのだろうか…!

 

 

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