もしもカカロットが幻想郷に落ちていたら   作:ねっぷう

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第61話 「希望と闘志を背負って」

「ガーリックのやつ…あの通路とこの城を結ぶ抜け穴を作ってやがったのか…」

 

さらに若返って全盛期のパワーを取り戻した月夜見王に苦戦を強いられたカカロットは、霊夢の死体と使えなくなった七星球を背負って、槐安通路にあった抜け道からかつてのガーリックの宮殿へと逃げ込んでいた。

 

「ここには恐らく、アレがまだ残っているはずだ…」

 

カカロットはそう言うと、崩れた塔の残骸の中に飛び込んだ。そしてその中から何かを見つけ出し、霊夢の横へ戻る。

見つけたものとは、二つ星が埋め込まれたドラゴンボール、二星球であった。床に置き、輝きを確かめるようにじっと見つめる。

 

(やはりあった…ガーリックの息子はドラゴンボールを欲しがってた…ってことは父からドラゴンボールの事を聞かされてはいなくて、父がボールを持ってることも知らなかった…。それに、どうやら所持者が死んだとしてもボールは健在なようだな)

 

そう、これはかつてのガーリックが所持していたドラゴンボールである。ドラゴンボールは所持者が死んでも創造主であるシュネックが生きている限り使えなくなることは無い。少々心配だったが、シュネックはまだ生きているようだ。

 

「まだ賭けることはある…このボールがどれだけ大きな願いを叶えられるかだ…イチかバチか頼んでみるか」

 

カカロットはボールに手をかざし、静かに息を吸い込む。

 

「ドラゴンボールの龍神よ、出てきて俺の願いを叶えてくれ!」

 

そう大きな声で叫ぶ。すると二星球は激しく点滅し、空に向けて光の柱を放った。光の柱は龍へと形を変え、地面に降り立った。

光がおさまると、そこにいたのは今まで見たどのドラゴンボールの龍神よりも大きな龍だった。純白の細長い体を持ち、その身体の横からは短く細長い腕がムカデのように無数に伸びている。シャカシャカと地面を這うように動き回り、角の生えた頭をカカロットへ向け、黒い隈取模様のある赤い目で見つめた。

 

「俺様は二星球に宿る二星龍!よくガーリックの試練を越え俺を呼び出したな、ではさっそく願いを言え!どんな願いも一つだけ叶えてやろうではないか!」

 

二星龍は声高にそう言った。豪快な喋り方の龍で、どこからか取り出したパイプを口にくわえて吹かしている。

 

「…では言うぞ、お前の持ち主のガーリックはとんでもなく強かった…だからお前の力にも期待して言うぞ」

 

「いいぞ、言ってみろ」

 

「『月の客に殺された連中を全員生き返らせてくれ』!!」

 

カカロットの願い、それは美鈴や霊夢を含めた幻想郷の住民の復活だった。これからカカロットがやろうとしていることをする前に、先に彼女らの復活を望んだ。

 

「…ほう」

 

しかし、二星龍はそう呟いたきり黙ったままだ。

 

「できないのか?」

 

「いいだろう、容易い事だ…俺様を他の龍神と一緒にするなよ、叶えられない願いなど無いに等しいわ!」

 

二星龍はそう言うと、赤い目からまばゆい閃光を放った。その光は天界から下界へと降り注ぎ、幻想郷を照らし出す。月の光すら打ち消すその願いの光は、死んだ者たちを蘇らせる。

 

 

 

「わ、私は一体…?」

 

崩壊しかけた人間の里の中、八雲藍が目を覚ました。

 

「ええ…確か、私たちは月の客と戦ってそのまま…」

 

同じく紫も困惑しながら立ち上がる。そのほか、人間の里で月の客と戦っていた妖怪たちも何故だか復活し、自分の手を見つめたり目をぱちくりさせたりしている。

 

 

「あれぇ?私は確か…」

 

妖怪の山で、伊吹萃香がそう声を上げた。

 

「おーい、萃香ー!!」

 

と、そこへ同じく蘇った勇儀が飛んでくる。

 

「勇儀、こりゃどういうことだ?」

 

「ああ…私は見たんだ、ドラゴンボールの光がな…」

 

 

「ぶはぁ!なんで私ったら土の中に?」

 

突然、土がボコッと膨れ上がったかと思うとその中から美鈴が飛び出した。困惑した様子で周囲を見渡し、ごっそりと敷地ごと消え去っている紅魔館があった場所を見て唖然とする。

 

「一体何が…?」

 

「美鈴!やっぱり生き返ったのね!」

 

と、そこへレミリア達が駆け寄ってくる。

 

「お嬢様…生き返ったとは…?」

 

「たぶんカカロットがね…ドラゴンボールで…」

 

 

そう、月の客から幻想郷を守る戦いでその命を散らした住民たちは、カカロットの願いによって全員が生き返った。と同時に、理解する。自分たちは未だ戦い続けるカカロットの願いによって生き返ったことを。

そして彼らは、一斉に空に浮かぶ大満月を見上げた。カカロットへの感謝の思いを胸に浮かべると同時に、どうか戦いの勝利を願って、希望を託すのだった。

夜明けと共に槐安通路が永久に閉じるまで、残り40分を切っていた。

 

 

 

 

 

「願いはかなえた。ではさらばだ、また会おう」

 

願いを叶え終わった二星龍の体は再び光り輝き、ドラゴンボールへと吸い込まれて消えていく。そしてボールは石へと変わり、大理石の床の上に転がった。

 

「これでいいか…」

 

カカロットは横で寝かせられた霊夢に目をやり、彼女もしっかり生き返ったかどうか確認する。外見上の傷はすべて消え、血の跡もなくなっていたが…。

 

「心臓も動いて、呼吸もしている…」

 

生きているのを確認すると、カカロットはおもむろに立ち上がり、灰色の道着とズボンを脱ぎ捨てた。下に着ていた黒いアンダーシャツとスパッツだけになり、その状態で背を向ける。

 

「俺が今からやろうとしてることはお前を巻き込みそうだからよ…そこで待ってろ。目覚めた時には…綺麗スッキリいつもと変わらない朝が待ってると思うぜ」

 

そう言い残すと、カカロットは飛び立った。槐安通路との出入り口に入り込み、再び月夜見王との再戦に臨むのだった。

 

 

 

「ええい、八意たちめ…すでに槐安通路を抜けていたか」

 

一方、永琳たちを追っていた月夜見王は遠くに槐安通路の出入り口が見え、既に永琳たちを乗せた聖輦船が通路を抜けていることに気付き、少し足を止めた。

 

「まぁよい、ついでだ…幻想郷を今の俺様の力で消し去ると同時に二人を回収してやる」

 

そう意気込むと、全身に黄金のオーラを纏わせて飛ぶスピードを速めた。

しかしその瞬間、目の前に出現した影に驚く。

 

「よう」

 

「貴様は…ふはは、また懲りずにやって来たか」

 

カカロットだった。月夜見王は腕を組み、そう言いながら笑った。カカロットは月夜見王と向き合い、にやりと笑って見せた。そして全身から紫色のオーラを放ち、格闘の構えをとる。

 

「ああ…懲りずにテメェを殺しに来た。続きをやろうぜ」

 

「殺す?ふははは面白い…やれるものならやってみろ」

 

月夜見王は素早く接近し、カカロットの頬を殴りつけた。後ろへ仰け反るカカロットだがすぐに態勢を戻すと同時に一発のエネルギー弾を放つ。

 

「効くか!」

 

大きく胸を張り、それを受ける月夜見王。そしてまったくそれが効いていない様子で駆け出し、カカロットの顔面に蹴りを喰らわせた。

吹っ飛ぶカカロットの足を掴み、そのまま何度も顔を蹴りつける。

 

「ぐは…あ…!!」

 

「オラオラどうした!さんざん大口叩いてそのザマか!?」

 

カカロットは自らの顔を血に染めながら抵抗の意志を込めて月夜見王の足に噛みついた。

 

「な…!」

 

驚いた月夜見王はがむしゃらに足を振り回すが、カカロットは全く力を緩めずに離れる素振りは無い。そして、カカロットは月夜見王の足に手刀を浴びせて攻撃を加えた。ズキリと響くわずかな痛みを感じ、反対の足に気を込め渾身の力でカカロットを蹴り飛ばす。

 

「くっ、ナメた真似しやがって!」

 

「『豹牙旋風脚』!!」

 

カカロットは空中で独楽のように体を高速回転させ、そのままの勢いを乗せて飛び蹴りを放った。するどい雷のような一撃は月夜見王に迫る。

しかし月夜見王はにやりと笑うと拳を振りかぶり、一発のパンチを放つ。

その一撃は回転していたカカロットの顔面にヒットし、回転を止める。カカロットは再び吹き飛ばされ、口から流れる血を腕で拭う。

 

「『気功突き』!!」

 

そのままカカロットは腕に気を集中させ、月夜見王へ飛びかかりながら強力な拳をぶつける。それを腕で軽く受け止める月夜見王だが、その瞬間に既に顔の横にまで迫っていたカカロットの足には気付けなかった。

 

「『快晴飛翔連脚』!!」

 

炎を纏うカカロットの蹴りが月夜見王に当たる。続いて連撃を繰り出すが、すぐに振り向いた月夜見王は大きな腕を伸ばした。

 

「小賢しいッ!」

 

そう言うと同時にカカロットの足を掴み、もう片方の腕で首根っこを掴んで持ち上げる。そしてそれをカカロットの胸が上になるように自身の背中の上に固定し、足と首を下へ無理やり下げる。

 

「ぐ、ぐあああああ…!!」

 

「へし折って殺してやる!」

 

カカロットの背骨が軋み、激痛が襲う。カカロットは悲鳴を上げて抵抗しようとするが、月夜見王の馬鹿力で繰り出されるバックブリーカーの前には成す術もなかった。

 

「どうだ、そろそろ死にそうか?死にそうになったら一思いに力を込めてやるぞ」

 

「へへへ…やはりボケてんな…最終的にへし折れて死ぬのはテメェだぜ」

 

「何だと?」

 

カカロットは月夜見王に技をかけられた状態で、通路のはるか向こうに浮かんで煌々と月光を放っている満月に顔を向け自身の目にしっかりとそれをおさめる。

 

 

 

 

 

「は…!ここは…私は確か、月夜見王にやられて…」

 

生き返った霊夢は目を覚まして起き上がり、辺りを見渡す。記憶をたどり、ここがかつてのガーリックの城があった場所だと思い出す。胸の傷は綺麗に消えており、自分のそばには石になった二つのドラゴンボールと、カカロットのものと思われる灰色の道着が捨てられていた。

 

「なんでカカロットの服が…まさか、アイツ!」

 

霊夢の勘が告げていた。

まさか、カカロットは…!

 

 

 

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