もしもカカロットが幻想郷に落ちていたら   作:ねっぷう

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第62話 「恐怖の大猿の猛反攻!!」

「なに…へし折れて死ぬのは俺の方だと?馬鹿が、その状態で何ができるというのだ!」

 

月夜見王はカカロットを締め付ける力を緩めない。カカロットはバックブリーカーを受けたまま、何とか顔を逸らして遠くに浮かんでいる満月を直視した。

隠岐奈から尻尾を再生してもらってから今まで、なるべく月を見ることを避けていた。何故ならば、サイヤ人たるカカロットは満月を見ると理性の無い大猿に変化してしまうためである。そして今日は大満月…もしも今までの戦闘中に大猿と化してしまったならば、理性を失って目の前の物に見境なく襲い掛かるという性質上、敵に背を向け隙をさらし、敵を取り逃す事にもなりかねなかった。だからカカロットは大猿にはなろうとしなかった。しかし今、自分と月夜見王の周囲には物体が何もない。ということはつまり、大猿になったら最後それが解除されるまで月夜見王に攻撃を加え続けるという事!

 

「…く…うおおおお…!!」

 

そしていよいよ、カカロットの大猿化が始まった。身体が心臓の鼓動に合わせて震え、目が真っ赤に充血していく。やがて激しく暴れまわり、雄叫びを上げた。

 

「な、なに!?」

 

そのまま服を破って肉体がどんどんと巨大化すると同時に、全身から黒い剛毛が生えていく。驚いた月夜見王は思わず腕を放し、後ろへ下がって振り返り、驚愕と恐怖に顔を歪めた。

 

「一体…何が起こっているというんだ…!」

 

獣のように伸びた口元には鋭い牙が生えそろい、耳がとがっていく。そしてさらに体を巨大化させ、やがてカカロットは黒い体毛を持つ巨大な大猿へと変貌を遂げたのである!

 

「グオオオオオオオオ!!!」

 

腕で胸を叩き、高らかに咆哮を上げる。

 

「な、なんだあの化け物は…」

 

大猿と化したカカロットは、牙を剥き出しながら月夜見王の方を見た。そして獣のような雄叫びをあげると、月夜見王めがけて飛びかかり、拳を振りかざした。

 

「うお…!」

 

何とかかわすが、同時に吹いた突風を腕で防ぐ。

 

「ふん、叫ぶだけの汚らわしいケダモノが!これでも喰らうがいい!!」

 

月夜見王は両腕にエネルギーを込め、一気に気功波を撃つ。それはまばゆい光を放ちながら、物凄い勢いでカカロットへ向かって行く。

それがぶつかると、月夜見王はやったと言わんばかりにニヤリと笑った。しかし、顔面に気功波を喰らったカカロットは、何ともないように月夜見王を睨み返した。

 

「なんだと!」

 

確かに以前のカカロットならば防ぎようのない一撃かも知れなかったが、今の大猿と化したカカロットには全く効かなかったどころかかえって怒りをかってしまっただけのようである。

 

「グルルルルル…!!」

 

うろたえる月夜見王に、カカロットの振るう腕の一撃が命中する。後ろへ吹っ飛んでいく月夜見王を追うように飛びかかり、さらに追撃のパンチを叩きこむ。

 

「ぐあああああ~~!!」

 

月夜見王は耐え難い痛みに襲われ、口から血を吐き出す。何とか空中で踏みとどまり、なおも襲い掛かろうとこちらへ向かってくるカカロットを見つめる。

 

「なんなんだ…あの小僧に一体何が起こった!?変身能力を隠していたのか…にしてもあれほどの変化とパワーアップはありえん…。…ハッ!?」

 

その隙にも既に目の前に迫り、拳を振り上げていたカカロットに気付き、慌てて横に飛ぶ。間一髪で一撃を躱すが、それを見ていたカカロットと目が合った。

血のような赤い目に見られた月夜見王は、自らの脳裏に何かを思い出した。

 

「ま、まさか…はるか昔に噂で聞いたことがあるぞ…!!満月の時のみ凶暴な大猿に変身し破壊の限りを尽くすという獰猛な狂戦士…!!まさか、さ…サイヤ人…!!だとしたら、か、勝てる訳がない!!」

 

さっと身をひるがえし、その場から退散しようとする月夜見王。

しかし、カカロットはそれを許さない。口に炎を溜め、特大の火柱としてそれを放射した。それに気付いた月夜見王だが、あまりの光景に身をすくませ、動くことができず、それを正面から喰らった。

 

「ぎゃああああああ…!!」

 

 

 

 

「そういえば、なんで忘れてたのかしら…今日は明らかな満月!それに、カカロットには尻尾が生えていた!」

 

霊夢はカカロットが大猿化して月夜見王と闘おうとしていることを悟った。確かに、霊夢も体験した事のあるあの大猿の圧倒的なパワーならば、月夜見王も倒せるかもしれない。しかし、理性がない状態ならば、カカロットは夜明けとともに永遠に閉じる槐安通路に取り残されてしまうかもしれない。

 

「…いま行くわ!」

 

霊夢はそう言うと、近くに脱ぎ捨てられていたカカロットの服を拾うと、槐安通路目指して飛び立った。

 

 

 

 

カカロットが炎を吐くのをやめると、そこにはボロボロになった月夜見王が何とか立ち尽くしていた。さすがのタフネスを有する月夜見王は、カカロットの火炎砲をギリギリで耐えきっていた。

 

「ぐっ…なんてバケモノだ…!」

 

「ウオオオオオオオオオ!!!」

 

両腕を上にかかげ、咆哮を上げる。

 

「ナリだけでかくなっても、俺様のスピードについてこられるか!!」

 

月夜見王は高速でカカロットに接近し、その後頭部を殴りつけた。カカロットは前へ頭を動かし、続いて月夜見王の蹴りが額にヒットする。

腕を振り上げ捕まえようとするが月夜見王はそれを躱し、両腕から放つ無数のエネルギー弾をカカロットへ浴びせた。

 

「くらえくらえくらえ!!」

 

エネルギー弾はカカロットに当たると爆発を起こし、炎と煙が彼を包み込む。なおも月夜見王は攻撃を続け、カカロットは両腕で顔を守るような行動をとる。

 

「力だけの野蛮なケモノが、この月夜見王を倒せると思うなよ!」

 

…しかし、雄叫びでそれを吹き飛ばすカカロット。驚く月夜見王へ向けて、口に溜めた炎を一気に吐き出した。それを避ける月夜見王だが、それを追いかけるように炎は迫っていく。

 

「く、しつこいヤツめ…!」

 

縦横無尽に飛んで避けていくが、それに気を取られてしまった月夜見王はその隙に背後へ迫っていたカカロット本体に気が付かなかった。

 

「ギャオオオオ!!」

 

拳による殴打をうけ、月夜見王は幻想郷側とは逆方向の遥か彼方へ吹っ飛ばされていく。

 

「…俺様が八意を追うには、あのバケモノをどうにかせんといけないということか…!」

 

月夜見王はカカロットが目の届かない範囲から様子を伺う事にした。

 

「カカロット!」

 

その時、突如現れた霊夢がカカロットの目の前に割って入った。両腕を広げて自分の存在をアピールする。

カカロットはきょとんとした顔で動きを止めた。

 

「私よ、霊夢!わかるでしょ?」

 

しかし、カカロットはそれが目障りとでも言うように手で霊夢を払いのける。だが霊夢は再びカカロットの目前に立ち、言葉を投げかける。

 

「アンタが今理性の無い大猿になってるってのはわかってる…でも、このままだったらアンタ幻想郷に帰れないのよ?」

 

「ウ…」

 

「聞いてる?」

 

その瞬間、カカロットの振りかざした腕が霊夢に命中した。強烈な打撃を受けた霊夢は口から血を流しながら吹っ飛んでいくが、空中で持ち直してもう一度接近する。

 

「いったいわね!!もしもーし!!」

 

「!?」

 

霊夢はカカロットの頭に張りつき、耳を引っ張って大声を発した。驚いたカカロットが自分の頭を叩くが、霊夢はうまくそれを避け、反対側の耳に向かって声を張り上げる。

 

「ここで月夜見王を倒しても、アンタが元に戻らなきゃ幻想郷に帰れないでしょ!!」

 

すると、カカロットは目を見開き、通路の向こう側に見える出口に目を向けた。

 

「ガ…?」

 

カカロットの視界には、幻想郷の全貌が映し出される。めちゃくちゃに破壊された跡がここからでも見て取れるが、それでもカカロットには以前と変わらない、美しい景色として目に映っていた。

そこから感じる、生き返った仲間たちの声と…そして、希望。皆がカカロットに希望を寄せ、幻想郷をすくってほしいと願っているのだ。

 

「くっくっく…何だかわからんが動きが止まっている…!今なら、心臓を貫けば倒せるかもしれん!」

 

それを見ていた月夜見王は両腕を真上にかかげた。そこに金色の気の塊が形成され、それは尖った槍のような形状に変わっていった。

 

「『月破槍(げっぱそう)』だ…ゆけい!!」

 

月夜見王は作り出した巨大な槍を、カカロットへ向けて投げ飛ばした。カカロットはこちらに背を向けており、その一撃は背後から心臓を一刺しで貫くかの如く撃ちだされた。

 

「…!あぶない!」

 

それに気付いた霊夢がカカロットにそう呼びかけるが、通路の外を見つめたまま動かない。

そして迫る月破槍が激突する寸前…カカロットは突然振り返り、腕を突き出してそれを受け止めた。大きな手で握りつぶすようにして月破槍を消し飛ばす。

 

「グルルルル…」

 

「な、なんだとッ!突然、何が起こったというのだ!」

 

困惑する月夜見王を見つめるカカロット。牙を剥き出して唸ってはいるが、少し前のような理性の無い凶暴性は失われているように見える。

 

「カカロット…まさか、理性が少し戻ってるの?」

 

カカロットは返事こそしないが、霊夢をチラリとみると、自分の頭を揺すって振り落とそうとする。霊夢にはまるでカカロットが「危ないから遠くへ行け」、と自分を心配しているように思えた。

しかし霊夢はカカロットの首の後ろの毛を掴むと、耳元で囁く。

 

「もう怖くて手が動かない。このままやっちゃって」

 

カカロットはそれを聞くと、月夜見王にしっかりと向き直り、腕を上げて格闘の構えをとった。




ちょっと書き溜めてる分を消化して早めに終わらせたいのでペースアップします。
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