もしも悟空がいなかった場合、最も野望を叶えられた可能性が高いのはピッコロ大魔王だろうという考察をもとにこのストーリーを考えました。
たぶん面白くなるはずです。
第66話 「違う世界からの漂着者」
「何だ貴様は…」
この世界の何処か。岩々が点々とそびえたつ荒れ地で、運命が立ち会おうとしていた。
そう言葉を発したのは、ひどく邪悪な支配者だった。大きく「魔」と書かれた服を着て、来訪者と向かい合う。
「お前がこの星の王か?だとしたら、答えてもらう。カカロットはどこだ?」
来訪者は不思議な格好をしていた。昆虫の外殻を思わせるような鎧を身にまとい、足元にまで届こうかというほどの長さの髪を風に揺らしている。
時は、500年も昔にさかのぼる…。
──────
エイジ261年、西暦にして1500年頃の物語。
太陽系内の宇宙空間を、不思議な白い物体が漂流していた。青い窓があり、まるで巻貝のように無数の突起が生えた見た目で、どうやらこれは宇宙船のようだった。
「本当に安全な場所につけるのかな、シュネック兄ちゃん…」
「だ、大丈夫さ。そのうちこの宇宙船がどこか安全な星に着陸して、そのあとにお父さんたちもやってくるさ」
二人の兄弟が宇宙船内の部屋で身を寄せ合っていた。
そして、二人はその異様な外見からして我々の住む地球の人間ではないことを思い知らされる。緑色の肌に体毛は一切なく、額からは一対のナメクジを思わせるような触角が伸びている。
服装はズボンに半袖のベストを着用しており、腕の筋肉や腹筋の部分がピンク色に浮き出ている。
この兄弟はナメック星と呼ばれる惑星出身である。そのナメック星が異常気象に見舞われ、危機を感じたナメック星人たちは優れた科学力で宇宙船を作り、カタッツと言う名のナメック星人の子供ふたりを乗せて安全な場所へたどり着くように飛び立たせた。兄の名をシュネックと言い、生まれて数十年の子供だ。一方、弟は産まれた直後に船に乗せられたため、名前はまだなかった。
「あ、見てよ弟…星に近づいてる!」
「本当だ、綺麗な星だね…」
二人は、窓の向こう側にいつの間にか接近していた青い惑星を眺めていた。そう、地球である。
「うわぁ!?」
その瞬間、船がガクンと揺れた。窓の外が真っ赤になり、操縦席の方からビービーという警戒音が響き渡る。
宇宙船が地球の大気圏に突入したことにより、断熱摩擦による強力な熱が襲っているのだ。
「兄ちゃん、あつい…!」
「大丈夫だ!」
しばらくすると、窓の外の真紅がなくなり、ふっと熱が消えたように感じた。外をのぞくと、そこには故郷のナメック星とは全く違った美しい景色が広がっていた。
半分には青い海が広がっている。ナメック星の海はやや緑がかった色をしているので、なかなかに新鮮な光景だ。そして向こう側には陸があり、海岸のそばを見た事もない生き物たちが歩き回っていた。
「すごい…」
「ああ…僕たちは今日からこの星で暮らすんだ。すぐに父さんや皆が来るけどね」
その時だった。突然宇宙船に何かが激突し、衝撃が響いた。
「な、なんだ!?」
窓の外側から、するどい大きな目がこちらを覗いた。なんと、空飛ぶ巨大な翼竜が宇宙船に体当たりをくらわし、餌とでも間違えたのかその足で船を掴んでいたのだった。
「兄ちゃん!」
弟は泣きそうな顔でシュネックにそう言った。
「待ってろ、僕がやっつけてくる!『ピッコロ』!」
宇宙船の出入り口の扉を開く呪文を言い、シュネックは外に飛び出す。
「やい、その足を離せ!」
「?」
シュネックは宇宙船の上に立ち、頭上の翼竜に向かってそう言った。翼竜はキョトンとした反応をするが、すぐにシュネックを敵と認識し、雄叫びを上げた。
「グオオオ──!」
「炎を!?」
翼竜が口から炎を吐こうとしたので、シュネックは慌てて飛び跳ね、その頭を蹴り飛ばした。翼竜は目玉を飛び出させて驚き、思わず足を離した。
「おっとっと!」
直後、宇宙船はバランスを崩し、フラフラと落下を始めた。
「うわあ~~~!!」
シュネックは振り落とされ、落下する宇宙船とは別の方角へ吹き飛ばされていく。
「兄ちゃん!!」
弟はそう呼ぶが、どんどんとシュネックは遠くへ行ってしまう。やがて宇宙船は地球の果てといわれる『ユンザビット高地』に落下し、吹き飛ばされたシュネックは後に幻想郷へと迷い込む。というのも、この落下の事故のショックにより弟が記憶障害を引き起こしてしまったためである。故郷のナメック星の住民もいなくなり、唯一自分を知っていた弟からも忘れられてしまった結果、シュネックは幻想郷入りに巻き込まれてしまったのである。
さて、シュネックが幻想郷に迷い込んで最高の賢者の地位にまで上り詰めるのはまた別のお話。
これからつづるのは、取り残された弟の物語である。
彼が目を覚ましたとき、そばには誰もいなかった。あるのは、彼が家だと勘違いしている宇宙船、そして親を名乗る者からの手紙。内容は「あとで行くから待っててくれ」というものだった。
しかし、いくら待っても、誰も来はしなかった。彼は、のちにここでの生活をつらかったと語る。そしてどれほど待っただろう、きっと30年ほどが経ったとき、とうとう諦めてユンザビット高地を発った。
「僕の親はきっともう来ない。だから、僕は一人でも生きるために、ここの外を知らなくちゃならない」
彼は国中、いや、地球中を100年以上もかけて巡り廻った。人間と知り合い、話し、共に何かをし、逆に酷い目にあったりもした。ナメック星人である彼は人間よりも長く生きるので、出会った分の別れも多く経験した。
そして彼はある時、「カリン」と呼ばれる聖地を訪れる。
「これは一体?」
「それはこの聖地カリンに伝わるカリン塔だ。その塔登り切った者は、未だにいない」
聖地カリンの森に住まう守り人はそう言った。色黒で、顔や胸にペイントを施した一族が居た。
彼はカリン塔を見上げ、意気込んだ。
「よし、私が登ろう」
それから、彼はカリン塔を上り始める。だが塔は果てしなく長く、一日かけて登っても終わりが見えない。何度か諦めて戻ろうかと思ったが、ここまで登ってしまっては降りようにも降りられないのがカリン塔の恐ろしいところだと彼は思った。
「あれは…頂上じゃないか?」
数日かけて登り、ようやく天空に点として見えた頂上。塔の先端に、楕円状の建物が乗せられていた。ひどく不安定で、風が吹いたら落ちたり揺れたりしてしまうのではないかと心配したが、不思議な力で安定は保たれていた。
「珍しいやつが来たもんじゃ」
カリン塔に住まう仙猫、カリンは手を舐めながらそう言った。
彼は、やがてカリンに稽古をつけられ、そしてこの塔のはるか上にもまだ天界と呼ばれる場所が有る事、その天界に地球を見守る「神様」が住んでいることを知らされた。
「私も、その神に会いたい!」
カリンから天界へ続く道となる如意棒を授かり、それを建物の屋根のてっぺんに刺し、ずっと伸ばす。それについていくと、巨大な逆ドーム状の建物が見えてきた。
上まで行くと、そこには白いタイルが敷き詰められており、大理石の建物が見受けられた。
「お前、何しにここに来た」
彼を出迎えたのは、不思議な風貌の人物だった。真っ黒な肌に、無感情な目と厚いくちびる、頭にターバンを巻いた姿を見て、彼はこの人物が神様だと思った。
「あなたは?もしかして神様ですか?」
「神様ちがう。私、ミスター・ポポ。神様の身の回りの世話してる付き人」
「ならば、神様に会わせてはくれないだろうか。私は親を知らない…だがこの地球を見守る神様ならば、私の親について何か知っているか聞きたいのです」
「残念だが、すぐ会わせられない。お前、ミスター・ポポと戦って勝つ。鈴、あるか?」
「はい、ここに」
彼は神様に会うため、来る日も来る日もミスター・ポポと闘い続けた。
ポポの実力を上回り、神に会う頃には、既に2年が経過していた。
やがて彼は神の仕事を見学し、手伝い、それに憧れた。だが神は、もうこの先自分の寿命は長くはないという。いくら神と言えど、完全ではないようだ。
だったら自分が神の後継者となり、この世界を見守っていきたいと思うようになり、今度は神様に認められるべく修行に身を打ちこませるのだった。
「ミスター・ポポよ。何故神は私を後継者に選んではくれないのだろうか」
精神を鍛えるため瞑想に励む最中、彼はポポにそう尋ねた。
「神様、お前の中にまだ悪い心あると思ってる。お前の奥底にあるもの、それ取り除かないと神になれない」
「私の奥底にあるもの…」
「ふっふっふ、当然だ。神がお前を選んでくれるはずがない」
彼の横で同じく瞑想に励んでいた者がそう口を叩いた。
「ガーリック、お前も同じ。心にある邪悪な精神消さないと、決して神になれない」
「ふん、完全なる善の心など存在しない。善でもあり、悪でもある…二つを持ち合わせ常に公平な決断を下すことのできる私こそ神に相応しい」
彼と同じく神に成るため修行中の者、ガーリックはそう言った。しかし、彼はそうは思わなかった。
(どちらの心も持ち合わせ、支配し、時に苦しい決断も下すことも確かに重要。しかし、私は無慈悲な断罪者になりたいのではなく、人間自らに自分たちの道を切り開いていってほしいのだ)
しかし、何度ガーリックと後継者の座を争って戦っても、いくら修行を積もうとも、神は彼を後継者に選んではくれなかった。
いくらかの時が経過し、やがてこのままでは神になれないと悟った彼は、浮かぶ天界の端に座禅を組んで座った。目を閉じ、全身の気を揺らめくオーラに変えて纏う。
「むううう…!!」
彼は神に言われた自分の奥底に眠る悪の心を体から追い出すべく、何日も何か月もその場から動かず気を練り続けた。ミスター・ポポやガーリック、そして神が様子を伺うなか、ただひたすらに。
(これは…)
彼、200歳。天界の端に座り始めてから1年が経過したある日、異変に気付く。精神統一の成果もあって、自身の纏うオーラに、どす黒い負の気が混ざっていた。これは他からはもちろん、自分自身ですらハッキリと感じ取れるほどに明確な悪の気だった。
今度は姿を現した悪の気をひたすらに高め、ゆっくりと体外へ放出していく。やがて彼の周囲には絞り出した悪の気のみが漂っていた。
(今だ!)
「ハァッ!!」
そのタイミングで、ひと思いに気を全身から放つ。すると体外に放出した澄んだ清浄な善の気に押されて悪の気が散っていった。その瞬間、彼の中の何かが変わった。
「ハァ…ハァ…!」
息を切らし、自分の手を見つめる。
「悪の心を…追い出す事が出来たのか…!」
苦しい修行の末、心の奥底に潜む悪の心を追い出すことに成功する。
しかし、彼はすぐに自分が犯してしまった過ちに気付くことになるのだった…。