もしもカカロットが幻想郷に落ちていたら   作:ねっぷう

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第7話 「強い奴揃いの命蓮寺」

翌日。

 

「自分の現状が理解できましたか?」

 

聖は庭でカカロットと対面しながらそう言った。後ろには全壊した命蓮寺が聳えており、鬱蒼とした雰囲気を醸し出している。

近くに有る残骸の上で、霊夢が腰かけながら二人の会話を聞いていた。

 

「目標があるのは良い事ですが、どうやら自分の能力すら把握していなかった様子。そして昨夜の戦いで分かりました…どうやら基礎は全てにおいて問題は無いようですが、技術面においてはやはりまだ発展途上。私は今日から貴方に体内の潜在エネルギーのコントロール方法について教えます」

 

「体内の潜在エネルギーのコントロール?」

 

「そう…元はどんな生命も秘めているエネルギー。それは訓練すれば自在に操ることができるようになります。その訓練方法により、霊力、魔力、妖力などへと分岐していきますが、今回は一般的に知られている『気』とします」

 

「『気』…」

 

「この気を扱えるようになれば、こんなこともできるのよ」

 

そう言うと、聖は手の平の上に青い光の弾を作って見せた。

 

「そんなの、私だってできるわよ。こんなにいっぱい」

 

それを見た霊夢は、自分の周囲に同じような光弾を何個も浮かばせた。そもそも、今まで弾幕勝負してきた相手のほとんどができてたんだけど…、と霊夢は思った。

 

「いいえ、気と弾幕は似ていて全く違うの。例えば、今貴女が出したそれはあくまで”美しさを競う弾幕ごっこ用”に生成されているモノであり、少し訓練すればだれでも作れます。しかし、この気は体内の潜在エネルギーを凝縮したモノ…殺傷能力や破壊力は比ではないのです」

 

聖はもう片手に黄色い光弾を作った。

 

「まず、弾幕用の光弾を」

 

それをふわりと投げ、遠くの地面に当てた。すると光弾は泡のように割れ、僅かにボンといった音と煙を出した。しかし、それだけであった。

 

「今度は気を」

 

先に作った気の光弾を同じように投げた。それが地面に当たった瞬間…光弾は爆発を起こしたではないか。本物の爆弾のような衝撃と音が響いた。

その跡には小さなクレーターが出来ており、普通の人間であれば木っ端みじんになっている威力だろう。

 

「な…」

 

それを見て驚く霊夢。試しに自分ももう一度弾幕を作り、同じように投げてみるが、結果は聖が見せた弾幕の威力と似たような物だった。

 

「霊夢、あなたも修行を積めばこれくらいできるようになりますよ。どうです、私のもとで修業を受けてみては?」

 

「え?」

 

「なっ…おい聖、俺はコイツを倒したいんだぞ!強くしてどうする!!」

 

「霊夢も同時に強くなれば、貴方もそれを追い越すために強くならなければならない…っていうのはいかが?」

 

「なるほど…そうか、そうすればさらに強くなれるって訳か。それでいいだろう」

 

カカロットは少し考えてからそれを承諾した。

 

「そうね…カカロットがまた大猿になったら今度こそ私じゃ勝てないわ。その時のためには私も強くなった方がいいってことね」

 

 

この日から、カカロットと霊夢の命蓮寺での本格的な修行が開始された。しかし、二人は一緒に戦ったり試合をしてはいけないというルールがあり、別々な場所での修行をしていることになる。

お互いにコイツには負けないという意識から熱心に励んでいるのだった。

 

時には他の弟子や住民と組手をすることもあった。

 

「さぁ、相手はお前か?」

 

「ああ。1人じゃできることも限られるだろうって聖から言われてね」

 

「お前には初日にスカウターを取られたな」

 

「まだ覚えてたの!あれはごめんて…お手柔らかにね」

 

「ふん、気が向いたらな!」

 

カカロットはすぐに飛び出し、村紗へと殴りかかる。が、村紗は蹴りを繰り出し、それを防いだ。お互いの腕と足にビリビリと衝撃が響いた。

 

「やるな」

 

「アンタこそ」

 

今度は村紗が飛び、空中で回転しながら連続して蹴りを浴びせた。

 

「やっ、たっ!!」

 

カカロットは蹴りを全て手ではじき返すと、向かってきていた村紗の拳を止めた。

 

「ぐぐぐ…!」

 

「おい、一輪とかいう奴も同じくらい強かったな?」

 

「ええ…でも、闘うのはやめといた方がいいわよ。後ろにでっかいのがついてるから」

 

「ほう…」

 

 

「って訳だ、俺とも勝負をしろ」

 

「たった今巫女の相手してきたところなんだけど…」

 

「お前じゃない。村紗から聞いたぜ、後ろにでっかいのが居るんだろ?出してみろよ」

 

「雲山の事?」

 

一輪がそう言うと、いつの間にかあたりには赤っぽい色をした煙が立ち込めていた。その煙は一輪の横へ集まっていき、ついに巨大な厳つい老人の顔を形作った。

 

「お前が雲山か!村紗が言ってた事によるとお前けっこう強いらしいな」

 

すると、雲山は一輪と目を合わせた。

 

「暴力はいけないんじゃなかったのかだって?あー…いつもは雲山一人で戦わせるのはダメなんだけど…特別にいいわよ。聖が困ってる人には手を差し伸べてやりなさいって言ってたし」

 

そう言われると、雲山はカカロットの前まで移動し、二つの巨大な拳を形成し、構えの姿勢を取った。

 

「そうこなくては」

 

カカロットも同じように構えると、雲山はその巨大な拳で殴りかかる。あまりのスピードに避けきることができなかったカカロットは、両腕と全身を使って一撃を受け止めた。

 

「ぐおお…」

 

正直、今まで手合わせしてきた誰よりも重い一撃だった。村紗よりも妹紅よりも、そして霊夢よりも強烈だ、とカカロットは思った。

 

「どうだ、少しは役に立ちそうか、ですって」

 

「ああ、文句はない!」

 

カカロットはそう言うと、走り出しながら蹴りかかる。雲山もパンチで応戦するが、それを避けるカカロット。そして前転しながらその下を潜り抜け、後ろから雲山の頭を踏み台にして飛び跳ねた。

 

「喰らえ!」

 

しかし、その瞬間は雲山は自身の体をネズミほどにまで小さくし、それを躱して見せた。雲山のもつ”形や大きさを自在に変える事が出来る程度の能力”を使ったのだ。

 

「なに…」

 

カカロットは慌てて腕を引っ込めると転がるようにして着地した。上を見ると、今度は山のように巨大化した雲山が手の平を叩きつけようとしていた。

 

「うおっ!」

 

カカロットもダメかと思った時、手の平は顔面スレスレのところで止まった。雲山はゆっくりと縮み、元の大きさに戻ると、真っすぐにカカロットを見つめる。

 

「これからも頑張ってほしい、だってさ」

 

「…本当にか?」

 

強面な雲山が、実は誠実でシャイな性格という事実は外部の者にはあまり知られていないだろう。

 

「ええ。マミゾウという居候にも話をして見るといい、って」

 

「マミゾウ…か」

 

 

「如何にも!ワシは二ッ岩マミゾウ。人呼んで佐渡の二ッ岩のマミゾウさんじゃ」

 

次にカカロットが向かった場所には、パイプを吹かしているマミゾウの姿があった。頭には狸の耳、そして背後からは身長よりも大きいであろう狸の尻尾が伸びている。

 

「お前タヌキか?タヌキはあんま美味くないんだよな」

 

「な、なんて事をいうのじゃこのガキはっ!」

 

「いいからさっさと始めようぜ」

 

「つくづく生意気なガキじゃのう…いいぞ、そんなに言うなら大妖怪と謳われたワシの力、見せてやるわい!」

 

マミゾウは不気味に眼鏡を光らせながらそう言うと、何処からか取り出した葉っぱを口に挟んだ。するとボワンとマミゾウが煙に包まれる。それがおさまると、そこにいたのはカカロットそっくりに変身したマミゾウだった!

 

「なに?俺に変身したのか!」

 

「いかにもじゃ」

 

しかし、その顔つきはどこか元のマミゾウに近く、巨大な狸の尻尾は残ったままだ。

 

「自分と戦ってみるというのも良い経験になるじゃろう。ま、実力はお前さんよりも上だがね」

 

「面白い、やってみようじゃないか!」

 

マミゾウとカカロットは同時に攻撃を繰り出すと、そのまま猛烈な打ち合いへと発展させた。しかし、途中でマミゾウがカカロットを押し切り、吹き飛ばした。

ガガガッ、と音を立てながら踏ん張り、砂利が大量に飛び散る。

 

「ぐぬぬ…俺より強いな!」

 

「当たり前じゃ。お前のような猿の若造がワシに勝てるとは思わんことじゃ」

 

確かに、マミゾウが言った通り、その実力は経験面においてもカカロットよりも上であった。しかし、この命蓮寺に来てから聖以外での一番強い使い手であるマミゾウとの戦いは、カカロットの精神を高揚させていた。

 

「じゃが…教えてやっても良いぞ」

 

「え?」

 

「『気』の使い方」

 

「本当か!」

 

「聖には内緒じゃぞ?ワシらはただ手合わせしてやり方を見つけさせろとしか言われてないからの」

 

 

 

その日の夜。

とりあえずと言った感じで作られた小屋のような家屋の中で、カカロットたちは夕食を囲んでいた。

 

「もぐもぐ…」

 

「それにしてもよく食うなぁ」

 

次々と大皿を積み上げていくカカロットを見ながら、一輪がそう呟いた。

 

「本当よね。馬鹿は頭空っぽっていうから、そっちに仕舞われてるのかしら?」

 

一緒に食事をとっていた霊夢が鼻で笑いながらそう言った。

 

「何だとキサマ!どういう意味だ!」

 

それに食い付くカカロット。

 

「要するにバカほどよく食べるって事よ。アンタが私に追いつくなんて絶対無理なんだから」

 

「うるせぇー!!」

 

カカロットはそう怒号を上げると、手に持っていた空いた茶碗を霊夢に向かって投げ飛ばした。霊夢は腕の一振りでそれをはじき返すと、二人は睨み合った。

 

「あ、やば」

 

が、村紗の一声で我に返る二人。霊夢が茶碗をはじき返した方向を見ると、次の大量の料理を持ってきた聖が片手で先ほどの茶碗を受け止めて掴んでいた。

 

「…喝!!」

 

次の瞬間には、鐘を叩いたような音が二度、響き渡った。

 

 

 

…さて、そんなこんなで、カカロットと霊夢が命蓮寺で修行を開始してから、一年が過ぎようとしていたころ…。その来客は突然に訪れる。

 

 

「こんにちわ、霊夢と命蓮寺の皆さん。今日はいいことを知らせに来てあげたわ」

 

そう、幻想郷は新たなる次元と向かおうとしていたのだ。

 

 

 

☆キャラクター戦闘力紹介☆

参考

一般成人男性 5

一般成人女性 4

子供(10歳) 2

ミスター・サタン 6.66

一般的に超人と呼ばれるレベル 7~8以上

大妖怪クラス 80以上

 

村紗水蜜 40

雲居一輪&雲山 40&70.8

 

寺の門下である村紗と一輪。その実力は互いに40と並んでいる。

雲山はそれを上回る70.8。”見越し”入道を数字に合わせて35.4…にしようかと思ったが、それではやや低い気がするので倍加して70.8とするのが丁度いい。

 

 

二ッ岩マミゾウ 105

 

佐渡の二ッ岩こそ、マミゾウさん。実力は現時点での本気の霊夢をわずかに上回る105。鈴奈庵での霊夢よりも一枚上手感を出している描写から見ても、それくらいが妥当だろう。

これより、大妖怪と呼称される妖怪の最低戦闘力レベルを80とする。80と言えば、原作でのブルー将軍(推定90)にはやや劣るが、第21回天下一武道会時のナム(推定76)にやや勝るレベル。それでも一般人から見ればどう頑張っても勝てない、まさに恐怖の対象となる存在である。




現れた謎の人物の正体、そしてその目的とは…!?

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