もしもカカロットが幻想郷に落ちていたら   作:ねっぷう

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第70話 「決死の覚悟の魔封波」

「フッフッフ…次から次へと死にぞこないが押し寄せてくるな」

 

ピッコロは自分の目の前に現れた武泰斗に対してそう言った。一方武泰斗は直立したまま構えようとしない。

亀と美鈴はその様子を見て疑問を抱いた。

 

(なんだ…?あの武泰斗さまの余裕は一体…!)

 

(まさか構えずとも簡単にピッコロを倒せるレベルにまで強くなって来たのでしょうか…)

 

(いやそれはない…そこまでの劇的な変化は感じられない…)

 

(だとしたら一体…?)

 

武泰斗は自分がわきに抱えるようにいて持っていた何か黒い物体を地面に置いた。ピッコロは怪訝そうな顔でそれを見た。

 

「電子ジャーだと?」

 

「武泰斗さま…一体何をお考えなのだろうか…?」

 

「ふん、そんなもので何をするつもりだ?気でも狂ったようだな…それともこのピッコロ様にギャグでも見せてくれるのか?」

 

「ギャグだと?それは今からのお前の姿だな」

 

「…何だと?」

 

武泰斗は置かれた電子ジャーの蓋を開け、「大魔王封じ」と書かれた御札を口にくわえた。そして両手を合わせ、目にもとまらない素早い動作で手を動かして印を描く。

武泰斗の体に緑色のオーラが漂い始め、真剣な面持ちで両手を突き出した。

 

「『魔封波』じゃっ!!」

 

次の瞬間、武泰斗の両手から竜巻のような衝撃波が放たれた。その衝撃波はピッコロに命中すると、突然その肉体を引っ張るようにして不思議な力を加えた。

 

「お…おおおお…!!」

 

ピッコロは意に反して浮かび上がる体に驚いた。全身の力が抜け、竜巻の中をぐるぐると回転しながら電子ジャーに向かって引き寄せられる。

 

「むううう…!」

 

腕で竜巻を細かに操作し、ピッコロを正確に電子ジャーの元まで誘導していく。

 

「何だ、これは…!?」

 

 

 

「悪くない」

 

幻想郷での修行中の事、武泰斗の魔封波を見た紅蓮は素直にそう述べた。武泰斗は息を切らし、目の前に置かれた壺を見ていた。

 

「その名も『魔封波』だ…!」

 

「…しかし、その技は貴様が使うには身に余り過ぎる。元は私のような博麗の巫女にしか使えない封印術を無理やり別の者が使えるように考え直したのは良いものの、これでは不完全…いや、完全にすることなど恐らく無理!チャンスは一度きり、使用すれば極度の集中力とエネルギーの放出により命を落としてしまう危険すらある…それでいいのか?」

 

武泰斗は壺の中から大きなナメクジのような生物を出してやると、地面にへたり込んだ。

 

「ああ…これでいいのです。これは私の戦いであるからの…」

 

 

 

 

(そうだ…もう私も十分武道家として己を限界まで極め、ここまで年老いた…!ならば次なる世代に、若い者たちにこれからの武道の世界を託してみようではないか…!そのために、老兵はここで去るのみ!)

 

「うおおおおお!!」

 

最期、武泰斗は一気にエネルギーを高め、ピッコロを引き寄せる竜巻の威力を高めた。

ピッコロは目を血走らせ大きな口を開け、叫び声を上げながら成す術もなく一瞬にして何度も回転し、電子ジャーに吸い寄せられる。

 

(何と言うことだ…このピッコロ大魔王さまが、こんなジジイ如きに…!武泰斗とかいったか…そして魔封波…!ありえん…)

 

そして、やがてヒュポンと電子ジャーの中に入り込んでしまう。ジャーはおそらく中から出ようとしているピッコロの力でガタガタと揺れるが、すかさず亀と美鈴がふたを閉めて押さえ込んだ。

武泰斗はお札をジャーの蓋と本体を留めるようにしてはりつけた。ジャーの揺れはおさまり、静かになる。

 

「や、やったのか…?」

 

「そうだ…ピッコロ大魔王はこの…電子ジャーの中に封印された…お札を剥がし、この蓋を開けない限り、再び復活することはない…」

 

そう言いながら武泰斗はドッと後ろへ倒れ込んだ。慌てて亀と美鈴が駆け寄り、その肩を腕で支えた。

かなり疲弊した様子の武泰斗。極度の集中力と気を使い果たしてしまった事により、その命はもう尽きようしていた。

 

「武泰斗さま…!」

 

「最後に…頼みがある…」

 

武泰斗は絞り出したような声でそう言い、ジャーを指差した。

 

「あれを…世界の果ての海底深くに沈めてほしい…二度と浮き上がって来れぬように…な。では…頼んだぞ…」

 

最後にそう言い残すと、世界最強の武道家と謳われた男、武泰斗は息を引き取った。

亀と美鈴は涙を流し、手を合わせた。世界の為に命をとして戦った師匠を前に、感謝と尊敬の念を抱くほかなかったのである。

 

「俺はピッコロが封印された電子ジャーを海に沈めにいった後、武泰斗さまの葬儀を依頼しにいく。美鈴ちゃんはどうする?」

 

「私は…修行の旅に出ます。いつか亀さんや武泰斗さまに負けないような武道家になってみせます」

 

美鈴は立ち上がりながら、空に頭を見せた太陽を見ながらそう言った。この後、彼女もまた修行の最中にレミリア・スカーレットと出会い、幻想郷で暮らすようになるのはまた別の話である。

亀はふっと息をつき、二人は別々の方向へと歩み去っていくのだった。

 

 

 

 

───────

 

 

 

 

ピッコロ大魔王が世界から消えてから、300年ほどの年月が経過していた。世界にはときたま悪人が出現したりするものの、ピッコロの時のような混乱には陥ることは一度もなかった。

 

「いけクリリン!優勝はお前のものじゃ!」

 

「なにおう!天津飯!さっさと勝ってしまえ!」

 

3年に一度開催される、天下一を決める世界最大の武道大会。その名も「天下一武道会」。非常に古い歴史を持ち、世界三大武道大会の一つに数えられる。

その大会の決勝戦では、お互いの師の応援のもと、二人の武道家が激しい戦いを繰り広げていた。

 

「やるな…クリリン」

 

「そっちこそ…」

 

1人は頭を丸めた青年で、するどい目つきと額にある三つ目が特徴だ。名を天津飯といい、鶴仙人というかつての鶴と呼ばれていた男の弟子である。鍛え上げた上半身を露わにし、紫色のズボンを穿いている。

もう1人は天津飯と同じく頭を丸めているが、背は小さく、ちんちくりんな見た目をしている。オレンジ色の道着を着ており、その背中には丸の中に「亀」と書かれた刺繍がほどこされていた。このクリリンこそ武泰斗の弟子であった亀仙人のそのまた弟子であり、ついに初めて武道会での決勝戦にまでたどり着いた。

二人とも息を切らし、戦いも佳境を迎えていた。

 

「頑張れクリリン~!」

 

ブルマは観客席からそう声援を送った。彼女はドラゴンボール集めの旅の最中、自らの身を守るため、出会った亀仙人に武道の修行を受け、その道に進んできた。惜しくも準決勝で天津飯に敗れたが、その戦いぶりはとても女性とは思えない程勇猛であったという。

 

((次の一撃で、おそらく勝負は決まる…))

 

二人は同時にそう思った。

そして次の瞬間、天津飯は空に飛びあがった。気の力で空を飛ぶ「舞空術」を使い、空から必殺の一撃をおみまいするつもりだ。

 

「だったらおれは別のやり方で空を飛んでやる!」

 

クリリンは一発の楕円型の平べったいエネルギー弾を作り出して浮かばせると、なんとその上に飛び乗った。そのエネルギー弾を巧みな技術で操作し、空に居る天津飯に追いついた。

 

「やはり気の扱い方は俺の一歩先を行っているようだな!しかし、ここで終わらせてやる!」

 

天津飯はそう宣言すると、突き出した指先に気を集中させる。

 

「『どどん波』!」

 

鶴仙流の必殺技であるどどん波を放った。ビームのような気功波は真っすぐにクリリンに向かい、クリリンは慌ててそれをかわした。

 

「かかったな!」

 

しかし、天津飯はどどん波により生まれた死角からクリリンの背後へ移動していた。彼の足に向かって蹴りを放ち、命中させる。

 

「ぐわっ!」

 

クリリンはバランスを崩し、乗っていたエネルギー弾から落下してしまう。飛行する術を持たないクリリンは、このまま落下すれば場外に落ちて負けてしまうのは確実。しかし、天津飯は未だ勝ちを確信してはいなかった。

 

(やはりまだ気功弾は消えていない…あれを再び操作し、もう一度その上に乗るだろう…という俺の考えを読み、おそらく奴はあれを操作しこの俺へぶつけようとしてくるだろう…読めているぞ!)

 

天津飯は考えられるクリリンの次の手の裏の裏までを予想し、それに備えた。

 

「くそっ…こうなったら!」

 

クリリンは空中で手を伸ばし、エネルギー弾を操作した。それを見た天津飯はやはりと言うように笑った。

だが、動き始めたと思ったエネルギー弾は天津飯ではなく、クリリンの方へ向かって行った。

 

「バカな!たとえ再びそれで自分をすくわせたとしても、まだ慣れないお前では高度な動きはできないハズ!」

 

エネルギー弾はクリリンの真下に移動すると、落下する彼を乗せるのではなく、逆に急上昇し激突してその勢いでクリリンをとてつもない威力で上へ打ち上げた。

 

「な、何だとっ!」

 

拳を向けるクリリン。予想外の行動に不意を取られた天津飯は、おもわず守りの手が遅れてしまう。

そして、クリリンの拳が天津飯の腹に鋭く突き刺さった。

 

「うぐ…が…!」

 

天津飯は気を失い、落下していく。クリリンはもう一度エネルギー弾の上に着地すると、武舞台上に激突した天津飯を見下ろした。

 

「天津飯選手、ダウンです!」

 

審判がカウントを取り始める。しかし、声援をかけられても天津飯は目を覚まさず、10カウントが経過した。

 

「…この勝負、クリリン選手の勝利!よって今回の天下一武道会優勝は、クリリンさんです!!」

 

「よっしゃああ──!!」

 

クリリンは舞台上に降り立ち、大声でそう喜んだ。

 

「くそっ…なぜ天津飯が負けるのだ…!」

 

弟子の敗北を目撃した鶴仙人はがっくりと膝をつく。

 

 

 

 

 

あれから、300年が経過している。そして再び、眠っていた悪夢が目覚め…世界を恐怖に陥れようとたくらんでいることを、いまだ彼らは知らなかった…。

 




もしもの世界線のキャラクターを想像するのは楽しいですね
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