もしもカカロットが幻想郷に落ちていたら   作:ねっぷう

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第71話 「再臨する恐怖の大魔王」

クリリンの優勝で幕を閉じた天下一武道会。夕焼けの空の下、観客や選手たちが次々と旅路についていく。

そんななか、亀仙人たちとクリリン、そしてブルマはすれ違った天津飯と何か話していた。

 

「お主、これからどうするつもりじゃ?」

 

亀仙人は天津飯にそう尋ねた。

 

「すみません、俺は考えを改めたとはいえいまだ鶴仙流の弟子です…これからは鶴仙人様を説得し、まっとうな武道の道を切り開けるように努力していきます」

 

「そうか…お主ならこれからもやってゆける。頑張るといい」

 

「そうよ、今度は負けないから!」

 

ブルマもそう言った。

 

「そう言えば鶴のやつはどこじゃ?姿が見えんが」

 

「はぁ、わかりません…まだ館内にいるのでしょうか」

 

ぎゃあああッ!!

 

その時だった。会場があった武道館の方から叫び声が聞こえた。

そこにいた全員は驚き、振り返った。

 

「な、なんじゃ?」

 

「鶴仙人様の声だ!」

 

天津飯たちは走り、館内に入り中の様子を探る。すると、先ほど試合で審判を務めていた金髪の男と、鶴仙人、そして天津飯の兄弟弟子であった餃子という者が倒れていた。

 

「う、うう…怪物が現れて変な球と選手の名簿を…」

 

試合中には審判を務めていた黒服で金髪の男は口から血を流し、割れてズレたサングラスを治しながら顔を上げた。彼の元へ亀仙人とブルマが駆け寄り、天津飯は鶴仙人と餃子の元へ急ぐ。

 

「鶴仙人様、何があったのですか!」

 

鶴仙人は腹を貫かれており、おびただしい量の血が周囲を赤く染めていた。

 

「…気を…つけろ…ピッコ…ロ…大魔…お…う」

 

そうかすれた声を振り絞りながら、近くを転がっていた紙を指差した。ピッコロ大魔王…その言葉を聞いた亀仙人はひどく驚いたように肩を上げ、神妙な顔で振り返った。

 

「なんじゃと鶴、それは本当か!」

 

ブルマは紙を拾い、そこに書かれた絵を見る。

 

「丸の中に『魔』の字が…」

 

「餃子も…すでに殺された…」

 

「餃子も…だと!」

 

天津飯は餃子の方を見る。餃子は大きな傷こそないものの、頭に大きな痛々しい打撃の跡があった。白目を向いており、もう気を感じない。天津飯は兄弟弟子の死に怒りを感じ、わなわなと震えた。

 

「亀仙人、これ…」

 

ブルマは拾った紙を亀仙人に渡す。それを受け取り、見た亀仙人は身の毛のよだつような恐怖を感じた。

 

「こりゃ確かに…ピッコロ大魔王じゃ…」

 

「やつが…復活…していた…とは…」

 

鶴仙人は最後にそう言うと、ガクリとうなだれた。もう反応が無く、心臓も止まっている。息絶えてしまったのだ。

天津飯はバッと立ち上がる。

 

「ピッコロ大魔王…聞いたことがある。その昔世界を恐怖に陥れたという大魔王だ…し、しかし…!」

 

「そうじゃ、ピッコロ大魔王は二度とこの世に姿を現すことはないハズ…」

 

亀仙人は若かりし頃の記憶をよみがえらせる。忘れる筈もない、ピッコロ大魔王の記憶だ。

 

「名前はかわいいがとてつもなく恐ろしい奴じゃった…その強さはあまりにも圧倒的で、生み出した化け物と共に瞬く間に平和な世を死の世界へと変えていった。若いころのわしや鶴仙人はおろか師匠であった武泰斗さまですらとても太刀打ちできる相手ではなかった…。しかし武泰斗さまはこの世を思い通りにさせてなるものかと、ある秘術を編み出した」

 

息絶えた鶴仙人の遺体に布をかけ、そっと触れる。

 

「『魔封波』という術じゃ。魔封波で大魔王を見事お札を貼った電子ジャーに封印したのじゃ、おのれの命と引き換えにな…。だからピッコロは絶対に蘇らんはずじゃ…電子ジャーはわしが海底深くに沈めてしまったからの」

 

「まさか誰かが海からその電子ジャーを…?」

 

 

 

 

それは昨夜のことであった。地球の果てにあるとされるユンザビット高地の切り立った崖になった地帯からほど近い海の中。

黒い大きな潜水艦が光を出しながら深海を探索していた。

 

「おとぎ話には、世界の果ての深海と書いてあった!世界の果てと言えばこのユンザビット高地、そしてそこを取り囲う深度の大きい海底!」

 

潜水艦の操縦席でそう声高らかに叫ぶのは、青い肌をした背の小さな男だった。隣には軍服を着た黒髪の女性と、忍者のような恰好をした刀を背負った犬のような人物が座っている。

 

「ピラフ様…やはりピッコロ大魔王はおとぎ話、本当は封印された電子ジャーなど存在しないのでは?」

 

「そもそも電子ジャーというのがマヌケっぽいですし…」

 

「うるさいうるさい!たとえそうだとしても、我々がドラゴンボールを集めるにはピッコロ大魔王の協力が不可欠なのだ!…いいか、大魔王とこのピラフ大王さまが手を組めばこの世の誰にも負けん!ヤツと協力してボールを集め、最後には始末する!完璧な計画だろう」

 

「うまくいけばいいのですが…」

 

ピラフ大王の部下のマイとシュウは不安そうに声を漏らした。

 

「あ、ピラフさまアレ!」

 

「む!?」

 

シュウがそう言いながら指差した先には、岩肌の中に一か所だけ不自然な箇所があった。そこは小さな亀裂がずっと続いているが、そこだけ亀裂がふさがっていて、やたらとフジツボが密集している。

 

「あの丸っこい形状、もしかしたらもしかするかもしれんぞ!」

 

ピラフは操縦席のわきにある小さなレバーを動かした。すると潜水艦の下部から細い機械の腕が飛び出し、その丸い物体に迫っていく。針のように細い指でそれを拾い上げ、腕ごと潜水艦内にしまい込む。

潜水艦はすぐさま海上に上がり、陸地まで移動した。すると潜水艦は変形し、折りたたまれていた翼のようなものが展開された。そしてジェットを噴射し、なんと空に飛びあがった。

 

「水陸空で使える特製のメカだ、飛行船にだってなれる」

 

「ピラフ様、例のものです!」

 

その時、マイが布にくるんだあの電子ジャーを持ってきた。ピラフはそこに近寄り、ジャーを取り出す。

表面に大量に付着したフジツボや砂の塊、藻などを取り除いていくと、やはり電子ジャーであった。内部に巻かれたコンセントが見える。

 

「では、いくぞ…」

 

ピラフはふたを開けるスイッチに指を置いた。マイとシュウが固唾を呑んで見守る。

 

「ピッコロ大魔王よ、目を覚ますのだ!」

 

カチッ

 

スイッチを押し、ピラフはジャーの蓋を開けた。開けても数秒間は何も起きなかったが、ピラフたちが中を覗き込んだ瞬間、黒い煙が一気に噴き出した。

 

「な、なんだっ!?」

 

黒い煙はだんだんと形をとり、色のあせた深緑色の肌をした謎の老人へと変化していく。老人は驚いたような顔で地面に降り立ち、自分の手を見つめながら握ったり開いたりしている。

それを見たピラフたちは思わずしりもちをついた。復活させたピッコロ大魔王は想像したよりも大きく、マイは目視でその身長が2メートル半はあると思った。

 

「お、お前がピッコロ大魔王か?」

 

そう言われると、ピッコロは手を降ろし、じろりとピラフたちを睨んだ。

 

「ヒッ!…ぴ、ピッコロ大魔王…ですか?」

 

「…」

 

しかし、ピッコロは黙ったままじっと見つめるばかりだ。

 

「ぴ、ピラフさま…しっかり…!」コソコソ

 

「お、オホン!お前を我々が長き眠りから目覚めさせてやったのだ!その礼として、お前には我が野望である世界征服を」

 

「貴様らがこのわしを蘇らせたのか?」

 

ピッコロの冷たい声が響いた。

 

「は、ハイ!そそそそうです!」

 

「そうか」

 

ピッコロはそう言うとこの飛行船のテラスにまで歩いていき、じっと景色を見渡した。しばらくするとガラス張りの部屋に戻ってきて、電子ジャーの中に腕を突っ込んだ。

 

「な、なにを…?」

 

すると、ジャーの中から白い大きな物体を引っ張り出した。それは髑髏のようなものが取り付けられた椅子のようで、トゲの生えた球を組み合わせたようなデザインだ。

 

「これはわしがこの中で退屈まぎれに作ったものだ」

 

「そ、そうでございますか…」

 

「ピラフさま、ピッコロ大魔王と協力を結んで世界を征服するんでしょう?」コソコソ

 

「なんで敬語なんですか、もっと強気に出ないとダメでしょっ!」コソコソ

 

「そ、そう言われても…」コソコソ

 

ピッコロはそう言っている間に椅子に座り、もたれかかった。

 

「わしは300年も封印されていた…その間にわしは老いて衰えてしまった…。だから、ひじょうに癪だが仕方がない、わしの手伝い用の魔族を生み出すか」

 

「生み出す…?」

 

ピッコロは椅子に手をかけると、やや前のめりになる。

 

「ポコペンポコペンダーレガツツイタ…ポコペンポコペンダーレガツツイタ…!」

 

そして呪文を口にしながら、顔をしかめる。その顔には玉のような汗が浮かび、苦しむように唸り始める。

すると、ピッコロの胸の上あたりがポッコリと膨らんだ。ピラフたちの見ている前でそのふくらみはだんだんと大きくなると同時にどんどんと首まで昇っていく。

 

「う…ううう…ぐむむ…!」

 

やがて喉にまでたどり着いた物体が口から顔を出し、ガボッと吐き出した。それは卵のようで、大きさもサッカーボールほどはある。

卵は床の上をゴロゴロと転がり、ピッコロはハァハァと息を切らした。

 

「め、目覚めよ…お前の名は”ピアノ”だ」

 

卵にひびが入ると、中から黄緑色のプテラノドンのような頭をした小柄な怪物が生まれた。怪物は最初から赤いローブと青いマントを着用しており、すぐにピッコロに跪いた。

 

「大魔王さま…なんなりとご命令を」

 

「うむ、ピアノよ。残念ながらお前にそこまでの魔力は無い…なぜならお前は弱ったわしの手伝い役だからな。そこの者どもとわしの役に立つがよい」

 

「はっ!」

 

「あ、あの~、私共まで?」

 

「何か不満か?」

 

「い、いえっ、そんな!」

 

すっかりピッコロ大魔王の威圧感に怖気づいたピラフ一味は彼らに逆らう事が出来なくなっていた。

ピッコロは体を落ち着けると、もう一度上体を前に乗り出した。

 

「では今度はとびきり強い魔族の戦士を生み出しておくか…」

 

「よいのですか?そんなに何度も生み出されては大魔王様の寿命が縮んでしまいますぞ」

 

「黙っていろ…う、ううう…!」

 

先ほどと同じようにピッコロの胸が膨らみ、だんだんとそれが喉にまで上がってくる。

 

「お、おえっ…」

 

それを見ていたピラフ一味は思わず口を押さえる。

そして生まれた戦士は、ピアノとは全く外見の違う悪魔のような魔族だった。翼を持ち、深い緑色の肌は鱗に覆われていた。

 

「タンバリン!お前の役目は世界中の武道家を殺してまわることだ」

 

「はっ」

 

タンバリンと名付けられた魔族はさっそく命令に従おうとする。

 

「あの、少しお待ちを」

 

しかし、それをピラフが止めた。

 

「なんだ?」

 

「それでしたら、簡単な方法が有ります。今では『天下一武道会』という大きな武道大会がありそこには世界中の強者が集うと言われています…そこに行って参加者の名簿か何かを手に入れればすぐに見つかるかと思います」

 

「そうか、良い事を聞いたな」

 

「で、でしょうっ!」

 

「ピラフ様は何を考えているんだろう…」コソコソ

 

「ばかものッ、あんな化け物に我々が敵うか!だからまず大魔王に世界を征服させて、そのおこぼれを我々がいただくのだ」コソコソ

 

「なるほど、良いアイディアですね!」コソコソ

 

「おい、貴様ら何をコソコソと話しておる」

 

「い、いえっ、何でも!」

 

「くっくっく、全ての武道家を殺してしまえばもうわしに逆らう者、そして魔封波を使う者はいなくなる!さぁゆけタンバリン!」

 




あと10話以内には終わらせます。終わったら次は幻想郷での物語が再開しますので、どうかそれまで、いやその後もぜひよろしくお願いします…
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