もしもカカロットが幻想郷に落ちていたら   作:ねっぷう

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第73話 「ピッコロ大魔王vsレッドリボン軍」

亀仙人、クリリン、ブルマ、天津飯の四人は、ピッコロたちよりも一足先にレッドリボン軍本拠地の目と鼻の先まで迫っていた。気を小さくおさえ、最小限気配を消しているが、いつ軍の厳重な警備に引っかかってしまうかわからない。

 

「よいな、ピッコロとレッドリボンを争わせ、勝った方のドラゴンボールを全て奪う…」

 

現在、亀仙人たちは二つのボールを、ピッコロは一つ、レッドリボン軍は四つのボールを所持している。

 

「分かってるわ…ヤムチャたちや孫悟飯さんを生き返らせるためだもの…」

 

ブルマは真剣な面持ちで遠くに見える本拠地の塔を見た。

 

─…3年以上前の事だった。

まだ普通の女子学生として暮らしていた16歳のブルマは、ある日自宅の蔵で不思議な二つ星の埋め込まれた不思議なボールを発見した。過去の文献や伝承などを片っ端から読み漁り、それが七つ集めるとどんな願いも一つだけ叶えてくれる「ドラゴンボール」と呼ばれている球だということを突き止める。

そしてドラゴンボールから特有の微弱な磁力を察知して位置を表示するドラゴンレーダーを作り、世界各地に散らばるドラゴンボールを集める旅に出る。

まず谷で五つ星の五星球を苦労して発見し、さらにレーダーを頼りに山奥へと車を走らせる。そこでブルマは一軒の家に辿りつき、四つ星の四星球を所持している孫悟飯という老人と出会う。

 

「じゃが、おなご一人ではこの先苦労するだろう。どうじゃ、わしもご一緒させてくれんか」

 

その後孫悟飯と共に旅をつづけ、悟飯の師匠であり武天老師とよばれる亀仙人、変身妖怪のウーロンや荒野の盗賊ヤムチャ、悟飯と同じく亀仙人の弟子であった牛魔王やその娘のチチ、そしてクリリンと出会う。

順調にドラゴンボール集めも進んでいき、ピラフ一味との争奪戦も何度かまじえながらついに七つのボールを集めることに成功する。

…がしかし、悲劇は訪れる。

 

「私は桃白白。レッドリボン軍にやとわれて、ドラゴンボールとやらを貰いに来た」

 

突如現れたレッドリボンと世界一の殺し屋桃白白との戦いが始まった。

が、レッドリボン軍に所属する達人や桃白白の強さはすさまじく…ヤムチャやウーロン、さらには孫悟飯と牛魔王らまでもが命を落としてしまう。挙句に、彼らが命を賭して守った二つを除く計五つのドラゴンボールを奪われ、ブルマは絶望に駆られてしまう。

だが自らも武術を習って強くなり、いずれはレッドリボン軍を壊滅させてドラゴンボールを奪い取りヤムチャや悟飯たちを生き返らせることを目標に生きることを決めた。

 

「いきましょう、ブルマさん」

 

クリリンがそう呟いた。

そして、彼らはレッドリボン軍へ勝負を仕掛けるのだった。

 

 

 

 

 

「つきました大魔王様、レッドリボン軍本拠地のすぐ近くです」

 

「うむ」

 

一方、ピッコロ大魔王の乗るピラフ一味の空中基地は、レッドリボン軍の本拠地がある領域スレスレの上空にまでたどり着いていた。丁度この位置は、亀仙人たちが潜伏しているエリアの丁度正反対の場所である。

ピッコロは立ち上がり、飛行船のバルコニーから下を見下ろす。

 

「お待ちください、今着陸いたしますので」

 

マイがそうアナウンスを流し、着陸の措置を取ろうとする。

 

「いや、いい」

 

「大魔王さま、タンバリンを呼び戻さなくていいので?」

 

「必要ない、わし一人で充分だ」

 

だがピッコロはそれを制し、ふわりと舞い上がった。纏っていた赤いマントとローブが風に揺れ、バサバサと音を立てる。そして、ピラフたちの見ている前で地面に向かって飛び降りた。

着地する寸前でゆっくりになり、静かに地面に降り立つ。ピッコロは腕を後ろへ組んだまま、基地へ向けて歩き出した。

 

「ほ、本当に大丈夫ですかね…大魔王さま…」

 

ピラフがそう心配そうに声を漏らした。それを聞いていたピアノは言った。

 

「安心しろ、大魔王様が軍隊如きにやられるわけがない」

 

 

しばらくピッコロが歩いていると、その目の前の地面に弾丸が飛んできてめり込んだ。その箇所から煙が上がり、それを見たピッコロは立ち止まった。

 

「止まれ!」

 

続いて、10人ほどの銃を構えたレッドリボン軍所属の軍人たちが現れピッコロを取り囲んだ。

 

「貴様、ここを我々レッドリボンの基地内と知っているのか?」

 

軍人たちはピッコロに質問を投げかける。

しかし、ピッコロは黙ったまま目線すら合わせず、ゆっくりと足を踏み出した。

 

「おい、聞いているのか!」

 

「うるさいぞ」

 

ピッコロはそう言うと兵士の一人の頭を軽く殴りつけた。その拳は兵士のヘルメットを貫通し、容易に頭部を潰してしまった。兵士はガクリと後ろへ倒れ、他の兵士が驚きながら銃を発砲した。

 

「う、うわあっ!!」

 

だが、目を見開いて念力を放つピッコロ。すると、ピッコロに向かう無数の弾丸が突然空中で制止し、パラパラと落ちた。

続いて素早く兵士たちの目の前に接近し、ピッコロは腕を大きく振るった。

 

「ギャッ…」

 

風のような衝撃波に晒された兵士たちは吹き飛んでいき、木や地面に激突して動かなくなった。

 

「そこまでよ」

 

その時だった。ピッコロの体がピキリと硬直し、ほとんど動かせなくなる。

と同時に、近くの林の中からもう一人の兵士が現れた。短くした金髪の上に帽子をかぶっていて、他の兵士よりも風格があり雰囲気もなかなか強そうに見える。

 

「貴様は…」

 

「私はブルー将軍。部下たちでアンタの力を見させてもらったわ」

 

「これは貴様の術か?」

 

ピッコロはそう尋ねた。

 

「その通り、それは私の超能力よ。絶対に動くことはできないはずだわ」

 

ブルー将軍は不気味に微笑みながら目を光らせ、両腕を前にかざして力を込める。すると、謎のオーラがピッコロの体を襲い、電撃のように徐々にダメージを与えていく。

 

「む…おお…!」

 

「楽にしてあげるわ!てぇいッ!」

 

それを見たブルー将軍は常人離れした跳躍力でもって飛び上がり、渾身の回し蹴りをピッコロ目がけて放った。

だが次の瞬間、ピッコロは急に両腕を上にあげた。

 

「なんてな」

 

「!?」

 

いとも簡単にブルー将軍の超能力を打ち破ったピッコロは、片腕でその蹴りを受け止め、もう片腕でブルー将軍の頭部を掴んだ。そして大きく振りかぶる。

 

「伝えて来るんだな…ピッコロ大魔王様のお出ましだと」

 

「ぴ、ピッコロ大魔王…」

 

ピッコロはブルー将軍を思いきり真っすぐに投げ飛ばした。ビュンとものすごい勢いで一直線に木々を突っ切りながら吹っ飛んでいく。

 

 

 

 

ドォン… パパパパパ…

 

レッドリボン軍本部の総帥室に爆弾と銃撃の音が聞こえてきた。

総帥であるが小柄なレッドは、椅子に座り葉巻を咥えながらいぶかしげな顔をした。横には色黒で大柄なブラック補佐という男が立っている。

 

「何か始まったようだな」

 

「は…何でも侵入者のようでして」

 

「だろうな、まだ死んでいなければ生け捕りにしてここまで連れて来い」

 

「はい。ブルー将軍の部隊が戦って居る筈ですので、彼にそう伝えます」

 

そう命令されたブラック補佐は通信機を手に取り、口を近づけた。しかし、スイッチを入れても通信機からはゴーゴーという風のような音が聞こえるだけだ。

 

「あれ?」

 

次の瞬間、突然部屋の壁が破壊された。衝撃で椅子が倒れ、レッド総帥は床に突っ伏した。

部屋に飛び込んできた瓦礫の中に、頭や口から血を流したブルー将軍がぴくぴく痙攣しながら埋もれていた。それを見たレッドとブラックは驚きながら立ち上がる。

 

「コイツはブルー将軍か…!一体何があったというんだ!」

 

「わ、わかりません…!」

 

「ぴ、ピッコロ…大魔王…」

 

「むむ…桃白白が待機していたはずだな!ただちに向かわせろ!」

 

 

 

 

 

「軍隊とやらは300年経っても変わらず無能共の集まりのようだな。このピッコロ様の体に傷一つつけることができんとは」

 

戦車の砲弾や戦闘機の機関銃を正面から浴びながらも、全身に薄いオーラをまとって全て無効化しながら進むピッコロ。

そして目や指先から小さなエネルギー弾を連射し、それら兵器を一撃で破壊していく。レッドリボン軍はピッコロの圧倒的な力の前に手も足も出ないでいた。

 

「な、なんなんだあのジジイは!?」

 

「わからん!何の武器を使っても全く無傷だ!」

 

「つまらんな、さっさとドラゴンボールを奪ってしまうか」

 

ピッコロはそう言いながら近くに迫っていた戦車を念力で破壊した。

だがその瞬間、背後に何か気配を感じて振り返った。

 

「誰だ貴様は?」

 

「世界一の殺し屋、桃白白だじょー」

 

茶目っ気のある台詞を言い放ったのは、長い黒髪を三つ編みにまとめた中年の男だった。ピンク色の中華風の道着を着ていて、そこには「殺」という文字がプリントされていた。

 

「桃白白?知らないな。だが殺し屋というぐらいだからと、まさかこのピッコロ大魔王様を殺しに来たとかいうつまらんギャグを言いに来たのではあるまいな」

 

「笑い死ぬようなギャグを見せたいのだが…その前に私のサインでも書いてやろうか?あのおとぎ話に登場するピッコロ大魔王の血濡れたサインと交換といこうじゃないか」

 

「わしのサインはお前のような馬鹿ものに授ける死だ」

 

「それは残念だ。かつて世界を恐怖に陥れたピッコロ大魔王も、しょせん私には敵わない…」

 

桃白白はサッと構える。

 

「…貴様は殺し屋である前に武道家であるらしいな。くっくっく…わしは武道家を見るとつい殺したくなってしまうのだ」

 

「やってみるがいい」

 

桃白白はそう言うと、突然人差し指を真っすぐ前に突き出した。ピッコロはそれに疑問に感じ、思わず動きが一瞬止まる。

その指先に気が集中していくのが分かる。

 

「くらえ、どどん波!!」

 

直後、指先からするどいエネルギー波が放たれた。

 

「!?」

 

どどん波は真っすぐに向かい、ピッコロの顎に直撃してしまう。ピッコロは頭を大きく後ろへ逸らし、そのまま背中から地面に倒れ込んだ。どどん波が着弾した箇所からは煙が上がっている。

 

「ふっふっふ…その程度で大魔王とは片腹痛い」

 

桃白白は不敵に笑いながらそう勝ち誇る。

 

「念のため、トドメを刺しておくか」

 

倒れたままのピッコロに近づいていく桃白白。

しかし、次の瞬間…ピッコロの手が彼の首筋を掴んだ。

 

「な、なにっ!?」

 

桃白白は一瞬疑問を抱いた。明らかにピッコロが倒れていた場所から、ヤツの腕が自分に届くはずはないのだ。だが焦点の戻った目でよく見ると、なんとピッコロの腕が伸縮していることに気が付いた。伸びた腕は彼の首に食い込み、ギリギリと締め上げる。

 

「か、カハッ…!」

 

「死ね」

 

伸ばして腕を縮ませて思い切り引き寄せ、するどい爪を伸ばした手を桃白白の胸に突き刺し、一気に貫いた。桃白白は目を見開いて叫び声をあげ、やがて息絶えた。

 

「口ほどにも無い奴だった。さぁ、ドラゴンボールを奪いに行くか」

 

 

 

 

 

そのころ、亀仙人たちサイドは…。

 

「おりゃあああ!」

 

レッドリボン軍の兵士たち相手に大立ち回りを見せていた。襲い来る銃弾や爆弾をかいくぐり、1人ずつ確実に倒しながら進んでいき、ついには本拠地の建物にまで迫っていた。

 

「だけど、何か様子がおかしくない?」

 

「ああ…まるで注意が俺たちだけでなく他にも向いているようだ」

 

「ということは…もうすでにピッコロの奴もドラゴンボールを嗅ぎ付けてここにいるということかの?」

 

 

 

 

 

「まさか桃白白がやられるとは!それにピッコロには仲間がいたのか!?」

 

レッド総帥はモニターを通じて戦いの様子を見ていた。一つのモニターには兵士たちの攻撃を跳ね除けながら悠々と歩いてくるピッコロ大魔王、そして別の場所ではどんどんとこの司令塔へ近づいてくる謎の集団の姿が。

 

「この戦況はよくありませんな…もうすでに主力の将軍たちも倒されているようです」

 

「くっ…ドラゴンボールは誰にも渡さんぞ!」

 

レッドは机の上にある4つのドラゴンボールをかき集める。

 

「総帥、ここはもう危険です…ここは奴らにドラゴンボールを明け渡してしまいましょう…そして我々だけでも生き残り、また来るであろうチャンスを待つのです」

 

「ふざけるなっ!みすみすドラゴンボールを渡してなるものか!」

 

「命には代えられません」

 

ブラック補佐の冷静な言葉を前に、レッドは言葉を詰まらせる。

 

「ちくしょう…あと一息だったのに…あとちょっとで私の背が伸びたのに…!」

 

わなわなと震えながら、レッドはそうぼそりと呟いた。それを聞いていたブラックは思わず困惑の表情を浮かべる。

 

「どういうことですか?まさか総帥がドラゴンボールを集めていたのは、身長を…」

 

「そうだ!!文句あるか!」

 

「な、なんですと!?世界を支配下におさめるのではないのですか!?」

 

「そんなことは時間をかければできることだ!そのまえに支配者はカッコよくなければならない…チビではギャルにもモテん…!」

 

「そんなことのために我々は苦労して…」

 

「うすらでかい貴様にチビの気持ちが分かるか!学生時代からいつもチビだと馬鹿にされ続けてきた…」

 

「お前のそんなくだらないコンプレックスのために何人の兵が犠牲になったのかわかっているのか…!そして今も…!」

 

明らかな怒りを込めてブラックが言い放つ。彼がここまでレッドリボン軍に従事してきたのは、いずれこの軍隊が世界を支配できると思っていたからだ。

 

「きさま総帥に向かってその口の利き方は何だ!大体死ぬような弱い奴はこのレッドリボン軍に必要ない!!」

 

その瞬間、ブラックの頭の中で何かが切れたようが気がした。脳裏に浮かぶのは、今まで死んでいった戦友の顔や、殺してきた者たちの顔。それも、世界征服の為なので仕方がないと思っていた。

だがそれが無駄骨だったと悟ったブラックは、気が付けば懐から拳銃を取り出し、レッド総帥の眉間を撃ち抜いていた。

 

「お前に総帥の刺客は無い…レッドリボン軍はこの俺が新しく立て直す…」

 

ガシャン…

 

その時、窓ガラスが割れた。

 

「ドラゴンボールはここにあるようだな…全て渡してもらおうか」

 

ピッコロ大魔王が身を乗り出し、邪悪な笑みを浮かべてこちらを見据えていた。

 

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