「こんにちわ。霊夢と命蓮寺のみなさん。今日はいいことを知らせに来てあげたわ…って、なんで寺が壊れてるのかしら!?」
いつものように食卓を囲んでいたカカロットや聖たちの前に、謎の空間がパックリと口を開けた。一面の黒い世界にギョロ目がいくつも浮かんでいる。
そこから上半身だけ姿を現した綺麗な女性が、何やら凄みのある雰囲気を出しながらそう言ったが…窓の外から見えた破壊された命蓮寺を見て間抜けな驚き声を上げた。
「あー…直そうにも時間がかかりそうだから放っておいてあるんだ」
村紗が箸でご飯を口に運びながらそう言った。そう、一年前に大猿に変身したカカロットに寺…つまり村紗の聖輦船を破壊されてから、一度も建て直していないのだ。おかげでグチャグチャ寺とか呼ばれるようになってしまったが…。
一時的な居住場として建てた小屋が思いのほか住民たちが気に入ってしまい、こちらをどんどん改装してもはや立派な一軒家と化していたのだった。
「…コホン、知らなかったわ、ずっと寝てたもので」
「紫、今さら何の用?」
「…この女どっかで見たような…」
霊夢とカカロットが口々にそう言った。
「ええ、実は幻想郷中を回って伝えているのだけど…。そろそろ、面白い催しが必要かと思ってね」
「あー!思い出した!」
カカロットが大声を出す。
「お前は俺が地上に出た時、俺を岩の下敷きにしたヤツだな!?」
「ええそうよ。改めて初めまして、私は八雲紫と申す者。前は御免なさいね、アナタがいきなり暴れるものだからつい…」
八雲紫は自分専用の”スキマ”と呼ばれる空間から体を出し、床に上に座った。
「噂で聞いたわ、霊夢が命蓮寺で修行を受けてるなんてね。宗教も違うのによくやるわ」
「うるさいわね、余計なお世話よ」
「それでね、私は考えたのよ。そろそろ自分の実力を試してみたい頃でしょ?だから…武道会を開こうと思い立ったの」
「武道会!?」
その場の全員が聞きなれない言葉を聞いて驚く。
「その名も『幻想郷一武道会』!!この幻想郷のありとあらゆる強者が集う大会!めでたく幻想郷一に輝いた暁には…ステキな優勝景品が…」
「優勝景品…」
霊夢が息を呑んだ。
「ずばり、その景品は『
「な、何でも願いが叶うだってー!?」
一同がその幻龍玉なる代物の話を聞いて、口々に喋った。
「で、その武道会はいつなんだ?」
「30日後よ。でもね、誰でも参加できるって訳じゃないわ。参加希望者が多ければ、当日に予選試合をするつもりでいるわ。…それじゃあ、一通り説明し終わったかしら?参加希望者は名乗り出て頂戴な」
「武道会かー…私はパース、どんな願いでもってのは気になるけど、俗っぽいのはちょっと」
「私もー。どうせ鬼とかが参加してくるんでしょ、勝てる気がしないわ」
村紗と一輪がそう言った。マミゾウや寅丸星も、どちらかと言えば観戦の方に興味が向いているそうだ。
と、その時、意外な人物が名乗りを上げた。
「私は出ますよ」
「聖!?」
そう、聖が手を上げていた。周りの者は意外だ…というように彼女を見つめている。
「願いを叶える幻龍玉…それがあれば寺を再建することもできるのですね?」
「もちろん」
「でしたら、やむを得ないでしょう」
「確かに!聖が優勝すれば私の船も治せるかも…」
「俺ももちろん出るぞ!そこでなら、この霊夢と思い切り戦ってもいいんだな!?」
「私も出ようかしら」
カカロットと霊夢はそう言った。
「参加者は決まったようね。聖白蓮、博麗霊夢…そしてカカロット。この知らせはもう幻想郷中に届いているわ。大会は30日後…それまで準備は怠らないように」
そう言うと、紫は再び開いたスキマの中へと消えていった。
「何でも願いが叶うドラゴンボールかー」
霊夢はそう呟きながら、もし優勝したら何を願うのかを考えていた。一生困らないだけの金…一生困らないだけの食べ物…とてもじゃないが手に入らないような上等な酒…。
「との事です。明日からは一層、修練に励んでくださいね二人とも」
次の日、霊夢とカカロットは武道会へと向けて今までよりも更に真剣に修練に励むのだった。
もはやカカロットはこの一年間の聖白蓮の元での修行を受けて、その戦闘力を倍ほどに伸ばすと同時に、気の扱い方をやや未完成ながらマスターしようとしていた。
霊夢も同じように修行に励んでいた。今まで大した訓練などしたことが無かった霊夢はその戦闘の才能により、メキメキと力を付けていったのだった。
「でやああああ!」
「なんの!」
マミゾウとの組手を行うカカロット。その戦いは一年前と比べてカカロットの実力が増したおかげか、やや互角のように見える。
「やるのう、カカロット!」
「マミゾウこそな。だが…」
カカロットは後ろへ飛ぶと、右腕を顔の前にかざし、力を込める。
「はあああ…!!」
すると、右腕を白く輝くオーラが渦巻き始める。陽炎のように揺らめくそれは、まさしく聖が霊夢やカカロットに教えようとした体内の潜在エネルギー、通称『気』のコントロールの先駆けであった。
全身の気を右腕に集中すれば、その攻撃の破壊力は計り知れない。それを体のどの部位でも自在に行い、最終的にはそれを体から分離させ放つことができれば、それはもう一流の気の使い手である。
「くたばりやがれ!!」
カカロットは飛び出すと、マミゾウへ向けてその腕で殴りかかった。
マミゾウも同じように気を集中させた腕でそれを防いだ。が…さすがの衝撃だった一撃を前に、軽く後ろへ弾き飛ばされた。
「…ほう、早くも気の扱いがワシと同レベルに…」
「ああ…だが、時間がかかり過ぎるのが欠点だ。マミゾウのように素早くはできん」
カカロットは腕に集めた気を解除した。
実は気の集中には、一か所に集中する分、その他の部位の守りが疎かになるという弱点もある。だが、その弱点が全くないまま、気の扱い方を覚えかけの者がいる。
そう、それが霊夢だ。
「はァアアア!!」
霊力を解放したその姿。この霊力とは霊夢にとっては他で言う『気』と同等であり、これは霊夢が幼いころより博麗の巫女として受けてきた修業が気を霊力に変質させているからである。
そして、この霊力解放の状態は、『気の解放』と同レベルの境地である。『気の解放』とは何かというと、マミゾウやカカロットが行ったような『気の集中』を、全身レベルで常時行っているのである。全身の至る所に気が集中され、それはもはや全身の気の解放と呼ぶべきである。これならば気を一点に集中させることによる他所の弱点化は無くなる。
気を扱う武道の達人ですら極めることが難しい気の集中よりも、さらに上を行く状態…それが気の解放なのである。
「ふん!」
それを既にマスターしていた霊夢が、如何に天才であるのかがうかがえる。
が、しかし…。
「それっ」
霊夢は周囲に気の光弾を出現させ、それを細かい弾丸のように放った。光弾は地面に当たり、小さな爆発を起こした。
「まだまだね…」
このように、気の光弾に関しては、まだ発展途上のようだ。恐らく、今まで弾幕勝負にそれを費やしてきたおかげで、今の状態からでは弾幕用の光弾を気の光弾へ変えることが難しい。気を解放した状態からは、更なる気の集中効果は得られにくいのである。
「霊夢、凄いではないですか」
後ろで様子を見ていた聖がそう声をかけた。
「ええ、ありがとう」
「それで、思ったのですが…30日後の幻想郷一武道会とやらに備えて、しばらくここを離れてはいかがでしょう」
「え?」
霊夢が呆気にとられた声を出した。
「ええ、貴方はこの一年間、よく通ってくれました。もう私が教えられることはほとんどありません…たまには羽を伸ばしながら、武道会まで、幻想郷のあらゆる達人と仕合をさせてもらうのです。恐らく、霊夢が弾幕勝負で負かしてきた相手も、それ以外の格闘では貴方を凌駕しているかもしれませんよ。そういう者たちと戦って自分を磨くのです」
「な、なるほど…。そうね、今の私の実力がどんなものかも気になるし、大会までの間なら」
「よろしい。でしたら、カカロットと一緒に幻想郷中を回ってみては?」
「ぶっ!なんでアイツなんかと一緒に…」
「自分が知らぬ間に相手だけが強くなってたりしたらイヤでしょう?」
「それはそうだけど…」
「決まりですね」
その日、一通りの修行を命蓮寺(壊されたけど)で終えたカカロットと霊夢は、さらなる力の向上を目指して、その場を後にするのだった。
「じゃーなー!今までありがとう!」
カカロットは聖たちに手を振りながらそう言った。遠くへ歩いていく二人を見て、マミゾウが言った。
「しかし、まさかカカロットがいつの間にかお前さんに追いつくとはな」
「ええ。きっと、私が教えた奥義も…使いこなしてくれるでしょう、彼ならば…」
幻想郷中の強者が集うという、幻想郷一武道会!その大会まで、あと30日!
☆キャラクター戦闘力紹介☆
参考
一般成人男性 5
一般成人女性 4
子供(10歳) 2
ミスター・サタン 6.66
一般的に超人と呼ばれるレベル 7~8以上
大妖怪クラス 80以上
ピッコロ大魔王 260
博麗霊夢 50(平常時)→250(霊力開放)
カカロット 90~135(通常~気で攻防力増)
一年間の命蓮寺での修行を終えた霊夢とカカロット。
霊夢の平常時での戦闘力は50まで伸び、本気を出して5倍の250。250と言えば、ピッコロ大魔王(推定260)にまで迫る力だ。本編で述べた通り、霊力を解放した霊夢は、気の解放の状態にある。気の解放といえば、原作でのナッパ・ベジータ戦においてのピッコロたちが一年間の神様のもとでの修行の成果である。
一方、カカロットは一年前(尻尾を失って55)からさらに伸ばし、90。もう尻尾を失った状態にも慣れているだろう。習得しかけの気による攻防力増加率は通常時の1.5倍。妹紅のような2倍の上昇率には届かず、まさに覚えたての技だ。しかし、マミゾウの言う通り、その状態では聖に迫る戦闘力を発揮する。