「急ぎましょう、この方角だと恐らく妖怪の山ですね」
霊夢、美鈴、天龍、そしてカムイペは高速で空を飛びながら、博麗紅蓮も向かっているであろう妖怪の山を目指していた。既に紅蓮の気は止まっていることから、もう山の中で何か始めているのかもしれない。
そして四人は目的の場所へたどり着いた。
「…くっ、遅かったか…!」
しかし、その場所にはもう紅蓮一人しか残されていなかった。周囲には他の場所の時と同様、戦いの跡が遺されているだけだ。
「今度は一体誰を殺したんだ?」
と天龍が霊夢に聞いた。
「わからない…たぶんただ徘徊してた妖怪じゃないかしら」
「アアアアア」
こちらに気付いた紅蓮は身構え、攻撃の構えを取る。
「くるわ!」
瞬時に接近し、四人に殴りかかる紅蓮。その拳による一撃を、霊夢が腕で受け止めた。
紅蓮の黄色い目が霊夢を睨み、お互いにギリギリと力を込める。そして何とか紅蓮を突き飛ばし、その腹に蹴りを叩きこむ霊夢。
「アアア」
唸る紅蓮は怒り、霊夢の腕を掴んで振りかぶる。
「し、しまっ…!」
そして霊夢をグルグルと振り回し、遠くへ投げ飛ばした。
続いて美鈴と天龍が紅蓮に同時に攻撃を仕掛ける。しかし、素早く次々と繰り出される突きと蹴りの応酬を、紅蓮は少しの動作だけでスルスルと避けていく。
「はやい!」
紅蓮は天龍を思いきり蹴り飛ばし、美鈴の顔面を掴んで投げ飛ばした。美鈴は天龍に激突し、二人は一緒になって周囲の木を倒しながら猛烈な勢いで遠くまで吹っ飛ばされてしまう。
「天龍!美鈴!」
土の上で受け身を取って着地し、起き上がった霊夢はそう叫ぶ。しかしその間にも紅蓮は両手にエネルギーを溜めながらこちらへ接近し、それを霊夢に向かって投げつけた。
だが次の瞬間、その攻撃と霊夢の間に割って入ったカムイペがそれをはじき返す。
「私の事がわかりますか?博麗紅蓮」
「…ウウウウウ」
カムイペと目を合わせた紅蓮は獣のように唸りながら目を見開いた。それを見たカムイペはにやりと笑うと、ポケットの中から何やら小瓶を取り出した。その小瓶には「大妖怪封じ」と筆で描かれている。
「ま、まさかそれは…」
「霊夢、アナタはそこで見ていてください。この私が『夢想封波』をお見せします」
カムイペは紅蓮に対して夢想封波を放つつもりであった。ここで、霊夢はカムイペの口ぶりから彼女が自分の危険を顧みず術を使おうとしていることを知る。カムイペの実力なら夢想封波を何発撃っても死なないかもしれないが、相手はあの紅蓮…力量に差があり過ぎるため、術者の死亡率は高まっている。
「いきますよ!ハアッ!!」
前に両手をかざし、赤色の竜巻のような気を紅蓮に向けて放つカムイペ。それは紅蓮に命中し、まるで感電したかのように身動きが取れなくなってしまう。
霊夢はそこから発せられる衝撃にさらされて近づけないでいる。
(紅蓮がこうなってしまったのは私の責任…!だから、この私が決着を付けます…!!)
上手く気で捕らえた紅蓮を、空中に投げて渦の中に放り込み、それを操作して小瓶へ近づけていく。
しばらくは口を開いて驚いた表情で夢想封波を受けていた紅蓮であったが、彼女は突然黄色い目を吊り上げてにやりと笑ったような気がした。
「…アアッ!!」
「なっ…!」
紅蓮は全身から気を放出し、夢想封波の気を跳ね返した。さらにあろうことかその渦を乗っ取って自らで操作し返して見せた。返された気の渦はカムイペに命中し、今度は彼女が渦の中に捕らわれてしまう。
「『夢想封波返し』…!し、しまった…私としたことが…!紅蓮め…理性は無くなっても、知性は残っていたか…!」
夢想封波は、受ける者も夢想封波を習得しておりかつ使用者よりも優れた使い手であった場合、逆に相手に跳ね返すことが可能である。もちろん夢想封波を使えた紅蓮は、カムイペの術を跳ね返したのだ。
カムイペは紅蓮の圧倒的なパワーに引っ張られ、一瞬にして小瓶の中に吸い込まれてしまった。
「ああ!カムイペさんが…」
紅蓮は小瓶を拾い上げ蓋をし、両手でそれを掴むと気を熱として手の平から放出して小瓶を熱する。蓋の隙間からプスプスと煙が上がり、紅蓮は小瓶を地面に叩きつけて割った。中には焦げた塊だけがあり、カムイペの姿は無かった。
300年前も、紅蓮は夢想封波で瓶に封じ込めた妖怪をこのようにして確実に殺していたのだ。
「…アー…」
紅蓮はまるで「次はお前だ」とでも言うように霊夢を見た。
「ふ、ふん…ナメてもらっちゃこっちも困るのよ。アンタは『過去』の博麗の巫女!『現代』の博麗の巫女は私よ!」
しかし霊夢も紅蓮の威圧に負けじとそう言い放つ。そして次の瞬間、両者は同時に飛び出し、拳と拳をぶつけあった。
周囲にスパークが起こり、地面がめくれ上がる。
「はあああッ!!」
霊夢は回し蹴りを繰り出し、紅蓮を攻撃する。しかし、紅蓮は腕でそれを受け止め、逆に霊夢を蹴り返した。蹴られた霊夢は地面と水平に吹っ飛んでいってしまう。
「はっ!?」
高速で飛んでいく霊夢の真上に追いついた紅蓮は並走しながら両手を合わせて作った拳を振り上げ、今にも叩きつけようと振りかぶっていた。霊夢は足を地面に引っ掛けてスピードを落とし、寸前でその攻撃を回避する。
「『八方龍殺陣』!!」
霊夢の周囲に八角形の結界の陣が発生し、霊力の壁となって回転しながら紅蓮を巻き込んだ。紅蓮は体の前で両腕をクロスさせて衝撃に耐えていたが、やがて強引に陣の中に入り込んだ。
「うそ…」
狼狽える霊夢の顔面を殴り、突き飛ばす。そして攻撃を解除するとともにうしろへ下がった霊夢に高速で接近し、目の前で一回転してその遠心力を利用し威力を高めたパンチを叩きつけた!
「『
「ぐああああ!」
パンチは霊夢の胸にメキメキとめり込み、肋骨と肺にダメージを与えた。霊夢は激しくせき込みながら血を吐き出し、その場にガクッと倒れ込む。
「い、いててて…」
一方、紅蓮の攻撃によって彼方へ吹き飛ばされた美鈴と天龍。二人はひときわ大きな木の幹にぶつかることでようやく止まり、ボロボロな状態で起き上がろうとしていた。
「なんてパワーなんだ…ん?」
しかしその時、美鈴は自分たちがぶつかった幹の横に誰かが座っていることに気付く。
「よう…紅美鈴」
「あ、アナタは…!」
そこに座っていたのは、レミリア達の姉であるスカーレットであった。かつて両親を殺害しスカーレット家を追い出された吸血鬼で、妹たちをはるかにしのぐ魔力と戦闘力を持っていた。そしてついに幻想郷にレミリア達がいることを突き止め復讐をしに襲い掛かるが、カカロットと美鈴に退治された。
「なんでここに?」
「くっくっく…逃げてきたのさ。あの化け物からな」
スカーレットは顔や腕に痛々しい傷を負っていたが、吸血鬼特有の治癒能力でほとんど治りかけていた。
「あの化け物?傷だらけの巫女のことか?」
と天龍が聞く。
「巫女…?違う違う…アイツが私を逃がしてくれたんだよ」
スカーレットの口から発せられた、意味深な言葉。それを聞いた二人は困惑しながらさらに強く問いかける。
「え?それはどういうことだ?」
「それはおかしいはずですよ…あの巫女は妖怪を殺して回ってる!あなたの妹であるお嬢様も餌食にされた!あなたが逃がされるわけなどないでしょう」
「…なんだお前たち…まさかあの巫女が敵だと思ってるのか?馬鹿が、本当の敵はアイツじゃない…もっと恐ろしいのがいる」
「…く、くそ…!」
倒れたまま起き上がろうとするが、なかなか思うように体が動かせない霊夢。そこへ紅蓮が歩み寄り、足を振り上げ、顔を踏みつぶそうと構える。
「…ア…!?」
しかし、紅蓮は突然動きを止め、上を見上げながらキョロキョロと頭を動かした。そして何かを発見したように一点を見据えると、全身にオーラを纏って宙へ浮き、そのままその方角へ飛び去っていった。
「な、なによ突然…!新たな標的を見つけたって訳?このまま追いかければ今度こそ被害が出る前に間に合うわね」
それを追いかけるようにして、霊夢も飛んでいく。
「それは本当か!?」
スカーレットの話を聞いた二人は驚愕する。
「まずい…スカーレットの言ってることが本当だったら、まさか紅蓮は…!」
美鈴と天龍の中で、今までの謎のピースが全てはまっていく。カムイペの話、紅蓮の行動、そしてスカーレットの証言…。
もっとおそろしい本当の敵とはいったい誰なのか?そして紅蓮の目的とは…!?
☆キャラクター戦闘力紹介☆
参考
一般成人男性 5
一般成人女性 4
子供(10歳) 2
ミスター・サタン 6.66
一般的に超人と呼ばれるレベル 7~8以上
大妖怪クラス 80以上
ピッコロ大魔王 260
ラディッツ 1500
ベジータ 18000
博麗霊夢 3000(霊力開放 最大)
豹牙天龍 1100
紅美鈴 1400
ヤッメノコ・カムイペ 700
博麗紅蓮 5000
今までのまとめ的なものを。霊夢はナッパには及ばない、紅蓮はナッパを越えるレベルか。もはやどちらもその気になれば一撃で幻想郷を破壊できるほどの力を秘めているはずだ。
カムイペは物語初期に登場していれば間違いなく手の届かない領域の強者となっていただろうが、今では逆に立場になってしまうだろう。
スカーレット 200~400(通常時~魔力で攻防力増)
両親の呪いにより名前を封印(具体的には自分で名前を言う、書く、思い浮かべるといったことができなくなり、周りの者も彼女の名前に対してそれができなくなる)された吸血鬼。
3年前までは美鈴を上回っているレベルだったが、今ではさすがに敵わず一蹴されてしまうレベルだろう。