もしもカカロットが幻想郷に落ちていたら   作:ねっぷう

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第87話 「ウィローの研究所へ向かえ!」

スカーレットから全てを聞き終えた美鈴と天龍は、紅蓮の気を追って地底世界への通路を飛んでいた。紅蓮を止めようとしていた霊夢に全てを伝えるためだ。

二人は地底の旧都にたどり着くと、まず真っ先に目に入った焼け跡やクレーターが形成されている箇所に近寄った。周囲には旧都の妖怪たちの姿は無く、クレーターの中心にはボロボロの紅蓮が横たわっていた。

 

「これは紅蓮…だな?」

 

「そのようですね…霊夢がもう倒してしまったのでしょうか」

 

と、その時、目の前の何もなかった空間がパックリと裂け、中に無数の目玉が見える穴の中から何者かの集団が飛び出してきた。丁度その影は三人分で、天龍と美鈴はこれが例の三体の化け物かと思い、焦って警戒した。

 

「ちょっ、待って待って!」

 

「私たちは味方だ!」

 

しかし、その三人は八雲紫と摩多羅隠岐奈、そしてヤッメノコ・カムイペであると気付く。

 

「わっ、ビックリした…」

 

「ありがとうございます、二人とも。夢想封波を返されて封じこまれ、霊力で燃やされかけたところを救っていただきました」

 

紅蓮が小瓶の中に封じたカムイペを焼き焦がして殺そうとした時、紫は小瓶の中にスキマの入り口を作り、そこからカムイペを救い出した。カムイペは小瓶の中にヒグマの毛皮だけを残し、それが身代わりとなり、燃えカスとなって紅蓮に自分が死んだと思わせることができた。

 

「そ、そうだカムイペさん!どうやら紅蓮は敵ではなかったようです」

 

「…どういうことですか?」

 

美鈴と天龍はカムイペに全ての事情を話した。

 

「なるほど…そういうことでしたか。不覚です、それは私も気づきませんでした」

 

カムイペは横目で倒れている紅蓮を見ながらそう言った。

とその時、紅蓮は急に立ち上がり、カムイペや紫たちを睨みつけた。包帯が無くなり、皮膚の無い顔が露わになっており、その不気味な気迫に押された紫と隠岐奈が後ずさっていく。

 

「ウルルル…」

 

「紅蓮…復活していたなんて…」

 

「ふ、ふん!もう一度我々に封印されたいようだな!」

 

だが二人はボロボロな様子で唸るだけの紅蓮を見て、そう言いながら攻撃を仕掛けようとする。

 

「やめなさい」

 

それをカムイペが止める。カムイペは紅蓮に近寄り、その顔をぐっと見上げた。紅蓮の憎悪に燃える黄色く濁った眼や、剥き出しの歯を見ても動じず、血のにじんだ胸に触れる。

 

「敵を倒すのに協力しなさい。見事危機を破る事が出来れば…その身体を、私のドラゴンボールで元に戻してあげます」

 

その言葉を聞いた紅蓮は、手の中に握っていた小さな光弾を自分の目の前に浮かばせた。光弾は何かに引き寄せられるように勝手に宙を舞い、上へあがってゆく。

 

「これは…やりますね、紅蓮。あの状況で敵に発信機を付けるとは」

 

そう、紅蓮はウィローにやられてしまう時、後から追跡できるようにと、気付かれないように自分の気をトリモチのように取り付けておいた。それを追いかける事が出来るように作り出したもう一個の光弾についていけば、自ずと敵が消えた先にまで案内できるという訳だ。

 

「では早速参りましょうか…紫と隠岐奈も来てください。捕らえられた妖怪たちを救出するからです」

 

「分かりましたわ」

 

紅蓮は光弾が進んでいく後を追いかけていく。光弾は地底から地上へと抜ける通路を抜け、山の林の中を飛んでいく。

すると、光弾は急に進路を変え、垂れさがった気の枝が組み合わさってできた不気味な道を飛び始める。紅蓮とカムイペ、天龍と美鈴、そして紫と隠岐奈は警戒しながら奥へと進んでいく。

 

「なんかだんだん下がっていませんか?」

 

美鈴がそう口にした。

 

「確かに…どこへ向かっているんだ?」

 

天龍達は困惑しながらも、光弾が進む方へと飛んでいく。

すると、急に広い空間に出た。彼女らは目の前に広がる光景に目を奪われた。周りは真冬のような冷気を放つ氷の塊に覆われていて、それに半分漬けられるようにして、黒いドーム型の巨大な建物が置かれている。

 

「これが敵の本拠地か…」

 

「まさか妖怪の山の内部にこんなものがあったなんて…」

 

「それも昔からあったんじゃない、つい最近これが出来たんだ」

 

紅蓮たちは建物の入り口らしき扉の前にまでやって来た。しかしその時、紫と隠岐奈以外の四人はこの周囲のどこかに、何か強力な敵が潜んでいることを感じとった。

 

「なに、どうかしたのか?」

 

「…近くに何かいます…」

 

「アアアア…!」

 

次の瞬間、地面を分厚く形成していた氷の中から、巨大な影が飛び出した。砕いた氷の破片があたりに飛び散り、同時に強烈な気が辺りに放たれた。

 

「な、何者!?」

 

黄色い巨大なブヨブヨした肉体に、三本のするどい爪の付いた太い腕…。コーチンがバイオテクノロジーで作った凶暴戦士の一体、ミソカッツンであった。

ミソカッツンは気味の悪い笑みを浮かべながら、カムイペに殴りかかる。カムイペが寸前でそれを躱すと、ミソカッツンは回転しながら腕を振り回し、紫と隠岐奈を狙う。

 

「ちょちょちょ!」

 

強烈な一撃が命中した二人は吹き飛ばされ、氷の塊にぶつかる。

天龍と美鈴がミソカッツンの腹に蹴りを同時に叩きこむが、ブヨブヨした肉に包み込まれてしまい、全くダメージを与えることができなかった。

 

「やわらかい…!」

 

ミソカッツンは一歩踏み出し、巨大な体躯を利用して天龍と美鈴に体当たりを食らわし、吹き飛ばした。そこへ強力な突きによる攻撃を繰り出すが、その時紅蓮が間に割って入り、攻撃を受け止めた。

 

「ウルルル…!!」

 

唸り声を上げて威嚇する紅蓮を見て、ミソカッツンは気味悪く笑った。

 

「むふふふふふ…」

 

紅蓮は素早くミソカッツンとの距離を取ると、前に出した両手から特大の赤黒い気功波を放った。ミソカッツンは腹でそれを受け、先ほどと同様に肉で無効化する。

しかし、紅蓮はそれに気を取られたミソカッツンに向けてタックルを仕掛け、腹を突き破るかの勢いで体をめり込ませた。ブヨブヨの腹が背中から突き出し、ミソカッツンはやや驚いた表情を浮かべる。

 

「ガアアアアアアアア!!」

 

紅蓮は雄叫びを上げ、全身に纏う赤黒いオーラの量を増やしながらさらに力を込める。

 

「むおおお…!?」

 

それに対抗しようとするミソカッツンであったが、増した紅蓮のパワーを前にしてその腹に大穴を開けられ、空気の抜けた風船のように激しく宙を舞った。

紅蓮は右手から気功波を放ち、ペラペラになったミソカッツンを粉々に消し飛ばす。周囲に電気を帯びたコードや燃える肉片が落ちて来た。

 

「す、すごいな…まだパワーを隠していたのか…」

 

天龍が紅蓮の戦闘能力を見て驚いた。紅蓮は何事もなかったように地面に降り立ち、研究所の入り口の扉を蹴って壊した。

中に入ると、やたら天井の高く暗い通路が奥まで続いていた。

 

「どうやら、地下から無数の妖気を感じますね…」

 

カムイペが目を細めながらそう言った。

 

「紫と隠岐奈、私は地下へ行って妖怪たちを連れ出します。紅蓮とお二方は奥へ行って霊夢さんを探してください」

 

「分かりました」

 

 

 

 

 

「ふっふっふ…楽しみだ、ワシがお前の体を手に入れればいったいどれほどのパワーが得られるのか」

 

一方、ウィローは霊夢に向かって手を伸ばすと、オレンジ色の血管のような触手と細いコードが霊夢に絡みつこうと襲い掛かる。

霊夢の腕に巻き付くそれを振り払おうとするが、バリアーで制限された中では思うように動くことができない。

 

「くっ…!」

 

血管とコードは霊夢の体を登り、その頬に触れようとする。

 

「…!!馬鹿な…」

 

しかしその時、ウィローが動きを止めた。

 

「ドクターウィロー、ミソカッツンが倒されたようですな…!」

 

「そのようだな…。ふっふっふ…そう来なくては面白くない。気が変わったぞ…奴らをここまで来させるのだ、残る凶暴戦士たちを倒せた暁には、新たなる戦士として改造される権利を与えてやろうではないか」

 

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