おさまったエネルギーの光の中から現れたウィローは、その姿を見せた。
青いガラス玉のような眼、逆立った白い髪…その姿はまるでウィローが聖の肉体との融合をさらに深めたようで、今までとは違いウィロー自身の要素が大きく反映されていた。
「素晴らしいパワーだ。ワシと聖白蓮とが、より深く合わさったかのようだ!そうだな、スーパーウィローとでも名乗ろうか…これだけのパワーがあれば、もはや博麗霊夢、キサマの肉体など必要ないわ!」
ドムン…
「か…かは…!」
気が付けば、ウィローは霊夢の腹に強烈な蹴りを入れていた。受けた霊夢はおろか今の紅蓮でさえも、全く気が付くことができなかった。あれほどの距離にいたというのに、これは圧倒的なスピードすら身に付けているということに他ならない。
「だから安心して死ね」
霊夢はその場で膝をつく。
「ガアッ!!」
紅蓮はウィローに襲い掛かり、両腕で殴りかかった。しかし、ウィローはその手を弾き、がら空きになったボディにするどいパンチを放つ。そのパンチは容易に紅蓮の崩れかけの肉体を貫いていた。
「ガ…ボ…」
「邪魔だ」
そのまま紅蓮の肉体を持ち上げ、腕を振るって投げ飛ばす。紅蓮は天井にめり込むようにして激突してしまった。
「霊夢、大丈夫ですか!?」
美鈴と天龍が霊夢にかけより、声をかけた。だがその瞬間、ウィローが高速で二人の背後へ移動し、その首に手刀を喰らわせた。二人は目を丸くしながら前のめりに倒れ込み、ピクピクと痙攣しながら気を失った。
「コイツらは後で改造して忠実なバイオ戦士に変えてやるわ。さぁ、博麗霊夢…キサマを始末してやる」
「くっ…!」
霊夢はぼやける視界の中、ウィローを見上げた。
その時、上空から降りてきた紅蓮がウィローに殴りかかる。だがウィローはそれを目ざとく発見し、背後に手を回して拳を受け止めた。
「まだ生きていたか…しぶとい奴じゃ」
拳を引き寄せて頭突きを食らわし、自身は後ろへ下がって両手の指先を一斉に紅蓮へ向けた。その一本一本の指先に黄色いエネルギー弾が作り出されていく。
「だが…これで終わりじゃ、消えろ」
「うおおおお!!」
だが霊夢がウィローに飛びかかり、押し倒した。しかしウィローは驚異的な脚力で瞬時に無理やり起き上がり、霊夢を突き飛ばした。床へ倒れ込む霊夢に向かって、改めて指先に溜めたエネルギー弾を向け、発射した。
「…紅蓮…!」
その時、紅蓮が霊夢とウィローの間に咄嗟に割って入った。
「───お母さま…確かに妖怪は人に害しか及ぼさぬ、淘汰されるにふさわしい種族で御座います。ですが私は無慈悲に妖怪を殺したいのではなく、あくまで博麗の巫女として…この幻想郷を守りたいのです」
「ア…」
次の瞬間、ウィローが無数に放った細かいエネルギー弾の嵐が紅蓮の肉体を貫き、蜂の巣のように変えた。何発かの弾丸は紅蓮を介したことで止まるか勢いを失ったが、残りはそのままの勢いで後ろにいた霊夢に着弾し、腕や肩、足にめり込んだ。
「やっと死んだか、我々を邪魔してきた愚か者が!」
グチャリと音を立てて倒れ込んだ紅蓮は、既に跡形もないほど身が崩れ、息絶えていた。
「紅蓮…きっとアンタにはアンタの信念のようなものがあった…それに基づいて行動した結果、悲劇に見舞われた。でもアンタは博麗の巫女として、自分の体を壊し300年も封じ込めた幻想郷を守るために戦い続けた…!」
霊夢は立ち上がり、うつむきながらウィローに向き直る。
「ふん、何をごちゃごちゃと…」
「アンタの遺志は無駄にはしないよ!!」
次の瞬間、霊夢を中心に赤の中に点々と青色が混じったようなオーラが吹き荒れた。
そして顔を上げると、その目は閉じ、まつ毛が純白に輝いている。髪はまばらに逆立って、まさに怒髪天を突くというような雰囲気だ。
「姿が変わった…変身か!?」
「いくぜぇ!!」
霊夢はそう叫ぶと、ウィローにも捉えられない程のスピードで接近し、その真横を通り過ぎた。ウィローは今のは何だと思いながら背後にいる霊夢へ振り向くが、その瞬間、胸に無数の拳による衝撃が響いた。すれ違いざまに、霊夢がウィローに無数のパンチの連打を叩きこんでいたのだ。
「小癪な…!」
まだ背を向けている霊夢に接近し、その後頭部に向けて蹴りを放つ。が、霊夢はそれが直撃する寸前で頭をひょいとずらして避け、そのまま体をひねって回し蹴りをウィローの肩に当てた。
「むうッ…!?」
そう、この姿の霊夢は、三年前に月夜見王との戦いの際に見せた「夢想天生」の状態に入っている。おそらく紅蓮の死がトリガーとなり、三年ぶりにこの力を呼び覚ますことに成功したのだ。
「むおおおおおお!!」
ウィローはもう一度霊夢に接近し、無数のパンチや蹴りの連打を放つ。霊夢もそれを躱しながら攻撃を撃ち、両者は激しい攻防戦を繰り広げた。
しかし…
ドゴォ
「ぐえ…!?」
ウィローのパンチの一発が霊夢の腹にめり込んだ。それを皮切りに、次々とウィローの攻撃が霊夢に当たっていく。
そう、いくら夢想天生を発動できたとしても、それですらも埋められない程の力量の差が、ウィローと霊夢の間には存在していた。三年前の月夜見王との戦闘でもそうだったように、この夢想天生は自身の力を超えてしまうもの相手には破られてしまう可能性があった。
「くっ…」
「どうした!もう終わりか?」
先ほどのウィローの放った気のマシンガンの弾丸が貫いた腕や足の傷口から再び血が流れだす。夢想天生を発動した時の興奮状態で感じなくなっていた痛みも倍になって戻って来た。
気が付けば夢想天生の状態も解除されており、髪やオーラ、そして目も元に戻ってしまっていた。
「むはァ!!」
グルグルと回転しながら近づいてきたウィローの蹴りが当たり、霊夢は下へ向けて吹っ飛ばされ、床にめり込んだ。
仰向けで痛みに目をつぶっていた霊夢の真上にウィローが現れ、その腹を足で踏みつける。
「ぎゃあああああ…!!」
霊夢は血を吐き、苦しむ。ウィローは霊夢の腹の上に乗ったまま、その顔の前に手を掲げ、まぶしいエネルギーを溜め始める。
「もう消えるがいい」
これを喰らえば、確実に霊夢は跡形もなく消滅してしまうだろう。
「くそ…体が動かない…」
─私はここで終わる…のかしら…天龍と美鈴はやられたままだし…紅蓮だって…。せっかく、カカロット…アンタともう一度戦うために強くなったのにこんな所で…!
「『界王拳』!!」
その時だった。
天井を突き破って出現した、赤い尾を引く流星。それは真っすぐに飛び、何事かと思って振り返ろうとしたウィローの顔面に衝突した。流星は空中を八の字を描くように飛び、もう一度ウィローに近づきその背中にぶつかった。