もしもカカロットが幻想郷に落ちていたら   作:ねっぷう

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第92話 「あの世に住む武術の達人!?」

時は三年前、月夜見王が霊夢によって倒された後にさかのぼる。

カカロットは自分の要石に霊夢を乗せ、それを蹴って飛ばすことで自らを犠牲にし、閉じゆく槐安通路から彼女を救った。その後、カカロットは通路の中に閉じ込められ、もう飛んでいられる気力も残っていなかった。

 

「俺も…ここで終わりか…」

 

カカロットは目を閉じ、気を失った。と同時にその身体はゆっくり下へと落下を始める。

出入り口が閉じ、その役目を完全に失った槐安通路は徐々に端から崩壊しかけている。まるで、かつて地球の生命のほとんどが死滅したという「大爆発」のように、巨大な爆炎を巻き起こしながら通路は消えていく。

そして、大爆発が落下するカカロットを飲み込むと…槐安通路は消滅した。

 

 

 

「は…!」

 

しかし、カカロットは死んではいなかった。確かに頭痛という名の痛みを感じるし、手足の感覚もあるし、何より体に触れても手が透けていかない。

 

「気が付きましたか?」

 

「…お前たちは…!!」

 

目を覚ましたカカロットに声をかけた者の顔を見た瞬間、カカロットはひどく驚いた。

見覚えのある三人組がカカロットの顔を覗き込んでいて、なんと一人は綿月依姫、もう一人はその姉の豊姫、そして最後に稀神サグメであった。

 

「ここは天国ですよ」

 

「天国?お前らも蛇斑に殺されてたな…やっぱここは死後の世界とやらか?」

 

「いえいえ、我々は死んではいませんよ。先ほどまで死んでいましたが、貴方が生き返らせてくれたのです」

 

と、豊姫が言った。

 

「そうか…!俺はドラゴンボールに『月の客に殺された連中を生き返らせてくれ』と願った…だから月の客に殺された月の民であるお前たちも生き返ったのか」

 

「その通りよ。私たちは貴方の願いで生き返ったのだと理解すると、すぐに例の通路を通って幻想郷へ向かいました。貴方に加勢しようと思ったのです。ですが通路を通っている最中、突然月が爆発して消滅してしまった…だから私たちは丁度通路の崩壊に巻き込まれようとしていた貴方を見つけ、ここに連れて来られたのよ」

 

「連れて来られた?」

 

確かに、槐安通路はガーリックの住んでいた天界の一部とも繋がっていたし、どこかへあの世と繋がっていても不思議ではない。そして天国は月の民の嫌う”穢れ”の少ない浄土であるため、この場所を選んだのだろう。

 

「でも、我々がカカロットを発見できたのは、この方のおかげです」

 

豊姫は、両手の上に乗せた大きなヒキガエルをカカロットに見せた。

 

「なんだこれ?カエル?」

 

「このお方は嫦娥様。我ら月の使者の頂点に立つ者です」

 

「私たちが通路でカカロットを探しているとき、この嫦娥様が必死で貴方の場所を教えてくれたので見つけることができたのよ」

 

嫦娥は月夜見王が霊夢に話していた通り、彼の娘である。蓬莱の薬を服用し不死となった罪でカエルの姿に変えられ牢に幽閉されてしまい、月夜見王が今回の事件を引き起こしたきっかけでもある。

 

「このたびは父がご迷惑をおかけしました」

 

「うわっ!喋れんのかよ?」

 

カカロットは突然頭を下げながら流暢に喋り出した嫦娥に対して驚いた。嫦娥は続ける。

 

「ことの発端は私なのです。禁忌を犯し、この姿で幽閉された私の身を案じた父が今回のような事件を…。私は密かに父の乗る旗艦に移されており、”ガロミの陣”が破壊されたときに父から全てを聞くと、月の客の緊急脱出艇に乗せられ、こうして助かっています」

 

「…いや、話を聞けば真に悪いのは我々月の賢者かもしれん」

 

その時、サグメが割って入って静かにそう言った。

 

「サグメ様…」

 

「元はと言えば、月の都崩壊の予兆を感じた我々賢者がツキノカクの造成を提案し最終的な決定権を握っている月夜見王に早期に解決案を決定させるように圧力をかけたのがいけなかったのだ…」

 

「…まあともかく、月は消えて月夜見王も死んだ…唯一生き返ったお前らはどうするんだ?」

 

「それなんですが、先ほど私たちをここまで連れてきてくれたのが…」

 

と、豊姫が言いかけた瞬間、彼女らのすぐそばから謎の光が差した。思わず目をつぶってしまうが、何とかして見るとその光の中に不思議な人影が見えた。

 

「んもう、待ちくたびれたわよん。月が消えてから"月の私"と連絡がつかないし最悪ね」

 

どうやら口調からして女…ようだ。そして光が収まると、女の全貌が明らかになった。

赤い髪の頭に黒い帽子をかぶり、さらにその上に赤い天体のような球体の物体を乗せている。それと同じような、まるで地球と月を模したかのような球体も首に巻いたチョーカーから鎖で繋がっていた。

 

「変な格好しやがって、お前は誰だ?」

 

「私はヘカーティア・ラピスラズリ、地獄の女神さまよ。それにしても天国ってのはいつ来ても居心地悪いわね、臭くてたまらないわよ」

 

ヘカーティアは地獄の女神である。文字通り地球の地獄の女神で、天神たる地球の神とは対となる存在でもある。三つ別々の体を持ち、幻想郷を含めた異界、月、地球にそれぞれ一人ずつ存在する。

かつては月の都とも対立していたこともあったが、今ではほぼ和解している。

 

「さぁ行こうかしら?界王様の住んでる星へ」

 

「界王様の星?」

 

「知らないのも無理ないわよね、貴方たちもよく聞いてなさい」

 

ヘカーティアはチラッと依姫たちを見た。

 

「まず、この地球は宇宙という枠組みの中に存在していて、この宇宙には地球の他にも色んな生命の住む惑星が存在するわ。そして界王様はその宇宙を見守り、各惑星の神々の頂点に立たれるとてもえらいお方なのよね」

 

「へぇ…」

 

「とにかく行きましょうか、月の代わりとなる貴方たちの新たな住処よ」

 

「俺はどうすればいいんだ?」

 

「来たいなら来て見ればいいんじゃないかしら?運が良ければ界王様に修行つけてもらえるかもよ」

 

「えっ、その界王って奴は強いのか!?」

 

「もちろん、立場はもちろんの事、強さだって私をはるかに上回るわ」

 

それを聞いたカカロットは、まだ月夜見王との戦いのダメージも回復していない状態であるにも関わらず、新たなパワーを身に付けた自分の姿を想像してにやりと笑った。

 

「くっくっく…じゃあ俺も行かせてくれ」

 

「オッケー!」

 

ヘカーティアは、カカロットに依姫、豊姫、サグメの三人を連れて、天国から降りていく。しばらく降りると、下一面に広がる不思議な黄色い雲が見えてきた。

 

「この雲の下が地獄になっているわ。そしてあそこに見えるのが…界王星よ」

 

そして、気が付けばすぐ向こう側に見えていたのは、小さな天体のようだった。直径は恐らく30メートル程で、半球型の一軒家と赤い車が置いてあるのが見える。

カカロットたちは界王の住むという界王星に接近していく。

 

「うぐ…!」

 

しかし、その瞬間に体に訪れた異変に気付く。

 

「体が…重い…!」

 

急に体が重くなり、舞空術では耐えられずに落下し、界王星の地面に寝そべるように激突してしまった。起き上がろうとしても、なかなか体が思うように動かない。カカロットは愚か、依姫たちでさえ同じ目に遭っているようだ。

 

「重いじゃろう重いじゃろう、この星は小さいがとてつもない重力でな」

 

いきなり背後から聞こえてきた声の方に振り向くと、ふくよかな体系で青い肌をした、丸いサングラスをかけた男性がこちらを向いていた。

 

「あ、界王様…お久しぶりです」

 

「おー、確か地球の地獄を担当する女神!一体どうしたんじゃ、わざわざ直接ここへ来るとは」

 

「この人が界王様なんですか?」

 

「如何にも、わしは…」

 

界王はそう言うと、おもむろに背中に手を伸ばし、ポリポリとかき始める。

 

「う~んかい~よ~、かい~よ~、かいおう…界王じゃ!」

 

「?」

 

依姫は頭の上にハテナマークを浮かべるが、カカロットや豊姫、サグメは苦笑いで対応した。

 

「おほほほ、いつでも界王様のギャグは面白いですわね!」

 

「そうじゃろうそうじゃろう」

 

界王という不思議な人物はヘカーティアにおだてられ、気分を良くする。

 

「…それでなんですけど、この者らは故郷の星を無くしてしまったようなんですの。顔見知りの仲ですので新たな住処を探したいのですが、特にこの女性たち三人は種族の性質上潔癖で御座いまして、どうかしばらく界王星に置いておけないかと」

 

「まぁわしは構わんのじゃが…それならもっと重力の軽くて住みやすい大界王星へ行くことを勧めるがな」

 

「さっきから聞きたかったんだが、なんでここはこんなに体が重いんだ?」

 

「この星は重力が地球の10倍はあってな、特に地球の衛星…月から来たお主らにはつらいじゃろう」

 

重力という物は星ごとに異なる。この界王星は界王の言う通り、地球の10倍はある。肉体は耐えることが出来ても、やはり慣れなければ生活すらままならないだろう。

 

「じゃがお主だけ違うな?」

 

「俺は幻想郷のサイヤ人だ。…そうだ!俺は界王さまに武術の修行を付けてもらいたくて来たんだ」

 

「サイヤ人?それに…なに、武術の修行を?どれどれ…」

 

界王はカカロットからそう聞くと、頭にかぶった帽子から伸びる二本の触角のような物を動かした。

 

「…ふむ、残念ながらお主のその強さではわしに教えられることはほとんどないぞい」

 

「え?」

 

「技を教えて、あとはゆっくりここで暮らすだけで自然と強くなるはずじゃからな」

 

「本当か!」

 

「それなら私も、ここで修行を付けていただきたい!」

 

その時、依姫が名乗りを上げた。

 

「依姫…お前…」

 

「私はあの時、親衛隊に遥か後れをとった…二度とあんな事は起こしたくない」

 

「いいじゃろういいじゃろう。こりゃ久々に中々の逸材が現れたもんじゃわい…」

 

(そして、コイツらなら極められるかもしれんな…!わしが編み出し夢見た、あの奥義を…!)

 

こうして、カカロットと依姫は界王星で修行を初め、豊姫とサグメ、嫦娥は大界王星で世話になるようになった。

界王が編み出したがついには習得を諦めた奥義、「界王拳」を覚えたカカロットは、しばらくの間界王星での時間を過ごすのだった。

だがある日、幻想郷に危機が訪れていることを知り、急いで幻想郷へ向かい、今に至るのだ。

 

 

 

 

 

 

「お前の肉体はワシのものじゃあ!!」

 

そんなカカロットの肉体を次のターゲットに定めたドクターウィロー。今、ウィローは真の恐ろしい姿を現そうとしているのだった…!

 

 

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