「ふっふっふ…」
不気味なウィローの笑い声が響き渡ると同時に、壁に埋め込まれたウィローの巨大な脳が入れられたカプセルに光が灯る。丁度カプセルの下部にある赤いランプが一つ目のように光り、可動する口のような部位から白い煙が噴き出す。
「むおおおおお…!!」
壁が崩れ、中から巨大な機械の塊が姿を現す。聖白蓮の肉体から追い出されたウィローの意識は再び彼自身の脳へ戻り、それが収まる巨大な機械の肉体となった。
ウィローは体をゆすりながら余分な部位を振り払い、その全貌を露わにした。細長い腕の先にはカニのようなハサミがついていて、鋼鉄のボディは生半可は攻撃ではビクともしそうにない。三本指の両足でゆっくりと歩き出し、頭部のない胴体部分に脳と目の役割を持つ赤いレンズが取り付けられている。
「カカロット…お前の肉体を手に入れれば、もはやこんな醜い機械の身体なんぞ必要なくなる。もうすぐ私は最強の…いや、それでいてもっとも偉大なドクターウィローとして世界に君臨できる!!」
ウィローは先ほど聖の肉体を乗っていた際に取り込んだエネルギーを機械の肉体に充てんさせ、全身から電気のようなオーラを放つ。
「う…うう…一体何が…?」
その時、ウィローにやられてしまった美鈴と天龍が目を覚ました。
「うそだろ…!」
そして不気味なウィローの姿を見てそう声を漏らす。二人はカカロットや霊夢の元へ戻り、ビリビリと響くようなオーラを放つウィローに向けて構える。
「すごい気だな…さっきの聖の肉体の時より強いじゃねぇか」
「当たり前だ、この私が設計した『マジンウルトラ28号』であるぞ。しかし、いくら強くとも私はこんな肉体は好かない…!だからこのマジンウルトラのパワーを越えられる戦士の体が欲しかった」
「こんなヤツがみんなを…そして紅蓮を…!!」
霊夢は怒りに燃え、全身に霊力を纏いながらウィローに飛びかかる。
「はあっ!!」
しかし、ウィローは大気を震わせるような衝撃波を放ち、霊夢の動きを止めた。その隙に巨大な腕を振りかざし、霊夢を殴って吹っ飛ばした。
「ぐああ!」
地面に叩きつけられた霊夢。
「お前たちにこの私が倒せるかァ!!」
ウィローはそう豪語すると、その巨体からは考えられないほどの跳躍を見せ、上空からカカロットたちに攻撃をしかける。
「来るぞ!迎え撃てぇ!!」
カカロット、天龍、美鈴の三人は渾身の気功波をウィローに放ち、ぶつけた。すさまじい光が衝撃があたりに満ち、ウィローはそれに包み込まれた。
「むおおおおおお!!」
だがウィローはそれをも強引に破り、カカロットたちに接近する。そして両足で彼らを踏みつけようとスタンプを繰り出すが、間一髪カカロットたちは飛んでかわした。
「甘い!!」
腕で美鈴を叩き落として瓦礫にぶつけて埋もれさせ、腕のハサミの間に備えられた砲身からエネルギー弾を発射し、天龍を狙い撃った。天龍は吹っ飛ばされ、床を転がる。
そして背中から伸びる長い尻尾の一撃でカカロットを殴り飛ばした。
「ぐっ…!」
しかしカカロットは空中で態勢を立て直し、全身に赤いオーラを纏った。
「『界王拳』!!」
そして地面を蹴り、ウィローに突撃を仕掛ける。
「死ねい!」
だがそれに対してウィローは開いた口から特大のエネルギー波を撃つ。カカロットは驚異的なスピードでそれを躱すと、ウィローの死角となる位置から足元へと接近し、そのバランスを崩すように激突した。
思った通り、足を外してバランスを失ったウィローの巨体は後ろへ倒れ込んだ。
「おりゃああああ!!」
そこへカカロットがウィローの頭上から、連続でエネルギー弾を撃ちこみ続ける。そのすべてがウィローに浴びせられ、煙と爆発によって覆い尽くされる。
その様子を見たカカロットはにやりと笑うが、次の瞬間、なおも傷一つ負っていないウィローは突然跳躍し、その頑丈なボディでカカロットに頭突きをしかけ、そのまま天井に押し付けた。
「く…くそ…なんて頑丈さと馬鹿力だ…!こ、こうなったら…『2倍界王拳』だ!!」
今度はカカロットが上からウィローを押し、地面へ吹っ飛ばす。そしてその下の地点へ移動し、蹴りつけた。
「『3倍界王拳』!!」
そして界王拳を三倍にまで高めると、ウィローの胴体にぴたりとくっつきながら連続でパンチを浴びせる。徐々に足が床を滑りながら後退していくウィローだが、全身から衝撃波を放ってカカロットを突き飛ばす。
「ハァ!ハァ!ハァ!!」
カカロットに向けて腕を振り回すが、空ぶった腕は床にめり込む。さらに前進しながら両腕で交互に地面を殴りながら攻撃を繰り出し、カカロットをじりじりと追いつめていく。
「しつこいぞ!!」
カカロットはもう一度オーラを放出すると、攻撃のスキを縫ってウィローに向かって殴りかかる。ウィローは片腕をかざしてそれを防ぐものの、次の瞬間に背後へ移動していたカカロットの蹴りを受け前のめりに体勢を崩す。そこへもう一度前方へ移動したカカロットの突撃を右腕に受け、右腕がちぎれるようにして破損してしまった。
外れた腕のパーツが音を立てながら地面に落ちる。
「喰らいやがれ!『南無三砲』!!」
カカロットは右手の中に小さなエネルギー弾を作り出し、それを胸の前に置くと、その光弾はカカロットの胸部に集中するエネルギーを吸い取りながら巨大な極太の光線となってウィローに向かっていった。
「むおおお!『マッドネスキャノン』!!」
だがウィローもそれに対抗すべく、開いた口の内部から、先端が丸く膨れ上がった黄色いエネルギー波を撃った。
二つのエネルギー波がぶつかり合い、辺りに衝撃と光、そして埃が舞い上がる。しかし、まだウィローのマッドネスキャノンのほうが威力も破壊力も上であったようで、カカロットの南無三砲が一気に押されてしまい、自身のすぐ目の前にまで敵のエネルギー波が迫りつつあった。
「ぐ…ぐぐぐ…!『4倍』だァ────!!」
カカロットは発動していた界王拳を4倍にまで高めた。すると南無三砲はさらに大きくなり、ウィローのマッドネスキャノンを一気に押し返した!
南無三砲はウィローを包み込むと同時に空中へ押し上げる。そして研究所の建物の壁はおろか妖怪の山の一部すらも吹き飛ばし、空を突き抜けてさらに上昇を続けて行く。
「ぐわあああ────!?」
悲鳴を上げながら空の彼方へ吹っ飛んでいくウィロー。南無三砲を撃ち終えたカカロットは、疲弊して痺れる肉体を動かせないでいた。
「はぁ…はぁ…!」
流石に4倍もの界王拳を発動し、さらにただでさえ消耗が激しく時には命を落とす危険すらあるという南無三砲の使用は大きく応えたようだ。
「カカロット…やったわね。ウィローを倒したわ!」
そこへフラフラしながら霊夢や美鈴、天龍が近づいてきた。
「いや、まだだ…ヤツはまだ生きてる!」
「嘘でしょ…アレを喰らって…?」
「ぐ…ぐは…あぁ…!カカロットか、流石にやりおる…やはり幻想郷で一番強いヤツの称号は伊達ではなかったな…!」
千切れた右腕に加え、全身のいたる箇所のボディが破損しボロボロになってしまったウィローであったが、ほぼ大気圏外に近いような地点で辛うじて生存していた。
「むううう…!だがここで諦めてたまるか!最強の肉体を手にし、新生ウィローとなって世界を支配し!馬鹿な人間どもに私のすばらしさを教えてやるのだ!!」
ウィローは体の向きを変え、地球に向き直った。
既にウィローに正気は無いのだろう。世紀のマッドサイエンティスト、ドクターウィローはありとあらゆる復讐の意味を込めて、全身に気を込め始める。
「後悔させてやる…!」
「敵を倒したのですか?」
その時、地下から解放された妖怪たちを引き連れたカムイペ、紫、隠岐奈がやってきた。
「いやまだよ…敵は宇宙にいて…どんどん気が上がってるわ…!」
「…仕方ねぇ、『元気玉』で決めてやる!!」
☆キャラクター戦闘力紹介☆
参考
一般成人男性 5
一般成人女性 4
子供(10歳) 2
ミスター・サタン 6.66
一般的に超人と呼ばれるレベル 7~8以上
大妖怪クラス 80以上
ピッコロ大魔王 260
ラディッツ 1500
ベジータ 18000
Dr.ウィロー 3万9000(最大)→3万8800(南無三砲で損傷)
聖白蓮の肉体から追い出されたウィローの意識は、元の脳みそに戻ると同時に、壁の中に鎮座していた機械の身体を引っ張り出す。研究所のエネルギーからもたらされる膨大な気と、自身は醜いと嫌悪する強固なメタルボディ。その戦闘力は公式での映画パンフレットより、破格の3万9000。また、カードダスでの数値39000(-200)は、おそらくボディの損傷によるエネルギー低下を意味しているのだろうか。
これまで、1万3500→2万7000と戦闘力を上げ続けたウィローの到達点は3万9000であった。しかし、霊夢の肉体、またはカカロットの肉体を手にすることができていれば、現段階において誰も辿りつけぬであろう最強の科学者の誕生となったかもしれない。
カカロット 1万(通常)→3万~6万(三倍界王拳~南無三砲)→4万~8万(四倍界王拳~南無三砲)
ついに界王拳を発動した状態での南無三砲、そして四倍界王拳を披露したカカロット。映画本編でのウィローは戦闘力32000相当のかめはめ波を受け宇宙にまで打ち上げられたが、今回の話でのウィローは戦闘力6万相当の南無三砲まで耐えることができた。何故かというと、映画でのウィローは宇宙へ打ち上げられてから研究所の支柱からエネルギーを取り込んだのに対し、今回のウィローは最初から支柱のエネルギーを取り込んでいたからだ。なので、映画のウィローよりもはるかに数値化できないパワー面が勝っており、結果6万の攻撃まで耐えることができた。
しかし、四倍界王拳、ひいてはさらに戦闘力二倍相当の威力を出せる南無三砲の8万もの威力の攻撃にはさすがに堪え、肉体を大幅に損傷させながら宇宙へ押し上げられた。