もしもカカロットが幻想郷に落ちていたら   作:ねっぷう

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第94話 「炸裂!幻想郷の元気玉!!」

これはカカロットが界王星で修行中だった頃のことである。

 

カカロットは空に手を上げ、目を瞑って心の中で静かに念じていた。

両手の上に、小さな気が集まってきた。それは陽炎のような熱気を帯びた靄のようで、とてつもないエネルギーを秘めていた。

 

「ふ…ぬぬ…!」

 

額に汗を流し、血管を浮かばせながら酷く神経を集中させた様子でそのまま両手を降ろし、何とかそのエネルギーを片腕に留めようとする。

 

「…ああっ!」

 

しかし、途中でエネルギーは分散し、消えてしまう。カカロットは息を切らし、膝をついた。汗が顎から垂れ、地面にポタポタと落ちた。

 

「やっぱり駄目じゃな…お前さんの心には邪念がある!わしが考えた『元気玉』は大地や海、草木や生き物にいたる全てから少しずつ元気を分けてもらって集合させて放つ強力な技…しかし、使用する者に悪の心が混じっていれば、元気たちはそれを嫌い元気玉を作り出すことはできない」

 

それを見ていた界王がそう言った。

 

「悪の心だァ…?んな事言ったって…!」

 

「お前さん、前から気になっとったがその尻尾…」

 

「尻尾がどうかしたか?」

 

「いや、珍しいなと思ってな。地球でそんな見た目のヤツは聞いたことがない」

 

「俺はサイヤ人って種族らしい…赤ん坊の頃、幻想郷って地に落ちてきたと聞いた」

 

「ほう…」

 

界王はサイヤ人について知っていた。純粋なサイヤ人であるカカロットは邪心や悪の心が精神に含まれている。これは隠岐奈が潜在能力を解放した際に引き出されたものが大半である。

 

「とにかく、今のお前さんでは元気玉を習得するのは無理じゃ。おとなしく界王拳を極めるがよい…」

 

「くっ…」

 

家の中に入っていく界王。カカロットは座り込み、強力な技だという元気玉をまったく使うことができない自分に苛立ちを覚えながら、拾った石を遠くへ投げた。すでに界王星の重力には慣れ、界王拳も二倍までは自在に操れるようになった。

 

「お困りなようね~」

 

「お前は…ヘカーティア…」

 

とその時、カカロットの前にヘカーティアが姿を現した。

 

「元気玉に苦戦してるようね」

 

「ああ…どうやら俺に悪の心があるからダメらしいな」

 

「ふふふ、悪の心が何ですかって感じよ、私の言うとおりにやれば悪人でも作れるスペシャルな元気玉が完成するわよ」

 

「本当か!?」

 

「ええ、もちろん。でも界王様には内緒よ?」

 

「わかった!」

 

「まず、元気玉を作るときに地上の自然のほかに地獄の気も集めることを強くイメージしなさい。そうすればそのイメージは”地獄の女神”たる私に届き、私は地獄の気を送ってあげる。元気たちは地獄の気と混ざり合うことで使い手の邪念など気にしなくなる…って感じよ」

 

 

 

 

 

「『元気玉』?」

 

その名前を聞いた霊夢は首をかしげる。

 

「これはあらゆる生命から少しずつエネルギーを分けてもらって放つ技だ…だがそのエネルギーを集めるのに時間が必要なんだ…」

 

カカロットは両腕を上にかかげ、心を静かに統一する。

 

「大地よ…海よ…空よ…そしてこの幻想郷に住んでる全ての生き物よ。ほんの少しずつでいい、俺に元気を分けろ…!幻想郷を守るためだ…お前たちの生きる場所をだ!」

 

(そして地獄の気も…!)

 

すると掲げた両手に靄のような温かいエネルギーが集まってくる。それはどんどん大きくなり、はっきりと形が見えるほどになった。

 

「これじゃまだヤツを完全に倒すには足りねぇ…!おい、そこの妖怪共も空に手を上げろ…少しだけエネルギーを貰う」

 

それを聞いた紫や隠岐奈は目を合わせ、空に手を上げた。それを見た他の妖怪たちも、同じように行動をとる。

そばにいた霊夢や天龍、美鈴も手を上げ、カカロットに集まる元気は白く揺らめくオーラのようにその身体を取り囲んだ。

 

 

 

 

「なにやら地上が騒がしいな…!」

 

宇宙から幻想郷中を乱れる気を感じ取ったウィローはそう呟いた。

 

 

 

 

カカロットは体に集まった元気を右腕に集中させ、そこへ暖かな光を放つ青い球を作り出した。

 

「それが…元気玉…!」

 

強い気を放つ元気玉を見た霊夢は、思わずそれに見惚れる。

 

「俺の元気玉は悪人でも作れる特別製だ!行くぜぇ!!」

 

カカロットは完成した元気玉を振りかぶり、宇宙にいるウィローへ向けて投げようと構えた。

しかし次の瞬間…!

 

「くらえぇい!!」

 

ウィローは無事な左腕のハサミの隙間から無数のエネルギー弾を地上へ向けて放った!

エネルギー弾は幻想郷へと降り注ぎ、妖怪の山付近に次々と着弾していく。そしてそのうちの数発がカカロットたちを狙っていた!

 

「まずい…!」

 

今アレを喰らえばせっかく作った元気玉が散ってしまう。だが避けようにも、派手に動けばそれだけで元気が散ってしまうかもしれない。

霊夢たちはおろか、その場の妖怪たちもあまりの恐ろしさにその場で頭を抱えている。

 

「…は…!?」

 

しかしその時、謎の影が咄嗟に彼らの頭上に現れ、降りかかるウィローのエネルギー弾をその身に受けて防いだ。そう、それは既に死んだはずの博麗紅蓮だった。

それは執念だったのか、いったい何だったのか…最後に紅蓮は死に果てた己の肉体を突き動かし、その身を粉々に消滅させて彼らを救った。

 

「…カカロットの気はまだ感じる!お前の肉体は私が貰う!最後に笑うのは、このウィロー様だァ!!」

 

ウィローは全身を気と大気の熱で真っ赤に赤熱させ、地上へ向けて全速力で降下し始める。

 

「よし…ウィロー!幻想郷の元気玉を喰らいやがれ!飛んでいけ──ッ!!」

 

カカロットは空にうっすらと見える赤い点に向かって、元気玉を勢い良く投げ飛ばした。雲を突き抜け、思いを乗せた元気玉が天高く昇っていく。

 

「ぬ…!なんだこれは?」

 

そして、元気玉がウィローの視界に入った途端、その目にはありもしないモノが見えた。幻想郷の大自然、熊や鹿などの天然の動物、煌めく川…そして自分たちがじゃけんに扱ってきた人ならざる者たち…。

 

さらに…

 

 

 

 

 

 

「コーチンよ、我々の研究しているバイオ工学がさらに発展すれば、人類の…そしてその医学薬学にとって多大な進歩となるだろう。心臓を悪くした子供に新たな臓器を…手足を失った兵士に自在に動く生身の義手や義足を…そして独り者をささえる人造人間…全て、人類の真価の礎となる。どうか私が死ぬその時まで、付き合ってくれるな?」

 

 

 

 

 

 

「わ、私はただ…世間に認めてほしかった…!ずっと続けてきた研究を、すごいと褒めてほしかった…!それなのに、それなのに…」

 

元気玉はやがてウィローに直撃した。はじけ飛んだ元気玉の衝撃がウィローのボディをバラバラに破壊し、爆発して木っ端みじんに吹き飛ばしてしまう。

 

「カ…カ…ロッ…ト…!!」

 

ウィローは断末魔の言葉を残して、暗く冷たい宇宙空間の中で悲しき天才科学者として散ってゆくのだった…。

 

 

 

「ふう…終わったな」

 

ポッカリと大穴の開いた妖怪の山の中で、カカロットは空に映る爆発を見ながらそう言った。ウィローの気が途端に小さくなり、やがて何も感じられなくなった。

 

「アンタ、いつもやって来るタイミングだけはいいわね。今までアンタは力だけの馬鹿だと思ってたわ。『馬鹿』で辞書を引いたら『カカロット』が出てくるくらいに」

 

「そりゃどうも、後で赤飯炊くぜ」

 

「はははは!久しぶりだなカカロット、神子さまに頼んで上等な酒でも取り寄せて飲むか?」

 

「いえいえ、カカロットは紅魔館で貯蔵している選りすぐりのワインを飲むべきですよ」

 

他にも、カカロットが帰って来たと知った様々な者たちが押し掛けてきた。カカロットが解放されたのは、実に2時間も後の事だったらしい。

 

 

 

 

 

 

「あの子が例の?」

 

一方、戦いが終わった後、上空からその様子を眺めていたヤッメノコ・カムイペは、隣にいた紫と隠岐奈にそう聞いた。

 

「ええ…カカロットです。ですが手を出すのは止めておいた方がいいと思いますわ」

 

「うむ…その内に秘める巨大な野獣の如き凶暴性は、とても貴女の手に負えるものではないですぞ」

 

二人はいぶかし気にカカロットを見つめるカムイペにそう忠告した。だがカムイペは突然、狐のように釣りあがった目と口で特徴的な笑みを浮かべ、頷いた。

 

「私の故郷に伝わる占い…『ニゥォク』によれば、そう遠くない未来、幻想郷は滅び去ると出ています。これはカムイの告げた意志として迷うことなく従うものです。ですが…あのカカロットという者が、絶望の闇を切り払う型破りな獣となるとも出ています」

 

カムイペは意味深な言葉を残すと、幻想郷の住民たちに囲まれるカカロットを見つめながらゆっくりと消えていくのだった。

 

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